
「それまでの積み重ねによって全ての歯車が噛み合った結果と言えるかもしれません」──第13話“バンド・スナッチ回”などから感じる作品の導き『プリンセッション・オーケストラ』監督・大沼 心さん【最終回カウントダウンインタビュー】
2025年4月より放送が始まり、世代を超えて大きな注目を集めた“ポップソング・ファンタジア”『プリンセッション・オーケストラ』。2026年3月29日に放送される第48話にて、最終回を迎えます。
アニメイトタイムズでは、プリンセスとともに一年間を駆け抜けたキャスト&スタッフ陣にインタビューを実施。今回は監督・大沼 心さんにご登場いただき、お話を伺いました。
監督として設定する目標地点を超えるような視聴者の反応やキャスト陣の演技。制作陣が形作る「ロケーション(状況)」の中で動き出すキャラクターと物語から感じる「世代間の物語」とは。
何か皆さんの心に刺さるものを残せたのではないかというのが今の率直な心境です
──いよいよ『プリンセッション・オーケストラ(以下、プリオケ)』が最終回を迎えますが、改めて現在の心境や手応えについてお聞かせいただけますか?
大沼 心監督(以下、大沼):手応えを言葉にするのは非常に難しいのですが、視聴者の皆さんからのたくさんの感想や反応を拝見する中で、一つの区切りというか、何か皆さんの心に刺さるものを残せたのではないかというのが今の率直な心境です。
アニメの制作現場としては入念に準備を重ねていましたが、それでも制作を進める中でどうしてもイレギュラーな事態が発生するので、それらに対応し続ける大変な日々でしたね。
撮影監督の木田さん(木田健斗さん)とも話していましたが、一言で表すとしたら「長いようで本当にあっという間だった」です。
──以前、別の取材では「制作を通じてスタッフも一緒に成長している感覚がある」と仰っていました。物語が終盤を迎えるにあたって、現場の習熟度などはいかがですか?
大沼:だいぶ練度は上がったと感じています。ある種の“慣れ”みたいなものが良い方向に作用した面も大きいと思っていて、この練度を『プリオケ』の制作現場だけで終わらせるのではなく、今後のSILVER LINK.にどのように反映させていけるかも考えています。
と言うのも、『プリオケ』の制作中に、実は私もSILVER LINK.の社員になったんですよ。これまで20年近くSILVER LINK.で仕事をしてきたので、皆さん私のことを社員だと思っていたんですけど、実はフリー(フリーランス)だったんです(笑)。
社員という立場になったことで、後進の育成も強く意識するようになりました。
──スタッフの成長とは別に、キャストの成長も見守ってこられたと思います。メインキャストであるオルケリアの3人の印象の変化はありますか?
大沼:最初のアフレコ時に、私から「この1年で皆さんに成長してほしい」という挨拶をさせていただいたんです。ただ、最終話のアフレコを終えて改めて感じたことのは「成長する・しない」ではなく「人は成長する」ということ。だから、こちらから「成長してほしい」と言うこと自体が、もしかするとおこがましかったのではないかと感じていました。
監督としての立場からすると、コンテの段階で欲しい声のイメージというかラインがあるんです。それをアフレコで踏み越えてきたときに、キャラクターが言いそうな説得力があれば、その演技は通してしまいます。特に『プリオケ』の場合は、素晴らしい演技を頂けた時は、逆に映像の方を演技に寄せて調整する手法をとっていましたので、オルケリアの皆さんが考えていた芝居はかなり表に出ているかなと思います。
──オルケリアの3人について、個別に成長に関して印象に残っていることがあれば教えてください。
大沼:3人とも2クール目を過ぎたあたりからは、ご自身の中でキャラクターを完全に消化されていたので、大きな解釈のズレがない限りは細かく指示を出す必要もなくなりました。その意味でも、この1年でオルケリアの3人はかなり成長されていると思いますね。
バンド・スナッチのキャスト陣に良い影響を受けたのだと思いますが、葵さん(空野みなも/プリンセス・リップル役・葵 あずささん)はアドリブが好きで、非常にのびのびと演じられていました。葵さんはどこまでいっても「主人公としての芯」を貫いてくださるので、最初からキャラクターの解釈にブレがなくて、そこは制作陣から見ても非常に頼もしかったですね。
藤本さん(識辺かがり/プリンセス・ジール役・藤本侑里さん)も早い段階からキャラクターを掴んでいただいていましたが、ご自身の芝居に対して非常に真摯で実直な方なので、アフレコでも納得がいかなければ録り直しを相談したりして、その真面目さは強く印象に残っています。
あと、藤本さんについて興味深いのは、アフレコが終わった途端にプライベートの雰囲気に戻られることですね。プライベートの藤本さんは少し自信なさげというか、おっかなびっくりな側面も見受けられるので、お芝居の雰囲気との違いにキャストとしての凄みを感じていました。
橘さん(一条ながせ/プリンセス・ミーティア役・橘 杏咲さん)は演技の経験が少なかった分、伸びしろがすごくて、一番のびのびと演じられていたかもしれません。どんな時でもご自身らしい個性を持った方なので。皆さんが公式サイトやYouTubeなどから受ける印象を私たちも現場で感じていました。
──劇中のキャラクターである空野みなも、識辺かがり、一条ながせの3名についても、キャストの成長と合わせて、1年間を通してどのような変化を見せようと意識されてきましたか?
大沼:1クールの作品であれば変化のポイントを絞りやすいのですが、1年間の作品となると構成が難しいんです。そのため「1クールごとの区切り」を意識して、それぞれの段階での成長を描くようにしました。
ただ、1クール目ではキャラクターの確立と成長をしっかり見せることに努めたんですけど、2クール目あたりからキャラクターたちが逞しくなりすぎてしまって(笑)。制作陣としても「この子たちは何があっても揺るがないよな」と感じていました。
──たしかに後半のハード目な展開にも、みんな正面から向き合っていました。
大沼:第44話あたりの展開は、当初のシナリオで想定していた心情の流れから、かなり変化した部分があって、これは私にとっても未知の体験でした。1年間という積み重ねの中で、キャラクターが文字通り「勝手に動き出す」とでも言うのか……それまでの心情の積み重ねから築かれたシナリオの流れがあるにもかかわらず、彼女たちはナビーユを信頼しきっていて、疑うという選択肢が一切なくなっていたんです。
当初のシナリオ通りに上がってきたコンテをチェックした際、言葉尻や表情とかの細かなニュアンスではありますが、どうしても自分の中で違和感が生じてしまって。作劇上は本来もっと深刻にしなければならなかったのですが…結果、現状の信頼度に合わせて修正を入れました。
以前のインタビューで「物語がハードな展開になる」とお話ししましたが、それをキャラクターの強さが上回ってくるのをまじまじと思い知らされましたね。
──演技のラインの話がありましたが、キャラクター自体の強さも物語のラインを超えてきたのですね。
大沼:監督として目標地点みたいなものは設定していたんですけど、視聴者の皆さんの反応やキャストの演技がキャラクターと物語を導いていったんです。私たちが作っているのは、いわば「ロケーション(状況)」でしかなく、そのロケーションの中で出来上がったキャラクターたちがどう動くかを考えていくと、自ずと変わっていくこともあるのだと改めて感じました。
──そうすると、監督が想定していた到達地点から更に伸びていくのを楽しんでいたのですね。
大沼:もう「どこまでいくんだろう?」という感じでしたね。1クールのアニメだと到達地点ってブレないんですけど、1年もののアニメはこういうものなのかと改めて思いましたね。































