
上田麗奈さんがTVアニメ『MAO』第2クールエンディングテーマ「揺蕩う」で描く幽羅子の「一途な執着」――「キャラクターソングではなく、上田麗奈が幽羅子の気持ちを代弁」【インタビュー】
アニメのエンディングに流れて、ストレスなく聴けるかどうかを大事に選んだ「揺蕩う」
──歌の話にいく前に、アフレコを通して感じた『MAO』の魅力について教えていただきたいのですが。
上田:アフレコ前の顔合わせのときに、スタッフさんから伺っていた、「裏陰陽師ならではの陰湿さや仄暗さ」というのはすごく感じました。『犬夜叉』とかは、もっと光の世界な感じがあるんですけど、『MAO』は、高橋留美子先生の作品だと人魚シリーズのようなダークな世界観、というイメージが個人的にはありました。
他者への強い執着や恋などがビターに描かれているので、心が苦しくなるところがあるのですが、そこに(ヒロインの)黄葉菜花という少し安心できる存在がいることで、さらに心を揺さぶられるというか…。そのバランスが魅力だなと思いました。あとは謎が多いんですよね。「過去に何があったんだろう?」とか「呪いって解けるのかな?」とか、大きい謎も小さい謎もいっぱい散らばっているのが、ミステリー好きとして、旨みがありました(笑)。
──いろいろな要素を詰め込みつつ、キャラクターも魅力的に描けるのが、高橋留美子先生のすごさですよね。
上田:そうですね。あと、陰陽師の技とかもちょっとワクワクするんですよ。本当にいろんな要素が詰まっているんです。
──そんな『MAO』に合うようなエンディングテーマでしたが、「揺蕩う」は、どのように作っていったのでしょうか?
上田:今回はコンペだったので、歌詞もタイトルも決まっていない骨組みに近い状態のデモ曲をいただいて、それを10曲以上聴くところから始まり、それぞれ第3希望までを選んで、みんなで会議をしていく感じでした。
──そのときは、自分の曲ということより、作品のことをひたすら考えて選ぶ感じだったのですか?
上田:私はそうでした。自分が歌いやすいかどうか……歌えるかどうかは大事にはなるんですけど、歌えないかもしれないけど、この曲だったらキャラクターの情念を表現しやすいかも、とかは考えましたね。
──台詞のように歌うところは、上田さんの個性ですしね。
上田:なので、表現のしやすさは考えましたけど、いちばん大事にしたのは、その曲が本編を全部観たあとに流れて、スムーズに、そしてストレスなく聴けるかどうかだったと思います。エンディングで世界観が変わってしまうことがないような曲を選びたい!と思っていました。
──アフレコも終わっているから、具体的にイメージしやすかったでしょうね。
上田:そうですね。実際にアフレコの音声が入った映像というのも、参考資料として全話いただいていたんです。まだ色もSEも付いていないけど、雰囲気は掴める映像だったので、その映像の最後のほうを見た上で、いただいたコンペの曲を一曲一曲、繋がるかどうかを合わせてみたりしていました。そうやって聴いてみた中で、一番合うものを選んだというか。
やっぱりシリアスに終わる話もあれば、ちょっとほっこりして終わるお話もあるので、どの話数のあとで流れても違和感が少ないのは、「揺蕩う」の元となった曲だったんです。
──アニメからの流れまで考えて選ぶというのは、なかなか聞いたことがないエピソードです。歌詞も、上田さんから要望を出したりしたのでしょうか。
上田:そもそも歌詞と曲のイメージは、曲を選ぶ前に話し合って共有していました。先程お話したような『MAO』の魅力や特徴といったものを活かしつつ、仄暗さとか寂しさとか、灰色が似合うようなイメージは大事にしたいというのは、作詞の結城アイラさんにお伝えしていたので、それを汲んでいただいた歌詞になっていると思います。
あと方向性としては「幽羅子に寄せすぎない」というのもあったので、アニメサイズで聴ける部分に関しては、幽羅子以外のキャラクターでも感情移入しやすいような感じにしていて、2番以降は、幽羅子にもう少し寄せた歌詞にしたい、という方向性でした。
──歌詞を受け取ったときは、どう感じましたか?
上田:すごくバランスを取っていただいていて、1番と2番の違いだったりも、歌っていて感じたので、絶妙な塩梅だったと思います。アイラさんの歌詞は言葉が美しいんですよね。美しい上で、ちょっとだけもの悲しい言葉が多いのはイメージ通りで、すごく歌いやすかったですし、感情移入しやすい歌詞でした。
──結城アイラさんとは、ソロ活動では関わっていなかったと思いますが、どこかでお仕事をしていたのですね。
上田:別作品でディレクションをしていただいたことがあったんです。アイラさんとだったら、のびのびとレコーディングができそうだなと思ったので、歌詞だけでなく、歌のディレクションもお願いしました。
──おっしゃる通り、本当に素敵な言葉遣いですよね。上田さんがお話された通り、2番から摩緒に対する想いみたいなのが含まれてきて、それが苦しくもあり、清らかというか、真っ直ぐな感じもしたんです。
上田:真っ直ぐですよね。一途に摩緒だけを見て執着している感じがあるなと思いました。
──1番と2番で、歌から受ける印象も変わったのですが、それも意図して、そうしたのでしょうか?
上田:それに関しては「自然とそうなった」ということなのかもしれません。歌詞のひとつひとつを汲み取って、幽羅子の想いを代弁しながら歌ってみた結果、自然と2番以降が歌いやすくなったし、ラスサビでは感情がすごく前に出てくるなと思ったんです。それが自然な流れだったのかなと思います。
──歌詞の意味を汲んで歌ったら、自然と幽羅子の想いが乗ってきたような感じかもしれないですね。ただ、幽羅子になってはいけないという意味では、難しさもありそうです。
上田:そうですね。キャラクターソングではなく、あくまで上田麗奈が幽羅子の気持ちを代弁するという歌い方なので。キャラクターソングだと、もうちょっと幽羅子っぽい声とか、言葉の使い方、置き方になってくるんですけど、それは考えずに、幽羅子を演じていたときに沸き上がってきた気持ちとか、摩緒を求める気持ちをいちばん大切にしてアフレコをしていたなぁとか、そこで感じていたことを頼りにしながら歌ったという感じです。
──それはすごく伝わってきました。
上田:あと、冒頭のコーラスってどういう意味なんですか?という質問を作品側からいただいたんですけど、メロディの雰囲気に合わせて、造語的に当てたものになるので、聴いた方の自由な解釈で受け取って欲しいと思っていますが、、イメージとしては「水がゆらゆらと揺れ、水が跳ねた雫が真珠になって、その真珠が首飾りになるような映像を思い浮かべて、言葉に当てました」と。アイラさんが話してくださいました。
──アニメのエンディング映像も、水と真珠になっていましたからね。
上田:なっていましたね。アニメのエンディングは、最後のカットがすごく印象深かったです。幽羅子が普通の女の子に見えたんですよね。そもそも普通の女の子であって良かったはずですから。悪役のようで悪役じゃないみたいな、幽羅子の魅力が本編とエンディングを合わせたことでより引き立つ感じがしました。柔らかい表情とか、普通の少女のような表情というのが、すごく素敵でした。
新たな発見もあった結城アイラさんとのレコーディング
──カップリングの話も少しお伺いします。「結ぶ」は、どのようなことを意識して曲を選び、何を伝えたかった曲なのでしょうか。
上田:「揺蕩う」の2番以降、幽羅子の気持ちが強くなったという話をしましたが、「結ぶ」のほうは、それと対になる曲にしたく、紗那にスポットを当てて作ってみようということになりました。(幽羅子と紗那の関係性に関しては『MAO』をご覧ください!)
紗那も、内に秘めた想いがあるんですけど、それを周りに押し付けることなく、その想いで人を動かすということもせず、ただこの日常がそのまま続いてほしい、大事な人が、ちゃんとその人らしく生きられる世界であってほしいと祈っているような、芯の強い清らかな女性というイメージがあるので、それを元に歌詞を書いてもらいました。
曲自体は、「揺蕩う」を選んだコンペで、気になっていた曲なんです。「この曲、かわいらしくていいですよね、いったん取っておきましょう」と言っていた曲なんですけど、この曲から感じる清らかさが、紗那と相性がいいのではないかと思ったんです。
──同じコンペにあったとは思えない、陽な雰囲気がありますね。メロディも美しいです。この流れるように歌う感じも上田さんらしいというか。上田さんが歌えば、全部上田さんの曲になるというボーカルの存在感にも圧倒されました。この曲は、紗那を意識しながら歌ったのですか?
上田:強い清らかな女性というのを思い浮かべて歌いました。
私はそこまで大人になれないし、この境地にはたぶん至れないので、すごく歌うのは難しかったです。「揺蕩う」もそうですし、これまでの楽曲も、言葉ひとつひとつに重きを置いて歌ってきたんですけど、ひとつひとつに意味を持たせすぎると、この凪のような清らかな曲のイメージとズレてきてしまう感じがしたんです。清らかであるということを表現で説明するのも、それはそれでわざとらしさが出てしまったりすると思ったので、難しかったんです。だから、おっしゃっていただいたように、なるべく流れるように、きれいな川が流れていくように、空っぽにして、クリアにして歌うことを意識しました。
──でも、対になる曲だと知って、より納得ができました。
上田:なので『MAO』が好きな方にも、この2曲を楽しんでいただけたら嬉しいです。
──では最後に、今後音楽活動は、積極的にやっていったりするのでしょうか。
上田:今回もたまたま、気づいたら4年空いてたという感覚だったので、自分としては、休止をしていたという感覚でもなかったりするんです。だから、新たに始まったという感覚でもなかったりして(笑)。
本当にスローテンポでやっているので、今のところ、活動が終わるという話は上がっていないです(笑)。ただ、次いつやろうというのが具体的に決まっているのかと言われたら、決まっていない状況なので、また新たに「こういう曲を歌ってみませんか?」と言っていただけたら、全然後ろ向きではなく、考えていきたいです。
[文・塚越淳一]
楽曲情報
【発売日】2026年9月30日
【価格】
初回限定盤(20Pブックレット付):2,310円(税込)
通常盤:1,650円(税込)
【収録内容】
1. 揺蕩う
(TV アニメ『MAO』第 2 クールエンディングテーマ「揺蕩う」)
作詞:結城アイラ 作曲・編曲:牧野太洋 弦編曲:谷ナオキ
2. 結ぶ
作詞:結城アイラ 作曲・編曲:加藤冴人
3. 揺蕩う(Instrumental)
4. 結ぶ(Instrumental)
作品情報
あらすじ
令和を生きる中学生の少女、黄葉菜花(きばなのか)。幼い頃、家族と事故に巻き込まれ、自分だけが生き残った。
ある日、菜花が事故現場となった商店街の門をくぐると、
妖(あやかし)の蔓延(はびこ)る大正時代に迷い込んでしまう。
摩緒と出会った菜花は――
「おまえ、妖だろう。」
摩緒にそう告げられ、自身の異変に気付く菜花。
二人には、同じ“呪い”がかけられていた――!!
摩緒と菜花は、連鎖する“呪い”に立ち向かっていく!
高橋留美子の最新作『MAO』、待望のアニメ化!
没入型ダークファンタジー×時代(とき)を越えるタイムスリップミステリー、いよいよ開幕!
【それは、時代(とき)を喰らう“呪い”】
キャスト
原作/高橋留美子「MAO」(小学館「週刊少年サンデー」連載) (C)高橋留美子/小学館/「MAO」製作委員会


































