
『天幕のジャードゥーガル』山田尚子総監督インタビュー|“考えること”を取り戻すアニメーション。作品に宿る、歴史・文化・生活へのまなざし
2026年7月4日より放送開始となるTVアニメ『天幕のジャードゥーガル』。トマトスープ先生による人気漫画作品を原作に、監督をAbel Gongora(アベル・ゴンゴラ)さん、総監督を山田尚子さんが務める注目作です。
アニメイトタイムズでは、総監督・山田尚子さんにインタビューを実施。モンゴルでのロケハンを通して感じた自然の脅威や、人々の生活と思想の結びつきなどについて語っていただきました。
さらに、Abel監督との制作エピソードや、シタラという「揺らぎ」を持った主人公の魅力、原作者・トマトスープ先生とのやり取りについても。知らないものを知る楽しさや、人や文化について考え続ける知性――『天幕のジャードゥーガル』という作品が持つ、「知ること」「考えること」の面白さについて、じっくりとお話を伺いました。
自然・思想・生活を肌で感じる
──今回の『天幕のジャードゥーガル』のアニメーション企画が、どのようにスタートし、進行していったのかというところからお聞かせください。
山田尚子総監督(以下、山田):サイエンスSARUで『天幕のジャードゥーガル』を作る、というお話をまず聞きました。しかも「Abel(アベル)さんが監督するかも」と。「なんて楽しそう企画なんだろう!」と思いまして、「何かやれることはないですか……?」という形で参加させていただきました。
──みなさんで舞台となるモンゴルへロケハンにも訪れていました。現地では強風にも見舞われたそうですね。
山田:そうですね。本当に死を覚悟しました(笑)。冗談っぽくなってしまいましたが、「自然って本当に恐ろしいんだな」って改めて感じる経験でした。
風が気持ちいいとか、星が綺麗とか、そういうレベルじゃなくて。星は降ってきそうなくらいで怖いし、風は身体が飛ばされてしまうくらい強い。自然の脅威みたいなものが、すごく身近にあるというか。
──日本の山地や自然とは、桁が違うような感じなのでしょうか?
山田:日本は日本で異なる自然の強さがあって、そこで暮らす方々にも尊敬を抱いています。山颪(やまおろし)などに耐えながらの生活があるわけですから。今回訪れたモンゴルもそうですが、何千年とそこで生活をされた方々の知恵はもちろん、自然と共に生活することをリスペクトしたいと思っていますし、比べられるものではありません。
──今回のロケハンでも、そういった知恵・生活を感じられましたか?
山田:現地の方にたくさんお話を聞かせていただく中で、その土地に根付いている感覚といいますか。太陽があって、空があって、大地があって、そこに畏れや敬いがあって、そういうところから直列的に、思想や考え方が生まれているのだなと思いました。真っ直ぐに、純度高く自然と向き合っていて、その中に信仰があって、生活がある。そういうものを、身をもって納得できたんです。
今回のロケハンを通して、人々が今まで積み上げてきた感性や感覚を、作品の中により染み込ませることができるんじゃないかと感じました。
腹を括って描かれた作品
──トマトスープ先生による原作にも、そういう土地や文化への視点が大切にされている印象があります。山田さんが最初に原作を読まれた時の印象や、特に強く惹かれた部分についてお聞かせください。
山田:絵がとても可愛らしくて、しなやかなんですよね。そこに大きな魅力があると思いました。でも、気が付けばものすごく恐ろしい話を描いている。
その魔法のような、不思議なバランスを持つ作品で、唯一無二だと思いました。最初の印象ではありますけど、歴史の大きなうねりを描いている作品の顔をしていないというか。そのギャップが面白くて、どんどん夢中になっていったという感じです。
──大きな物語と、各キャラクターの細かな視点が共存しているような。
山田:そうですね。史実を調べたり、キャラクターのモデルになった人物などの資料を読んでいく中で、トマトスープ先生が「どこを拾って」「どこを創作して」「どうやってこのキャラクターを作っていったのか」ということが、見えてきたんです。それが、本当にものすごい作業だということも、どんどん分かってきて。腹を括って描かれている作品と言いますか。
──作品に覚悟が宿っている。
山田:それ自体もすごいことですし、本作に触れていく中で歴史を学ぶことがどんどん楽しくなっていくんですよね。これまで全く知らなかったものへの架け橋になってくれるというか。興味がどんどん広がっていくし、深くなっていく。そこが本当に魅力的だなと思います。現在進行系でおもしろい作品です。

































