
まっすぐさが、決して押しつけがましくなくて。“嫌らしさのないまっすぐさ”というのが、ジンランの大きな魅力だと思います──TVアニメ『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』張景嵐役・河瀬茉希さんインタビュー【連載第6回】
「『この子、全部知っているんじゃないか』と思わせるというか……」
──キャラクターとしてのジンランの魅力については、どのように感じていますか?
河瀬:やっぱり一番は“まっすぐさ”だと思います。誰に対しても距離感を変えずに接することができるし……なんて言うんだろうな、いい意味で遠慮しないでいてくれるところが魅力だなと感じています。気づけば「やってみようかな」「飲んじゃおうかな」とか、そういう気持ちにさせてくれる。そのまっすぐさが、決して押しつけがましくなくて。“嫌らしさのないまっすぐさ”というのが、ジンランの大きな魅力だと思います。言葉がキツくも聞こえないですし。
──ジンラン自身がまわりの人たちのことをよく見ているからなのかなと。
河瀬:たしかに。「ああ、察し」みたいな顔をよくしますよね(笑)。言葉がネイティブでない分、表情やちょっとした仕草から「今こういう気持ちなのかな」と汲み取っているような瞬間が多いように思います。言葉以外の部分で相手を理解しようとしているのかもしれないなと感じました。
──そんなジンランが初登場となった第6話。お気に入りのシーンはありますか?
河瀬:やっぱりジンランが泣いてしまうシーンですね。あそこのAパートだけで、この子のいろんな面が一気に見えてくるなと思っていて。いぶきからは少しクールな子に見えている部分もあると思うんですけど、実はふと涙を見せたり、ぼたんの手を自然に取ったりと、すごくナチュラルでまっすぐな子なんだと伝わる場面でした。
Aパートは本当にドキドキしながら演じていました。いろいろな要素が詰まっているシーンなので、感情に引っ張られすぎてリズムが崩れないように、そこは意識していましたね。「この店のビール、種類多い。選び方、どうしてますか?」といったセリフはオーディションでもやらせていただいたので、個人的にも印象深いシーンです。
また、「美味しそうに飲みますね」と言うシーンも好きですね。いぶきがお酒を飲んだ姿を見るときの、あの表情がすごく印象的で。「この子、全部知っているんじゃないか」と思わせるというか……。
──ぼたんが「ああ、やっぱりこのひとは……」となるシーンですね。実際になにを思ったか、それ以上は語られてはいませんが……。
河瀬:色々な感情が読み取れるような表情ですよね。純粋にジンランの前で飲んでくれている嬉しさもあるのかもしれないですし「いぶきはお酒が好きなんだな」と思ったのかもしれない……本当にたくさんの意味が込められているように感じて。ああいう細やかな表現がすごく魅力的だなと思います。
──ジンランは遠くを見ている瞬間もありますよね。作品として、目線のやり取りが印象的だなと。
河瀬:本当にそう思います。彼女たちは“目で語っている”シーンがすごく多くて。瞳の描き方も感情によってかなり変わっているように感じています。言葉が少ない分、視線や表情で伝える部分がすごく大きい作品だなと思いますし、それがこの作品ならではの魅力になっているんだと思います。
──原作に登場するお酒で、気になったものはありましたか?
河瀬:実在のものを扱っているからこそ、読み方やイントネーションも含めて確認しながら進めたものがあって、それも印象に残っています。中でも印象深かったのは「紅熊X」です。「どんな味なんだろう」とすごく気になりました。
あと、アブサンも印象に残っています。独特なお酒だとは聞くんですけど、どんな味なのか純粋に興味が湧きました。作中での描かれ方も含めて、飲んでみたいなと思いましたね。
──河瀬さんご自身は普段はあまり飲まないというお話がありましたが、飲む時はどのようなお酒を?
河瀬:わりと何でも試してみるタイプなんですけど、やっぱりフルーツ系のものは好きですね。チューハイもフルーツ味を選びがちですし、料理との合わせ方をそこまで気にしなくていいなら、ワインも選ぶことが多いかもしれません。甘めで飲みやすいものに惹かれます。まだ自分の中では“飲みやすさ”が優先にはなるんですけど、せっかくこういった作品に関わらせていただいたので、もっといろいろ知りたいなと思っています。憧れとしては、日本酒に詳しくなれたら素敵ですよね(笑)。
──作品を通して、新たなお酒との出会いも?
河瀬:ありました。本当にひとつのきっかけになったと思います。それこそ寿さんが、作中に出てきた宇宙ビール(うちゅうブルーイング)をみんなの分まで買ってきてくださって! 家で初めて飲んだんですけど、すごくフルーティーでした。「これがビールなんだ!」と驚くくらい飲みやすかったです。この作品を通して、お酒って本当にいろいろな楽しみ方があるんだなと感じましたし、表現の幅もすごく広いんだなと思いましたね。
「リラックスできる環境で見ていただきたい」
──ぼたん役の鈴代紗弓さんが「河瀬さんが演じられたことで、ジンランちゃんのかわいさが限界突破しています」といったお話をしていました。
河瀬:もしかして事務所内の先輩後輩の圧力を感じているのか!?(笑)
でも嬉しいですね。鈴代ちゃんは、ある意味“魔性の人”だなと(笑)。彼女自身も“良い人”という言葉で片付けるには足りないくらい、本当に周りへの気配りが行き届いていて、誰もが心を許してしまうような存在なんです。今回も全員とコミュニケーションを取ろうとしてくれていて。
座長という立場もあって気にかけてくれていたのかもしれませんが、誰のことも受け入れてくれるような包容力があって。輪の中心にいながら、本人はあまり前に出ようとしないんです。「みんなが楽しんでくれたら嬉しいです!」というスタンスでいるんですよ。「上座に座って『わはは』ってやってくれよ!」って思わず言いたくなってしまうくらい(笑)、控えめで。
でもそういうところが、ぼたんの人柄とも重なる部分があるなと感じています。みんなが自然と仲良くなっていく空気を作ってくれる、あの感じはすごく似ているなと思いました。
──そんな鈴代さんですが、“推しキャラクター”として郡上先輩の名前を挙げられていました。郡上先輩はジンランにとっても大切なキャラクターですね。
河瀬:(寿)美菜子さんとしっかり掛け合いをさせていただくのは今回が初めてだったのですが、本当に一言一言が“郡上先輩の口から出てきた言葉”に聞こえるんです。技術や経験値もあると思うのですが、まるで声と作品が融け合っていくような感覚で……。実際にその場で聞こえてくる声のように感じられるんですよね。
郡上先輩って、いぶきに対して照れたり慌てたりする可愛らしい一面もあれば、ふと遠くを見つめるような静かな瞬間もあって。そのトーンの切り替えがすごく自然で、まったく違和感がないんです。
収録ではマイクに向かって横並びで話しているはずなのに、気づいたらお店で向かい合って会話しているような距離感になっているといいますか。お店の広さや周囲の空気感まで想像できるようなお芝居で、本当にすごいなと感じました。お芝居というより“会話”をしてくださっているような温度感があって、すごく心地良かったですし、勉強にもなりました。
──作品全体の魅力について、あらためて教えてください。
河瀬:第6話でいうと、まずジンランのキャリーケースを引く音がすごく印象的でした。砂石のタイルの上を転がる音の細かさに「すごい」と思っていたら、ジンランの特徴的なピアスの音まで入っていて。その場の静けさや空気感が、音だけで伝わってくるんですよね。ほぼ実在のようなこだわりというか……。
実際にある場所を丁寧に描くこだわりについては、ソワネさん前作の『mono』のときから感じていたのですが、その現実の風景を『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』という世界観に落とし込むことで、独特の色や空気になっているのもすごく印象的でした。
それとセリフを言っているときに、キャラクターの顔ではなく背景が映ることが多いんです。だからこそ、「このときこの子はどんな表情でこのセリフを言っているんだろう」と、いくらでも想像できる余白があって。
加えて、間(ま)を大事にしている作品でもあるので、気づけばその空気に没入してしまうんですよね。コミカルな日常パートも楽しいし、関係値が深まっていくふたりのパートはゆったりとした流れですが、ゆっくりにも、速くも感じるんです。30分とは思えないような感覚で、独特な時空に巻き込まれるような感じというか(笑)。中々ない描き方をしているなと、アフレコの段階から感じていました。これからもあんなシーンやこんなシーンが出てくるので、どんな表現になっていくのか私自身も楽しみです。
──実際に映像を見させてもらっている中で、この作品特有の時間の流れがあるように感じました。
河瀬:本当にそうなんです。セリフは多くないのに、ふたりの距離が縮まったことが、音や絵、空間だけでしっかり伝わってくる。それがすごく印象的でした。
──それでは最後に、今後も本作を嗜む方へメッセージをお願いします。
河瀬:やっとジンランも登場して、これからさらに関係性がどう変わっていくのか、楽しみにしていただけたら嬉しいです。流れている空気や音、雰囲気など、どの要素をとってもすごく丁寧に作られているので、彼女たちの距離感やコミュニケーションの変化を、ゆったりと味わいながら見守っていただけたらと思いますし、もし2周目、3周目と見ていただけるのであれば、作品に登場したお酒を実際に探してみるのも面白いと思います。ぜひ最後まで、お酒とともに楽しんでください。
【文:逆井マリ インタビュー:西澤駿太郎】
連載インタビューバックナンバー
『上伊那ぼたん、酔える姿は百合の花』作品情報

Onair
TOKYO MX、BS11、とちぎテレビ、群馬テレビ、テレ玉 ほかにて
4月10日(金)24時より放送開始
Streaming
ABEMAにて4月10日(金)24時より地上波同時・最速配信
ほか各配信プラットフォームにて順次配信
キャスト
上伊那ぼたん:鈴代紗弓
砺波いぶき:青山吉能
郡上かなで:寿美菜子
遊佐あかね:天海由梨奈
北杜やえか:富田美憂
張景嵐:河瀬茉希
































