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- まりも
- ゾロとONE PIECEを偏愛するフリーライター。アニメ、推し活、恋愛、結婚、睡眠など、幅広く執筆しています。

※この記事には『ONE PIECE』最新話(第1171話)までのネタバレを含みます。コミックス派やアニメ派、ジャンプ未読の方はご注意ください。
海賊王を目指すモンキー・D・ルフィとその仲間の冒険を描く『ONE PIECE』。数々の名シーンが生まれ続ける本作のなかでも、やはり欠かせないのは第1話。シャンクスが海王類に左腕を食われるのと引き換えにルフィを守り、麦わら帽子を託す物語のはじまりの場面です。
それから約30年、エルバフ編まで話が進んだ現在では「あのシーンでシャンクスが左腕を食わせたのはわざとだ」という声も上がるようになりました。
しかし、最新話の展開を受け、今度は「シャンクスがわざと左腕を食わせたというのはミスリード」といいう流れができつつあるようです。新たに囁かれはじめた“ルフィがシャンクスを解放した”説とは?
冒頭でも触れたとおり、第1話においてシャンクスはヒグマに攫われ海に落とされたルフィを身を挺して救出します。その際、近海の主(海王類)に左腕を食いちぎられてしまうのでした。「…だってよ…!!!………………!!!ジャングズ…!!!………………!!!腕が!!!」「安いもんだ 腕の一本くらい…無事でよかった」(『ONE PIECE』第1話より)という、シャンクスの偉大さが伝わるやりとりは有名ですよね。
しかし、ストーリーが進みシャンクスの強さや身の上が明らかになるにつれ、当時は四皇になる前だったとはいえ、あんなにも強い覇王色の覇気を使う彼が「海王類にやられるなんておかしい」「裏がありそう」と疑惑が持ち上がります。
さらに、エルバフ編ではシャンクスがもともと天竜人のフィガーランド家の血筋に生まれたことが明らかになりました。ロジャー亡き後、シャンクスはその身分を逆手にとって聖地に潜入し、イム様と「浅海契約」を結んで神の従刃になります。
契約の証として、シャンクスの左腕にはタトゥー(紋章)が刻まれ、これによってイム様の能力圏内にいる限り、命令に逆らうのは不可能な状態だったのです。
このことから、シャンクスは紋章を消してイム様の支配から逃れるため、わざと左腕を失ったのではないかという推察が注目されるようになりました。たしかに、海王類などひと睨みでどうにでもできるであろうシャンクスが、あの場で都合よく紋章入りの左腕を失くしたとなると疑惑が浮かぶのも無理はないかもしれません。
しかし、もともとはシャンクスが危険を厭わず友達のルフィを助けることで海賊の覚悟とかっこよさ、この海を航海することの恐ろしさを伝える、そういった損得勘定のようなものとは無縁のシーン。ルフィがシャンクスのような海賊になることを決心すると同時に、読者が『ONE PIECE』の世界観にグッと引き込まれるきっかけと言っても過言ではない名場面です。
そのため、「もうこれシャンクスわざとやったでしょ」「ルフィ助けたついでにイムからも解放されてラッキー!的な?」という声の一方、「名シーンが壊れる感じがしてやだ」「シャンクスがそんなことするわけない」「ルフィを守りたい気持ちは本物だったはず」など賛否両論だったのですが……。
シャンクスは聖地潜入中、ときどき天竜人(世界政府)や自身の血を厭うような言葉を零しています。
「全てが嫌いだった!!!」(『ONE PIECE』第1167話)
「ゾッとするよ…おれの人生」(『ONE PIECE』第1170話)
さらに第1171話では、イム様や神の騎士団の所業を脳裏に浮かべ、自身の出生を強く憎むシャンクスの姿が。左腕の紋章をギュッと掴む苦悶の表情は、かつてナミが自身に刻まれたアーロン一味の印を一心不乱に刺し続けたシーンを想起させるような、胸の痛む描写でした。
天竜人の血と、イム様との契約による呪いじみた支配。自ら潜入したとはいえ、天竜人の生家に戻り、浅海契約をしたとなればもはやイム様の奴隷も同然。それはたとえ強者のシャンクスであっても、自分ではどうすることもできない苦しみだったようなのです。
そして、苦しみや奴隷からの解放といえば、シャンクスの同期だったハラルドの祖国・エルバフにも伝わる解放の戦士・太陽の神ニカ。
そこで、例のシーンでは、ヒトヒトの実・モデルニカを口にしたばかりのルフィが、はじめてその能力で解放した(=支配から逃れさせた)のがシャンクスだったのではないかという見解も広まりはじめています。
ルフィにとって、あれは悪魔の実を食べてから最初の窮地だったはず。そのため、ギア5のときのように自分では意図せぬ力が発動した可能性がなきにしもあらず……?
シャンクスがルフィの命を救ったと同時に、ルフィは知らずしてシャンクスを解放。それはつまり、ルフィにとっては海賊を目指す夢のスタート、シャンクスにとっては本当の意味での自由のスタート。そう考えると、シャンクスの打算など考える余地もない、ロマンあふれる物語のはじまりになります。
ひとつの推察なので実際のところはわかりませんが、考え方ひとつで第1話の見え方までも変わるのが本作の深みとおもしろさですね。
個人的にはシャンクスとルフィの絆は曇りなく本物だと感じているので、左腕をなくしたことに理由があるとしても、シャンクスの意図は絡んでいないといいなと思います。
シャンクスがルフィを助けたあとには「シャンクスが航海に連れていってくれない理由」「海の過酷さ」「己の非力さ」「なによりシャンクスという男の偉大さをルフィは知った」(『ONE PIECE』第1話より)とあります。いま思えば、奇跡的にゴッドバレー事件を生き延び、幼いころからロジャー海賊団のクルーとして世界を旅し、聖地では世界政府の闇も嫌というほど見てきたシャンクスだからこそ、まだ海のいろはも知らない7歳のルフィをフーシャ村に留めようとしたのは当然かもしれませんね。あの場でシャンクスの優しさと愛情に守られた無垢なルフィだからこそ、いま海で元気に名を揚げているのかも。
[文/まりも]
