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『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』「メカニック&軍事考証ナイト」公式レポ

『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』クリエイターズトークイベントの公式レポートが到着! 神菊薫氏(メカデザイン)、鈴木貴昭氏(考証)、久慈悟郎氏(監督)、門脇野乃氏(設定制作)が登壇

2025年12月5日(金)より上映中の映画『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』。

このたび、12月23日(火)にT・ジョイ PRINCE 品川にて開催されたクリエイターズトークイベント<メカニック&軍事考証ナイト!戦争アニメとしてリアルの追求秘話>の公式レポートが到着しました!

本イベントには、神菊薫氏(メカデザイン)、鈴木貴昭氏(考証)、久慈悟郎氏(監督)、門脇野乃氏(設定制作)が登壇。史実に基づき描かれる戦争アニメーションにおいての、当時の戦場で用いられた戦車や銃器などのメカデザインや軍事的考証の側面から、制作秘話やこだわりなどを語りました。

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ペリリュー -楽園のゲルニカ-
仲間の最期を「勇姿」として手紙に書き記す功績係――彼が本当に見たものとは?太平洋戦争末期の昭和19年、南国の美しい島・ペリリュー島。そこに、21歳の日本兵士・田丸はいた。漫画家志望の田丸は、その才を買われ、特別な任務を命じられる。それは亡くなった仲間の最期の勇姿を遺族に向けて書き記す「功績係」という仕事だった。9月15日、米軍におけるペリリュー島攻撃が始まる。襲いかかるのは4万人以上の米軍の精鋭たち。対する日本軍は1万人。繰り返される砲爆撃に鳴りやまない銃声、脳裏にこびりついて離れない兵士たちの悲痛な叫び。隣にいた仲間が一瞬で亡くなり、いつ死ぬかわからない極限状況の中で耐えがたい飢えや渇き、伝染病にも襲われる。日本軍は次第に追い詰められ、玉砕すらも禁じられ、苦し紛れの時間稼ぎで満身創痍のまま持久戦を強いられてゆく――。田丸は仲間の死を、時に嘘を交えて美談に仕立てる。正しいこと、それが何か分からないまま...。そんな彼の支えとなったのは、同期ながら頼れる上等兵・吉敷だった。2人は共に励ましあい、苦悩を分かち合いながら、特別な絆を育んでいく。一人一人それぞれに生活があり、家族がいた。誰一人、死にたくなどなかった。ただ、愛する...

<以下、公式発表の内容を引用して掲載しています>

『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』<メカニック&軍事考証ナイト!戦争アニメとしてリアルの追求秘話>公式レポート

12月5日(金)よりついに劇場公開されると、史実に基づき描かれる凄惨で生々しい戦場描写や、そこで紡ぎ出される戦火の友情物語に絶賛の声が相次ぎ、大きな反響に包まれている本作。

なかでも史実に基づいた戦争アニメとしてリアルを追求した<メカニックや軍事的考証>への反響の声も数多い。「省力型ぽい九九式やM1ライフルの描写などわりと意図的なのが、その他車両や航空機の描写からわかる。」「戦場の現実は本当に残酷で悲惨であることを感じされられた。当時の戦場を史実にならい真正面から描いていて、決して戦争というものを忘れることなく、平和について考えるきっかけをくれた」「戦艦や戦闘機や戦車はCGで緻密に描かれたメカになったので、デフォルメキャラとのギャップから兵器の怖さが増して、また漫画と違って良い」など、賞賛の声やさらなる注目が集まっている。

そしてこの度、12月23日(火)に、クリエイターズトークイベント<メカニック&軍事考証ナイト!戦争アニメとしてリアルの追求秘話>が開催され、監督の久慈悟郎をはじめ、神菊薫(メカデザイン)、鈴木貴昭(考証)、門脇野乃(設定制作)といった本作のリアリズムを支えた中核スタッフが登壇。MCは本作のオフィシャルライターSYOが務め、それぞれが一言挨拶した後、イベントがスタートした。

イベント冒頭、門脇が作中で日本軍が持っていた「三八式歩兵銃」のモデルガンを手に登場し、観客を驚かせた。この1.2mを超える「リアルな銃」と「3頭身の可愛いキャラクター」をどう共存させるかが、制作における課題だったという。

鈴木は「3頭身だと手が銃に届かないし、頭が大きすぎて照準が覗けないという物理的な問題があった」と指摘し、それに対し神菊は「アップでは徹底的にリアルに描き、引きのシーンでは動かしやすさを優先して簡略化するなど、デフォルメとリアリズムのバランスをシーンごとに調整した」と苦労を述べた。

それを改めて聞いた久慈は、「神菊さんにはリアルを、門脇さんにはキャラとの折衷を無理にお願いしたが、スタッフが見事に描ききってくれた」と称賛。門脇も「カットごとに塩梅も調節したので、最終的にフィルムにうまく反映できてよかった」と安堵の表情を見せた。

神菊は「三八式歩兵銃は作中でとてもよく使われる武器で、リアルに再現しすぎて困らせてしまった部分もあるかもしれない。」と苦笑。すべての銃は1/1スケールのリアルさで描かれているとのことだ。それに対して門脇は「神菊さんは本当に真面目で、調べ上げて何度もディテールを詰めてくれていた。作中後半に日本軍が米軍のものを奪って切り詰めたM1カービンも登場する。これらについても構造などの詳細が分からなかったが、写真や歴史を調べることで設定や形に起こしてくれた。」と改めて感謝の意を送った。

鈴木は本作のインタビューにおいて「人生1,2を争うくらい大変な考証だった。」と述べている。作中の写真や文字、暮らしや自然についても考証したという鈴木。「当初〈軍事考証〉として始まった仕事が、いつの間にかその枠を超え気付けば〈軍事〉の文字が消え去り〈考証〉全般を担当することになった」と、苦笑し、当時を思い出していた。日本側の資料がほとんどないことが課題だったため、アメリカ公文書館の資料を確認。アメリカで実際に録音した実銃の射撃音や、ポーランドで戦車に乗車した際の資料を共有することも。

背景に描かれる海に沈む兵器の残骸も、元資料が現在の写真なのでそれが何であったのか当時の資料や記録から逆算して割り出し、経年劣化の壊れ方を逆算して描き起こされている。

神菊は「実際の戦場の音との乖離が生まれてしまうことがとても怖かったが、完成作を見てクリップが飛ぶ音やボルトが動く音など、“本物の音“がしていて安心した」と完成した映像への手応えを語った。

考証とアニメーション制作のすり合わせは、最終的に2年ほどかかったという。

久慈は「自分が勉強することも大変だったが、調べ方も分からないけど知らなければいけないようなこと(当時の地図の色味や郵便局の自転車の色など)もたくさんあった。それを鈴木さんがいつも24時間以内にどこからか答えを見つけてきて回答してくださった。」と当時の考証に感謝した。

久慈はとにかく情報をコンテに書き込み、アニメーションに展開する作業。それらを繰り返した結果、原作・共同脚本を務めた武田からも「音響の良さに驚かされたし、実際にそこに生きていた生き物や景色も漫画以上になっていて嬉しい。」という言葉をもらったと、嬉しそうに語った。

本作を鑑賞するのが2回目以上の観客が多かった本イベント。神菊からは、1回見ただけでは気づかないほどのマニアックな裏設定が明かされた。映画終盤、吉敷がM1カービンの切り詰め型を分解するシーンについて、「本来は分解するために一部ドライバーが必要だが、薬莢の底を使って代用できるよう作られているので、念の為、使用した弾薬を画面に1発配置してある。是非皆さんも探してみてください。」と語り、自らその原画も担当したことを明かし、観客に驚きを与えた。

他にも、「旧軍は帽子をかぶっていないと挙手の敬礼はしないというルールがある。田丸も少尉の部屋に入るときに敬礼をせず、帽子を脱いで部屋に入る。」など、細かなこだわりも詰まっているという。鈴木は「ミリオタには常識です!」と述べ、観客の笑いを誘った。

他に2回以上見ないと気づくことができないこだわりは?と聞かれた鈴木は「2,3秒しか映らないシャボン玉の中の日常風景(兵士たちの家族の姿が映る)にも、時代に即したものを描けているかを全て確認した。例えば手紙ひとつひとつの住所やその内容、建築様式に切手の形、紙の材質など…。実際かなり大変だった。」と当時の苦労を語った。アメリカから取り寄せた資料も多々あったという鈴木に、神菊は「ほぼ探偵ですよね…。」と尊敬の念を送っていた。

続いて観客の質問に答える場面では、具体的な戦車の名前や銃器の名前が飛び交うなど、マニアックな質疑応答が展開された。その中で、観客からの「遺体の描写がリアルで胸に来た」という意見に対し、久慈は、鈴木から提供された火炎放射器や銃による遺体の記録映像を直視した上で制作したことを明かした 。「嘘はつきたくないが、PG12として子供たちにも見てほしい。そのバランスをスタッフ全員で描きながら探っていった」と語った。

またそれに対して門脇も、生還した34名の生存者や、それ以外のキャラクターにも氏名、年齢、出身住所だけでなく「誰と誰が仲が良いか」という人間関係まで設定をしたと述べた。田丸が作中で手帳に描く絵の中には、その設定に基づいた兵士たちの交流が密かに刻まれている。

これらの考証やこだわりに対して「やや狂気的とも言える」とMCに言われた鈴木は、「作品を見ている中で観客は違和感を持てば、その世界観から目覚めてしまう。そうなってはいけないと感じたからこその考証だ。」と締めくくった。

最後に各々が本作への想いを語った。門脇「今の世の中はいい意味でも悪い意味でも自分の想いを素直に言葉にできる。この作品を見て感じたことを、ぜひご家族や友人と話し合っていただければ嬉しい。」と述べ、久慈は「今日話したように、1カットごとに詳細に調べて真摯に作った作品。もっといろんな人に見てもらえたら。」と今後の作品の展望を祈った。

鈴木は「2007年6月にペリリューに取材に行った際の資料を武田先生にお渡しし、今度は自分がその作品の映画化の考証に関わっている。」と長い道のりへの感慨を述べ、神菊は「人を殺す道具をリアルに描くのは気が重かったが、それが戦争を伝えるために必要だと信じて描ききった」と語った。

客観的事実と徹底した考証に基づき、デフォルメされた世界の中に“リアル“を宿らせた本作。登壇者たちの言葉からは、戦争の狂気と平和への祈りを次世代に繋ごうとする、クリエイターたちの並々ならぬ執念が伝わってきたイベントとなった。

イベント概要

映画『ペリリュー ー楽園のゲルニカー』
<メカニック&軍事考証ナイト!戦争アニメとしてリアルの追求秘話>

【日時】12月23日(火)
【会場】T・ジョイ PRINCE 品川
【登壇者】神菊薫(メカデザイン) 鈴木貴昭(考証) 久慈悟郎(監督) 門脇野乃(設定制作) SYO(MC)
※敬称略

映画『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』作品情報

絶賛上映中

配給:東映

ペリリュー -楽園のゲルニカ-

あらすじ

仲間の最期を「勇姿」として手紙に書き記す功績係――彼が本当に見たものとは?

太平洋戦争末期の昭和19年、南国の美しい島・ペリリュー島。そこに、21歳の日本兵士・田丸はいた。漫画家志望の田丸は、その才を買われ、特別な任務を命じられる。それは亡くなった仲間の最期の勇姿を遺族に向けて書き記す「功績係」という仕事だった。

9月15日、米軍におけるペリリュー島攻撃が始まる。襲いかかるのは4万人以上の米軍の精鋭たち。対する日本軍は1万人。繰り返される砲爆撃に鳴りやまない銃声、脳裏にこびりついて離れない兵士たちの悲痛な叫び。隣にいた仲間が一瞬で亡くなり、いつ死ぬかわからない極限状況の中で耐えがたい飢えや渇き、伝染病にも襲われる。日本軍は次第に追い詰められ、玉砕すらも禁じられ、苦し紛れの時間稼ぎで満身創痍のまま持久戦を強いられてゆく――。

田丸は仲間の死を、時に嘘を交えて美談に仕立てる。正しいこと、それが何か分からないまま...。そんな彼の支えとなったのは、同期ながら頼れる上等兵・吉敷だった。2人は共に励ましあい、苦悩を分かち合いながら、特別な絆を育んでいく。

一人一人それぞれに生活があり、家族がいた。誰一人、死にたくなどなかった。ただ、愛する者たちの元へ帰りたかった。最後まで生き残った日本兵はわずか34人。過酷で残酷な世界でなんとか懸命に生きようとした田丸と吉敷。若き兵士2人が狂気の戦場で見たものとは――。

キャスト

田丸均:板垣李光人
吉敷佳助:中村倫也

(C)武田一義・白泉社/2025「ペリリュー −楽園のゲルニカ−」製作委員
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