
「たしかに自分がこれまでに見聞きしてきたものと共通する要素」を「素直に出したらどうなるんだろう」──『春夏秋冬代行者 春の舞』音楽・牛尾憲輔さんのオフィシャルインタビューを独占公開!
2026年3月より放送中のTVアニメ『春夏秋冬代行者 春の舞』。春だけが消え去った国を舞台に描かれる、四季をもたらす現人神とその護衛官の「喪失と再起の物語」に注目が集まっています。
このたび、本作の音楽を担当する牛尾憲輔さんのオフィシャルインタビューが到着。アニメイトタイムズ独占で公開いたします。
「ファンタジー」という作品ジャンルを前に「『挑戦したい』という気持ちが強かったかも」と語る牛尾さん。本作を彩る滋味深い一節は、どのように産み出されていったのでしょうか。
「今回はむしろ思い浮かんだイメージに素直に作った感覚が強い」
──まずは、参加の経緯を伺えますか?
音楽・牛尾憲輔さん(以下、牛尾):音楽プロデューサーの山内(真治)さんから、最初にお話をいただいたと思います。山内さんとは古くからの知り合いで、これまでもよく「一緒にやりませんか?」と声をかけていただいていたんです。でもスケジュールが合わなかったりして、なかなかご一緒できなかったんですね。あとじつは、監督の山本(健)さんが携わられた別の企画でも以前、お誘いいただいたことがあって。「いつかご一緒したいな」と思っていた人たちから声をかけていただいたことが、ひとつハードルを下げてくれたところはありました。
──原作は電撃文庫から発売されているファンタジー小説ですが、牛尾さんがこれまで手がけてこられた作品とは、少し毛色が変わったジャンルになりますね。
牛尾:そういう意味では「挑戦したい」という気持ちが強かったかもしれません。たしかに原作は、これまでやったことがないジャンルではあるんです。とはいえ自分が10代だった頃には、こうしたファンタジー作品を読者としていっぱい受け取ってきたわけで、まったくわからないわけでもない。『春夏秋冬代行者』のなかには、たしかに自分がこれまでに見聞きしてきたものと共通する要素があって、それを素直に出したらどうなるんだろう、というのはありました。
──そう考えると、牛尾さんのこれまでの仕事のなかでは、わりと『ブギーポップは笑わない』が近いのかもしれないですね。
牛尾:そうですね。『ブギーポップは笑わない』はまさに、僕自身が10代のときに影響を受けた作品ですけど、今の10代の人たちがそういうふうに受け止めている作品がある。ただ、その音楽を自分が書くチャンスはたぶんないだろう、と。そう思っていた僕の背中を、山内さんや山本さんが押してくれた、というか。あと──これは後から聞いたことなんですが、音響監督の木村絵理子さんを初めとするお馴染みのチームが、音響を担当していて。
──木村さんとは『ピンポン』以来、たびたび仕事をご一緒されてますね。
牛尾:なので、作品の新規性以外の部分では、スタッフがみなさん、知っている人たちばかりだったのは大きいと思いますし、無駄な戸惑いなく、音楽制作に取り組めたかなと思います。
──なるほど。牛尾さんは毎回、実制作に入る前にコンセプトワークをされているそうですが、今回も同じような感じで制作に入られたんでしょうか。
牛尾:そうですね。ただ、今回は今話したように、自分が10代だった頃──90年代に見聞きしたものの影響を素直に出す、それをコンセプトにしようと思っていて。だから、難しいことはあまり考えていないんです。もちろん、劇中、春のシーンだったら桜の花びらが舞うだろう。であれば、音符の並びをどう組み合わせて、その「舞い散る花」を表現しようか、とか。そういう細かい技術論はいっぱいあるんです。でも今回はむしろ思い浮かんだイメージに素直に作った感覚が強いですね。最初にしっかりとコンセプトを固めて、そこから演繹(えんえき)的に個別の楽曲を作っていくのではなくて、むしろ帰納的に作っていったといった方がいいかもしれません。
──帰納的ですか?
牛尾:それこそ、いただいたキャラクターデザインを見てイメージを膨らませたり、あとは日本っぽいモチーフのメロディや楽器を使いつつ、ど真ん中の「和風」にするのではなくて、エレクトロニカとかテクノっぽいアレンジだったりSFっぽい音色を加えて、ちょっと変えていく。そういうふうにして、まず最初のイメージアルバムを作ってみたら、なんとなく全体のイメージが固まってきた、というか。まず曲をバーっと作ってみて、そこから帰納的にコンセプトを作っていく、みたいなイメージだったと思います。
──その、最初に作った曲のひとつが「Hinagiku - theme from "Agents of the Four Seasons Dance of Spring"」ですか?
牛尾:そうです。これはピアノをポロポロと弾いているうちに、すぐにメロディが出てきて。だから、めちゃくちゃ考えまくったというよりは、素直に自分のなかから出てきたものですね。『春夏秋冬代行者』という作品が持っている力に、背中を押されたというか。あと「Hinagiku and Sakura」「montage」あたりも最初のイメージアルバムを作ったときの曲で、ちょっとグリッチっぽくなってたり、エレクトロニカっぽいアレンジを加えていて。改めて振り返ってみると、自分がやりたいと思っていたロマンティックなメロディと、エレクトロニカ的なアレンジを組み合わせて、どういう世界観が見えてくるか試していたんだと思います。
──山本監督とは、劇伴についてどういうやり取りがあったんでしょうか?
牛尾:結構、お任せいただいたと思います。最初に「こういう感じにしたいです」と曲を持っていったんですけど、それに対して「ぜひいろいろやってみてください」と、包容力を持って対応していただきました。「四季の歌」もそうですね。最初に「春の歌」を作ったんですけど、打ち合わせの席で開口一番、「OKです」と(笑)。
──もう言うことがない(笑)。今、話題に上った「四季の歌」についてもお伺いしたいんですが、完成した曲は和楽器っぽいリズムと歌だけ、というシンプルな構成になっていますね。
牛尾:途中で一度、「楽器を足した方がいいですか?」と聞いたんですけど、「いや、必要ないです」と(笑)。僕は普段、ほとんど歌モノを作らないので、めちゃくちゃ苦労しましたね。歌詞自体は原作の中に出てくるものなので、まずはそれを読んで──「冬の歌」だったら、歌詞のなかに「秋を殺して春に死ね」なんて一節が出てくるし、そもそも歌うのが男性だからちょっとロートーンでやろう、とか。「春の歌」に関しては、わりとすぐにメロディが浮かんだんですけど、それ以外の3曲はわりと「もうできないよー!」って枕に叫んだり、スタジオ中をうろうろしながら苦しんで作りました(笑)。
──今の話と関連するかもしれないんですが、「Hinagiku and Sakuraではコーラスが使われていますよね。
牛尾:そうですね。いわゆる教会で歌われるクワイアではないんだけど、荘厳に響く歌声みたいなことを表現したいな、と。クワイアにしてしまうとそれこそキリスト教圏的な神様像になっちゃうんだけど、でもど真ん中の和風でやると今度は原作の世界観と違ってしまう。なので、最終的にはケルト音楽っぽい方向でまとめた気がします。
──それこそ超越的なものを音で描き出すにあたって、ああいうコーラスが要請されたわけですね。
牛尾:それはたしかにありますね。基本的にはロマンティックなメロディを前面に出した作りになっているんですけど、でもその一方で超常的な要素も必要だと思っていて。それが今、話題に出たコーラスだったり、太鼓や鈴の音に出てるんだろうと思いますね。
──では、オンエアを楽しんでいるファンの方たちに向けてメッセージをお願いします。
牛尾:完成した映像を拝見して、僕がこれまでやったことのない作品だな、と改めて思いました。最初にお話ししたことですが、いわゆる現代的なライトノベルを原作にした作品に関わるのはこの『春夏秋冬代行者』が初めてで、それがこれだけクオリティ高く制作されたこと自体、とても嬉しかったですし、なにより音響監督の木村さんと選曲の合田(麻衣子)さんの仕事が素晴らしいんです。例えば、「Hinagiku - theme from "Agents of the Four Seasons Dance of Spring"」には曲の途中で休符を挟む場所があるんですが、このアイデア自体は山本監督との話し合いで出てきた話題がヒントになっているものなんです。
──第1話だと、クライマックスの雛菊が舞を踊った後の場面で使われています。
牛尾:そうですね。薺が涙を流すシーンで使われているんですが、合田さんが上手く曲のタイミングとカットをリンクさせてくれて──たぶんちょっとエディット(編集)もしてると思うんですけど、薺とさくらのセリフを受けて、ちょっと音が止まった後で、再び曲が始まったりする。休符の扱いが本当に上手くて、あそこまで美味しく調理してもらえたのは、やっぱり合田さんだからこそだと思います。実際、サウンドトラックと聞き比べていただければ、聴こえ方が全然違うのがわかると思いますし、マニアックなことに興味がある方は合田さんのお名前をチェックするべき! と断言しておきます(笑)。
『春夏秋冬代行者 春の舞』作品情報
あらすじ
彼らは四季の神々から与えられた特別な力を使い、各地に季節を巡らせている。
しかし春の代行者・花葉雛菊が行方不明になってから十年間、この国の季節は春だけが消え去ったまま。
春の護衛官・姫鷹さくらは十年間、主を必死に探し続けていたが、
ある日突然雛菊が帰ってきたことで物語は動き出す。
雛菊とさくらの、春を届ける旅が始まる。
——不条理に奪われた大切な時間を取り戻すため。
——恋い焦がれ続けたあの人に想いを伝えるため。
——命に代えても守りたい "あなた" のため。
これは四季をもたらす現人神とその護衛官の、喪失と再起の物語。
何度傷ついても、それでも生きると願うあなたへ贈る、祈りの物語。
キャスト
(C)暁佳奈・スオウ/ストレートエッジ・KADOKAWA/春夏秋冬代行社

























