『じいさんばあさん若返る』著者・新挑 限さんインタビュー/老夫婦の日常を通して、何でもない日々の幸せを感じてほしい【カドコミ2021】
見た目ではなく、内面に惚れ合うふたりを描きたい
──正蔵とイネの老夫婦ならではの空気感も素敵です。ふたりの関係を描くうえで、大切にしていることはありますか?
新挑:普通のラブコメは付き合うまでを描きますが、彼らは長年寄り添ってきた夫婦ですし、お互いの内面に惚れ合っているんですよね。そのため、最初の頃は相手の見た目にドギマギする描写を入れていましたが、お互いの気遣い、さりげない感謝を描くようにシフトしていきました。相手に対する思いを再認識するというんでしょうか。今さら「好き」と言い合う仲ではないからこそ、「好き」と口にするのがいいのかなと思っています。
──2巻の終盤から、じいさまだけが元の姿に戻るという展開がありました。こういったストーリーにしたのはなぜでしょう。
新挑:途中から読んだ人からすると、若返った男女がいちゃいちゃしているだけのマンガに見えるかなと思ったんです。あのふたりは、見た目が若返ったから態度が変わったわけではありません。じいさまを元の姿に戻すことで、あくまでもお互いの内面に好意を持っているのだと示したくて。読者からは「早くじいさまを若返らせて」という声も多かったのですが、あえて年老いた姿のまましばらく話を続けました。
──第51話「ホームセンター」で、じいさまは店員に対して「孫と買い物に来た」と言いますが、ばあさまは「違うべ。ワシの旦那だ」と言います。あのシーンは、ばあさまの愛情を感じました。
新挑:「ホームセンター」は、自分も好きな話です。あとは「腕相撲」(第50話)。見た目はおじいさんなのに、すごい力を発揮して、腕相撲で息子に勝つというエピソードです。
──これまで描いてきた中で、印象に残っているエピソードはありますか?
新挑:第18話「葬式」、第32話の「面影」、第64話の「図書館」でしょうか。友達の葬式に出たり、施設に入っているイネの姉を訪ねたりと、どれもこの作品でなければ描けない話なので。
──かじ取りを間違えると重くなりかねませんが、どれも沁みるエピソードになっていますね。
新挑:重いテーマを扱う時は、できるだけ直接的な描写を避けるようにしています。「葬式」など死にまつわるエピソードも、若年層から反応をいただくのは難しいだろうと思いましたが、反響が大きくて驚きました。自分だけでなく、みなさんも心の底ではこういうテーマについて考えているんだと気づけたのは、うれしいことでした。こうしたエピソードを入れることで、ほんわかした日常が際立ち、何でもない幸せが尊く感じられるのではないかと思います。基本的には、おじいさんおばあさんのほっこりした話なので、軽い気持ちで読んでいただきたいです。
──最後に、これから『じいさんばあさん若返る』を読む方にメッセージをお願いします。
新挑:普通の日常を送るのも難しい昨今ですが、せめてマンガの中ぐらいはおじいさんおばあさんの日常を楽しんでいただきたいと思っています。このマンガを読んでいる間は、大変なこと、つらいことを忘れてもらえたらうれしいです。
[取材・文:野本由起]
「カドコミ2021 in アニメイト」開催概要
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第二弾:8/1(日)~8/31(火)
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『じいさんばあさん若返る』作品情報
青森でリンゴ農家を営む正蔵とイネは、連れ添って50年以上の老夫婦。ある日、ふと目覚めるとふたりの体が若返っていて……!? 周囲の困惑をよそに、当のふたりはいたってマイペース。イケメンじいさま&キュートなばあさまが巻き起こす、ほのぼのコメディ!
コミックス『じいさんばあさん若返る』
新挑 限
KADOKAWA MFC
1~3巻、好評発売中!
新挑 限さんの公式ツイッターで、毎週土曜日11:00に新作を公開中。