
優しいだけじゃない作品──「かなでの視点で観ると、ふとした一言が逆に胸に刺さるような瞬間も」TVアニメ『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』郡上かなで役・寿美菜子さんインタビュー【連載第3回】
塀先生による人気漫画を原作としたTVアニメ『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』が、2026年4月10日よりTOKYO MX・BS11ほかにて放送スタートとなりました。
本作は大学へ進学した上伊那ぼたんが、埼玉県秩父市の学生寮での生活を通して、“お酒”をきっかけに寮生たちとの距離を縮めていく物語。ゆっくりとほどけていく関係性の変化が色彩豊かに描かれています。
アニメイトタイムズでは『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』のキャストインタビューを連載形式でお届け中です。第3回には、郡上かなで役・寿美菜子さんが登場。作品への印象やキャラクターの魅力に加え、“お酒”をきっかけに生まれる人と人との距離感や、現場で感じた空気についても語っていただきました。
考えられる隙間や余白がたくさんある作品
──まずは原作を読まれたときの印象を教えてください。
郡上かなで役・寿美菜子さん(以下、寿):まず作品全体の、なんとも言えない軽やかさに引き込まれました。セリフの“行間”……すべてを言葉にしているわけではないのに、空気や表情、目線から読み取らせる部分がすごく多い印象で。その分、読者に委ねられている感覚があって、まんまと塀先生の策略に引き込まれていったというか(笑)。「ということはこう感じたのかな」「こうかもしれない」と、自分の中で補いながらどんどん没入していきました。
それでいて全体が重くなりすぎないところもすごく良くて。女子同士のあるあるや関係性も描かれているんですよね。
私は大学生活を経験していないのですが「今の大学生ってこれくらい軽やかな距離感でコミュニケーションを取るのかな」と、ある種の憧れというか、知らない世界に出会えた感覚もありました。
──最初のテープオーディションでは別の役をご提案されていたそうですが、原作を読み進める中でかなでに惹かれ、追加でオーディションを受けられたと拝見しました。かなでのどのようなところに心を動かされたのでしょうか?
寿:もともとは事務所内で「あかねを受けたらどう?」という提案があって、最初はあかねを受けるつもりでいたのですが、読んでいくうちに段々かなでに目がいくようになりました。
大学院生という周りより少しお姉さん的なポジションにいるところに、自分自身の今の年齢や立ち位置とも重なる部分があったんです。最近は大学生役を演じる機会も多くなかったですし、むしろお母さん役のオーディションを受けるようになってきて、等身大に近づいてきていました。だから「大学生役を受けていいんだ」という嬉しさもありつつ、作品の中で自分が入るならかなでかもしれない、という感覚がありました。
漫画を読んでいる中で、かなでの言っていることもすごく共感できて。「こんな声のイメージかもしれない」と自然に思えたので「かなでも受けていいですか」とお願いして、結果的に二役受けさせていただきました。かなでのスタジオオーディションに呼んでいただいたのですが、そこでは特に何も言われずに終わって(笑)。
──サラリと終わったのですか?
寿:はい(笑)。だから正直手応えはわからなくて。テープのときから大きく変えたこともなく、自分の中で固まっていたイメージの延長で臨みました。結果的に、そのイメージがスタッフの皆さんとも一致していたのかなと思います。
──ナチュラルに役に入っていった感覚だったのですね。
寿:そうですね。かなでが一歩引いたポジションにいるところも、自分とすごく重なっていて。普段から、大人数の中では自分が前に出るというよりも、少し引いて全体を見るタイプなんです。「みんな、こんな感じでくるんだ。面白いね!」と見守りたい人というか。そこがかなでとシンクロした部分でした。なので無理に作るというよりは、自然にかなでに向き合えた感覚がありました。
──上伊那ぼたん役の鈴代紗弓さんも作品の余白の魅力を語られていました。
寿:アニメでもそういった余白を表現するという、スタッフの皆さんのこだわりを強く感じました。声優としては「ここ、声を入れなくて大丈夫ですか?」「息遣いとか入れますか?」と少し不安になるところもあったくらい(笑)。
息の音も含めて、できるだけ“足さない方向”で作られているんです。だからこそ、最初に感じた軽やかさや身軽さがそのまま届く。足し算をするのではなく、極限までシンプルにした上で成立しているからこそ、しっかり届くものがある。そんな印象でした。
あと、読むタイミングや見るタイミングによっても、刺さるポイントが変わる作品だと思うんです。ある時には「このセリフ、すごく刺さるな」と思うし、また別の時には「この間(ま)がすごくいいな」と感じたり、逆に「この間、気まずいな」と思ったりもするかもしれない。色々な感じ方ができるような、考えられる隙間や余白がたくさんある作品だと思います。
──贅沢な余白がたくさんあるというのは、ある意味今どき珍しい作品ですよね。
寿:本当にそう思います。お芝居も、ほとんどメインの6人で回していくじゃないですか。もちろんゲストの方はいらっしゃいますが、そのゲストの皆さんも「このために来てくださったんですか?」と思うような豪華な方ばかりで。それでも、軸はぶれずに6人の物語をずっと描いていく。その潔さがすごいなと思っています。


































