『温泉むすめ』はプロデューサー交代で次なるフェーズへ。橋本竜×森島昌洋 独占対談

【独占対談】『温泉むすめ』は総合プロデューサーの交代で次なるフェーズへ。初代・橋本竜から二代目・森島昌洋へ託される「地域とファンの未来」

 

「変えないもの」の宣言、信頼資産という名の重み

──新体制になることで、ファンや地域の方々が抱く不安に対して、どのようにお答えになりますか?

森島:断言できるのは「地域ファースト」の理念、そして温泉地の方々との共存共栄関係は、絶対に変えません。ここ数ヶ月、全国の温泉地へご挨拶に伺ってきましたが、そこでいただいた言葉の重みは想像以上でした。「エンバウンドさんも大変だろうけど、一緒に頑張ろうな」と、背中を叩いてくださるような事業者さんがいらっしゃる。こうした「信頼資産」こそが『温泉むすめ』の核であり、それを裏切るような効率至上主義に走ることはありません。

橋本:それを聞いて安心しました。森島さんは、熱心に現場の声を拾おうとしてくれています。

森島:一方で、変えていくべきは「運営の仕組み」のほうでしょうか。これまでは橋本さんのリーダーシップとクリエイティブセンスを軸に走ってきました。長年『温泉むすめ』に関わってきたスタッフにもより深くプロデュースへ参加してもらい、一人ひとりがその意識を持つ「オーケストラ型」の運営に変えていきたいと考えています。私は指揮者として、それぞれのスタッフが持つ知恵や、ALiNKインターネットが持つデジタルの知見を統合していく役割に徹します。

──「ALiNKが持つデジタルの知見を統合」というのは、具体的にどのような施策を考えられていますか?

森島:地方の温泉地が今、もっとも苦しんでいるのは「人手不足」です。私たちがイベントをやって人を呼んでも、それを受け入れる現場が疲弊してしまっては本末転倒です。そこで、例えばLINEを活用した情報発信の自動化、あるいはAIを活用したさまざまな機能など、温泉地の方々の負担を減らしつつ、キャラクターを入り口にしてファンがより便利に旅を楽しめるようなDXを推進していきたいです。クリエイションを最大化するために、それ以外の事務作業は徹底的に効率化する。このメリハリをつけたいです。

橋本:森島さんの言う通り、単なる効率化のためのIT導入では意味がありません。大切なのは、デジタルを使って“人と人が向き合う時間を増やす”ことだと思っています。

温泉地が抱える人手不足や情報発信の負担を軽減しつつ、キャラクターを通じて生まれる関係性を、より長く、より深く育てていく。そのためにデータやAIを活用する。DXは目的ではなく、地域とファンの関係性を持続可能にするための手段だと捉えています。

このプロジェクトはこれまで、リアルな来訪を中心に成長してきました。これからの10年は、リアルの体験を軸にしながらも、デジタルを通じてファンとの接点を重ね、地域にとっても持続可能なモデルへと進化させていく段階に入るのだと思います。

──これまで関わった温泉地のなかで、特に「成功」を感じたエピソードや、理想とする形はありますか?

橋本:福島県の飯坂温泉の事例は、ひとつの理想形だと思います。先日も飯坂温泉の温泉むすめである飯坂真尋ちゃんの誕生祭がありましたが、あれは運営主導ではなく、地元の方々やファンの方々が自発的に企画し、盛り上げていました。

森島:私も飯坂温泉にお邪魔しましたが、あの熱量は圧巻でした。特定の場所でグッズを買って終わり、ではなく、街を歩けばどこもかしこも真尋ちゃんで溢れていて、誕生日には地元の新聞の紙面を埋めるほどに盛り上がっている。なかには、『温泉むすめ』をきっかけに年20回も同じ宿に泊まるという方もいらっしゃるそうですね。

──それはもう、単なる観光客ではないですね。

森島:「目的地」としてのキャラクターが、やがて「その土地の人」に会うための理由に変わっていく。多くの人が温泉むすめをきっかけにして、各地の風土や人とのつながりを楽しんでいただけること。結果として持続的な「人流」ができあがること。これが、私たちが目指す地域活性化のゴールです。

橋本:その他の成果として大きいと感じているのは、温泉地同士のつながりが生まれたことです。

これまでは、それぞれの温泉地が個別に観光施策を行うことが一般的でしたが、『温泉むすめ』をきっかけに、共同キャンペーンを展開したり、モチーフを揃えたビジュアル施策を実施したり、成功事例を共有し合う動きが自発的に広がっていきました。

単発の取り組みにとどまらず、温泉地同士が横で連携しながら継続的に取り組む関係性が育ってきたことは、このプロジェクトが生み出した構造的な変化の一つだと思っています。

実際に各温泉地や自治体の皆さんからも、そうした横のつながりが生まれたこと自体を大きな価値として評価していただいています。
 

継承する味と、未来の味

──森島さんが考える、これからの「新しい形での地域連携」とは?

森島:ALiNK代表の池田や橋本からは「早く形にしろ」と日々せっつかれています(笑)、今温めているのは、「旅ナカ体験」や「地域への貢献」といった。各地とファンのあいだにつながりを生む新しい仕掛けです。『温泉むすめ』は現在「温泉地を訪れるきっかけ」として一定の役割を果たしています。今後は、この「きっかけ」の先をさらに広げる事業にチャレンジしたいです。

──具体的にはどんなイメージでしょうか。

森島:たとえば地場産業の振興に関わることもできるでしょうし、私がこれまで携わってきた「tenki.jp」の経験を活かし、防災や復興支援とのシナジーも生めないかと考えています。ただし、原点である「その土地を訪問するきっかけづくり」という軸は絶対にぶらしません。仮に大きな経済的効果を生んだとしても、実際にその土地を訪ねる人が増えなければ意味がない。それこそが、私たちが守るべき「地域ファンダム」だと思っています。

──今後、橋本さんはどんな立場でプロジェクトに関わられるのでしょうか。

橋本:エンバウンドには所属しつつ、「コンテンツアドバイザー」という立場になります。全体の最終判断は森島さんに委ねますが、これまで積み上げてきた経験や暗黙知を、必要な時に伝える役割です。

──プロジェクトの総合的な判断は森島さんに任せ、おもにコンテンツ部分を陰からサポートするということですね。

橋本:9年間運営するなかで、「これは温泉地さんにとって負担になる」「これはファンの期待とズレる」といった、いわば“見えないルールブック”が自分の中にできあがりました。それを“個人の感覚”のまま残すのではなく、チームの共有資産として言語化して次の体制に継承することも、創業者の責任だと思っています。

ただし、自分の価値観が絶対にならないよう、あえて一歩引く。それがプロジェクトを健全に成長させるために不可欠だと考えました。

森島:橋本さんがルールブックとして背後にいてくださることは、大きな安心材料です。新旧交代の時期はどうしても、温泉地さんやスタッフに不安が生じます。それを払拭するために橋本さんの知見は絶対に必要ですから。ただ、飲食店の代替わりでは、どれだけ先代の味に近づけても「味が落ちた」と最初は言われてしまうそうです。まずは「『温泉むすめ』は変わらないね」と言っていただけるよう、努力してまいります。そのうえで「新しい味だね」と喜んでもらえるような新機軸を生み出していきます。

──最後に、これからの『温泉むすめ』への思いを。

橋本:『温泉むすめ』は、誰か一人のプロデューサーによって続くプロジェクトではなく、地域とファンの皆さんが育ててきた存在です。これからも、各地の温泉地にとって誇りとなり、ファンの皆さんにとって訪れる理由であり続けてほしい。50年先を見据えたときに、「あのとき体制を変えてよかった」と言ってもらえるような選択であってほしいと思っています。森島さんなら、その未来を一緒に描いてくださると信じています。

変えるのは仕組みで、変えないのは地域とファンへの向き合い方です。その思想だけは、これからも変わることはありません。どうかこれからも、温泉むすめたちを、そしてその土地そのものを応援していただければ嬉しいです。

 
取材・記事:はるのおと、写真:佐藤ポン

 

温泉むすめ

日本全国の温泉をモチーフにしたキャラクターと声を担当する声優たちが、全国の温泉地を盛り上げるべく、歌と踊りで人々に“笑顔と癒し”を与える「アイドル活動」を行う次元を超えたプロジェクト

『温泉むすめ』公式サイト https://onsen-musume.jp/
『温泉むすめ』公式X @onsen_musume_jp

 

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