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『超かぐや姫!』山下清悟監督インタビュー

『超かぐや姫!』山下清悟監督インタビュー|「オリジナルアニメは欠点があってはならない」超ボカロ曲、超アクション、超キャラがかわいい!が盛りだくさんな作品はどのように生まれた?

 

ボカロPとBUMP OF CHICKEN、世代だから交わる点と点

──音楽面ではボカロPの楽曲が使われていますが、そのアイデアはどのように生まれたのでしょうか?

山下:本作は「ボカロPを起用しよう」という企画でスタートしたわけではありません。初めはメタバース、歌姫、そしてアイドル配信者という組み合わせを軸にして進めていました。それなら当然歌は必要だよね、ということで「誰に作ってもらうか」を考える中でジャンルや統一感、何より作品のテーマとのマッチングが求められるようになりました。

実体を持たないAIという設定のヤチヨが仮想空間を作りこちらに歌声を届ける……そんな当初からの設定で、自然にボカロPが連想される形になったんです。

興味深いのが、月見ヤチヨはツインテールでシアンと黒のカラーリングを基調としたキャラクターデザインで初音ミクとも共通しているところが多いんですが、これが実はボカロPを起用するアイデアが出るはるか前に既に確定していたんです。

多分無意識に初音ミクの存在が頭の片隅にあったんだと思います。キャラクターの印象が似ているという意識があって、「じゃあボカロPを集めてやったらどうだろう。例えば、ライブで「ワールドイズマイン」や「メルト」を使ったら面白いんじゃないか」という話になったんです。

それで企画が進み始めると、いろんなボカロPさんたちを集めてみようという流れが生まれました。その頃、たまたま開発中に『ONE PIECE FILM RED』が公開されたり、『NEEDY GIRL OVERDOSE』が話題になったりして、これらの作品に影響を受けた部分もありました。「ボカロPを集めて楽曲を作り、歌ってみた動画で外部からの宣伝もする」という戦略が序盤から描かれていたんです。

最近、オリジナル作品は内容が良くてもなかなか観客に届かず、そのまま終わってしまうことが多いですよね。それを実感していたので、オリジナル長編で成功するにはどうすればいいかと考えたとき、「映画本編という盤面の外で勝負を始めないと成功の未来をつかみ取るのは厳しい」とツインエンジンの山本さんに熱い思いを語って(笑。「そのためにやれることはすべてやろう」というスタンスで進めてきたんです。ただし大事にしていたのは、マーケティング至上主義にならず、作品とのマリアージュを第一に考えることです。たとえばボカロPによる文化を大事にしている方々の思いを裏切らないように、必ず作品との意味性のつながりを重視する。そこは宣伝チームとも同じ目線に立って歩みました。
通常、こういった企画は「ボカロPを起用できるからボカロPを主軸にアニメを作りましょう」という形になりがちです。ですが、そうするとストーリーの厚みを後から出すのは大変難しい。どんなに優秀な監督でも、持ち込まれた企画に本当の意味でコミットするのは至難の業なんです。その人が作るストーリーは、その人の人生そのものですから。

今回の企画は順番が逆で、まず作りたいストーリーがあって、そのストーリーにボカロPを乗せています。その点、本作については最後まで監督の見たビジョンが縒れずに形になっておりますので、皆さんにはぜひ期待してほしいと思っています。

──楽曲面で言うと、BUMP OF CHICKEN feat. HATSUNE MIKUの「ray」がアレンジされて使用されていますね。

山下:僕、実はBUMP OF CHICKENが大好きで、中学のときからめちゃめちゃ聴いていたんです。本当に辛かったときには、ヘッドホンの音量を最大にしてBUMPを聴いているような、そんなファンだったんですよ。だから好き過ぎて、自分の作品に使いたいという気持ちがまったくなかったんです。

でもプロデュースサイドから「BUMP OF CHICKENの「ray」をエンディングテーマとしてカバーするのはどうだろうか」という話が降りてきて、最初はとても驚きました。ただ改めて楽曲を聞き直してみたときに、楽曲のメッセージが作品内容と非常に一致していることに気付きました。

結局、BUMPの楽曲の持つメッセージ性が、僕が描きたかったテーマと合致しているんですよね。それってやっぱり僕自身がBUMPが好きだから、という理由もあるんですが、不思議なほど自然に組み合わさった感じです。

──非常に興味深い背景ですね。音楽面でもストーリーとの結びつきが多いですね。

山下:そうです、音楽は本作の重要な要素です。まさにこういう発想があって、ストーリーと音楽がうまく融合している点が、この作品の魅力にもつながっていると思います。

「ray」とこの企画が結びついたという点は、あまりにも奇跡的だと思っていますし、実際に本編中でカバーとして使用させていただけたことは、自分の中では最大の成功ポイントだったと思っています。

 

キャラクターの感情変化を一番大切に

──それにしても、お話を伺っていても、実際に映画を見ても感じたことは、要素がとんでもなく多い作品であることです。それがちゃんと見事にまとまっていて、最後までスッと見れる印象でした。この「うまくまとまっている理由」について教えていただけますか?

山下:正直に言ってしまうと、あまり「うまくいっている」とは思えていない部分もあります(笑)。ただ、自分の中では「楽しいものを作ろう」という意識で取り組んでいたので、その点が結果的に良い方向に働いたのかもしれませんね。秘訣と言えるものは特にありませんし、「できているのかどうか」すら分からないのが正直なところです。

でも、強いて言えば、「キャラクターの感情のライン」を中心に据えて作り込んだのが理由かもしれません。SFやVR、戦闘といった舞台装置はあくまで背景であり、作品の核となるのはキャラクター同士の影響や感情の変化。そしてその部分を守ったことで、自分が「見たい作品」になったのではないかと思います。他の要素に重きを置きすぎると、自分自身が楽しめない作品になってしまうので。

──確かに、キャラクターの感情の変化が分かりやすくて、共感しやすい部分が印象的でした。すごく今っぽくて良かったです。

山下:ありがとうございます。そこはとにかく丁寧に作り込みましたね。。今振り返ると、もう少しシーンを削れるかもしれませんが、特に序盤は丁寧に積み重ねた内容です。ただ、初見の方が観るとかぐやがヤチヨカップへの参加を宣言するまでの辺りで「少し退屈」と感じる瞬間もあるかもしれません。ただ、あのキャラが出るなら、あの曲がどこでかかるか、という期待感で最初のセットアップを越えてさえいただければ、めまぐるしく動き始めますので。

そう思うと、Netflix作品としては若干異質かもしれません。昔ながらのノベルゲームのような感覚を意識して作っています。

──そういった丁寧な積み重ねがあるからこそ、感動の最大値が非常に高い作品に仕上がっているんですね。その意図を2時間の尺に込めたということですか。

山下:そうですね。上映時間は2時間20分です。これは長いと怒られることもありました(笑)。最近ではアニメ映画も長尺の作品が増えていますが、それでもオリジナルで140分は攻めた内容だと思います。

最初はプロデューサーから「90分でエンディング込みにして」という話があったんです。コンテを書き始めた当初は「まあ見てろって」みたいなモードだったんですが、花火のシーンを描いてるあたりで「ああ、無理ですね」となり、結果として140分近くまで膨れてしまいました。

シナリオが長すぎたんですよね。でも単純に切ればいいという話でもなく、切れる余地がほとんどありませんでした。どんなに削ってもプラス5分削れるかどうかという感じです。それが限界でした。ま、1クールシリーズを140分にまとめたと思っていただいて……

──仮想空間「ツクヨミ」に関しても伺いたいのですが、和風のメタバースのような世界が描かれていますよね。これを作る際の意図を教えてください。

山下:基本的に、企画書の段階で「かぐや姫」というワードから「和風メタバース」と結びつけて進めていました。その中で、京都の街並みや古き都の雰囲気と、現代のデジタル要素であるサイネージやネオンなどを組み合わせています。

その組み合わせ自体は、幻想的なイラストの世界ではよく見られるものだと思います。結構みんなの頭の中に、ああいった和風の仮想空間のイメージがなんとなくあると思うんです。例えば、高層建築があるけど、五重の塔みたいな構造になっているとか。でも意外とまとまった形で見れることは少なくて、ましてやその世界に名前がついたこともないなと思いました。だからそれを引き寄せて、しっかり形にしようという感じで作っていました。

細かいところにも注目していただきたいんですけど、たとえば、劇中で水が流れる描写があるんですが、ジャーっと流れるわけではなく、ブロック状になって流れているんです。気づいていただけたら嬉しいですね(笑)。正直、自分でも「なんでこんなことしたんだろう?」って思う部分もあるんですが、あそこはマインクラフトみたいな水にしたくて、なんとなくそうしちゃった感じですね。

そういったブロック状のデザインは、他のシーンでも出てきますけど、ローポリ(低ポリゴン)な空間を意識しています。戦闘シーンなんかも、ボクセルっぽい構造で、ブロック的な感じでまとめているんです。これは僕のローポリアート愛が影響している部分ですね。それが懐かしさを感じさせるという点では、初期のボカロの雰囲気に通じる部分もあるのかなと思います。昔のちょっとクオリティの高くない感じのものに愛着があるので、それを積極的にいろんなところに取り入れました。

ただ、水をブロック状にした意味は……正直わからないです(笑)。そういう「なんでこれやるの?」みたいな要素も多いですね。

 

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