
その振り幅が醸すのは苦しく滲む、重くて尊いあの一瞬でした。『霧尾ファンクラブ』がかつて青春を過ごした一人のオタクに与えてくれた“考える時間”【作品レビュー】
泣いて、泣いて、その先に
おもしろおかしく展開される本作のギャグはたしかに魅力的だし、ぽんちゃん先生の絶妙なワードセンスやキャラクターたちの表情は、我々を心から笑わせてくれるエネルギーに満ちている。「パーカーのパーの部分」って本当になんなんだ。
しかしその裏では、ずっと何かが動いているような気がするのだ。第1話ラストの波の一言。「涙なめなめソング」の歌詞。極めつけは、霧尾のことが好きな藍美と波の間に、何やら嘘が重なっているらしい。そこはかとない不気味さを感じて仕方がない。
話が進んでいくにつれて、その不気味さはどんどんと表にまろび出てくる。霧尾が過去に“大事な人”を亡くしていること。彼が喪失に喘ぐ決定的な瞬間を藍美が目撃してしまっていること。藍美の願いは霧尾と「付き合いたい」などではなく霧尾の「笑顔を取り戻す」であること。波はそんな藍美と過ごす時間を大切にしたいと「思っちゃってる」こと。3秒に一回くすっと笑っているうちに、もっと大きな黒い何かが迫っているような感覚に襲われるのだ。
とはいえ2026年4月から3か月の放送となった本作は、最終回のグランドフィナーレを迎えている。だから少しだけのネタバレをする。
──最終回! 笑うよ!! みんな!!!!
大丈夫なのだ。泣いたままでは終わらない。三好藍美は色々とでっけぇ女なのだから。
だからといって、ここで私が『霧尾ファンクラブ』のすべてを明かすのは絶対に違う。幾重にもなった伏線と演出が物語に深みを増していく。本作には意味のない時間が一切ないのである。
ふと、名状しがたい大切な重みが懐かしくなって、わがままだった自分が押し寄せてくるときがあるだろう。そんなときはぜひ本作を見てほしい。『霧尾ファンクラブ』はいつか感じた胸の痛みを思い出させてくれる。忙しい日々を送っていたら、それは絶対に思い出せない痛みだ。
私は『霧尾ファンクラブ』から笑いと重みと、考える時間をもらった。一瞬立ち止まることができた毎週の30分が、どれほどの豊かさをもたらしてくれたかしれない。
さすが『霧尾ファンクラブ』。ありがとう『霧尾ファンクラブ』。最後まで何もかもをぶちかましてくれたから生まれたゆとりが、救われた命が、今を生きる確かな力が私の中にあるのだ。
皐月可愛いしさ。
【文:西澤駿太郎】
「霧尾ファンクラブ」インタビューバックナンバー
『霧尾ファンクラブ』作品情報

放送・配信情報
放送情報
■MBS/TBS系28局“スーパーアニメイズムTURBO”枠にて
2026年4月2日より毎週木曜深夜0:26〜全国同時放送
■AT-X
4月3日より毎週金曜日 22:30~
※リピート放送:毎週火曜日 10:30〜・毎週木曜日 16:30〜
配信情報
4月2日(木)25:00~
各配信サイトで順次配信開始
イントロダクション
拝啓 霧尾くん、あなたが好きです。
でも、知りませんでした。
人を好きになるのが、こんなにつらいなんて。
大好きだよ、霧尾くん。
霧尾くんとハンバーガー食べたい。
霧尾くんと相合傘したい。
霧尾くんとお皿割りまくりたい。
霧尾くんと身体中のほくろ探しの旅に出たい。
霧尾くんと出会った日を国民の祝日にしたい。
藍美と波、大好きな人の話をする、2人だけの大切な時間。
こんな日常が、いつまでも続くと思ってた。
一方通行な想いの連鎖は、私たちの日常を変えていく。
キャスト
三好藍美:稗田寧々
染谷波:若山詩音
霧尾賢:梶原岳人
満田充:広瀬裕也
桃瀬隼斗:小笠原仁
村岡皐月:伊藤彩沙
田代星羅:和泉風花





























