
「作画が悪目立ちすると物語から気が逸れてしまう」──アニメ『違国日記』監督・大城美幸さんインタビュー【連載第6回】
醍醐って引き笑いなんですよ
──その他、アフレコで印象に残っていることを教えてください。
大城:第7話の実里のお芝居がすごくよかったです。アバンで喋っている実里と、朝が日記を読んでいるイメージの実里で、同じセリフにも関わらずぜんぜん温度感が変わるお芝居を大原さやかさんがされていて。あそこはグッときましたね。大原さんも原作がお好きとのことで、解像度が非常に高いお芝居をされていました。笠町(信吾)くんは諏訪部順一さんがエロい声を出してくれて。ちょいちょい「エロすぎるので、もうちょっと抑えてください」というディレクションが入っていました(笑)。
──そんなディレクションが(笑)。
大城:でも、ふわっとにじみ出ちゃう色気が笠町くんにはある気がしたので、表現としては正解だと感じていました。若い頃の笠町くんも丁寧に演じ分けていて、さすがでしたね。塔野(和成)さん役の近藤隆さんは、オーディションで聞いたときからビックリするくらい塔野さんで。イメージにぴったり過ぎて笑っちゃうくらいでした。感動しましたね。(楢)えみり役の諸星すみれさんも、めちゃくちゃ上手でした。特に第3話。朝のことを心配して、電話がかかってくる直前まで不安で不安で仕方なかったという感じが見える演じ方をされていて、説得力が凄まじいなと思いました。声だけで泣かせてくるのは、本当にすごいです。
──声が付くことでのよさを節々に感じていらっしゃったんですね。
大城:そうですね。それで言えば、第2話の醍醐(奈々)。実は先生から「醍醐って引き笑いなんですよ」ってアフレコのときにお話があって。確かに、原作の文字で書かれたセリフを見たときに、ちょっと特殊だなとは思っていたのですが、まさか引き笑いを表現していたとは。
──先生のなかで、イメージがしっかりとあったんですね。
大城:驚きもしましたが、同時に納得もしました。ただ、シナリオの段階では引き笑いだと想定していなかったので、セリフ尺の調整をする必要が出てきてしまって。そこを演じる松井恵理子さんが上手に引き笑いのお芝居をして、対応してくださったんです。その場で「こんな感じですか?」ってやってくださって。第7話で醍醐が出てきたときには、もう松井さんが引き笑いをマスターされていて、ナチュラルに引き笑いしながらセリフを言っていました。役者さんって本当にすごいなと思いましたね。
──引き笑いのお話は、アニメになることでより分かりやすくなった部分なのかなと思いました。
大城:声がついたら印象が変わるということはあると思います。その変化が面白くもありますよね。
アニメを作るうえでの何かしらの意図は、結局は物語を構成する、支えるひとつでしかない
──その他、本作でこだわった点を教えてください。
大城:原作を読んだときに、砂漠などのイメージシーンはキーになるところなので、絶対にアニメでも描きたいと思っていたんです。ただ、原作と同じタイミング・流れでそのシーンを描いてしまうと、ちょっと唐突になってしまう気がして。なので、なるべくうるさくない程度にポイント・ポイントでイメージシーンを入れました。タイミングもなるべくシームレスにしたかったので、見ている方たちが、心象風景に切り替わることに対して違和感がないように一話から仕込んでいました。
──いまのお話は、「コミックを読む」と「アニメを見る」という違いによる工夫でもあるのかなと思いました。
大城:そうですね。コミックだったらコマの間の行間で時間が飛んだり読めたり、ページをめくったらイメージシーンになっていても気にならないんですが、映像は連続したものなので、どうしても違和感が出ちゃうんですよね。なので意図的に多めに入れていたのですが、原作ファンの方は「ちょっと入れすぎだろ」と思われたかもしれません……(苦笑)。意図して入れてはいます。とは言え、そんなことはこういうインタビューがないと、伝わりづらいですよね。
──そういう意図があるというのを、視聴者に求めるものでもないのかも。
大城:私もそう思っています。そういう意図も、結局は物語を構成する、支えるひとつでしかないので。こちらの意図を意識させるということは、逆に物語に集中できていないってことにもなりかねない。それは本末転倒だなと思っています。とにかく物語に没頭できるように、を常々心がけて作っています。
──本日は貴重なお話ありがとうございました。最後に、クライマックスに差し掛かっている本作の見どころを改めて教えてください。
大城:1クールのアニメとしてまとめるために、最終話付近はオリジナル展開を入れているところも多いです。どう受け取っていただけるのか不安ではありますが、気持ちよく終わるような形にはなっているので、楽しんでもらえたらと思っています。ちょっとした仕組みもあるので、最終話まで見たら、ぜひ第1話から見返していただけたら嬉しいですね。
【取材・文:M.TOKU 編集:西澤駿太郎】
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『違国日記』作品情報
あらすじ
思いがけずはじまった同居生活によって、それまで静かだった槙生の日常は一変。他人と暮らすことに不慣れな性格のため、15歳の朝との生活に不安を感じていた。
一方、両親を亡くし居場所を見失った朝は、はじめて感じる孤独の中で、母とはまるで違う“大人らしくない”槙生の生き方に触れていく。
人づきあいが苦手で孤独を好む槙生と、人懐っこく素直な性格の朝。
性格も価値観もまるで違うふたりは、戸惑いながらも、ぎこちない共同生活を始めていく。
共に、孤独を生きていく二人の、手探りで始まる年の差同居譚。
キャスト
(C)ヤマシタトモコ・祥伝社/アニメ「違国日記」製作委員会


































