『メモリーズオフ』5pb.プロデューサーが新作を語る――ロン..

【ゲームクリエイターインタビュー】『メモリーズオフ』シリーズ制作者の5pb.柴田太郎さんが最新作を語る!(後編)

 リリース直前の話題のゲームソフトを制作するゲームクリエイターに、新作ゲームソフトの紹介や開発秘話をご紹介いただきつつ、仕事の内容やゲーム業界に携わったきっかけ、ゲーム業界を目指す皆さんへアドバイスをしていただく企画『ゲームクリエイターインタビュー』。

 今シリーズは『メモリーズオフ』シリーズや、昨年ゲーム界に衝撃を巻き起こした『カオスヘッド』などを手がける5pb.にクローズアップしていく。

 第2回目は『メモリーズオフ』シリーズを担当するほか、3月26日にはDS用ソフト『ケータイ捜査官7DS バディシークエンス』、4月9日のPS2版『ヒャッコ よろずや事件簿!』の発売を控える、5pb.ゲーム事業部ディビジョン1のプロデューサー、柴田太郎さんにお話をうかがった。

 今章では柴田さんがゲーム業界に入った経緯、ニューリリース作品の『ケータイ捜査官7DS バディシークエンス』、『ヒャッコ よろずや事件簿』などについて語ってもらった。

前編はこちら!


●コンシューマハードから入ってゲーム好きに

――さてここで柴田さんがゲームの世界に足を踏み入れたきっかけについてお聞きしたいと思います。ゲームとの出会いはいつ頃ですか?

柴田さん:小学2年生くらいにファミリーコンピューターを買ってもらって。ソフトは『マリオブラザース』と『ベースボール』で、コントローラーもまだ四角いゴムでした(笑)。アーケードはたまに両親に連れてもらったデパートの片隅にあるゲームをやるくらいで。『ギャラガ』とか。中学生になるとアーケードの体感ゲーム『アフターバーナー』や『アウトラン』が流行っていて、それがコンシューマーに移植されると知って喜んで買ったのがセガマスターシステム。やってみると想像とはだいぶ違って(笑)。でもずぶずぶゲームの世界にはまっていき、高校時代に歯止めが効かなくなり、メガドライブ、ネオジオ、サターン、ドリームキャストと次々にハードをそろえていきました。でもスーパーファミコンとかプレイステーションにはなかなか行かず。回りは主流派ばかりだったので話題に合わせるために買ったような。


――コンシューマーが入口なんですね

柴田さん:そうですね。当然、パソコンにも興味がわいて、最初はPC-8801、そしてなぜかFM TOWNSに行ってしまいました。ハイパーメディアパソコンのキャッチフレーズでキーボードも付いていないという(笑)。でもツールもそろっていたので絵を描いたり、音楽を作ることにも関心がいくようになり、また『マイコンBASIC』に掲載されているプログラムを打ち込んだり、簡単なシミュレーションを作ってみたり。


●大学卒業直前にゲーム業界へ転進

――普通のゲーム好きの男の子という感じですね。ゲームを仕事にしようと思ったのはいつ頃ですか?

柴田さん:大学に入った頃はゲーム熱も落ち着いていたんですが、就職活動のあたりで『バーチャファイター』が出現して、ゲームに引き戻されてしまいました(笑)。でも就職氷河期と言われていた時代でしたが、外食関係に就職が決まりかけた時、自分が外食関係の会社に勤めて、ゆくゆくは店長をしているというイメージがなかなか湧かなくて。こんな状態で就職先を決めてしまってはまずいかもと思って、貯金も多少あったので大学卒業後、ゲームの専門学校に入学することにしました。自分で学費を払いながら2年間通って。何を学ぼうということより、ゲーム業界への足がかりをつかむことが目的でした。


――ゲーム業界で実際に仕事をするようになったのは?

柴田さん:専門学校でデバッグのアルバイト募集があって、いくつかやらせていただくうちにキッドと縁があり、デバッグのバイトからスクリプトをやって。専門学校の2年目の年に入って、毎日通っている感じで、そのまま入社しました。バイトで入った時、キッドではPCゲームの『Piaキャロットへようこそ!!』のサターンへの移植を企画していて、ちょうど僕はやり終わったくらいで「結構おもしろかったですよ」と話して、美少女ゲーム作りの方向に進んでいったみたいな。ちなみに音声もPC版そのままに近いきわどい形で移植されたので、その後禁止されるというコンシューマーの限界値を超えてしまった伝説のソフトになりました(笑)。
 そこでチームでモノを作るおもしろさを覚えて、でき上がった時も達成感と充実感を得ることができて。ゲーム作りのおもしろさを知ってしまったら抜け出せなくなってましたね。バブルが弾けた頃でしたが、ゲーム業界はむしろこれからといった感じで勢いもあったことも大きかったです。


――専門学校ではアルバイト募集のような求人が多かったんですか?

柴田さん:そうですね。行って1週間、長いと1~2カ月くらい。行く人は行くし、行かない人は行かないし。専門学校では高校卒業してからすぐに入る人と、僕のように大学卒業後に入学するような人とクラスが分かれていて、モチベーションが違うんですよね。僕らのクラスは真剣に考えている人間が多かったし、今もゲーム界で頑張っている友達が多いです。結局は技術がある、ないではなく、やる気なのかなと思います。


●デバックのアルバイトからゲーム業界へ

――キッドもデバッグ募集から入られたんですか?

柴田さん:ボードゲームの企画補助の名目で募集していました。デバッグのみのバイトが多かったんですが長期間じゃないとその後につながらないので。内容はボードゲームのイベントを考える仕事で、このマスに止まったら○○の経験値が上がる、みたいな。あとそのコマに止まった時のセリフを考えたり、もちろんデバッグもやりつつ、というようなことを3カ月くらいやってました。その作業の中でゲームに文字を打ち込むこともわかり、テキストエディターを使ってスクリプトの中に考えたセリフを入れ込んでいけるようになっていき、できることが次第に増えていった感じです。


――行っていた大学は理工系でコンピューターの知識があったからできたのでしょうか?

柴田さん:僕はガチガチの文系です(笑)。多少、知識はありましたがなくてもたぶんできたと思います。簡単なプログラム知識があっても即コンシューマーで通用するかと言われれば、そんなに甘くもないです。プログラマーとして専業の人がいたので同じことをしようと思ってはいなかったし、企画志望というわけではないけど、脇を固める仕事、ディレクターをイメージしてました。プログラムができない、絵が描けない、音楽を作れないから企画を志望する、みたいに言う人もいますが、すべての知識がある程度はあればいいんです。技術は各分野のプロにお任せすればいいから、何かを聞かれた時に答えられる知識とコミュニケーション能力があればいいのかなと。
 実際、僕がやったのはセリフや文章を考える仕事で、当時、テーブルトークRPGが流行っていた時期でもあり、妄想の世界で遊ぶことが好きだったことが糧になっていたのかなと思います。


●ハードルの高いPCゲームからのコンシューマー移植

――ゲーム会社に入社してご自身が手がけたのは?

柴田さん:『ONE~輝く季節へ~』のプレイステーションへの移植版『輝く季節へ』です。入社して1年後くらいの時。時間もスタッフもあまりなく、すごく苦労した記憶があります。それまでサターンへの移植ばかりだったのでわからないことだらけで。初のハードで色味も文字の書体もわからず、メモリーカードのこととか未知数で。


――コンシューマーへの移植とはどんな作業をされるんですか?

柴田さん:大きく言えば、当時はPCゲームのオリジナル版に音声データがないものが多かったのでまず音声を入れることが必要でした。音声が入っていないがゆえにプレーヤーの方、それぞれが頭に描いた声が既にあって。「イメージと違う」と言われるのは覚悟の上でしたね。PC版で音声がある場合でもキャストが変わることもありますね。
 次は表現的な問題で、エッチなシーンはカットしなくてはいけないんですが、削った部分を分量として増やさなくてはいけないだけではなく、そういうシーンにはたいがい本題に関わる大切な要素が入っていて(笑)。コンシューマーだからと表現を狭めていくとわからなくなっちゃうしといろいろ悩みますね。
 またプラットホームによってはPC版と違ったゲームシステムを要求されることもありました。PC版からのファンの方には「どうしてあんな形にしたんだ」と言われたこともあって。初めてプレーされる方だけでなく、オリジナルからのファンの方にも楽しんでいただけるようにすることは常に考えています。オリジナルのタイトルが本当に好きでないと移植はできないと思います。


――5pb.に入社された経緯を教えてください

柴田さん:キッドという会社がつぶれた後、5pbからお話をいただいて。既に同僚だった人もいたし、周りのスタッフも一緒に入る人も多かったことも入社を決めた理由の一つで、あと以前から一緒にお仕事をやらせていただいた方もいたので。まだ『メモオフ』の版権関係などどうなるのか、わからないけど、この場所で心機一転、頑張ろうと。


●キミも7のバディになって事件を解決しよう!『ケータイ捜査官7DS バディシークエンス』

――『メモリーズオフ』シリーズ以外で進行中のソフトについて教えていただけますか?

柴田さん:まずDS版『ケータイ捜査官7DS バディシークエンス』が3月26日に発売になります。テレビドラマのゲーム化という珍しいケースですが、放送終了月に何とか間に合わせることができそうです。そのメリットとして番組がまだ放送中だと中途半端な部分までしか描けないことが多いんですが、最終回分のストーリーまでしっかりフォローしています。
作品自体が子供から大人までファン層が広く、このゲームではストーリー部分は大人向けですし、子供に人気のあるキャラクター、7(セブン)の魅力もあますところなく表現できているんじゃないかと。おもちゃのケイタイ捜査官のDS版で、それにストーリーがついているような感覚で楽しんでいただければ。


――『ケータイ捜査官7DS バディシークエンス』のセールスポイントは?

柴田さん:明日未来アドベンチャーと呼んでいますが、プレーヤーの方が、この作品の主人公・網島ケイタになり代わって主人公になり、7の相棒・バディになって事件を解決していく内容です。かなり一体感が持てるのではないでしょうか?
 またミニゲームがいっぱい入ってまして、それも全部ストーリーに関係したゲームになっているので、「ドラマでこういうのやってた!」というシーンもあり、ファンの方には喜んでもらえるかなと思っています。もうひとつのポイントはケータイがロボットになるフォンブレイバーには7(セブン)、3(サード)、01(ゼロワン)の3体があるんですが、それに関してはすべてフルボイスです。
 そしてDSの画面がケータイの待ち受けみたいになっていて、たまに7が語りかけてくれるんです。普通に仕事中や勉強中にソフトを入れてDSの電源を入れておくと、セブンが寝ていたり、思わぬ表情などが見られてかわいいですよ。


――DSの2画面もうまく活用されているんですか?

柴田さん:上下でケータイを表わしています。上がディスプレー画面、下がダイヤルしたり、メールを打つ部分のテンキーになっています。さすがに電話はかけられませんけど。電話を掛けたい方はソフトバンクモバイルから出ているフォンブレイバーの電話を買ってください(笑)。


●フルボイスと新キャラが魅力の『ヒャッコ よろずや事件簿!』

――その他のリリース予定は?

柴田さん:PS2用ソフト『ヒャッコ よろずや事件簿!』が4月9日に発売されます。アニメ『ヒャッコ』のゲームで、オーソドックスなアドベンチャースタイルではありますが、大きな売りは完全フルボイスです。メインキャラクターには虎子、龍姫、歩巳、雀の4人がいるんですけど、それぞれの視点を随時切り替えながらお話を進めていきます。ある一人のキャラクターの視点を最後まで進めないと他の子のキャラでやってもどこかで行き止まってしまいます。それぞれ因果関係があるようになっていて、ちょっとしたシナリオパズルっぽい部分がありますね。作品が学園ドタバタもので、出てくるキャラもほとんど女の子で、しかもひと癖もふた癖もある個性的な子ばかりで、作品のことを知らない方でも各キャラクターと接することで魅力を感じると思うし、楽しめるんじゃないかと思います。


――ゲームならでは設定などはあるんですか?

柴田さん:ゲームからの新キャラとして四方小鳩という女の子が登場します。原作のカトウハルアキ直々にキャラ設定を作っていただいたものを、アニメ用に起こして使わせていただきました。原作にも登場していないのでどんな性格で、どんな行動をするのかなどは実際にプレーして接してみてください。
 それとこのゲームのために、アニメの主題歌同様、つんく♂さんに作詞作曲していただき、THEポッシボーに歌ってもらった「幸せの形」が主題歌になっています。既にCDが発売中で、初登場4位を記録しました。ED曲は虎子役の折笠富美子さんが歌う特別バージョンになっています。また限定版だけの特典として小鳩役の山本彩乃さんが歌うキャラソンが収録されていて、歌関係も豪勢だなと思います。


●『メモリーズオフ』を超えるヒット作を目指す

――いろいろな作品が目白押しですね

柴田さん:でもまだまだ言えないものもあって……。たぶん今年の前半は『ヒャッコ』と『ケータイ捜査官7』以外は『メモオフ』に関連したものになりそうです。これまで『メモオフ』を作っている時は他のオリジナルソフトの開発が遅れたりして結局、『メモオフ』の新シリーズが出てしまったというケースが多くて。今はディビジョンも他にあるので、『メモオフ』の次作が出る前に、うちから大きいタイトルが出せていればいいと思います。


――ゲーム業界は今、人気がありますが、目指している方にアドバイスをお願いします

柴田さん:まず言いたいことは休みはないよと(笑)。それでもゲームに関わりたければ、入り方と会社にこだわらなければ、この業界に入ることは難しくないと思います。必要なことはまずやる気で、いろいろ調べてうまく潜り込みましょう。またスケジュール管理がしっかりできないとダメです。ゲーム作りは共同作業であり、一人ひとりがしっかり仕事できないと他のメンバーに迷惑をかけるし、ゲームは完成できません。そしてゲームが好きなこと。ゲーム作りはキツイことが多いので好きでなければ続けていけないと思います。
 ゲーム業界はまだ定年退職をした人が見当たらない若い業界です。それだけ可能性もある業界なので、僕らと一緒にゲーム業界を盛り上げましょう!


――最後に皆さんへメッセージをお願いします

柴田さん:『メモリーズオフ』で築いたノウハウを生かして今後も楽しんでいただけるゲームを作っていきたいと思います。またPSP版『メモリーズオフ6~T-wave~』が5月に発売されますが、その後も『メモリーズオフ』の発売を予定しています。『メモリーズオフ7』ではなく、違った形になります。プラットホームも今までとは違うハード……皆さんがたぶん想像しているものです。まだ詳しいことは言えませんので、『メモリーズオフ』の公式ホームページをこまめにチェックしてください。これからも『メモリーズオフ』シリーズは続いていきますし、このシリーズを超えるヒット作が出るように頑張っていきますので、今後もよろしくお願いします。また『ケータイ捜査官7DS バディシークエンス』や『ヒャッコ よろずや事件簿!』のように、ジャンルなど問わずおもしろいソフトを作っていくつもりですので楽しみにしていてください。


●プロフィール
柴田太郎さん……5pb.ゲーム事業部ディビジョン1プロデューサー。キッド所属時に『メモリーズオフ』シリーズなどを手がける。主な代表作は『龍刻』、『ナイトウィザード The VIDEO GAME』、『メモリーズオフ』シリーズなど。

DS用ソフト『ケータイ捜査官7DS バディシークスエンス』
2009年3月26日発売
5,040円(税込)
発売:5pb.
(C)WiZ・Production I.G・バディ携帯プロジェクトLLP/テレビ東京
(C)2009 5pb. Inc.

PS2用ソフト『ヒャッコよろずや事件簿!』
2009年4月9日発売
限定版 9,429円(税込)
通常版 7,329円(税込)
発売:5pb.
(C)カトウハルアキ・フレックスコミックス/ヒャッコ製作委員会
(C)2009 5pb. Inc

<B>DS用ソフト『ケータイ捜査官7DS  バディシークスエンス』</B><BR>2009年3月26日発売<BR>5040円(税込)<BR>発売:5pb.<BR>(C)WiZ・Production I.G・バディ携帯プロジェクトLLP/テレビ東京<BR>(C)2009 5pb. Inc.

DS用ソフト『ケータイ捜査官7DS バディシークスエンス』
2009年3月26日発売
5040円(税込)
発売:5pb.
(C)WiZ・Production I.G・バディ携帯プロジェクトLLP/テレビ東京
(C)2009 5pb. Inc.

(C)WiZ・Production I.G・バディ携帯プロジェクトLLP/テレビ東京
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