
アイを超えることは許さない?──『【推しの子】』重要人物・カミキヒカルの人格&犯行動機を考察
心を完全に崩壊させた別れ ※重大ネタバレ注意
姫川夫妻の命の重みに押しつぶされる少年・カミキの心。彼が助けを求められるのはもはやアイしかおらず、アイへの執着はより強いものに。彼女が自分を受け入れてくれることでその精神は何とか持ちこたえられていたと考えられます。
そんな中でアイから突然別れを切り出され、激しく動揺するカミキ。自分にはアイしかいないし、アイには自分しかいない、これからも2人で支え合って生きていくものだと心の底から信じていたのですから、取り乱すのも無理はありません。
アイが別れを切り出した理由は自身の妊娠。カミキは結婚を申し出たものの、それもきっぱりと断ってしまいます。「私は君を愛せない」愛する彼女にそう告げられ、1人になってしまったカミキの絶望は想像するに余りあります。
その絶望からカミキはアイを殺害した犯人・良介に彼女の住所を教え、結果としてアイは刺殺されてしまいました。
「嘘は愛」であるアイの本心
「私は君を愛せない」。それはアイがカミキを愛していたからこその嘘でした。カミキが姫川に性加害を受けて苦しむ姿も、そこから逃げようともがく姿も、姫川夫妻の死を重く受け止める姿も、アイはずっとそばで見てきました。
そんな中で発覚した妊娠。既に姫川夫妻や子・大輝の命の重みを背負っているカミキに、アイはこれ以上命を背負わせてはいけないと判断し、彼の元を離れることに。カミキと、子供たちといっしょに生きていきたいという本心を嘘の愛で隠したのです。
子供を産み育てる決断をしたのもカミキへの愛が確かにあったからこそ。子供たちが4歳になる頃に一度カミキに連絡を取っていることからも、時間が彼を癒した頃ならまたいっしょに生きていけるかもしれないという思いもあったのかもしれません。しかしながら、カミキにその愛が届くことはありませんでした。
「命の重み」が快楽になったのは自分の心を守るため?
間接的ではあるものの、姫川夫妻だけでなくアイの命にも手をかけてしまったカミキは、苦しかったはずの命の重さに快楽を感じるように変化。恐ろしい怪物になってしまったわけですが、これもまたカミキが自分の心を守るための現象だったように感じられます。
そもそもアイのことは少し怖い目に遭って自分の絶望を理解してくれれば、と思っていた程度でまさか殺してしまうとは思っていなかったよう。なんなら当時もまだアイのことを愛していた可能性もあります。
歪んだ愛だったかもしれませんが、愛する人を殺してしまった事実を、既に絶望の渦中にいたカミキが受け止めるには、命の重みを快楽として感じるしかなかったのだと推察します。
ターゲットは"アイを超えそうな才能を持つ人物"? ※重大ネタバレ注意
果たして猟奇殺人鬼へと変貌を遂げたカミキ。しかしながら、殺せれば誰でもいいというわけではなく、彼がターゲットとするのは自分が才能や価値を感じた人物です。私は彼の価値基準にはアイの存在があるように感じられます。
アイは人気絶頂の最中に亡くなってしまいました。もちろん悲劇以外の何物でもないのですが、これによって彼女は、人気が失墜する姿も、熱愛報道をはじめとするスキャンダルも、老いていく姿も見せることのない“完璧なアイドル”として朽ちることのない存在となりました。
カミキはアイが人気絶頂だった当時と同じカリスマ性や人気を誇る人物を標的にしていると考えられます。そのひとつの証拠となるのが、瞳に輝く六芒星型の星。アイはもちろん、ルビーやアクア、幼い頃のカミキや片寄ゆらにも星のハイライトが輝いていました。
私はあのハイライトを人を惹きつける魅力やカリスマ性を可視化したものだと解釈しています。作中にはたくさんの才能や魅力を持った芸能人が大勢登場しますが、あのハイライトを持っている人物はかなり限られてますし、おそらく天性のものなのでしょう。
カミキはハイライトを有するほど天性の才能を持つ人物を敏感に察知して近付き、標的としているのです。
その犯行動機は命の重みを感じたいがためなのか、才能ある人物をアイと同じように永遠の存在にしたいからなのか、はたまたアイを超えることは許さないという思いがあるのか……本心はカミキ自身にしかわかりません。もしかすると、彼自身も本当の気持ちはわからずにいるのかもしれません。













































