『カゲロウデイズ』 じん(自然の敵P)氏インタビュー

『カゲロウデイズ』の誕生から、小説執筆までを自らが語る!! ボカロP「じん(自然の敵P)」氏インタビュー

初音ミク、IAといったVOCALOIDで制作した楽曲が、ニコニコ動画で1,000万以上の合計再生数を突破。今、ネットユーザーに最も注目されているクリエイターの1人、じん(自然の敵P)が、今年の5月、まさかの小説家デビューを果たした。楽曲の世界観を小説として新たに構築しなおした『カゲロウデイズ ?in a daze-』と『カゲロウデイズII -a headphone actor-』は、累計で60万部を突破。コミックス版『カゲロウデイズ』も発売され、様々なかたちでメディア展開が進行している最中だ。今回は、そんな『カゲロウプロジェクト』を仕掛けた、じん(自然の敵P)にインタビュー。彼のこれまでの経緯を辿りながら、作品にかける想いに迫った。

■ はじまりは、叔父さんがくれたキーボードから

――まず、ご出身は北海道だと伺ったのですが。

北海道の最北端にある利尻島です。車なら1時間で1周できるような小さな離れ島なんですけど、小学校まで過ごしてました。全校生徒が12人くらいで男子のほとんどいない小学校で、女子ばかりで寂しかった思い出があります(笑)。

それから、父親の仕事の関係で、北海道の各地を転々として、高校は『銀の匙』というマンガにでてくるような酪農学校で被服の勉強をしていました。ミシンでパジャマを作ったり、人形に着せるための服をデザインしたりしていました。

――音楽はいつから始められたのですか?

小学校の時からですね。僕の叔父さんがバンドでキーボードをやっている方でして、誕生日にキーボードを渡されたんです。当時、テレビもチャンネルがあまり入らないし、ゲームもなかったので、ずっとキーボードをいじって遊ぶことを強いられていました(笑)。

一時期少しだけ、キーボードを教えてくださる先生にも習ったんですけど、音楽理論を教えてもらうというよりは、好きな曲が上手に引けるようになるくらいの講習でした。そこで、T-SQUAREや山下達郎とかを弾いてましたね。

――山下達郎とは、ずいぶん渋いですね(笑)

当時、教則本にたまたま曲が掲載されていたんですよ(笑)。あと、母が好きだったこともあって弾いてました。それから中学校で吹奏楽部に入って、パーカッションがやりたくてドラムを練習して、高校時代に友達とバンドをやろうという話になって、そこでもドラム担当になりました。

――当時、バンドではどのような曲を演奏されていたのですか?

Syrup 16gやTHE BACK HORN、ASIAN KUNG-FU GENERATIONといったバンドのコピーバンドをやっていましたね。時折、友人にライブハウスに招待されて演奏したりする感じで、基本的にみんなと一緒に演奏できることを楽しむ雰囲気でした。

<b>じん(自然の敵P) プロフィール</b><br>1990年10月20日生まれ。北海道出身。作詞・作曲家、小説家。2011年よりニコニコ動画で動画投稿を始め、3作目の「カゲロウデイズ」で180万再生のスマッシュヒットを記録。<br>その後も続々とヒット作を量産し、第4回ニコニコ動画アワードでは「如月アテンション」がグランプリを受賞した。2012年5月に発売した1stアルバムはオリコンウィークリーチャート初登場6位を記録。同日に発売された本人執筆の小説「カゲロウデイズ -in a daze-」は15万部を突破、音楽に限らず小説家、マルチクリエイターとして活動中。

じん(自然の敵P) プロフィール
1990年10月20日生まれ。北海道出身。作詞・作曲家、小説家。2011年よりニコニコ動画で動画投稿を始め、3作目の「カゲロウデイズ」で180万再生のスマッシュヒットを記録。
その後も続々とヒット作を量産し、第4回ニコニコ動画アワードでは「如月アテンション」がグランプリを受賞した。2012年5月に発売した1stアルバムはオリコンウィークリーチャート初登場6位を記録。同日に発売された本人執筆の小説「カゲロウデイズ -in a daze-」は15万部を突破、音楽に限らず小説家、マルチクリエイターとして活動中。

■ 楽曲を投稿するまでニコニコ動画を知らなかった

――ロックに惹かれたきっかけなどはあるのですか?

当時は、近くにCD屋さんも全然なくて、自分から好きな曲を探すというのは難しかったです。ただ、友達のお兄さんが結構音楽についての知識のある方でして、「この曲聴いた?」とか「OASISとかって聞いたことある?」って、いろんな曲をオススメされたりしたので、そうしたところがきっかけだったと思います。

――ご自身で作詞・作曲をされるようになったのはいつ頃からなのでしょうか?

作詞・作曲は19歳の頃からだと思います。当時、音楽のレコーディングの専門学校で勉強していたんですけど、美術系の勉強をしている友達に、「今度ファッションショーをするから、その時に流す曲を作ってよ」って言われたのが最初ですね。その頃はRedioheadが僕の周りで流行っていて、DAWソフトを駆使した曲を作ったりしてました。

――初音ミクといったボーカロイドはいつ頃から使用されるようになったのでしょうか?

そのファッションショーのすぐ後だったと思います。これもまた、友達のお兄さんがVOCALOIDを使っていて、「こういうのがあるんだよ」って紹介してくれたんです。それで面白いなって思って、VOCALOIDを使って初めてつくった楽曲が、今もニコニコ動画で公開されている『人造エネミー』って曲になります。

――では、その当時からニコニコ動画については御存知だったのですか。

いえ、当時はニコニコ動の使い方が全然わかりませんでした(笑)。「ボーカロイドで楽曲つくったならニコニコ動画にアップしないと」とアドバイスされたので、「そういうものなのか」って思いながら、ニコニコ動画に登録したんですけど、プレミアム会員じゃないとこれができない、あれができないなどがあって、結局最初は、別の人に曲をアップしてもらえるように頼んでいました(笑)。


動画:『カゲロウデイズ』(http://www.nicovideo.jp/watch/sm15751190


――楽曲を投稿するようになってからはじめて、ニコニコ動画のカルチャーに触れたわけですか。

そうですね。ただ、自分の動画をアップしてもあまりちゃんと見られてなくて、また友達のお兄さんが「ランキング、何位になったよ」って報告してくれたり、Twitterアカウントをもつようにうながされたり、「ランキング上位に入ったら、ちゃんとお礼をしたほうがいいよ。ボカロPはそういうものだから」ってアドバイスされたりしてました。

――友達のお兄さんがじんさんをプロデュースしているみたいですね(笑)

そうですね(笑)。ただ、動画が上位ランキングに上がったら、コメントできちんと「ありがとうございました」と書くというのは、とてもいい文化だなって思っていて、今でも続けていることの一つですね。

――そして、そこから第三作目にあたる「カゲロウデイズ」が空前のヒットを果たすわけですが、当時ランキング1位に入った頃の気持ちはいかがでしたか?

最初は全く実感がわかなかったです。ちょうど、体調を崩して病院に行ったら、医師に「肺に穴があいている」と宣告されたばかりだったので、一位おめでとうって周りからは言われているのに、自分ではほとんど見られなかったんです(笑)。でも、当時は自分の中で納得のいく作品が完成したら、VOCALOIDで楽曲をつくるのをやめようと思っていたのですが、コメントなどで多くの反響をいただけたことで、続けてみようという意志は固まりました。

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■ 誰が書くのかと思っていたら「自分」でした(笑)

――じんさんの投稿している一連の楽曲は、歌詞の内容や楽曲の世界観が、他の楽曲ともリンクしている連作のように見受けられますね。

そうですね。他のニコニコ動画に投稿されている楽曲を見ていると、一つの動画の中で世界観を表現しようとする作品が多いことに気づいたんです。僕としては、ロックも、人を怖く思わせるような曲も、とにかく色々つくってみたかったのですが、バラバラのコンセプトの曲をバラバラのまま提出しても、埋もれてしまうかなと思いまして、ひとつのストーリーを考えて、世界観をそれぞれの楽曲で表現してみることにしました。

――そして、そんな歌詞世界を膨らませるかたちで、今回小説を書かれているわけですが、どのような経緯で小説を書くことになったのでしょうか?

今の担当編集の方が動画の『カゲロウデイズ』をみて、「ぜひ、この世界観を小説にしましょう!」と声をかけてくださったんです。もちろん、こちらも小説化の話はとても嬉しかったのですが、最初は「誰が書くんだろう?」って思っていました(笑)。そしたら「じんさんご自身が書きましょう!」っていう話で、「え!?僕、小説書いたことないですよ!」と。

――小説という全くジャンルの違う作品を手がけるというのは大変なことだったと思いますが…

さすがに、戸惑いましたね(笑)。でも、不思議なめぐり合わせですが、僕の祖父も小説を書いていたんです。北海道のアイヌ民族の研究をしながら、私小説を書いていたので、母に、自分が小説を書くことを報告したら、「まさか、そんなことがあるなんて」と、とても驚かれました。

ただ、執筆は本当に大変です(笑)。小説の基本的なルールや、気をつけなくてはいけないところもわからなかったので、まず、僕が好きな文章の表現ってどんなものだろうというところから考えて書きました。そこから「このシーンはどんな表現で伝えればいいんだろう」と推敲しながら、なんとか1巻を書き終えましたね。

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――実際に書くにあたって、特に気をつけた点はどういったところでしょうか?

やはり、読んでいてもキャラクターの個性(カッコイイとか可愛いとか)がつかめないと楽しめないので、作品中の会話劇は魅力的になるように努力しましたね。それから、起きた事件をどのような順番で語っていくかといった、語り方自体を工夫しました。実は小説版『カゲロウデイズ』の構想は最後まで完成していて、今はそのプロットを詰めている状態なんです。一度、あまりにも描写を一生懸命執筆していたら、女の子を助けるシーンのはずなのに、そのことをすっかり忘れてしまうなんて事件がありましたが(笑)、それだけ描写には熱をこめて手がけていると思います。

――そうして、楽曲世界の中でチラリチラリと垣間見られていた世界観が、具体的な描写で物語として浮き上がっていくのには、とてもわくわくさせられるし、早くも3巻が待ち遠しいところですね。

ありがとうございます。僕はそもそも、「世界は狭くない。発展した都市もあれば砂漠もある、すべて地続きでいろんなことがつながっているんだ」ってことを、楽曲や小説を通して表現したいと考えています。だからこそ、視聴者や読者の方が、僕の編み出した世界観から様々な想像をふくらませてくれていると、とても嬉しいです。なので、音楽、小説、漫画など、それぞれ好きな媒体から手にとってもらって、この『カゲロウデイズ』の世界観に触れていただけたらと切に願っております。

――本日はありがとうございました!これからのご活躍も大いに期待しています。

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『カゲロウデイズ』 
漫画:佐藤まひろ 原作:じん(自然の敵P) キャラクター原案:しづ、わんにゃんぷー
560円(税込)
好評発売中!

アニメイト限定特典も!
描き下ろしカバー+通常版のダブルジャケット

→本とコミックの情報サイト「ダ・ヴィンチ電子ナビ」では、じん(自然の敵P)と漫画家の佐藤まひろとの対談記事を掲載中。こちらも要チェック!

>>カゲロウデイズ
>>メカクシ団作戦本部

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