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『ドットハック セカイの向こうに』松山監督インタビュー

『ドットハック セカイの向こうに』松山監督に、制作の裏話や、これまでのシリーズの話などをインタビュー

 架空のネットゲーム「THE WORLD」を舞台に、目に見えない脅威と戦う者たちの姿を描いた『.hack』シリーズ。その最新作が劇場用3Dアニメーションとなって、1月21日についに公開!

 今回はそんな『ドットハック セカイの向こうに』の監督を務める、松山洋さんに作品に対する想いを語っていただいていた。劇場版アニメーション制作の裏話や、これまでのシリーズの話など、盛りだくさんの内容をお楽しみあれ!

――まずは、作品を作ることになった経緯をお聞かせください。

松山監督 (以下、松山) 自分自身は、ゲームクリエイターではあるんですけども、2007年に映像作品を手掛けるチーム『sai-サイ-』というものを作り上げたんですね。ゲームクリエイターっていうのは、たくさんの引き出しを持っている者が多いので、そういった人間が映像を作ると、きっとおもしろいものが作れるだろうと思ったのがチーム「sai」を作ったきっかけです。2007年にチームを立ち上げ、オリジナルアニメ『.hack//G.U. TRILOGY』を作って、結果的にたくさんの方に評価を頂いたので、その実績を持って映像作品も続けていきたい、と思ってたんです。そんなことから、翌年の 2008年にバンダイナムコゲームスの鵜之澤伸さんから、「次は全国公開の映画で『.hack』をやれ。」って言ってもらって、それがすごく嬉しかったのを覚えています。


――リアルとゲーム内のCG描写が違っているのには、なにか理由があるのでしょうか?

松山 まぁ、変えないとよく分かんないですよね(笑)。いちばんよくないのが、いまなにが起きてるかがハッキリしないことなんですね。例えば、リアルとゲーム内のパートが似ていて、見ているお客さんが「ん? いまどっち?」ってなると、もうわけわからない作品になってしまいますからね。なので、いまリアルなのかゲームなのかが明確に分かるように差別化をしました。そこで、まず表現を決めたのは「THE WORLD」のパートです。見てくれる人がゲームにもっているイメージを再現するため、リアリティのある表現にしました。そのうえで、その表現の逆に位置するCGはなにかと模索した結果、この水彩タッチのやわらかいCGに辿り着きました。


――若手の俳優、女優を声優に起用した理由とは?

松山 今回は劇場作品として、作品の中に気持ちを入れてもらわないと、ちゃんと満足したものにならないと思って、これまでの作品と違いリアルパートに主観を置いているんですね。というのもリアルの日常というものを、作られた演技でなく、自然な演技で描いていかないといけないと思ったんです。なので、等身大の中学生を演じられる役者さんに声優をお願いしたり、モーションキャプチャーを使ったりして、リアルパートはより自然な形で演技をしてもらいました。

――映画の舞台を柳川に選んだのには、なにか理由があるのですか?

松山 すごくのどかで特徴的なところにしたかったんですよね。田舎ですら、知らないうちにテクノロジーの恩恵を受けていて、そこの中学生ですら大変な目に合うってことで、柳川に決まりました。最初はふつうに東京近郊を舞台にする案もあったんですが、そこでデジタルハザードが起きても当たり前な気がして(笑)。


――外でゲームをやってるシーンがありましたが、いままではあまり見なかった光景ですよね?

松山 じつは昔から「THE WORLD」は外で遊べたんですよね。ただ、これまでの作品はリアルに主観を置いてなかったので、そこが表現されなかっただけの話ですね。でも、携帯だけだとレスポンスが悪いので、熟練者になるとコントローラーを買うようになるんですね。それと、さらに臨場感を楽しむなら、あのFMD(フェイスマウントディスプレイ)をかけるというわけです。FMDもこれまでのような大きなものでなく、メガネのような小さなものになっているんですよね。


――さすが2024年、進化していますね!

松山 FMDもコントローラーも、もうケーブルすらない時代だと思うんですよね。12年後の未来なので、電源をさして充電するということはもうないんですよ。こういったものを考えるときは、いまある最新のテクノロジーの延長線上にある、ちょうどいい未来というものを考えてから作るようにしてます。バックボーンや細かい設定を作るのが、ゲーム会社の人間のくせですからね。今回の映像制作においても、そのあたりが大きく活きてると思います。

――主人公がすごいネットゲーム初心者っぽい行動してましたね。

松山 ゲームを慣れ親しんでいるひとたちに「あぁ、自分も最初はこうだったなぁ。」という気持ちになってもらえるように作りました(笑)。反面、ゲームをあまりやったことないひとには「自分がやったら、主人公のそらちゃんのようになるんじゃないかな。」という気持ちになってもらえるんじゃないかと思い、あのような演出にしたんですよね。収録終わったあとに、有城そら役の桜庭ななみさんがまったく同じことを言ってくれましてね、「あなたはホントに、そらちゃんそのものだ」って思いましたよ(笑)。


――ゲーム内とリアルでは声が変わっているキャラクターがいますよね?

松山 もともと「THE WORLD」って未来のゲームなので、おそらくいまのゲームみたいにいちいちキーボードで会話したりしないと思うんですよね。例えば、見えているキャラクターがすごいゴツイキャラクターなのに、喋っている人が可愛い声だったら合わないですよね? なので、「THE WORLD」というゲームを作ったCC社という架空の会社は音声合成の機能を入れるだろうと思って、そういう設定にしてあります。


――ゲームの中に見たことない船が登場していたようですが。

松山 あれはじつは、このバージョンの「THE WORLD」のギルドなんですよ。詳しくは映画を見て確認してほしいんですが、大きな船になればなるほど、ギルドも大きいものっていうことになりますね。


――そういえば、ゲームの新作の制作が進行中と聞いたのですが。

松山 この劇場版が2024年、その1年後の2025年を舞台にしたゲームの発表を控えています。


――今回の劇場版との繋がりはあるのでしょうか?

松山 当然あります。具体的にどういうものかはまだ言えませんが、劇場版を見ておかないと、真の意味でゲームは楽しめないと思いますね(笑)。劇場版を見たうえで、ゲームをやっていただくと「え!? そういうこと!?」って感じていただけると思います。もう、本当は早く発表したくてしょうがないんですよね、かなりとんでもないことになっているので(笑)。


――最後にファンの皆様にメッセージをお願いします。

松山 『.hack』というのは10年以上まえにスタートした一大プロジェクトです。この劇場版に関しては、我々の『.hack』10年の夢が詰まった作品なので、私としても特別なプロジェクトでした。ただ、これから劇場に足を運んでいただくお客様には、なんの準備もなしに軽い気持ちで観ていただきたいです。これだけは保証しておきたいのですが、今回の劇場版を観ると、観るまえよりもほんの少しだけ幸せな気持ちになって映画館を出ることができる作品になったと思いますので、ぜひ気軽に劇場に足を運んでいただきたいと思います!


【プロフィール】
松山洋 監督

福岡のゲーム制作会社「サイバーコネクトツー」の代表兼ディレクター。
代表作の『.hack』シリーズは全世界で300万本を記録、
『NARUTO-ナルト- ナルティメット』kシリーズは全世界で870万本を記録している。

【DATA】
劇場用3Dアニメーション『ドットハック セカイの向こうに』
1月21日よりテアトル新宿、シネ・リーブル池袋ほか全国公開中
(配給:アスミック・エース)


>>映画『ドットハック セカイの向こうに』オフィシャルサイト

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