
【『禁書目録計画』祝メディアミックス20周年】「とある」シリーズの魅力って? 時代を先取りしてきた超大作を今だからこそ振り返ってみよう
鎌池和馬先生によるライトノベルシリーズ『とある魔術の禁書目録(インデックス)』。2004年から刊行が始まり、『とある科学の超電磁砲(レールガン)』など、多くのスピンオフ作品が生まれたことでも有名です。
そんなシリーズですが、今年(2026年)は、「メディアミックス企画」が立ち上がってから20年目! 幅広い展開を見せた本シリーズには、コミックス・アニメ・ゲーム等から惹かれていった方も多いことでしょう。
この「とある」シリーズ、“昨年(2025年)8月15日には、シリーズの最初となる『とある禁書目録』1巻に重版がかかり100刷を達成する”、など長期にわたってファンを増やし続けてるのがすごいのですよね。(今年2026年の秋には、『とある暗部の少女共棲(アイテム)』のアニメ放送も予定されています!)
とはいえ、やはり長いあゆみのシリーズです。キャラクターなど部分的には知っていても、全体のストーリーは知らないという方もいらっしゃるでしょう。ここでは、そんな方をどっぷり本編の沼に沈めるべく、本シリーズの内容を振り返りつつ、その魅力をピックアップしてみたい思います。
あらすじと世界観
まずは、シリーズ中のタイトルを整理しておきます。『とある』シリーズは作品内の時系列がしっかりしているのも面白いポイントなんです。
本編時系列順タイトル
作品内日付7月19日〜10月30日まで:『とある魔術の禁書目録(インデックス)』全24巻
作品内日付11月5日〜12月11日まで:『新約 とある魔術の禁書目録(インデックス)』全23巻
作品内日付12月24日〜:『創約 とある魔術の禁書目録(インデックス)』15巻まで発売中(2026.8現在)
その他、数々のスピンオフ作品があるわけですが、これらは本編と同じ時間・同じ世界でのお話となっています。ですから、両方を読むと、例えばですが「主人公が街角で偶然出会った人物は、出会う前にこんな行動をしていた」ということがわかるようになっています。読者は、主人公が知らない情報を知り、何か秘密を握ったようなどきどきした気持ちになるのですよね。
なお、公式ホームページには、日付入りの年表があります。
公式ホームページ/とあるプロジェクトポータル
鎌池和馬先生 『とある魔術の禁書目録』上条当麻たちの軌跡
大体で言うと、『とある科学の超電磁砲(レールガン)』の内容が、『とある魔術の禁書目録(インデックス)』(以下無印)の内容と並行して進んでいて、『とある科学の一方通行(アクセラレータ)』が、無印5巻から8巻の間で、作品内日付だと9月上旬の出来事となります。
あらすじと世界観
物語の舞台は、現代の街での学生生活がベースではあるのですが、その世界は超能力が科学によって解明された世界。学生が多く集められた、能力開発のための「学園都市」です。この街について、新約1巻では、以下のように説明されています。
「学園都市。東京西部の未開拓地を切り開いて作られた街。面積は東京都の三分の一ほどで、外周は高い壁で覆われている。人口はおよそ二三〇万人、その八割は学生である。ありとあらゆる科学技術を研究し、学問の最高峰とされるこの街には、もう一つの顔がある。人工的かつ科学的なプロセスを経て組み上げられた、超能力者養成期間である。」
主人公は、この街に住む高校生 上条当麻(かみじょうとうま)。彼が、魔術師に追われている「禁書目録(インデックス)」と名乗る少女を助けるところが、作品最初のエピソードとなっています。これをきっかけに、”科学と魔術が交差する”世界の深層に足を踏み入れた彼は、多くの者と関わり戦っていくことになるのです。
「学園都市」のモデル
街路にはお掃除ロボットが走り、常に正確な天気予報が表示されている「学園都市」。街のモデルは「東京都立川市の立川駅周辺」、自治体も公認です。
能力について
世界観の設定として大事なことがもうひとつ。それは、「能力(超能力)」です。少年少女たちは、この都市の学校に入るときに能力検査を受け、上を「レベル5」から無能力者「レベル0」にまで6段階にランク付けされます。そして、能力開発すなわちレベルアップを目指すのです。ちなみに主人公 上条当麻は、「レベル0」です。
『とある科学の超電磁砲(レールガン)』の主役 御坂美琴(みさかみこと)は、「レベル5」。『とある科学の一方通行(アクセラレータ)』の主役 一方通行(アクセラレータ、本名は未だ不明、本編で2人目の主人公とも言われる)は、「レベル5」で学園都市第1位です。
後に出てくる、浜面仕上(はまづらしあげ、本編3人目の主人公とも言われる)は「レベル0」です。
作品の魅力
ではあらためて、20年以上愛されるこのシリーズの魅力はどんなところにあるのでしょうか?
事件がひとつ解決しても世界の謎が深まる
物語冒頭の舞台は、先に述べたように「学園都市」なのですが、序盤から、「学園都市」の内部に巣食う闇が世界中につながっていることを匂わせます。
「学園都市」では、”魔術やオカルトの類、運といった目に見えないものは存在しないものとして、教育が行われています。それなのに、”その深部には魔術師がいる? 「科学」vs.「魔術」だと思ったら、「科学」=「魔術」!?” と、謎が謎を呼んでいきます。
この、事件がひとつ解決しても世界の謎は深まるばかり、という物語構造が、ファンを飽きさせるどころか、さらにディープにはまっていく魅力のひとつになっているかと思います。
考察が楽しい
謎の考察が、シリーズの沼にはまっていくきっかけになる本シリーズ。ここでは、よく考察されている謎の中から2つだけ、ご紹介しておきます。
謎1:上条当麻の右腕
「レベル0」の上条当麻ですが、危機になると右腕に何かが宿ります。「幻想殺し(イマジンブレイカー)」と「竜王の顎(ドラゴンストライク)」です。これは、超能力でも魔術でもない力とされているのですが、この力の正体については原作でも未だに解き明かされていません。
謎2:魔術
物語には、アレイスター・クロウリー※をはじめ、実在の人物をモデルにした人物が多く登場。史実を解像度高く生かしています。魔術というと、魔法と同一視してしまいふわっとしたイメージを抱きがちですが、実は学問として技術として体系化を目指したもの。実際、欧州では近代になって、キリスト教の裏で、錬金術や秘密結社、〈神智学〉※や神智学※が流行ったという歴史があります。
例えば、「黄金の夜明け団※」「薔薇十字団※」といった結社の名前、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。アンチキリスト教という点で、当時はタブー視されていましたが、現在の目から見ると全部が全部、犯罪集団というわけではありません。
※アレイスター・クロウリー
1875年10月12日〜1947年12月1日。イギリスのオカルティスト、詩人、著述家。聖書の矛盾を指摘し、自らが立ち上げた「セレマ(テレマ)宗教運動」を推進した。麻薬を使った魔術や性魔術、怪しげな儀式は、当時世間の物議をかもした。
※〈神智学〉
19世紀、ブラヴァツキー夫人ことヘレナ・P・ブラヴァツキーが唱導した心霊主義のこと。1875年に彼女とヘンリー・スティール・オルコットが創設した、神智学協会に端を発するとされる。後に、ルドルフ・シュタイナーの「人智学」など多くの分派や支流が生まれ、近現代の新宗教やニューエイジにも影響を与えているとされる。
※神智学
17世紀に立ち上がった「キリスト教神智学」のことで、聖典や啓示の解釈を通じて、神や世界の秘密を探ろうという学問の潮流。ヤーコプ・ベーメの著作を礎に、18世紀から19世紀初めにはエマヌエル・スヴェーデンボリら多くの思想家が生まれた。
※黄金の夜明け団
1888年にロンドンに設立された近代的な魔術結社。創設者は、ウィリアム・ロバート・ウッドマン、ウィリアム・ウィン・ウェストコット、マグレガー・メイザースの三人。中産階級からの人気を密かに集め、詩人イェイツなど、当時の芸術家たちの多くが参加していた。完全な形で運営されたのは12年ほどと言われており、内部分裂により消滅した。
※薔薇十時団
17世紀の初頭にドイツで誕生した友愛組織。誕生時に掲げられた宣言書では、15世紀にクリスチャン・ローゼンクロイツなる人物によって創設された秘密の組織であるとされている。キリスト教神秘主義、新プラトン主義、パラケルススの思想の影響を受けた組織だったとする見方がある。
優しく格好いい文章
主人公の上条当麻は、少女インデックスを助け、その後もさまざまな人を救っていきます。このように、「困っている人を必ず救う」物語は、今困難に泣いている読者に優しく寄り添うような文章です。(とはいえ、多くの者に頼られる上条当麻って何者なんでしょうか? 世界がひとりの少年に寄りかかる? その世界に上条当麻は入っている? と主人公の存在そのものが謎なんですよね)
また、鎌池先生の文章は格好いいのです! 例えば、創約15巻にはこうあります。
「そして『天使の力(テレズマ)』は物理世界に存在するあらゆる物体に封入もできる。呪符(タリスマン)、護符(アミュレット)、武器、装束、魔法陣、建造物……そして『人間』」
意味はよくわからずとも、「法の書※」を思わせるような格好いい文章ですよね。これは中二心に刺さります。いえいえ、いい大人になったって刺さります。また、中二心といば、漢字にカタカナルビ(例えば、禁書目録と書いてインデックスと読ませる)というのも、いいですよね。
※法の書
1904年、アレイスター・クロウリーによって書かれた「セレマ」の根本聖典。彼が、1904年4月8日から4月10日にかけて、エジプトのカイロにて、聖守護天使「エイワス」から下ろされたメッセージを筆記したもの。現在、様々な解釈がなされているが、概ねは、”キリスト教的倫理観を否定し、神から下された役目、自己の内なる意志に従え” という読み方になるであろう。
代表される文言に、「汝の意志することを行え、それが法の全てとなろう」。
時代が追いついてきたのでは
物語をさらに読み進めていくと、やがて超能力でもない魔術でもない力に出会います。それは、魔神、天使、悪魔、など人には及ばない大きな存在です。人は、実はこうした大きな存在の力で、日々の出来事が決められているのかもしれない? と考えると、作品を飛び越えて現実の世界にも当てはまるのでは? なんて思ったりします。
こうした見えない力は、20年前には完全にファンタジーだったと思います。でも、仮想現実や陰謀論が身近になった現在では、作品世界が現実感覚としても近く感じられるようになったような気がします。こういうのを、時代が追いついたというのでしょうか。
これからシリーズに入る方は、まずは、気になったスピンオフのアニメ作品からでも、のぞいてみてください。きっかけは、キャラクターが好み、でいいと思います。また、往年のファンの方は、9月に創約16巻が発売、秋のアニメと楽しみが続きますよ。
そして、何か謎が解けましたら、SNS等で発表して欲しいです。(YouTubeにも、「上条当麻=ハディート説」とか「御坂美琴=ヌイト説」とか、深い考察を見せている方がいらっしゃいますよね)夏休みの宿題がまだという方は、自由研究のテーマにいかがでしょう?



























