声優
『楽園追放』ゼロ号試写会舞台挨拶レポ

5回は見て欲しい! 釘宮さん、三木さん、神谷さんらが登壇した『楽園追放 Expelled from Paradise 』ゼロ号試写会舞台挨拶レポート

 水島精二監督と脚本・虚淵玄さん(ニトロプラス)と豪華キャスト&スタッフ陣で制作された『楽園追放 Expelled from Paradise』が2014年11月15日より全国の映画館で上映される。本作は、日本最高峰の3DCG技術を駆使した完全オリジナルアニメーション作品となっている。

 そして、2014年9月11日に新宿バルト9にて本作の「ゼロ号試写会」が行われた。この試写会にはメインキャストなどが登壇し、トークショーを開催。本稿では、舞台挨拶の模様をレポートでお届けする。完全新作ということで、登壇者も観客の反応が気になっていたようだったが、響き渡る拍手の音に安堵していた様子だった。作品に対する熱い思いが垣間見えたコメントの数々にご注目いただきたい。



【登壇者】
釘宮理恵さん(アンジェラ・バルザック 役)
三木眞一郎さん(ディンゴ(ザリク・カジワラ) 役)
神谷浩史さん(フロンティアセッター 役)
ELISAさん(主題歌担当)
虚淵玄さん(脚本)
水島精二さん(監督)

●自然と声が聞こえてきたキャスティング

 上映後、作品の余韻に浸る観客が今か今かと待ちわびていると早速、今回の出演者が登壇。三木さんが初っ端から会場の笑いを取り「そういうのやんなきゃいけないの?(笑)」(神谷さん)と突っ込みが入りつつ和気あいあいと一人ずつ挨拶を済ませていった。

 ナイスな掴みで場が温まったところで、水島監督から心境が語られた。「ゼロ号試写会という形ですが、かなりいい形でみなさんにお届けできたと思います。初めて見ていただくのでドキドキしていましたが、楽しんでいただけていたら光栄です」と来場者の表情にホッとした様子。今回、虚淵さんとのタッグは初ということだったが、水島監督も待ちに待った共演だったようだ。「企画自体は古くからあって、虚淵くんと組めるということも僕自身楽しみでした。僕らがゆっくりとしている間に、先行する3Dのアニメがいろいろと作られてしまいましたが……(笑)。しかし、3Dの新しい表現というものも含めて、一緒にできたのは幸せだなと思いますね」とコメント。

 それを受けて虚淵さんからは「企画の発端から実現まで本当に時間のかかった、思い入れのある作品です。ですが、ようやくこの一言が言える時が来たと思います。俺だって、人の死なない話を書くんだよ、って(笑)」と、渾身の一言が。

 水島監督によると、キャスティングは以外にも早い段階から構想があったそうだ。「キャラクターデザインと全体的なキャラクターの肉付けをしていくプロットからシナリオに進める段階で、どんな声で表現すれば見ている人に伝わるか、常にイメージしながら作っています。アンジェラに関して言うと、かなり早い段階からの釘宮さんの声が聞こえてきて、ディンゴもシナリオ中盤あたりで三木さんの声が聞こえてきて、フロンティアセッターを書き上げた時に神谷くんの声が聞こえてきました。その都度、「やってくれませんか?」と本人にこっそり連絡していました(笑)」今回の豪華キャスティングは水島監督ならではのセンスが光るもののようだ。

 「実は収録を2回やって、練習用の収録日を一日設けていただいたんです。一度アンジェラを我が身に通した上で本番の収録日に望むことができたので、劇場作品で一回きりの役を自分のものとして演じることができるか不安もあったんですけど、心の準備ができて自由に演じさせていただくことができました」(釘宮さん)と、意外な配慮があったようだが、これは釘宮さんの勘違いだったことが判明。「練習じゃないけどね(笑)。絵コンテの段階で全体的な内容や尺とかを検証するために、他の役者さんで仮アフレコというものはあるんですけど、今回恵まれたことに、その段階で釘宮さんと三木さんには出演OKをもらっていたので、ご本人たちに仮アフレコをやっていただいたんです。だから練習じゃないんですよ!(笑)」(水島監督)釘宮さんは照れ笑いをしていたが、この裏話は観客にとっていいお土産話になったことだろう。

 天の声にも近いキャスティングとは裏腹に、キャスト陣からは苦労した様子も伺えた。

 「アンジェラが一番最初に登場するシーンは、精神年齢が高い大人の成熟した女性の姿です。私があんまりそうではないので、どうなんだろうと思っていました(笑)。その後で若い肉体をまとっていくにつれて、大人の心を持っているけど外見は少女というのが不思議な感覚でした。演じながら共感できるところもあり、共感できないところもあり、四苦八苦しながらの収録ではありました」(釘宮さん)

 「本番を迎えるにあたり、一回練習のアフレコがあり……(笑)。でも、頭からお尻まで一回アフレコすると、本番で本の読み方が変わっちゃうんですよね。一回消化しちゃうと、見えないものが見えてきたりするので、最初とは違うものが出てきたりします。そこは足したり引いたりしながらチャレンジしました。初めて本を読ませていただいたときからディンゴが大好きでしたし、彼らの関係性や時間を短縮されたストーリーも好きでした。なので、マイク前に立つのがうれしかったですね」(三木さん)

 「収録に至るまでがすごく長かったんです。水島監督から「できれば神谷くんでやりたいんだよね~。でもどうなるかわからないから」とぼんやり言われて……(笑)。でも、水島監督が作る作品は大好きだったので、参加できるなら光栄だなと思っていました。そしたら、虚淵さんの脚本だということもわかって。僕は虚淵さんの作品には出演したことがなかったのでぜひとも出てみたいと思うようになりました。ただ、虚淵さんの脚本って台詞が難しかったりするじゃないですか。(「本当にごめんなさい」と謝る虚淵さん)そうなんですよ(笑)。それから「神谷くんになったから。でも台詞多いから頑張ってね」と言われて。出来上がった脚本を読んでみてもビックリするくらい喋っているんですよ。でも、ビックリするくらい面白かったんですよ。釘宮さんと三木さんが出演することは聞いていたので、シナリオもすんなりと入ってきたんですけど、これを俺はやるのかと(笑)。なので、毎日シナリオを持ち運んで、わからない単語を調べたりしていました」(神谷さん)

 キャスト陣の葛藤が見えたところで、水島監督からはキャスティングやアフレコに関する裏話が飛び出した。「アンジェラと中身を重ね合わせることはイメージとして最初からあったので、両方がわかる人というのは初期から条件としたありました。その中で釘宮さんに白羽の矢を立てました。フロンティアセッターは感情を抑え目にお願いしていますが、終盤には人間っぽくなっています。アンジェラやディンゴと出会って、コミュニケーションを取っていく中で人間らしさを手に入れていけばいいなと思っていました。思った以上にスムーズにアフレコは進みましたね」上映後にこのような話を聞くと、再び劇場で作品を見たくなったファンも多いのではないだろうか。もちろん、まだという方は参考にして上映日を楽しみにしていただきたい。

●客観的に1回、それぞれの視点で3回、振り返りで1回見れる作品

 作品の重要なシーンで流れるのはELISAさんが担当する主題歌「EONIAN -イオニアン-」だ。壮大なメロディと歌詞は歌うELISAさんも共感する部分があったようで「一曲のなかでいろんな展開があります。静かな始まりから、サビにかけて高揚感が出て、2番ではエレクトリックな音に変化していって、自然と自分の感情が乗っていくような曲になっています。レコーディングでも自分の状況とかと照らし合わせて自然に歌えましたね」とコメント。
 さらにここで、ELISAさんのライブも行われた。「作品を追いかけるように、どんどん楽器が増えていく曲になっています。素晴らしい曲になってうれしいです」と水島監督も言うように、作品とシンクロする形で、キャラクターの活躍やストーリーの盛り上がりを集約したような曲に、会場も聴き惚れていった。ライブ後には釘宮さんから「素敵すぎて涙が出た!」とのお墨付きに、「みなさんに注目されている作品の曲を歌えてうれしいです」とELISAさんから感動の言葉が贈られていた。

 今回上映されたものはゼロ号試写会用のもので、本上映ではさらに手が加えられる予定だ。細部までクオリティを上げた本作の姿をぜひとも映画館で活目していただきたい。舞台挨拶のラストは、今回の登壇者からのコメントで締めくくられた。最後にこちらをまとめてご紹介しよう。

■ELISAさん
 今回、この作品に関わらせていただいて光栄に思っています。上映をご覧になったみなさんは余韻に浸りながら、11月の上映を楽しみにしていただけたらうれしいです。主題歌共々、よろしくお願いいたします。


■神谷浩史さん
 僕はフロンティアセッターの役をふられているので、どうしてもフロンティアセッターの視点で物語を追ってしまいますが、今日みなさんがご覧になってどういった感想を持ったか非常に興味があります。フロンティアセッター、アンジェラ、ディンゴ、どのキャラクターかに感情移入をして見たかと思いますが、それぞれが持っている楽園というのがあって、それぞれが正義であって、ゆるぎないものでもあります。誰かの視点で見たとしたら、また別の視点で見ると違う答えが導き出されると思います。なので、最低でも3回は楽しめる、そんな作品になっていますので……(笑)。ぜひまた劇場に足を運んでくださるとうれしいです。


■三木眞一郎さん
 みなさん楽しんでいただけたでしょうか? 神谷くんも言っていましたが、メインキャラクターの3人が物語を引っ張っていきます。虚淵さんの話ですが、誰も死にません!(笑) アフレコもすごく楽しみで、ゼロ号試写会ということでみなさまに見ていただき、そしてここに登壇させていただけることもうれしく思っています。メインキャラクターは3人ですが、今日はみなさん客観的にご覧いただいたと思うんです。なので、あと3回です! いいですか? それぞれに感情移入してあと3回見ます。で、結果もう一回見るので、あと4回ですね。合わせて5回見ていただければと思います(笑)。

 ELISAさんの歌など、いろんなものがリンクしていく作品になっていますので、回数を追うごとにいろんなことに気づけると思います。本上映が始まった後に違って見える部分もあるかもしれませんし、今よりもさらにグレードアップしていると思います。今日の思い出を胸にしまって、また劇場でご覧になっていただきたいと思います。


■釘宮理恵さん
 今日は短い時間でしたが、盛りだくさんの内容で楽しませていただきました。みなさんが上映を見終わった後に余韻に浸りたいであろう時間を拝借してしまいましたが、みなさんと同じ時間を共有できてうれしく思っています。私はまだ完成版の少し前のようなものしか見ていないので、パワーアップしていくのを楽しみにしています。

 実は、今日パンフレット用のインタビューを受けました。パンフレットも買わなきゃいけないので、みなさんの財布が大変かもしれませんが……(笑)。しかし、内容が充実したボリュームのあるパンフレットになると聞いているので、そちらもELISAさんのCDと合わせて、お友達とかに「よかったよ」と言っていただけたらうれしいです。劇場公開も楽しみに待っていてください。


■虚淵玄さん
 思えばこのアニメは企画書を提出してからこうして完成するまで、僕が経験する中では一際長い作品です。5年前に企画書を出したときは『魔法少女まどか☆マギカ』なんて影も形もありませんでしたから。これができるまでに、自分の人生は激動の移り変わりを体験しまして、この日を迎えられて感無量です。今までの思い出が全部押し寄せる気分で、やっとここまでたどり着けたというのが本当に幸せです。この場に立ち会ってくださった方には感謝の言葉もありません。


■水島精二さん
 今回ご覧になっていただいたものは「ゼロ号」ということで、さらにブラッシュアップして今度みなさんに見ていただくのは完成版になります。どこがどう変わるというと、たぶんわからない部分だと思います。これからは僕らのこだわりを発揮するところなので……。ですが、今以上に伝わるものになると思いますので、劇場公開を楽しみにしてください。みなさんも言っていましたが、あと5回見るんでしたっけ?(笑) 5回見た後に、割と早い段階でパッケージになるので、それを手に取っていただき、ここ数年で盛り上がっている日本の3DCGアニメーションの現在における一番頑張っている作品としても楽しんでいただけるとうれしいです。まだもうちょっと僕らは頑張りますので、ぜひ公開を楽しみにしていてください。

■『楽園追放 - Expelled from Paradise -』
2014年11月15日 新宿バルト9ほか、劇場公開!

【スタッフ】
原作:ニトロプラス・東映アニメーション
脚本:虚淵玄(ニトロプラス)
監督:水島精二
キャラクターデザイン:斎藤将嗣
メインコンセプト&ビジュアルデザイン:上津康義
メカニックデザイン:石垣純哉
スカルプチャーデザイン:浅井真紀
グラフィックデザイン:草野剛
設定孝証・コンセプトデザイン:小倉信也
絵コンテ:水島精二、京田知己
CG監督:金子友昭、阿尾直樹
造形ディレクター:横川和政
色彩設定:村田恵里子
モニターグラフィックス:宮原洋平(カプセル)、佐藤菜津子
美術監督:野村正信(美峰)
撮影監督:林コージロー
編集:吉武将人
音響監督:三間雅文(テクノサウンド)
音響効果:倉橋静男(テクノサウンド)
音楽:NARASAKI
アニメーションプロデューサー:吉岡宏起
プロデューサー:野口光一
アニメーション制作:グラフィニカ
企画・製作:東映アニメーション

【キャスト】
アンジェラ・バルザック:釘宮理恵
ディンゴ(ザリク・カジワラ):三木眞一郎
フロンティアセッター:神谷浩史
ほか


>>『楽園追放 - Expelled from Paradise -』公式サイト

(C)東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ
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