
『地獄楽』稲田徹さん×市川蒼さんインタビュー|お互い違うからこそ、強くなれた――第二期で共闘した巌鉄斎と付知、その熱きバディに迫る
相反するふたりが起こした化学反応
──20、21話では巌鉄斎と付知が、桃花(タオファ)を相手に共闘するエピソードが描かれました。
稲田:シンプルに付知くん、結構強いなって(笑)。インテリキャラクターで、戦闘方面ではそんなに強くないのかと思ってたけど、ちゃんと強いじゃんって。
市川:一期の頃からずっと、「二人は交わることがないかもしれない」なんて思ってましたけどね。やっぱり時間を共に過ごしていく中で関係性ができていく。とはいえ、物語内では数日しか経ってないんですよね?
稲田:うん、実はそのくらいなんですよね。
市川:それでも一緒に過ごした時間、共に強敵と戦い、生き延びるために支え合ったことで、付知の「情が湧く」というセリフにもあったように、心って少しずつ変化していくんだなと感じました。
21話では特にその変化が顕著で、今までなら付知は「罪人が死んでも構わない、それを見守るのが役目」と言っていたはず。でも今回はその境界を超えて、共に戦う方向へとシフトしていく。人間の心って、ほんと面白いなと、改めて思いました。
──まさに“吊り橋効果”というか……。
稲田:それはあるかもしれないですね。そこまで追い込まれないと、共闘しようとか、お互いを認めようとか、自分を変えようとは思わなかったかもしれない。
その点で言えば、巌鉄斎もそうですよね。タオの説明を聞いてる時なんて、ずっとあくびしていて、何にも聞いてない奴が、命の極限まで追い込まれた時に、若い頃に師匠から聞いた言葉を思い出す。
ああいう局面じゃなければ、きっと師匠の言葉を思い出すこともなかったかもしれない。ただただ「強い剣を振るう」ことだけを追求していたかもしれない。そこから一歩引くというのは、ある意味すごく勇気のいることだったと思います。
──それまでこだわってきたものを、ちょっと手放してみる。
稲田:若い頃に言われてもピンとこなかったけど、「ああ、あれってこういうことだったのか」って、今になって分かることってあるじゃないですか。ようやく巌鉄斎もそこにたどり着いたんだなと。
もちろん、頑固に貫き通す人生もいいかもしれないけど、ちょっと柔軟になってみたら、さらに先が見えてきたり、自分の成長につながったりする。変わることは悪いことじゃない、っていうのが、21話の中でも描かれている気がしますね。
──師匠の言葉を思い出して、それを素直に実践するっていうのが、ちょっと意外でした。巌鉄斎って、もっと頑固で不器用なイメージがあったので、「あ、意外と素直にやるんだな」って。
稲田:素直どころか、目まで取っちゃいましたからね(笑)。「そこまでしなくても!」って思うけど、あのガッチガチなまでに頑固な巌鉄斎だからこそ、目玉をえぐるくらいのことをしないと変われなかったんでしょう。
市川:お互いに、ピンチを救い合うっていうのが、すごく熱い展開でしたよね。
付知も巌鉄斎を助けるし、彼も自分の目玉を取ってまでタオを開花させて、付知を助ける。そこにすごく感動しました。
最初はお互いにバチバチで、認め合う気なんてまったくなかった二人が、こうして助け合うようになる。付知が「仲間のようなもの」と言っていましたけど、それがしっかり回収されていて、関係性が一歩進んだのが感じられましたね。
稲田:巌鉄斎って、何も考えずに行動しているんですよね。その瞬間で良いと思ったから目を取ったり、手を切り落としたり。結果論ですが、付知くんがいなかったら死んでたと思うんですよ。手首を切って、そのまま出血多量とかで。
でも、医療に精通した男が近くにいて、しかも今後の生活を考えて鍵爪までつけてくれて。そのおかげで、剣豪としての腕もさほど衰えず、むしろ、あの鍵爪を利用することで実力が上がったとも思うんです。
──確かに。
稲田:それから、ゲーム(『地獄楽 パラダイスバトル』)の中で「鍵爪をつけるまでのエピソード」がしっかり描かれてるんですよね。原作では描かれていない、でも原作を補完するようなエピソードが盛り込まれてます。
気づいたら鍵爪を使いこなしてるように見えるけど、実はそこに至るまでの経緯があるんです。他のキャラにも、きっとそういうエピソードがあると思いますし。より深く『地獄楽』の世界観が楽しめると思います。
見え隠れする天仙らの葛藤とは?
──第21話では天仙たちの過去も描かれましたね。
市川:ジュファとタオファって、どちらかというと人間的な思考がある天仙様なのかなと思うんです。「人間を丹にすること」をそこまで良しとしていないというか。でも、2人で支え合って天仙として在り続けている。
だからこそ、この2人と戦うことも、やっぱり一視聴者としては、「どうにか和解の道はなかったのかな」って思ってしまうんです。唯一、そう感じさせてくれる2人だったなと。
稲田:他の天仙たちは長い人生の中で、もう麻痺しきっていた部分があると思うんです。本当は根っこの部分では人間味があったかもしれないけど、もう戻れないところまで来てしまってた。
でも特にタオファは、その人間味をずっと抱え続けてたんじゃないかと。だからこそ、あの鈍い巌鉄斎でさえ彼女の葛藤に気づいたんだと思います。
市川:そうですね。「人を殺して楽しいのか」という問いに、「楽しくない」とはっきりと答えていました。タオファは、複雑な思いを胸に留めていたんですよね。
アフレコのひとときが、「バディ」を作る
──共闘シーンのアフレコはいかがでしたか?
稲田:実は、特に打ち合わせはしていません。マイク前で「向こうがこう来たから、こっちはこう返す」みたいな感じです。
この作品に限らず、アフレコの面白さって、そういうやりとりの中にあると思うんです。切羽詰まったシーンの中で、お互いの持ち味を出しながら、相手の出方に影響を受けて芝居をしていく。だからこそ、出せた声や表現っていうのが、今回もあったんじゃないかなって思います。
市川:付知のセリフで「浅ェ門ならば朝飯前、剣龍には難儀でしょうか」っていうのがあるんですけど、上陸して一緒に過ごしてきたからこそ、巌鉄斎さんの扱い方も覚えてきているなと。
ふたりのコンビ感がより見えたシーンなので楽しかったです。付知って、そんなに毎回声を張るキャラじゃないんですけど、今回はやっぱり、巌鉄斎がピンチだし、自分もここでやらなきゃやられる、という状況だったから、自然と気持ちが乗りましたね。
──ふたりとも、凄くかっこよかったです。アフレコにおいて、苦戦したところはありますか?
市川:僕がこの戦闘シーンで一番難しかったのは、「仲間のようなものだと思ってる」という付知のセリフですね。この部分は、どちらかというと「独り言っぽいニュアンスで」と言われていたんですが、あまりにも独り言っぽすぎてもダメで。その塩梅がすごく難しかったです。それまで付知が一度も口にしてこなかったことなので、それを伝えるっていうのは、チャレンジでもありました。
逆に、戦ってるシーンについては、特に大きなディレクションもなくて、どちらかというと、巌鉄斎さんとの共闘というよりは、付知の心の動き、彼の内面の変化を意識しました。
稲田:今まで、そういう場面はなかったですもんね。
市川:なかったですね。「仲間だと思ってる」なんて、自分の気持ちを打ち明けるようなシーンは。それだけに、付知の気持ちをより深く掘り下げて表現するのは、個人的には難しかったです。
二期の序盤で、仙汰の死を知ったことで、付知の心には変化があったと思います。そういう変化を巌鉄斎に伝えるというのは、ここが初めてです。
──稲田さんご自身としては、演じる上で意識してたことってありますか?
稲田:そこまで「意識しなきゃ」とまでは思ってなくて。もう、本当に本能に近い感覚というか……何も考えずに、感性で演じていました。セリフも深読みせず、文字に書いてあることをそのまま受け取って、そのまま乗っかる。深読みしちゃいけないキャラだと思ってるんですよ。単純明快で、豪放磊落(ごうほうらいらく)な人物だから。
市川:巌鉄斎は裏表がないですからね。
稲田:そう。ちゃんと人の話も聞こうとはしてるしね。もちろん、わかんないことも多いけど(笑)。でも、理解しようとする気はある。
そう、それこそタオファの何気ない「楽しくない」っていう一言を、ちゃんと受け止めてたと思うんです。その裏を読んで。意外と繊細さもあるし……「こいつ、もしかしたらモテるかもしれないな」と思いました(笑)。セクハラすれすれのオヤジだけど、実は人気がある、みたいな。
市川:ちゃんと愛があるって伝わってくるタイプですね。
稲田:実際、ジュファ以外で言えば、巌鉄斎はタオファの真意を唯一わかってあげられた人物だったんじゃないかな。勝てるからってひどいやり方で倒すんじゃなくて、ちゃんと相手のことを解釈して向き合ってるんですよね。
──アフレコ現場の雰囲気はいかがでしたか? 戦闘シーンも相まって、緊張感があったりとか。
稲田:申し訳ないけど、ピリッとはしてないっすね(笑)。僕らは、収録前とか「今年のベストバイはなんですか?」とか、そういう話をしてますよ。
──上半期ベストバイトーク(笑)。
稲田:でもね、誤解のないように言いたいのは、別に仕事に集中してないわけじゃないってことです。こうやってチームワークを深めることで、何が来ても対応できる現場ができあがってるんですよ。芝居にもちゃんと反映されてる。
市川:アフレコ現場だと、大体、徹さんが隣に座ってくださるんです。
稲田:なんだったら「今日、蒼くん遠いな〜」とか言って、席を移動してもらったりしてね(笑)。
市川:そういうのも、巌鉄斎と付知の関係性を作るうえで、やっぱり大事だなって思うんです。演技って、相手がどう出てくるかで変わる部分が大きいじゃないですか。自分で考えてきたものよりも、掛け合いの中で相手に引き出されるものの方が良いこともあるし。
そういう意味で、相手を知ること、関係を築くことってすごく大切なんだなと思います。特にこの現場は、徹さんがすごく周りを見て、気を使ってくださるので、本当に助けられてます。























































