
『楽園追放 心のレゾナンス』11.13公開前リレーインタビュー連載 第2回:プロデューサー・野口光一【後編】|「その先の世界」と「CGアニメーションのアップデート」――10年越しの続編に込めた想い
大事なのは「人」。進化したソフトをどう使いこなすのか
──あれから10年以上経っているので、当然3DCGのソフトも進化しています。今制作をしていて、全てにおいてアップデートされている感覚はありますか?
野口:そうですね……クリエイターのみんなはしっかりアイデアを持っているんです。これまでは平均的な細い線だったけど、ここは少し太い線にしてみようかとか。グラデも作っているし、半透明をどうやってセル的な表現に近づけるかとか、光りものをどうするかとか。
あとアニメーションだけど、シルエットへのこだわりが前より細かくできるようになっているんですよね。セットアップという、いわゆるキャラクターに骨を入れる作業なんですけど、それがすごく細かくできるようになったので、動きをかなりコントロールできるようになったんです。それもいい感じに作れるようになってきているなとは思っています。
ただ、それらの作業にはアニメーターの技量が必要で、実際に作業量も増えてきているんです。でも、作画でもあれだけ線を描いているわけだから、CGでもこだわることはできるだろうと思っています。
──CGアニメーターも成長してきていて、それが表現の幅の広がりになっているということですね。表情や動きに、ケレン味みたいなものも出せるようになってきている感じもしますし。
野口:そこは、アニメーションスーパーバイザーの荻田直樹さんの力量が出る部分だと思っているんです。やはりそこも「人」なんですよね。「ここをこうしてください」と指示ができなければならないし、そういう人材が育ってきていると思うんです。今作では、そこを荻田さんが担っているんですけど、彼の明確な指示により、良いものが上がってきている実感はあります。
──荻田さんは、どんな方なのですか?
野口:彼はグラフィニカに所属していて、前作の『楽園追放』には携わっていないんですけど、『HELLO WORLD』(2019)で、3Dアニメーションディレクターをしているんです。今作では、アニメーションスーパーバイザーである彼の存在がすごく大きいし、彼のこだわりが強く出ているので、そこで底上げすることで、CGアニメーションの表現の幅は広がっていると思います。なのでやはり、上に引き上げるのも「人」なんですよね…。
──ソフトでできることが増えたといっても、それを使うのは人間、ということですね。
野口:そうですね。『楽園追放』のときは初めてだったこともあり、ディレクターを複数人体制でやっていましたけど、今回は荻田さんひとりでやってもらっています。
──今回のアニメーション制作は、東映アニメーションということになっていますが、以前、新チームNOISE(NOISE ANIMATION LABEL)として、スタッフ募集をしていましたよね?
野口:監督や虚淵さんなどのメインスタッフが集まって「やりましょう」という話になったときにスタジオを探し始めたんですけど、何社か当たってみたものの、予算やスケジュールのところで、あまり良い回答はもらえなかったんです。それならばと自社でやることになり、スケジュールも組み直したんですけど、特殊な作業になるので、専用のチームを作ったほうがいいということになったんです。
なので、ゼロから作る感じでした。『AKIRA』(1988)や「STEAM BOY」(2004)で、大友克洋さんのスペシャルチームがあったようですし、今敏さんの一連の作品も、マッドハウスにスペシャルチームがあったと聞いていますので、そういうイメージですね。
──少数精鋭のチームがあるんですね。
野口:バックアップは東映アニメーションがしてくれているので、マシンを揃え、ソフトも入れて、どんな体制にするのかも含めて考えていきました。
スタジオ作りの考え方としてはハブ・アンド・スポークの構造で、ハブとして20人くらいのチームが中心にあって、関連会社と連携してアニメーションを作っていくことにチャレンジしています。
──それは今後も残っていくものなのですか?
野口:それは考えています。ワンストップで全部作るというやり方もありますが、こういうやり方も今後必要になってくると思っているんです。小さい会社さんにも「アニメを作りたい」と思っている人はたくさんいると思いますし、忙しいときは大きくして、そうでないときは小さいままでいて、あまり抱えない。そんな考え方なので、次の作品もこのやり方でやっていこうとは思っています。
──『心のレゾナンス』を観るに当たって、踏まえておいたほうがいいことはありますか? やはり『楽園追放』は必ず観ておいたほうがいいのかなと思うのですが。
野口:『楽園追放』があって、今回の『心のレゾナンス』があるんですけど、私の中での立ち位置は、『ターミネーター』(1984)と『ターミネーター2』(1991)なんです。だから『心のレゾナンス』からでも観られますし、その技術力を観ていただきたいなと思っています。
『楽園追放』はインディーズ系ではあるので、『心のレゾナンス』を観て気になったら『楽園追放』を観るという流れでもいいと思いますし、それが狙いでもあるんです。
──『ターミネーター』と聞いて、みんながイメージするのは『ターミネーター2』ですからね。
野口:ちょっと例えが古いようだったら、『トップガン マーヴェリック』(2022)と『トップガン』(1986)の関係性みたいな(笑)。だから、『心のレゾナンス』で、女の子チームのキャラクターに興味を持ってから、『楽園追放』を観ても面白いし、すでに『楽園追放』を観ているのならば、『心のレゾナンス』はより楽しめるようになっていると思います。
──すごくわかりやすい例えだと思います(笑)。今作から観ても大丈夫ということですね。キャラクターといえば、声優陣のインタビュー動画も昨年から公開されています。。とても豪華なキャストが揃いましたね。
野口:そこも、よりパワーアップしなければいけないと思いましたし、経験のある方たちが揃ってくれました。
──『楽園追放』をリアルタイムで観ていたキャストが多かったようですね。
野口:それは私も驚きましたし、嬉しいことですね。『楽園追放』11thメモリアル上映会の舞台挨拶の時、虚淵さんがこの4人のキャラクターについて「問題児ばかりの愚連隊」という話をしていて、「ガブリエル(CV.佐倉綾音)は「五月病」、アルマ(CV.早見沙織)は「サボリ魔」、ダネル(CV.青山吉能)は「横領」、ラグエル(CV.天城サリー)は「出向」と表現していたんです(笑)。そのくらいキャラがはっきりしているので、キャスト陣のお芝居と共に楽しんでほしいし、チームとしてバラバラ過ぎるので、まとまらずに進んでいくような気がします。これでフォールンを見つけ出せるのかな?(笑)。
──では最後に、映画を楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。
野口:ここまで話した通り、アップデートされた『楽園追放 心のレゾナンス』を楽しんでいただきたいです。物語的なところだと、世界がどう変わっていったのかという部分ですが、今はAIの時代になってきているので、そこに通じるものもあるのではないかなと思います。
あと、映像と音にはすごくこだわっていて、良い環境で観ていただけたら嬉しいなと思っています。11月の公開をぜひ、楽しみにしていてください。
[文・塚越淳一]
作品情報
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楽園追放 心のレゾナンス
あらすじ
人類が肉体や地球を捨て、電脳世界ディーヴァで暮らすようになった西暦2400年。フロンティアセッターのハッキングを発端に、ディーヴァ捜査官アンジェラ バルザックの叛逆が起こる。事件時彼女にハッキングされ、地上に脱走した大勢の保安局のエージェントは、マテリアルボディと共に、パーソナルデータも収納するハードウェアを強奪。その姿・存在を地上に潜め、ディーヴァへの脅威と化した。
アンジェラにより、もたらされた”彼ら”の名は、
”フォールン”
ディーヴァからの捜索命令を受け、ガブリエル達エージェントは、フォールンの正体を追う。未だ地上に遺るナノハザードの影響を乗り超え、彼女達は、フォールン、そして、その謎に辿り着けるのか。
『楽園追放』の物語が、今、再び動き出す−。
キャスト
(C)東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ2




































