
TVアニメ『ロメリア戦記』小笠原 仁さん×大野智敬さんインタビュー|アルとレイ、それぞれの成長をどう演じる? 物語の転機で求められた芝居の変化
ロメリア役・根本優奈さんの快活な人柄が、現場の空気を作ってくれました
──いまも話題に挙がっていましたが、やはり主人公であるロメリアの存在は大きな見どころです。改めて、ロメリアの印象についてお聞かせ下さい。
小笠原:ロメリアはあの年齢にして大変な人生だなと思います。物語冒頭の時点では、現実で言ったらおそらく高校生くらいですよね。その頃の自分を考えたら、まだ“小笠原 仁”という人間になっていない、動物から人間に変わる途中みたいなものですよ。それなのにあれだけの精神性があり、達観するところまで行っていて。しかも、魔王を倒す大仕事を終えて安泰かと思ったら、婚約破棄を突きつけられて身分も宙ぶらりんになり、そこから自ら軍隊を編成して世の中を立て直していくって、どれほどの人物なのかと。そんなロメリアを誰が演じるんだろう……?とも思いました。
大野:僕もロメリアは誰がやるんだろうと思っていました。達観していて人心掌握術にも長けているけど、少女の気持ちも持ち合わせている。“聡くて幼い子”というイメージだったので、とても難しい役だろうなと。
──演じているのは根本優奈さん。しかも、主役を演じるのは初めてとのことですが、根本さんの印象はいかがですか?
大野:僕はもともと彼女と面識があり、普段の性格や雰囲気も知っていたのですが……現場に行ったら、いつもとは違う“借りてきた猫”みたいな根本さんがいて。やっぱり彼女自身、大きなプレッシャーがあったんだと思います。主人公ですし、この現場は本当に女性がいなくて、20人にもおよぶ軍隊を自分がまとめなきゃいけない責任も感じていただろうし。
小笠原:僕は初対面でした。初の主演だと聞いて、しかもロメリアのような凛と男たちの先頭に立つ役を演じる重責たるや、計り知れないだろうなと感じましたね。だから、僕は現場でも食事会でも“根本さんをいじり倒す役”に徹しようと思ったんです。とにかくいじり倒して、普段の快活な彼女でいられる時間を多くしないと、芝居どころじゃないくらい緊張するだろうなと、最初に現場に行ったタイミングからすごく感じて。本人に直接言ってはいないですけど、自然と伝わっていたかもしれないです。
大野:確かに、当時はそうだったよね。
小笠原:でも、緊張やプレッシャーが取れて、のびのびやれるようになるまでが早かったですね。そこは彼女の度胸だなと思います。それに、パブリックイメージとしては、ロメリアと根本さんは似ている部分がないですよね(笑)。「え?こういう役もやれるんだ」と思われるんじゃないかな。
──ほかの作品で元気なだけではない役もやられてはいますが、SNSや配信での雰囲気からすると、ロメリアと根本さんはおそらくイメージが違うと思います。
小笠原:そう言われるのって、役者からしたら本望ですよね。普段の自分からは想像もつかない役をオーディションで勝ち取ったわけだから。
大野:声優冥利に尽きるよね。
小笠原:そのような役柄で彼女がキャリア初の主人公を演じたことは、トレジャーであり、財産になったと思います。あの男性だらけの現場で堂々とやっている姿は、こっちまで勇気をもらえました。
大野:本当に現場を引っ張ってくれていた気がします。
小笠原:明確に1番成長したキャストですよね。後半のアフレコとか、後ろで聴いていて泣きそうになることがありましたから。すごく胸に響く芝居をぶっ刺されて、「うおぉぉぉ根本ぉぉ!!」みたいな(笑)。彼女は本当に役者だなって、近くで見続けているがゆえに実感しました。
──男性キャストが大半のなか、しっかり真ん中に立てるのは素晴らしいですよね。
小笠原:彼女の人柄も『ロメリア戦記』の現場の空気を作るのに、すごく貢献していたと思います。どちらがいいというわけではないですが、物静かにスンとしていて誰とも話さない女性が1人で、ほかが全員男性だと、やっぱりガヤガヤしにくいじゃないですか。
大野:男子校みたいな雰囲気になったら申し訳ないですからね。
小笠原:食事会でもアフレコの休憩時間でもそうでしたけど、根本さんの快活なキャラクターがド真ん中にいてくれるから、みんなもついていくし、楽しく話ができるというのは絶対にあったと思います。
大野:『ロメリア戦記』は登場人物が多すぎるから、ブースに入りきれないことがあるんですね。ロメ隊がいないシーンを先に録ったあとに、ロメ隊のシーンを録ることもありましたが、根本さんがすべてを繋ぐ架け橋にもなってくれていたんです。それも相まって、彼女の快活なキャラクター性は本当に助かりました。
キャラクターの心持ちにも自身の演技にも大きな変化が訪れた話数とは?
──根本さん以外の共演者も皆さん素晴らしい演技をされていますが、特にすごかった方を挙げるなら誰でしょうか?
大野:まだ発表されていなくて名前を挙げられない方も多いですが、本当に素晴らしい方ばかりなんです。
小笠原:いま言えるなかで名前を挙げるなら、僕は千本木(彩花)さんですね。エリザベートは第Ⅰ話から出てきますが、本当に素晴らしいお芝居で。声優にとってのマイク前って俳優でいう板の上みたいなものだから、どれだけ長く立ち続けても緊張感があるし、魔物のようなものも存在するステージじゃないですか。それなのに、ちょっと先のシーンにはなりますが、あれだけ声を潜めたボリュームで繊細に繊細に相手の心を撫でていくような芝居をしていて。聴いていてゾッとしましたね。
大野:目も耳も惹かれますよね。というか、あのメンバーはみんなすごかったです。広瀬裕也くん(アンリ役)は出力高く、空気の読めないアンリをあれだけ綺麗に演じていて、颯爽と来て颯爽と帰っていく感じが格好良かったですし、伊瀬茉莉也さん(エカテリーナ役)も亜咲花さん(リョキ役)も本当に良くて。ほかにも、同期の安田陸矢くん(ゼゼ役)とか、堀江 瞬さん(カイル役)とか……みんなキャラが見えてきて素敵でした。ものすごく刺激を受けました。
──それぞれの演技も楽しみですね。では、序盤で特に印象深かった話数やシーンはどこでしょうか?
大野:第Ⅲ話ですね。ここでレイの心持ちに大きな変化が起こるんです。演じる上でも心の変化を作らなくてはいけなくて、必死さや極限状態の気持ちを出すために、息遣いもそうですが酸欠になるほどでした。自分自身の演技としても、考えることの多かったシーンだったと思います。
小笠原:僕も第Ⅲ話は印象に残っています。ここは物語のなかで最初に訪れるハードなシーンでもあるんですね。僕はアルくらいの声のトーンのキャラクターをレギュラーで演じることがこれまでなく、頼りがいがあって先頭に立つ兄貴分を演じるのも初めてでした。初めてのアプローチで、ハードな戦闘シーンでの叫びや、やられるときの声をリアルタイムで紡いでいくのは、本当にカロリーが高くて。やれる自信も自負も、やってやるぞという気持ちもありましたけど、いざ現場で入り乱れてあのシーンを録ったことは、自分自身をもっとアップデートしなければと思うきっかけになりました。そもそも、僕のようなヒョロガリな身体から隊長(アル)の声は出ないかもと思って、そこからウェイトトレーニングを始めたんです。
大野:そうだったんだ。
小笠原:筋肉量だけで3kgくらい増えました。あまり表には見えないですけど、そういうこともやらなきゃと思うぐらい、第Ⅲ話は僕にとっても大事な回でした。
──映画やドラマの役作りでウェイトアップやダイエットをした話はよく聞きますが、声優も役者ですからそういうことを考えるのですね。
大野:人によりますね。逆に鍛えすぎて喉が固くなって、声が変わってしまうこともあるので、難しいところではあります。声のためにというより、頼りがいを出すために鍛えようと思うことはあるでしょうけど。
小笠原:そうですね。今回はアルのようなキャラクターだからやろうかなと。それに、僕はもともと舞台役者をしていたから、体作りを改めてやるべきかもと思ったんです。
──序盤以降の見どころについても、言える範囲で教えてください。
小笠原:物語としては、ロメリアの作り上げた軍隊の活躍によってできたコミュニティが、中盤以降はさらに大きくなっていきます。軍事物、ヒューマンドラマといった話のウエイトがどんどん増えて、より骨太になっていくのを楽しみにしていただきたいです。爽快なアクションもずっとありますから。
大野:全部注目ではありますが、Ⅱクール全体の中盤あたりに大きな転機が訪れます。レイも大きく変わりますし、僕のお芝居観も変わりました。そこから後半や終盤に向けて駆け抜けていく感じになりますので、楽しみにして欲しいです。
小笠原:中盤からの芝居の変化でいえば、アルはグラデーションを求められました。「ゆくゆくは、アルはこうなっていくので、それをちゃんと想像して芝居を作り上げて、次回のアフレコで出して欲しい」と言われたことがあって、そこが大変でしたね。
2人ともオタク気質の研究者!? ロメ隊酒盛り配信や◯◯も作ってみたい
──おふたりがアニメのメイン役で共演するのは初めてだと思いますが、お互いのことはもともと知っていたのでしょうか? 本作を通じての印象と合わせてお聞かせ下さい。
大野:仁くんのことは以前から知っていました。最初に会ったのは作品とは関係のない共通の知人との食事会で、お酒も入っていたから普通に盛り上がって「よく喋る人だな」くらいの印象でしたね。「いつかメインでやれたらいいよね」と話していたのですが、今回こうやって長い時間過ごして、考え方やお芝居にこんなに熱さのある人だと知りました。見た目的には、熱いお芝居の話とかあまりしなさそうじゃないですか(笑)。
小笠原:おい!! ……客観的に見たら、自分でもそう思う(笑)。
大野:でも、これだけ熱い気持ちでお芝居に前向きに取り組んでいるのを間近で見て、本当にイメージが変わりましたし、嬉しかったですね。
小笠原:それでいうと、大野は初めて会ったときからキャラクターのイメージはずっと変わらないですね。ただ、お芝居の話をするようになってから、研究者とかお芝居研究所の所長のような印象が強くなりました。お芝居に対して分析するのも好きだし、ほかの人のお芝居をデータとして溜め込むのも絶対に好きだろうなって。
大野:好きですね。
小笠原:僕らの共通点としてオタク気質がありますけど、コレクター気質でもあるし、考察厨なところもあるだろうし、そういう気質がお芝居にいい形で活きている人間なんだろうなと思いました。僕は人のお芝居を聴いて、自分にこのお芝居ができるかできないか、と考えますが、大野は、僕にはできないような声帯の緻密なコントロールを身につけているとも感じて、勝手にではありますが学びを得ています。
──その言葉からも、お芝居に対する情熱がわかりますね。
大野:そうですよね。人の分析力がとてもあって。
小笠原:僕らの世代って、アニメを見てオタクになってから声優を目指した世代じゃないですか。僕は声マネをアップしたこともあって、実はご一緒した先輩の声マネもしていたんですよ。いまだに本人には言えていないですが……。
大野:そうなんだ。声マネをしていたくらいだから、仁くんも研究者ですね。
小笠原:だから、すごく近いところを感じます。
──ちなみに、本作に限らず“戦記物”や“伝記物”といった作品は好きでしたか?
大野:全然馴染みがなかったです。僕はいわゆる“ラブコメ”と呼ばれる作品を見ることが多く、『ロメリア戦記』は初めての体験でした。
小笠原:僕は意義のある戦いを描いた物語は全般的に好きです。そういう意味では、いままさにゲーム実況でやっている『ELDEN RING』とかも含まれますよね。
大野:ムービーを繋げていけば、そういう物語になるからね。
──では最後に、折角バディ感のあるキャラクターを演じていますので、番組の企画などでやってみたいことを教えてください。
小笠原:同人誌作りとか?(笑)
大野:僕が話とキャラを考えようか?
小笠原:いいね。「原作:大野、作画:小笠原」で、『オノオガ戦記』。
大野:いやいや、戦記物じゃなくラブコメにします!
小笠原:ラブコメかよ! じゃあ、ラブコメ要素強めの戦記物で、大野のお気に入りのヒロインから戦死していく(笑)。
大野:デスゲームラブコメ(笑)。やっぱり主人公にはずっと悲しんでいて欲しいからね。ヒロインも泣かせて……って、さすがに『ロメリア戦記』の企画ではできないか。
小笠原:デスゲームにするなら、『SAW』くらいすごいのをやりたいな。
大野:ヤバい。根本さんがドン引きしちゃう。
小笠原:ダメか……。
大野:『ロメリア戦記』の企画でやるなら、酒盛りが丸いんじゃない?「ロメリア隊酒盛り全員集合生放送」とか。全員集合して、樽で乾杯!って。
小笠原:いいね! いつかやってみたいです。
──個人的には、同人誌もちょっと見てみたいですけど(笑)。
小笠原:いくらでも描きますよ!
大野:考えておくか。
[取材&文・千葉研一]
作品情報
あらすじ
しかし、アンリ王子は無慈悲にもロメリアに告げる。「婚約を破棄する」と。
勝利に酔いしれるアンリたちを横目に、ロメリアは次なる旅へと向かった。
戦乱を通じて荒廃した祖国と、魔族に奪われた人々の暮らし。
魔王を倒したからといって、目の前に積みあがった問題が片付くわけではない。
だから、私は私のやり方で、人々の幸せな暮らしを取り戻してみせる。
軍を興し、経済を動かし、時に陰謀に巻き込まれながらも、彼女は歩みを止めない。
しかしその選択は、ロメリアの前にさらなる戦禍を運んでくる。
これは、魔王討伐の『その後』を描く、「一人の少女」と「彼女を支える騎士たち」の、再起の物語。
キャスト
(C)有山リョウ/小学館/『ロメリア戦記』製作委員会








































