
「夢を現実に変えてくれたスタッフ」「夢を真っ向から受け止めてくれた視聴者の皆さんがいてくださったからこそ今があります」──『プリンセッション・オーケストラ』企画原案・金子彰史さん×プロデューサー・諏訪 豊さん【最終回カウントダウンインタビュー】
目線としては「アニソン的な格好良さを追求してほしい」が一つのキーワードになっています
──本作の大きな特徴でもある「歌って戦う」という要素について、子どもたちにも楽しんでもらえる確信はありましたか?
金子:誰しも子どもの頃、アニソン歌いながらごっこ遊びしたと思うんですよ(笑)。アニソンが嫌いな子どもなんていません。大人だって大好きです。そうじゃないという方は、きっと忘れてるに違いありません。それは確信というより断言です。絶対に絶対です。
提出した企画書には「Elements Gardenの歌を深夜から朝に」とか「楽曲購買層を広げる施策」といったビジネスライクな書き方もしていますが、自分自身がアニソンに育てられてきたので、自分同様、この先、何十年経っても好きでい続けられるアニソンを、今の子どもたちに聴かせたかったという野望はありましたね(笑)。
諏訪:確かに、音楽性についてはメインスタッフ内でも何度も話し合いを行いまして、現代の子ども向けで愛されている音楽の方向を目指す可能性も、やや懐かしさのある少し前の時代の魔法少女モノっぽい音楽にする可能性もありました。ただ、今回は全楽曲をElements Gardenさんの楽曲でお送りする作品であることは決まっていましたし、そこに加えて、キングレコードとしてもアニソンレーベルとして長い歴史があり、我々の得意分野でもあると自負していています。
それらを踏まえ、大きなチャレンジとなる作品だからこそ、お互いの得意分野を全力でやり切りましょう、という判断をしております。かつて自分たちの胸を熱くさせたアニソンに肩を並べられるような楽曲を次世代の子どもたちに届けることが、この作品のやるべきミッションではないかという結論に至ったんです。それもあって楽曲の方向性としては、「自分たちの胸を熱くしてくれた格好良いアニソンを次世代に届ける」ということで、クリエイター陣とは目線を合わせております。
──以前、諏訪さんは別作品のインタビューで「僕はもともと歌詞にあるような綺麗な日本語が好きで、高校生の時には、人と話す時に綺麗な日本語を使いたいと思うようになり、大学では文芸・ジャーナリズム論系という専攻に進学をしました」とお話しされていました。本作の楽曲制作にあたって、どのようなビジョンを皆さんと共有したり、要望を出されたのでしょうか?
諏訪:よくチェックされていますね(笑)。高校生向けの進路選択に関するインタビューでの発言でしたが、根底にある哲学は今もあまり変わっていないと思います。
ただ、先程お話した作品全体の音楽性を考える中で、歌詞についてもElements Gardenの皆さんとも「子どもにわかりやすい歌詞が良いのか? それとも自分たちらしさを貫くべきか?」という議論を重ねました。
「子ども騙しではない」という金子さんの言葉通りではあるのですが、『プリオケ』においては大人が大人のエゴで、子どもに向けたものを作るということではなく、大人も子ども等しく良いと思えるようなものを目指したいと思っておりましたので、歌詞についても同様のアプローチをしております。
楽曲タイトルを一つとっても、様々な議論を経て今の形になっています。パッと見て格好良くて、フレーズとしても素敵なものという部分にはかなりこだわっていただいたと思っています。今回は膨大な楽曲数があるため、多くの作詞家さんにご参加いただいていており、重ねてにはなりましが、目線としては「子ども騙しではない」、「自分たちの胸を熱くしてくれた格好良いアニソンを次世代に届ける」が大きなキーワードになっています。
特に「ゼッタイ歌姫宣言ッ!」は、歌詞についても色々なパターンを出してくださった中で、上松さん(上松範康さん)から「自分らしい方向で良いのでしょうか?」と聞いてくださったことを良く覚えています。そのときは迷わずその形で是非お願いしたいとお伝えし、完成形になった、という経緯です。その結果、「ゼッタイ歌姫宣言ッ!」はとても熱く格好良いオケと歌詞の織り混ざった素晴らしい楽曲になっていると感じております。
冒頭で仰っていただいた当該のインタビューはもう5年くらい前のものなのですが、を読み返すと改めて思い返すと、ずっと同じようなスタンスではありまして、恥ずかしいのですね(笑)。
──「歌いながら戦う」というギミックを取り入れることで生まれる魅力や、演出上の効果についてはどのように考えられていますか?
金子:まずは、初見の方が確実に思うであろう「何だこれ!?」というインパクトがあると思います。それはある意味、視聴者をふるいにかけるところでもあるのですが(笑)、そこをフックと捉えていただければ、次は表層的な派手さや華やかさが目を惹くのではないでしょうか。さらに歌詞に注目してもらえると、キャラクターの内面や心情をより深く理解できるという効果もあるはずです。もしかすると、その際にドラマが二重構造になっているかもしれません。口にしたセリフ以上の感情が歌詞に込められている場合もありますので。こうして並べて解説すると複雑怪奇に思えるかもしれませんが、それを一撃で伝えられるのもまた「歌の力」だと考えています。
諏訪:映像的な面から言うと「歌うとはどういうことか」という根源的な問いにも、この『プリオケ』では深く向き合ったと思っています。単に映像上でキャラクターの口が開いたり、閉じたりしていれば歌っていることになるかというと、そうではなく、どんな口の形で、どれくらい開いているのかといったような細部までこだわっていただくことで、実際にキャラクターが歌っているように見えると考えております。そういった映像表現について、アニメーション制作のSILVER LINK.さんが序盤から現在に至るまでに相当なブラッシュアップを重ねています。
実は第1話の頃と比較しても、歌唱シーンの演出は飛躍的に進化しているんです。これは本作の助監督である関根(侑佑)さんが、歌唱パートの演出を一切の責任を持って引き受けてくださっているおかげです。クリエイターの方々のたゆまぬ努力の結果、映像としての表現や迫力が「歌」を起点に大きく広がっています。
だから、序盤と最近の放送回とでキャラクターの口の動きを比較してみると、実はもの凄く違うんですよ。一人のクリエイターのパワーでここまで変わるのだと驚かされましたし、アニメとしてもこれをやることの意義はとても強かったと感じていて、歌唱演出においては音楽プロデューサーの菊田大介さんや、音響監督の本山哲さん、録音調整の安齋歩さん等々、MVPだらけなのですが、関根も間違いなくMVPの一人だと思っています。関根さんへの感謝と敬意を込めて、ここでお名前を挙げさせていただけたらと思います。
「『シンフォギア』のスタッフが作る、『シンフォギア』ではできなかったアプローチ」を目指したのが『プリオケ』という作品
──『プリオケ』は『シンフォギア』のスタッフ陣が参加されていますが、プロジェクト発表当時は大人の方々からも大きな反響があったのではないでしょうか?
金子:反響はありましたが、少し補足させていただくと『シンフォギア』からのスタッフというのは自分と菊田(大介)さんをはじめとするElements Gardenなど、ごく一部です。諏訪さんしかり、逢空さんや島崎さん、大沼監督等、新しくご一緒するスタッフさんの方が圧倒的に多いんです。彼らの仕事ぶりに敬意があるからこそ、『シンフォギア』スタッフと一括りにされるのには抵抗があります。
もちろん、発表時の打ち出し方からそのように捉えられるのは自然なことですが、自分としては「新しいスタッフが作る『シンフォギア』ではできなかったアプローチ」を目指したのが『プリオケ』という作品になります。
それもあって現在の感触としては、『シンフォギア』とはまた違った試みや表現が為されたと思いますし、視聴者の方々にもそれらをしっかりと受け止めてくださっている実感というか手応えを感じています。
──具体的に「『シンフォギア』ではできなかったこと」とはどのようなものか、お伺いしてもよろしいでしょうか?
金子:例えば、プリンセスたちの必殺技バンクがわかりやすいと思います。『シンフォギア』では、技を繰り出す際に「カットイン」という形で一瞬画面を止めて技名を大きく表示する演出を取り入れていました。しかし、今回の『プリオケ』では、最初期にカットイン禁止令を出して、その代わりの新しい表現として、必殺技バンクへとシームレスに繋ぐ演出に挑戦しています。毎話、歌のどこからバンクに繋がるのか決まっていないので、現場には相当な労力を割いてもらっています。状況によって必殺技名を叫ぶというのも『シンフォギア』ではない演出ですね。
──ストーリーや展開の面において「これまでできなかったこと」や「今作だからこそできたこと」はありますか?
金子:物語をじっくり描ける猶予がありますので、あえて明確な悪を作らないようにしています。敵対するのは悪ではなく「もうひとつの善」、もしくは「善悪を超越した何か」です。主人公サイドにトラブルが発生し、それをきっかけに味方同士でぶつかり合う展開も今回はありません。特に初期プリンセスの三人は、バックボーンに暗い影も設定していません。その分、風花姉妹にはいろいろ背負ってもらっていますが、それは浮上するカタルシスを描くことで、別方向・もう一組の主人公として確立させたい意図があります。
──勧善懲悪ではないという点について、子どもたちが視聴していることを意識された部分はありますか?
金子:善を勧め、悪を懲らす展開を否定するつもりはありません。物語の牽引力になりますし、明確なゴールがあるのは気持ちがいいです。むしろ個人的には、善悪やその彼岸について考えるきっかけになったので、年若いうちにこそ触れてもらいたいテーマです。ただ今回は、異なる善同士が手を取り合って超越善悪に対抗するクライマックスなので、純粋悪や絶対悪が入る隙が無かったと言うべきかもしれません。































