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TVアニメ『いつか天魔の黒ウサギ』原作者&スタッフ座談会[前編]

TVアニメ『いつか天魔の黒ウサギ』大ヒット御礼!原作者・鏡貴也さん、山本天志監督、蜂屋誠一プロデューサー座談会[前編]

 この夏に放送スタートしたTVアニメ『いつか天魔の黒ウサギ』が大ヒットオンエア中!

 アニメの人気の秘密に迫るため、当サイトでは原作の鏡貴也さん、TVアニメ監督の山本天志さん、アニメプロデューサーの蜂屋誠一さんを迎えた座談会を行いました。 

 その模様を3回に分けてお送りします。前編の今回はアニメ化からスタッフ決定までの流れ、『いつか天魔の黒ウサギ』が生まれたきっかけについて語っていただきました。

●連載開始前からアニメ化を視野に入れた期待作『いつか天魔の黒ウサギ』

――『いつか天魔の黒ウサギ』のアニメ化が決まった経緯を教えていただけますか?

蜂屋誠一プロデューサー(蜂屋P):鏡貴也先生は『伝説の勇者の伝説』など既に大ヒット・大人気作品を発表していた作家さんで、『いつか天魔の黒ウサギ』はその鏡先生の新連載ということで富士見書房さんも「アニメ化するつもりで考えています」とすごく気合が入っていて。実際に大人気だったんですが、ある程度、原作が貯まらないとアニメ化するのは難しかったことと、『伝説の勇者の伝説』のアニメも始まったこともあり、このタイミングになりました。

鏡貴也先生(以下鏡先生):『伝勇伝』のアニメ化と同じくらいには『いつ天』のアニメ化のお話もあって。「同時期にやってみるのもおもしろいかも」という案もありましたが結局、『伝勇伝』のアニメの放送が終わるのを待った形です。
 
――アニメ化が決まった時、先生はどう思われましたか?

鏡先生:担当さんと二人で「やったー!」と言いました(笑)。『いつ天』を立ち上げる時に担当さんに「アニメ化するぐらい頑張ります」と言われつつ、「そのくらい頑張りますから当然、売れますよね?」とプレッシャーもかけられて(笑)。「売れなきゃ、売れなきゃ」とびくびくしながら担当さんと二人三脚でやってましたね。アニメ化の決定の報告がこちらに届くのは遅めなんです。何があるかわからないし、ぬか喜びになるかもしれないし。

――その報告を受けたのは何巻が出た頃ですか?

鏡先生:いつだろう? 2008年の11月に第1巻を出してから、隔月で3巻まで出していたので、たぶん4~5巻あたりかな。


●原作イラストのタッチをアニメで表現するため山本監督に決定!

――アニメ化が動き始めるとスタッフを編成していくと思うんですが、どのように決めていかれたんですか?

蜂屋P:一番苦労したのは監督かな。おもしろい原作だけど難しさもあって、謎解きの要素もあって。あと原作のイラストを描かれている榎宮祐(かみやゆう)先生の絵をどう表現していくか、すごく悩みました。山本天志監督は監督としてお迎えするのは初めてですが、自分がプロデューサーを務めた『鋼殻のレギオス』や『レンタルマギカ』などで絵コンテや演出をしていただいたことがあって、独特な色使いをされる印象がありました。また今回、大兎とヒメアのラブストーリーで押そうと思っていて、山本監督はそういう心情描写がうまい方なので。そしてサービス精神旺盛で。

山本天志監督(以下山本監督):(笑)。

蜂屋P:『いつ天』はファンタジーあり、バトルあり、ギャグありといろいろな要素が入っている作品なので、他のプロデューサーとも相談した結果、山本監督が適任だと。シリーズ構成の森田繁さんは『富士見ファンタジア文庫』編集部からの要望です。1シーズン前に放送の『これはゾンビですか?』で森田さんが書かれたお話を編集部さんが気に入っていらして。脚本には『伝勇伝』の吉村清子さんや、旧知のあみやまさはるさんに参加していただきました。

――山本監督が原作を読まれた時、どんな印象や感想をお持ちになられましたか?

山本監督:とにかくスピード感があって、すらすら読める作品だなと。1巻を読むのにたぶん40分かからなかったと思うけど「すごくおもしろい!」と。そして榎宮さんのイラストに衝撃を受けました。「この髪の毛の色はこのままやるしかないか」と(笑)。アニメにする時の、ある程度のイメージはすぐに浮かびました。


鉄大兎(CV:立花慎之介)

鉄大兎(CV:立花慎之介)

サイトヒメア(CV:高本めぐみ)<br>制服バージョン

サイトヒメア(CV:高本めぐみ)
制服バージョン

サイトヒメアメイン服バージョン

サイトヒメアメイン服バージョン

時雨遥(CV:美名)

時雨遥(CV:美名)

――アニメ化にあたって鏡先生からのオーダーはあったんですか?

山本監督:特になかったですね。

鏡先生:皆さんを信じてお任せして。『いつ天』の立ち上げ担当の通称・キャサリンがすごく情熱的で、スタッフさんとの打ち合わせでも、僕が言いそうな意見は先に全部言ってくれるので、僕は後ろから眺めてる感じで(笑)。

蜂屋P:キャサリンさんは毎回、シナリオ打ち合わせに来てましたね。

鏡先生:必ず、その打ち合わせ前に電話がかかってきて、「今日はこんなこと、話しますから」と。僕が言うのは「じゃあ、よろしくお願いします!」ばかりで(笑)。

蜂屋P:シナリオ打ち合わせの場でもキャサリンさんが先生に電話することも結構ありましたね。要件を話して最後に「締切は遅れさせないでくださいね」と釘を差すのも忘れずに。非常に作家さんに厳しい担当さんだなと思いました(笑)。


●原作『いつ天』は構想7年の新作! やりたいことをギュっと凝縮

――『いつ天』はどのように構想されたんですか?

鏡先生:7年くらい新作を書いてなかったので、その分、やりたいことも膨大にあって。それを取捨選別しながら入れたい部分を設定に詰め込みました。この作品を立ち上げる時はプロットを5本くらい提出したかな。担当さんから「これがいいです」と言われたプロットを「嫌です」と全然違う短編を送って。じゃあ出すなって話なんですが(笑)。
で、その短編は月光の過去話で、美雷との出会いや日向とのエピソードだったんですがおもしろいと言ってもらえて、さらに担当さんは最初、ピカレスクもので行きたかったらしく、だから月光のお話を本当に気に入ってもらえたのですが、僕はまた「嫌です」と言って、ヒメアと大兎の冒頭の話を見せて、「大兎と月光、二つの運命がぎゅるぎゅると合わさっていくような話がしたいんです」と説明したらGOサインが出ました。 あとセルジュとハスガのエントリオ兄弟の話も、世に出す予定がないこっそり作っていた漫画原作の主役二人を連れてきたり。

――謎解きや伏線が多いお話なので構築するのは大変そうだなと思いました。

鏡先生:書くこと自体、いつも大変じゃないことなんてないんですけど(笑)。小説を書く時に苦労するのはキャラが過去にあった出来事をまったく引きずらないで何かしたりしないようにしてます。アイデンティティを先に設定で組むんです。何を大事にしてるのかを。それを逸脱する言動は成長の要素が出てこない限りはないように、確認しながら書いてますね。「この人はこういうことをするかな」とか、経験を踏まえてこの出来事に遭遇した時、どんな言動をするか、とか。
『いつ天』の場合、小説で読むと前半で大兎が割と都合の良い判断をとる時は必ず伏線があって、前もって設定ができてます。例えば洗脳の件や恋に落ちる理由など。だからご都合的に見えることを書く時、「読者はどう思うかな?」と気になります。

山本監督:ゼロからアニメを見る人向けには、ここは説明しておきたいけど、後出しで説明しなくてはいけない作りになっているところが多くて(笑)。森田さんやライター陣とはかなり話し合いました。普通のアニメなら先に説明しておくのがセオリーだけど、それを説明しないのが先生のこだわりであり、ポイントなので、そこは苦労しましたしね。


紅月光(CV:中村悠一)

紅月光(CV:中村悠一)

安藤美雷[アンドゥのミライ](CV:野水伊織)

安藤美雷[アンドゥのミライ](CV:野水伊織)

黒守・フィリエル・優一(CV:諏訪部順一)

黒守・フィリエル・優一(CV:諏訪部順一)

上/セルジュ・エントリオ(CV:岡本信彦)<br>下/ハスガ・エントリオ(CV:鈴村健一)

上/セルジュ・エントリオ(CV:岡本信彦)
下/ハスガ・エントリオ(CV:鈴村健一)

紅日向(CV:福山潤)

紅日向(CV:福山潤)

●毎回気になる引きで終わるアニメにドキドキ

――謎が多いと初めて見る視聴者は置いてきぼりにあった感覚で離れてしまう人もいると思うんですけど、この作品は謎がいいフックになっていて、物語に加えて、キャラの魅力に続きが気になって、引き込まれてしまうんですよね。

蜂屋P:極端に言えば韓流ドラマみたいに作るしかないかなって。謎が解けないうちに、次の謎が出てきてビックリして次回に続く形で。
月光も1話では悪役みたいで、ヒメアを刺したアップのカットはすごくカッコイイんですが、あのシーンの理由がわかるとなるほどと思えたはずです。3話が説明編でしたが、今後も謎をきちんと説明していきますので、続けて見てください。

――毎回、本編の最後が気になる引きで終わるのがまたうまいですね。

蜂屋P:そこは正統派というか、昔っぽい作り方かもしれない。キャラで言えば、月光がギャグをやるタイミングが難しくて。

山本監督:原作を読んでいる方とゼロから見ている方のタイムラグがあるので、初めての人にはまだくずすの早いんじゃないかと迷って。

蜂屋P:そういう意味ではじっくりと時間をかけてるかもしれませんね。初めてボケたのが6話で、今のアニメの流れではゆっくりかも。僕は早くボケさせたかったけど、監督とキャサリンさんが「まだ早い」というやり取りがあって。月光の俺様キャラをちゃんと認知させて、仲間のことも大切にしてるのもわかったあたりでのタイミングになりました。
7話以降はいい感じで月光のボケが挟まれますのでお楽しみに。

(中編に続く)

<取材・文:永井和幸>

TVアニメ『いつか天魔の黒ウサギ』
テレ玉、チバテレビ、TOKYO MX、tvk、岐阜放送、三重テレビ、KBS京都、サンテレビ、TVQ九州放送でオンエア中!


第3話より

第3話より

DVD&ブルーレイ『いつか天魔の黒ウサギ』第1巻
9月30日発売
ブルーレイ 7,980円(税込)
DVD限定版 6,930円(税込)
DVD通常版 5,880円(税込)
発売:角川書店

☆ブルーレイ&DVD限定版 スペシャル特典☆
特典その(1):「いつ天」お楽しみDVD
・見てから読むか、読んでから見るか!鏡貴也書き下ろし新作ストーリーを映像化したピクチャードラマ「宮阪高校生徒会室日誌」(約15分)。
同梱小冊子「宮阪高校生徒会“裏”日誌」掲載の書き下ろし小説と連動!
生徒会室で、なぜか水着選びを始めるヒメア、ミライ、泉。キャッキャウフフの生着替えの果てに、月光と大兎は…。   
(出演:立花慎之介、高本めぐみ、中村悠一、野水伊織、堀川千華ほか)

特典その(2):原作イラスト 榎宮祐描き下ろし 全巻収納BOX
特典その(3):ピクチャードラマと連動した鏡貴也書き下ろし小説掲載。小冊子「宮阪高校生徒会“裏”日誌」
特典その(4):キャラクターデザイン 磯野智 描き下ろしイラスト使用ジャケット
特典その(5):映像特典/ノンクレジットオープニング、ノンクレジットエンディング「空蟬」バージョン

『いつか天魔の黒ウサギ 9』DVD付限定版
12月初旬発売予定
3,990円(税込)
発売:富士見書房
※予約締切日は9月3日!

PSP版『いつか天魔の黒ウサギ』
11月23日発売予定
初回限定生産版 8,190円(税込)
通常版 6,090円(税込)
発売:角川ゲームズ

>>『いつか天魔の黒ウサギ』公式サイト
>>TVアニメ『いつか天魔の黒ウサギ』公式サイト
>>ゲーム『いつか天魔の黒ウサギ』公式サイト
>>鏡貴也公式サイト
>>鏡貴也公式Twitter


こちらが榎宮祐描き下ろし 全巻収納BOXのイラスト

こちらが榎宮祐描き下ろし 全巻収納BOXのイラスト

<b>「いつか天魔の黒ウサギ 紅月光の生徒会室4」</b><br>2011年9月17日発売 630円(税込)<br>女の子にドキドキするのがフツーなはずの高1なのに、雷の悪魔娘と同棲しちゃってる生徒会長・紅月光。そんな彼が、今度はラブホ街にミライを連れて行き……!?

「いつか天魔の黒ウサギ 紅月光の生徒会室4」
2011年9月17日発売 630円(税込)
女の子にドキドキするのがフツーなはずの高1なのに、雷の悪魔娘と同棲しちゃってる生徒会長・紅月光。そんな彼が、今度はラブホ街にミライを連れて行き……!?

  

第4話より

第4話より

(C)2011 鏡貴也・榎宮祐/富士見書房/宮阪高校生徒会
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