
アドリブOKの異例な収録!? 宮本茂×クリス・メレダンドリが語る『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』の制作裏舞台
ハリウッドスターから「俺を出せ!」と逆オファー殺到!? 掟破りのキャスティング秘話
──すでに海外のポスタービジュアル等でスターフォックスの登場が話題になっています! 声優もグレン・パウエルさん(『トップガン マーヴェリック』など)が担当されるということで、多くのファンが熱狂していますが、フォックスの登場はどういった経緯で決まったのでしょうか?
宮本:まず今回の舞台である『スーパーマリオギャラクシー』の世界観で言うと、普通のSF映画に出てくるようなよくある宇宙(ギャラクシー)じゃつまらないですよね。マリオらしい宇宙空間を作ろうというところで、どんな世界観がいいかっていう話をクリスさんたちといろいろしている時に、イルミネーションの制作陣の方から「スターフォックス(任天堂の別作品のキャラクター)を出したらどうか」という提案があったんです。「それなら間違いなく面白いものになると思う」と私も賛同しました。
ただ、これまでの任天堂のルールとしては、「世界観の違うゲームのキャラクターを共存させない、同じ作品に出さない」と決めて、長年僕自身がそれを社内に言い聞かせてきた立場だったんです。しかし、今回の映画ではそのルールを壊す必要があるなと思ったので、まずそのルールを信じて守ってきた社内の開発スタッフたちに「今回は特別に、他のIPのキャラクターをちょっと近づけてもいいかな?」と、僕自身が任天堂内でロビー活動(根回し)をしました。その後のグレン・パウエルさんのキャスティングの裏話は、クリスさんが詳しいと思います。
クリス:前作の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を公開した後に、実は俳優のグレン・パウエルさんから私の方に直接連絡があったんです。彼からの電話では「今、任天堂と一緒に映画を作っているんですよね、クリス。実は私、スターフォックスが本当に大好きなんです。私がどれだけこのキャラクターを愛しているか、クリスには知っておいてほしいんです」という、熱狂的なアピールがありました。
その時点では、別にこちらからスターフォックスの映画を作るとか、本作に登場させるとかいった話は世間に一切していなかったんですけれども。ゆくゆく脚本家や宮本さんと話し合って、「本作にスターフォックスを入れるかどうか」という具体的なアイデアが出た時に、「そういえばグレン・パウエルさんから熱烈な電話もあったし、きっと彼なら素晴らしいスターフォックスを演じてくれるんじゃないか」という話になったんです。彼の任天堂に対する情熱やパッションを見て、彼にお願いすることになりました。
それで後日、グレンさんにこちらから再度かけ直して「本作でスターフォックスをぜひ演じてください」とオファーの電話をかけることになったのですが、それは私がハリウッドで今までにかけてきた電話の中でも、一番嬉しくて印象に残っている電話になりましたね。それでグレンさんは本当にめちゃくちゃ喜んでくださいまして、収録の時も本当に楽しんで演じてくださっていました。今、本当にスターフォックスを演じられたということをご自身でも嬉しく思ってくださっているので、彼にお願いして心から良かったなと思っています。
──日本の声優陣はもちろんですが、ハリウッドスターの方々からも逆オファーが殺到したというのは驚きです。
宮本:日本の声優さんからの逆オファーもあるんですけども、アメリカのハリウッドキャストの皆さんも「任天堂の映画をやるならぜひ私が出たい」とか「俺にその役をやらせてくれ」みたいな売り込みが、結構クリスさんのところに来るんですよね。
クリス:その通りなんです。ハリウッドの映画制作では、大体いつもそんな(役者側から売り込んでくるような)ことはないんです。基本的にはこちらの方から俳優陣へ「ぜひこの作品になんとか出てもらえませんか」とお願いするオファーの電話をかけることが多いんです。けれども、いざ任天堂作品の映画となると、いつも大物俳優さんや声優さん側から直接「ぜひ出演させてください」と電話がかかってくる。本当に素晴らしいことだなと思っています。
──宮本さんはそのことについてどう思われているんですか、ハリウッドスターがこぞって任天堂作品の映画に出たいとおっしゃっている状況は。
宮本:いや、本当にね、僕はラッキーだなと思って。今回映画のアニメーションを作ってくれているイルミネーションのクリエイターたちも、みんな昔からのマリオファンなんですよ。そして声優を務めてくれるキャストの皆さんも、ハリウッドスターであるかどうかに関係なく、純粋なマリオファンなんです。だからこそ、「マリオの世界で何かやれる役があるんなら絶対に出たい」とおっしゃっていただいて。
多分、もし僕が若い頃にゲームクリエイターではなく漫画家としてデビューして、一人で作品を描いていたらこんな凄い世界規模の広がりにはならなかったわけで。任天堂のスタッフもイルミネーションのスタッフもキャストも、本当にチーム全員が「マリオが好き」という想いだけで映画を作っているという、すごい新しいジャンルができたのかなって思います。
──ちなみに、今回ロゼッタ役を務めるブリー・ラーソンさん(アカデミー賞受賞俳優/『キャプテン・マーベル』など)も任天堂のゲームが大好きだと公言してくれているんですけど、彼女もクリスさんのところに直接電話で売り込みが来たから起用されたんですよね?
クリス:そうです。ブリー・ラーソンさんは本当にもう熱狂的な任天堂ファンで、本作のキャスト陣の中でも、任天堂の作品に出演できたことを最も喜んでいる俳優の一人です。アメリカのエンタメ業界においては「ブリー・ラーソンさんと言えば、すごい任天堂のゲーマーだよね」というのは周知の事実となっていますからね。
はい、キャスティングについてあともう一つお伝えしたいエピソードがあるんですけれども。実は今回ヨッシーを演じていただくことになったドナルド・グローヴァーさん(エミー賞およびグラミー賞受賞者/『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』など)からも、直接電話があったんです。
彼は俳優であって、脚本家でもあって、映像監督も務めるなど色んなことをやってらっしゃる本当に多彩な才能を持つ方なんですけれども、彼から電話があった時に「前回の1作目の映画(のエンドロール)を見て、次はぜひ自分がヨッシーの声をやりたいんだ」というような直談判があったんです。
宮本さんが「色んな方から逆オファーの連絡が来ていた」とおっしゃっていた通り、ハリウッドスターでさえも「任天堂の映画に関わりたい」と熱望してくれる状況は、実際にアニメーションを制作するイルミネーションのスタジオスタッフたちにも非常に大きなポジティブな影響を与えました。現場のみんなが本当にワクワクしながら制作に取り掛かっていったので、その熱量や情熱の結果が、今回の素晴らしい映像のクオリティにもはっきりと現れているのではないかなと思います。
「ただ強いだけの女性キャラは薄っぺらい」ヒロインの葛藤と、悪役クッパが抱える“親子のドラマ”
──初期のゲームでは「救出を待つヒロイン」のイメージもありましたが、映画版では戦闘能力も高く、非常に魅力的なキャラクターとして描かれています。宮本さんには、この40年間でのピーチ姫やロゼッタたちの変化や映画での描かれ方について、クリスさんには、本作で力強く描かれる彼女たちの魅力や、ファンに注目してほしいポイントをお聞きしたいです。
宮本:もともとビデオゲームにおいては「目的が分かりやすい」ということが一番大事で、ゲームプレイの最中に予想外の複雑な展開があるとプレイヤーは戸惑ってしまうわけですよね。そういう意味合いもあって、昔のゲームでは「お姫様が敵に救出される(さらわれる)」といったシチュエーションが多く使われていました。プレイヤー自身が「今、何をしたらいいのか」が視覚的に一番分かりやすい。例えば『ドンキーコング』の最初のステージでも、画面の上に女の子がさらわれて助けを求めていたら、「あ、この人を助けに行くべきなんだな」と直感的に理解できて、だからマリオは上へ上へと登っていくゲームなんだってことが誰でもすぐに分かるわけです。
そういったゲームを成立させるための「記号(わかりやすい役割)」としてお姫様を描いてきた側面があったので、それが現代の自立した女性像とは合わない部分があるということは、昔から散々周囲に言われて僕らも知っていたんです。ただ、そこを「ゲームの構造」としては簡単に裏切れないし、システムとして変えられない部分があったんですよ。けれど、これが「映画」という新しいメディアをやる時であれば、その固定概念を思い切り変えて彼女たちを強く描こうということで、クリスさんたちとも初期から意見が一致して話が進んでいました。
その結果、前回の1作目では「自ら最前線で戦う自立した女性」としてのピーチ姫の姿を分かりやすく描くことに集中しました。今回の2作目や今後の展開も考えた時に、「ただ物理的に戦って強いだけの女性キャラクターでは人間味として薄っぺらいな」ということで、お姫様としてのリーダーの悩みであるとか、女性としての内面的な思い、マリオとピーチ姫の間の微妙な感情のすれ違いとか、そういった内面的なドラマを今回の脚本には結構多く書き込んでいったんです。おかげで、随分と1作目より内面的にも豊かな女性像が描けたかなと思うんですけど、そのあたりのグローバルな反響については、あとはクリスさんに聞いてみてください。
クリス:私自身、映画作りにおいてとても面白くて重要だなといつも思っているのが「お客さんの実際の反応を見ること」なんですけれども。今回の映画でも女性キャラクターの芯の強さが描かれているわけですが、任天堂のゲームファンの方たちって、世界中に大人の女性も小さな女の子もたくさんいらっしゃいますよね。そういった女性ファンの方たちが今回の映画の先行上映を見て、ピーチ姫のリーダーとしての強さ、あとはロゼッタの強さや思いやりを見て「彼女たちの活躍がすごく良かった、見ていて楽しかったし勇気づけられた」という風に言ってくださる方が、日本以外の海外市場では今非常に多かったんです。
そういった熱い反応を実際に見ることができて、私としては制作の意図が伝わってすごい良かったなという風に思っています。女性キャラクターたちの受け入れられ方が興味深いなと思って見ています。ですので、日本の女性のお客様にもぜひ劇場に足を運んでいただいて、そういった等身大の彼女たちの活躍を見て反応を見せていただけたら嬉しいなと思います。
──単なるヒロインではなく、彼女たちが戦い、時にさらわれることにもしっかりとストーリーの必然性が絡んでいて、非常に面白い展開だと感じました。
クリス:あと、ドラマの深掘りという点で他に注力した点になるんですけれども。最初の映画では、敵であるクッパのピーチ姫に対する「叶わない恋」を描いていたわけなんですけれども、そのクッパの恋とストーリー性の軸を、今回の映画でもしっかりと主軸に置いていきたいなと思ったんです。
一般的に映画というものは、悪役(ヴィラン)の背景にあるドラマが面白ければ面白いほど、主人公側の物語も引き立ち、その映画全体がより深く面白くなるものだと私は思っております。先ほど宮本さんが「できるだけファミリー層に、親子3世代で映画館で見てほしい」とおっしゃられていたんですけれども、だからこそ今回の映画では、クッパ側の「父と子のストーリー」もしっかりと脚本に入れ込んでいます。新たに登場するクッパJr.と、父親であるクッパとの複雑な親子関係のドラマをしっかりと描くということを、本作では非常に大切にしていました。








































