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- わたなべみきこ
- 出産を機にライターになる。『シャーマンキング』『鋼の錬金術師』『アイドリッシュセブン』と好きなジャンルは様々。

月刊「少年ガンガン」で大好評連載中の幻怪ファンタジー『黄泉のツガイ』。『鋼の錬金術師』や『銀の匙』などで知られる荒川弘先生の最新作で、シリーズ累計600万部を突破。この4月からはファン待望のアニメ放送も始まった今注目の一作です。
本作は現在コミックス12巻まで発売されており、「少年ガンガン」本誌では第52話まで物語が進んでいます。しかしながら、まだまだ多くの謎が秘められたままであり、疑問に感じる点や気になる部分は挙げればキリがないほど。
そこで本稿では、『黄泉のツガイ』大好きライターがその謎をまとめて考察! 明かされている情報を整理しつつ、自分勝手に掘り下げていきたいと思います。
なお、原作の内容を基に考察していきますので、アニメで追っている方にはネタバレ要素が含まれます。ご注意ください。
現代社会から隔絶された閉鎖的な村・東村で“夜と昼を別つ双子”として生まれた兄・ユルと妹・アサ。
彼らは世のあらゆるものを「とく」ことができる「解」と世のあらゆるものを「とじる」ことができる「封」の力を授かる権利を持つといわれています。
そんな彼らの力を利用しようと目論む周囲の人々。妖怪のような、幽霊のような、「ふたつでひとつの対なる存在」“ツガイ”と彼らを使役するツガイ使いたちの戦いの中で、ユルとアサは「平穏で普通の暮らし」を求め、戦いに身を投じていきます。
物語開始時点でアサが手に入れている能力「解」。そのおかげで「封」に比べればわかっていることは多いものの、まだまだわからないことはたくさんあります。
現時点で判明している具体的にできることは、物や人の解体(攻撃・殺害)、主からツガイへの命令を解く、主とツガイの主従関係を解く、結界を解くこと。
また、第51話ではアサが影森家の見張りに対して力を使い、彼らを放心状態にしていました。人の意識に干渉する(意識を解く?)こともできるようです。
コミックス10巻では400年前に「解」を手にしたあさひが描かれていましたが、そこでは戦で敵の首を刎ねているだけだったので、応用的な使い方は判明しませんでした。
しかし、あさひもアサと同じように右目を覆っていることから、「解」は右目に宿るツガイだということがわかっています。
一方の「封」は「解」以上にわからないことだらけです。作中で判明している具体的にできることと言えば、ツガイを封じて本尊姿に戻すこと、寿命を封じること。加えて、おそらくできるとされているのが、痛覚を封じること。このことから、人間(生物)の五感を封じることはできそうです。
作中の現代で「封」の力の一部を持っているのは、西ノ村で生まれた双子・ミナセとヤマハ姉妹。ヤマハいわく、姉ミナセはある日突然その力が降りてきて寿命を封じることができるようになったそう。
そして、そのしばらく後にヤマハには任意の地域を「封」じて下界と隔離する力が降りてきました。ですが、彼女たちは“運命の双子”ではありません。そもそも男女の双子でもないのです。
第40話でミナセが双子のことを「候補」と呼んでいることから、どうやら「封」の力は“運命の双子”以外にも突如として降りてくることがあるようですね。
それは「解」も同じだと考えられるのですが、ここで疑問なのは、ミナセとヤマハどちらにも「封」の力が降りてきているということ。ミナセが「封」であれば、その片割れであるヤマハには「解」が降りてきてもよさそうなものですが、そうではありません。
このことから、ミナセ達の他にも「封」や「解」の力の一部を持っている人物がいることが考えられます。ヤマハは黒谷アキオが痛覚を封じられている可能性を指摘していたため、アキオの過去にヒントが隠されていそうです。
ツガイの力とされる「解」と「封」ですが、そもそも「解」と「封」そのものが通常のツガイと異なる点が多く、特殊なツガイであることは明白です。
まず、彼らのいる場所。「死者の国と現世の境目」におり、主と契約した後も現世に姿を現すことはありません。アサの言動から右目に宿っているのだと推測されますが、普通のツガイ達の付き添い方とは大きく異なります。
400年前に「解」を手に入れたあさひは「解」に守られることなく戦死していましたが、黄泉の世界から離れることのない「解」は主が死んでも野良ツガイになることがないのでしょう。それゆえに、主を守る必要がないのだと推測されます。
また、ツガイでありながら「解」と「封」が別々のところにいるのも不思議なところ。何らかの形で繋がっているのだとは思いますが、アサが「解」に兄のことを尋ねた際に「封」側で起きていることを全く知らない様子から、彼らが普通のツガイよりも独立した存在であると感じられました。
さらに、「解」と「封」はそれぞれが双子の片割れと契約しているのも通常のツガイとの大きな違い。通常、ツガイは2人セットで1人の主と契約を交わすものです。私は、双子という存在をツガイのようなふたつでひとつの存在と見なしているため、「解」「封」を2人で授かるのだと推測しています。
一度死ぬことで「解」を手に入れたアサ。ユルには「封」を手に入れる資格があるわけですが、ここで注目すべきは千年単位で生きている左右様でさえ「解」と「封」を両方手に入れた例を知らないという点です。
400年前の運命の双子の場合は同時に殺されて「解」の方であるあさひだけが生き返り、「封」の方である夜太郎はそのまま亡くなってしまいました。
アサの証言から考えると、夜太郎が「封」を受け入れずに死ぬ事を選んだ可能性ももちろんあります。しかし、世のあらゆるものを解く力と世のあらゆるものを封じる力というふたつの力が同時に存在した場合、大きな矛盾が生じることになります。
そのため、ふたつの力は同時に存在することはできないという可能性も十分考えられるのではないでしょうか。
そうなると、アサが「解」を手に入れている時点でユルは殺されてしまえばそのまま死んでしまうことになります。あさひと夜太郎も、あさひが先に「解」と契約したため夜太郎は選択権を失い、死んでしまった……そのようにも考えられますよね。
ちなみに、「封」の力を持つ者の話は左右様が手長足長と戦う第13話で少し出てきますが、そのときに「解」の力を持つ者がいたのかは不明。「封」の力も、ミナセたちのようにその力の一部を持つ者であった可能性もあります。
もし本当にふたつの力が同時に存在できないのであれば、ダムの底に沈んでいるという西ノ村の解放は不可能となる場合も。また、このことを事実として知っている者がいたり、この可能性に思い至る者がいたりした際には、ユルとアサの行動にも大きく影響してきそうです。
例えば、絶望的な状況でユルを人質にされてしまったアサが、兄が「封」を手に入れて状況を打開することに懸けて自ら命を絶つ……そんな悲惨な未来も簡単に想像できてしまいます。……なんだか『鋼の錬金術師』のラストを彷彿とさせられますね……。
ファンとしては、アサとユルがそれぞれ「解」と「封」の力を得て、敵を圧倒する格好良い姿が観たいのですが……まずは「解」と「封」が同時に存在できるのか否かが問題となりそうです。
「解」と「封」の力が同時に存在することが可能であっても、ユルが「封」の力を得るために障害となる可能性があるのが左右様、特に左の存在です。
「解」と「封」の力を制御するためのツガイである左右様は、それぞれ「解」と「封」の天敵であり、右は「解」の、左は「封」の力を相殺することができます。
1人の人間が複数のツガイと契約する際に重要となるのがツガイ同士の相性ですが、その点でいうと「封」と左は最悪のはず。左右様の主であるためにユルが「封」と契約できない可能性は否定できません。このことは第20話で与謝野イワンも指摘しています。
とはいえ、「解」「封」は普通のツガイとはかなり違う点も多いので、契約できてしまう場合もあるでしょう。そうなったときに懸念されるのが、ユルの「封」を誰にも止められなくなってしまうこと。
ユルはガチハンターメンタルと言われながらも非常に理性的な人物なので、余程の事がない限り、みだりに力を使ったり暴走したりということはなさそうですが、それでも両親やアサが関わった場合に限ってはそうならないとは言い切れません。
左右様との契約を促したデラはおそらくこのことを知っていただろうと思われますが、東村を襲撃してきたアサと上空のヘリに挟み撃ちになっているあの状況では、デラ本人が契約のために石像の影から身を乗り出した瞬間に撃たれてしまっていたでしょう。
あの場ではユルが契約する他に状況を打開する手段がなかったため、デラにとっても苦肉の策だったと思われます。
仕方がなかったとはいえ、運命の双子であるユルが契約してしまった左右様。このことが波乱の元にならなければいいのですが……。
私がずっと疑問に思っている点のひとつに、ユルに両親とアサが逃げ出した時の記憶がないことが挙げられます。
両親に連れ出されて逃げ出したアサにはしっかりと記憶が残っているにもかかわらず、ユルはアサから話を聞くまでその時のことを全く知りませんでした。
両親はユルとアサ2人ともを連れて逃げるつもりだったのなら、ユルにもそのように働きかけていたはず。ユルには3人が村を出る少し前、自身が山賊に襲われた時の記憶は鮮明に残っていますし、村からの脱出を図る両親はきっとただならぬ雰囲気でしょう。それなのに、その時のことが記憶に残っていないのは奇妙です。
私が可能性として考えているのは2つ。ひとつは、ヤマハが結界で封じる力を使ってユルだけを隠していたということ。任意の地域を結界で隔離できるなら、ユルの周りだけというごく狭い範囲だけを隠すということもできそうです。
そうやってユルを隔離している間に、ザシキワラシのキリをアサに見立てて座敷牢に入れることで、本物のアサとのすり替えにも成功したのではないでしょうか。
もうひとつは、ユルの記憶が何者かによって封じられている可能性です。ヤマハのように「封」の力の一部として、記憶を封じられる者がおり、その者が両親たちが逃げた時の記憶を封じている可能性も考えられます。
いずれにせよ、両親とアサが逃げた時の記憶がユルに一切ないのには、「解」と「封」の力が関わっているのではないかと考察しています。
今年3月に掲載された第51話でアサが、東村を出てからの両親との逃避行の詳細をユルに語っているのですが、そこでデラの父・ロウエイがアサの母・ナギサに下界への抜け道を教えるに至った経緯を話しています。
ところが、第28話ではユルがアサに対し「十年前東村を出た時に結界の抜け道を母様に教えたのはロウエイさんらしい」と教えており、それに対してアサは「何それ!?母様も父様もそんなこと言ってなかったよ!?」と全く知らない様子を見せていました。
それから第51話まで一通り目を通してみたのですが、アサがロウエイと接触している描写はなく、ロウエイから話を聞いたとは思えません。
ロウエイがデラに話し、アサはデラから伝え聞いたということも考えられるのですが、そのような描写も今のところなし。
そもそもアサの言い方は母から直接聞いたような口ぶりであるため、ここに矛盾が生じているように感じられるのです。この矛盾が先々どのように物語に影響してくるのか、注目しています。
最後に、多くの読者が気になっているであろうガブちゃんの過去についても考えてみたいと思います。
アサと同じように血縁者ではないながら影森家に身を寄せているガブちゃん。第3話での「痛いのは慣れてる」、第30話での「自分の居場所を壊そうとする奴は親であってもぶっ殺す」という発言や居場所のないアサへの強い思い入れなどから彼女が暗い過去を背負っていることは察することができます。
私が想像しているのは、親から虐待を受けていたところを何らかの事情で影森ゴンゾウに保護されたという経緯。
影森グループは乳児院や養護施設も運営しているそうなので、そこでの縁かもしれませんが、影森家以外に居場所がない様子から彼女の親がツガイ使いである可能性も考えられます。
ガブちゃんの両親については、今後のストーリーにも関わってくることを予想していますが、最新52話で存在が示唆された国家機関が抱えるツガイ使いと関わりがあると面白いなと思っています。
今でも十分魅力的なキャラですが、その過去が明かされたとき、より一層彼女のことが好きになりそうです。
作中の大きな謎をメインに取り上げて考察してみましたが、細かな部分まで挙げれば気になる点はまだまだたくさんあります。
直近では最新第52話の影森家専属医・桜沢の表情がなんだか意味深長な雰囲気をまとっており、彼女も何か秘めたものがあるのではと気になっているところです。
ユルとアサの2人は、両親がいるという沖縄の地へ向かって船旅の真っ最中。国家機関の存在もほのめかされており、物語の展開はどれだけ考察してもしきれません。ユルとアサの運命は一体どうなっていくのか、注目です!

1990年生まれ、福岡県出身。小学生の頃『シャーマンキング』でオタクになり、以降『鋼の錬金術師』『今日からマ王!』『おおきく振りかぶって』などの作品と共に青春時代を過ごす。結婚・出産を機にライターとなり、現在はアプリゲーム『アイドリッシュセブン』を中心に様々な作品を楽しみつつ、面白い記事とは……?を考える日々。BUMP OF CHICKENとUNISON SQUARE GARDENの熱烈なファン。
