マンガ・ラノベ
ストレートエッジ代表・三木一馬さんインタビュー

変わりつつあるエンタメ業界を生き抜くその術とは──ストレートエッジ代表・三木一馬さんインタビュー

 2016年5月29日、アミューズメントメディア総合学院本館にて、エンタメ業界を志望する学生向け講演会「W@KUWORK mini」の第一回が開催されました。

「W@KUWORK mini」は、エンタメ業界を志望する学生を対象に、様々な業界関係者を招いて行われる講演会。その記念すべき第一回目のゲストとして招かれたのは、今年4月に独立を果たし、大きな話題を呼んだ、株式会社ストレートエッジ代表の三木一馬さん。電撃文庫では編集長も務め、編集者としても『ソードアート・オンライン』『とある魔術の禁書目録』など数多くのヒット作を世に生み出してきた、業界のカリスマ的存在です。

 今回の講演では、業界を志望する学生達に向け自身の経験談から、作家・編集者に向いた人材、業界に入るためのノウハウなどを語り、寄せられた数多くの質問にも真摯に回答していた三木さん。講演回終了後には、そんな三木さんにお話を伺う機会を得ましたので、そのインタビューの模様をお届けしていきます。

講演の様子はこちら

■ ストレートエッジが手がける、新たな新規IPに関連した話題も飛び出す

――本日はお疲れ様でした。講演会を終えてどうでしたか?
三木一馬さん(以下、三木):公聴している方の意識が高く、こちらの話にしっかりと頷いたりリアクションをしてくれていたので、真剣に聞いてくれているのが伝わってきて、すごくありがたかったですね。

――ご自身の学生生活を思い出されたりも?
三木:彼らを見ていて思ったのは、とにかく若いなぁと(笑)。これから薔薇色の未来が待っているわけですし、時間があるというのはこんなにスゴイことなんだぞと、改めて羨ましいと思いましたね。

――独立する前と後では心境の違いはありましたか?
三木:独立する前にも講演会は何度がやっていたのですが、その頃と比較すると責任の重さようなものは感じるようになりました。なのであまりふざけず真面目にしようと思っていたのですが、思った以上にふざけてしまい反省しています(笑)。

――講習会で話されていた内容の確認になりますが、ストレートエッジの業務について教えてください。
三木:端的に言えば、作家さんが生み出すIPをエージェントという形で、媒体に囚われず大きく育てていくことですね。具体的には、1つは従来通りの電撃文庫のIPをトータル的にプロデュースしていくこと。もう1つは契約作家さんと一緒に、まったく新しいIPを生み出していくという2つの方法を考えています。

――具体的に、今までと大きく変わってくることはなんでしょうか?
三木:メディアミックスのトータルプロデュースを行う会社ができることで、メディアミックスの質や媒体、そして展開の速さを変えていくというのが目標です。ただ、これまで手がけてきた電撃文庫の作品の内容は変えるつもりはなくて、プロモーションやメディアミックスなどの作品の魅せ方が変わると思っていただければ。

――かつて三木さんが務められた電撃文庫の編集長は、決断1つがライトノベル業界全体に大きな影響力を及ぼすような立場だったわけですが、そのことに対してプレッシャーは感じていましたか?
三木:いや、そういう風に意識したことすらなかったですね。「とにかく面白いものを作らなくては」という使命感はありましたが、ポジションによるプレッシャーを感じたことは今までも一切ないです。一応、今も肩書きとしては社長なんですけど、実感はまったくなくて、平の編集者みたいな扱いなのでむしろ気が楽になったくらいですね(笑)。

――今のところは新しい契約作家を募集される予定はないとのことですが、今後は会社として新しい編集者を雇って事業を拡大させるような計画はあるのでしょうか?
三木:将来的にはそのような形にしたいと思っています。ただ、今は自分1人でもよちよち歩きの状態なので、もう少し地ならしの期間が必要かなと。特にもし既に業界で働いている方が現在今の立場を捨ててこっちに来てくれると仮定したとき、今のままでは自分の会社そのものが魅力的に見えないと思いますから。

――既に新しい作品を発表する準備はされているのでしょうか?
三木:既存のIPの電撃文庫の新作という意味であれば、現在進行形で準備はしています。それ以外のストレートエッジとしての完全新規IPの方は、現在を仕込みの方をしている段階ですが、もう少ししたら、第一弾の発表ができそうです。ただ、ビックバジェットな企画ではなく、いつもの自分のバトルフィールドである、漫画や小説関連の発表になるかと思います。

――編集者としての三木さんというと、大賞に惜しくも届かなかった作家さんを育てあげ、数々のヒット作を生み出していることが多い印象を受けるのですが。
三木:それは単に気が付けばそうなっているという感じなんです(笑)。落選作品専門というわけではないですし、願わくは大賞受賞作を担当したいとは思っているんですけど、感覚が人と違っているのかもしれませんが、個人的に良いなと感じた作品が結果落選作だったというだけですね。

――今後もそうした新人発掘に関わられることはあるのでしょうか?
三木:当分は契約作家さんだけでも手一杯なので、さらに新しい人となるとなかなか難しいのが現状ですが、今後も電撃大賞などに関われるなら関わりたいと思っています。

――ライトノベルに限らず、エンタメ業界全体が高齢化している印象を受けるのですが、それについてはどうお考えでしょうか。
三木:事実だと思います。ライトノベル業界に限らず、漫画業界でも昔は20代前半がコア層としてターゲットされていたことが多かったのですが、今は30代が読者の中心を担っている所も増えてきています。ただだからといって、対象年齢にあわせた主人公を作る必要はなくて、例えば総ルビの某月刊少年漫画誌は平均読者層が35歳なんですよ。ただ、絶対に35歳の主人公の漫画は連載されないんですよね。僕が関わる作品も同じで、読者が高齢化しているからといって、大人を主人公にシフトするといったことはまずないです。それは求められているものとは違うと思いますので。

――現在も様々な新レーベルが生まれているライトノベル業界ですが、現状のレーベル数についてはどうお考えでしょうか?
三木:数は多いと思いますが、一昔前の萌え系4コマ雑誌とかと同じで、増えること自体はごく自然な流れだと思うんですよ。この出版不況の中プラス成長をしていたジャンルだったので、そこに目をつけない経営者はいないと思いますし。当然その後起こるのは淘汰で、作り手の側としてはそこに生き残れるかどうか、目先のムーブメントに囚われず将来を見据えた、質の高い作品作りをしていかなければいけないなと。ただ、選択する読者の側としては大変だろうなと思います。

――近年流行となっているWEB小説のランキング上位を出版するだけの編集者の姿勢に疑問を呈されたこともありました。
三木: 一石を投じるような発言になったのは本意ではなく、やはりレーベルによってお考えがそれぞれあると思いますので、僕が何かを言う立場ではないのですが……。ただ、WEB小説も小説賞に応募された小説も、作家さんと一緒に作品を見つけていくという編集者の仕事は基本的には変わりないと思っているんです。しかしながら、現実問題ビジネスとして例えばほぼWEB小説を専門にするレーベルもあるわけで、そういう所に配属された編集者はゼロから作品を作る経験ができないわけですから、その組織の中でランキングの上位を選ぶ「だけ」の仕事をしていたら、編集者としての将来が大変なんじゃないかなと感じます。ただ、WEB小説のようにいろいろな人が小説を発表する流れが出来ていることはすごく良い事だと思っています。

――エンタメ業界全体の問題として、消費者がお金を払わずとも無料でコンテンツが楽しめるのが当たり前になりつつあるような気がしています。
三木:確かにフリーミアムの流れはどんどん来ていますし、今後も広がっていくことは間違いないですね。そういった中で、作家さんがきちんとした生活をできるようマネタイズするのが僕の腕の見せ所だと思っています。既にそのための施策はいろいろと考えている最中です。

――最近のエンタメ業界のニュースで興味をもったものはありますか?
三木:アメリカのVRテーマパーク「THE VOID」は面白そうだなと思いました。VRとAIは、IBMさんと『ソードアート・ オンライン』でコラボさせてもらったご縁もあり興味があるんです。まだ現状は技術アピールという段階ですが、いずれ1つのコンテンツとして商品化する段階になったとき、ストーリーも必要になってきますから、そういう時にパートナーシップを結ぶことができないかなと。読者の方々を驚かせるメディアミックスの新しい形態として活用できないか個人的に注目しています。

――最後に、本日の講演会に参加された方々や、エンタメ業界に興味をもっている読者の皆様にメッセージがあれば。
三木:今回参加してくださったのは、業界で働くことを真剣に考え、非常に高いモチベーションをもっている方々だと思うのですが、そういう人たちがいないと業界がどんどんつまらなくなっていくと思うんですよね。そんな人たちの中から「講演会聞いたけど、あいつの言ってること古いな。俺のほうが面白いもの作れるよ」という気概を持って仕事をしてくれる人がいると心強いなと思います。皆さんの活躍を期待しています。


■開催情報
第二回 W@KU WORK mini
開催日:2016年6月30日(木)18時00分~20時00分
会場 :東洋美術学校 C1教室
登壇者:
サイバーコネクトツー 代表取締役社長 松山洋氏
スタジオトリガー 取締役 舛本和也氏
星海社 編集者 今井雄紀氏

定員:150名

参加方法:参加料1000円 事前予約制(公式サイトの応募フォームより応募)

>>W@KU WORK mini公式サイト

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