
“勝てない”。それでも部活を続ける意味はある? 12年間バスケを続けた筆者のTVアニメ『アオのハコ』Season2 第26~28話レビュー
【第28話】憧れが原動力
部活を辞めた夢佳の本音が明かされる一方で、千夏のウィンターカップが近づいてきます。高校バスケの全国大会といえば、夏のインターハイと冬のウィンターカップ。全国制覇を目標に掲げる千夏にとっても、大事な大会です。
大喜VS一馬、シャトルラン対決
大会に向け、女子バスケ部は他校で練習試合。いつも通り体育館にやってきた大喜は、先生から「ウィンターカップの観戦チケットが1枚余っている」と聞きます。喜び勇んで手を挙げると、すかさず一馬も名乗り出ました。
お互いに譲らない二人は、シャトルランで決着をつけることに。学校の体力テストでトップクラスのキツさを誇る「アレ」です。おなじみのアナウンスと音階が聞こえるだけで、足が重くなりそう……。
とはいえ、バスケの試合はシャトルランのようなものなので、筆者は比較的得意!(当時は……) バスケ部は日々の走り込みが多いので、ほかの部員も割と最後まで残っていたように思います。バドミントン部の大喜もかなりストイックに練習しているとはいえ、バスケ部で一学年上の一馬が優勢でしょうか。
一馬は余裕の表情で「負けたほうがナツを諦める」なんて提案までしてきます。勝利を確信しているかのような口ぶりですが、大喜は挑発に乗ろうとしません。千夏を賭けの対象にしない誠実さが、大喜らしいところです。果たして勝つのはどちらなのか。勝負の行方は第29話以降に持ち越しです。

「話せなかった」夢佳と、千夏を支える存在
練習試合を終えた女子バスケ部は徒歩で学校へ。「家で着替えをとってくる」とチームメイトたちから離れた千夏は、歯医者の前で夢佳と鉢合わせてしまいます。大喜が黙っていた夢佳のアルバイトを、千夏も知ることになりました。
さらにアルバイト先の職員は、夢佳のことを「後藤さん」と呼んでいました。千夏が知る彼女の苗字は「木戸」。夢佳は中学卒業時に両親の離婚を経験していましたが、部活を辞めた理由とは関係ないといいます。
今になって知った事実に「話してほしかった」と寂しさをにじませる千夏。しかし夢佳は話さなかったのではなく「話せなかった」のです。なぜなら夢佳は、千夏の憧れの存在だったから。
小学生のころ、バスケがうまい同級生として慕われて嬉しかったこと。それでもバスケへの熱が冷めてしまったこと。サボることなんて考えず、努力を続けられる千夏に憧れていたこと。憧れていたからこそ、バスケから逃げようとしている自分が嫌いになってしまったこと。
堰を切ったように、胸にしまってきた思いを吐き出した夢佳。第26話から引っかかっていた言葉の真意が、ようやく見えてきました。最初のとげとげしい態度は、バスケに夢中だったはずの千夏が遊んでいるのを見て「変わってしまった」と思ったからでした。

「千夏のことが嫌いになった」という言葉も、本当は自分自身に向けたものだったのかもしれません。憧れてくれる相手にだけは、弱い自分を見せたくない。大切なチームメイトであるはずの千夏さえ疎ましく感じてしまう自分の弱さが嫌い。その苦しさから、自分も千夏も傷つけることしかできなくなっていたのではないでしょうか。
第26話の千夏と同じく、夢佳も「遊ぶことはサボること」だと考えていたのでしょう。勝ちたいならバスケ以外のことをしてはいけない。自分にはできなかったストイックさを体現する千夏にこそ、憧れていたのです。
しかし千夏は「私にとってはひとつのことだよ」と告げます。千夏だって、目標を諦めそうになったりサボりたいと思ったりすることもあります。それでも頑張れるのは、体育館に行けば必ず大喜がいるから。千夏は休むことや遊ぶことを手放したのではなく、大喜と過ごす時間をバスケの力に変えていたのでしょう。
千夏の最初の原動力は、夢佳への憧れ。夢佳が退部したあと、大喜と知り合っていなければ千夏も目標を諦めてしまっていたかもしれません。千夏にとって大喜は、単なる「気になる人」を超えた心の支えになっていることが分かるシーンでした。

憧れと恋が加速する⁉ ウィンターカップへ全力疾走
挫折しそうになりながらも、大喜との時間を力に変えてきた千夏。一方で、走り続けることに疲れてしまった夢佳。どちらの選択も間違いではないからこそ、胸がぎゅっと締めつけられる3話でした。
部活は、やはり心身ともにハードなもの。仲間や思い出など得られるものも多いけれど、それに気づけるのは、たいてい過去を振り返ったときです。きれいごとだけでは片づけられない部活の切実さが、千夏と夢佳の姿から伝わってきました。
そして恋のほうは、まさかのシャトルラン対決で大混戦! 千夏の夢がかかったウィンターカップを、観客席から見届けるのは大喜か一馬か。息切れ必至の展開に、筆者も全力で併走します!
【文:藤真唯】



































