『牙狼〈GARO〉』、脚本家・小林靖子さんインタビュー

「“業”は意識して描くものではない」 テレビアニメ『牙狼〈GARO〉-炎の刻印-』連続インタビュー企画5人目は、脚本家・小林靖子さん

現在放送中のテレビアニメ『牙狼〈GARO〉-炎の刻印-』の魅力を掘り下げる連続インタビュー企画。前回までは、主要キャスト4名にじっくり話を聞いたが、今回はスタッフ編。本作で構成・脚本を担当した、小林靖子さんにインタビューを行った。

近年だけでも『進撃の巨人』『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』など、テレビアニメの話題作を多数手がける小林さん。さらに初期は、特撮ドラマ界で主に活躍していたという、アニメ、特撮のファンにとっては誰もが知る人気の脚本家だ。本稿では、特撮ドラマのことにはじまり、『牙狼〈GARO〉』のこと、キャスト陣の芝居についてなど様々伺った。

小林靖子さんインタビューまとめ

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「キャラを描くものであって業を描くものではないと思っている」

――小林さんは特撮ドラマ出身とのことですが、そもそもなぜ特撮の世界に入ろうと思ったのでしょう?

小林靖子さん(以下、小林):そもそも、私の世代は(子どもの頃に)特撮ドラマがすごい盛んな時期だったんですよ。仮面ライダーとかウルトラマンとかゴレンジャーとかいろいろ始まっていて。子どもも多い時代なので盛りあがりがすごかったんですよね。だから自然に観る習慣がついていて、いつの間にか興味を持っていましたね。業界に入りたいと思い始めたのは、中学生のころでした。

――では昔からアニメでも恋愛ドラマでもなく、特撮だったんですね。

小林:というか特撮にかぎらず、アクション物が好きだったんです。時代劇のチャンバラとか刑事モノとか。そこで、アクションの中のドラマを書きたいなと自然と思うようになっていった感じです。特撮ならではの逆転劇とか、盛り上げどころを書くのがとくに楽しいですね。

――それを経て、今回はテレビアニメ『牙狼〈GARO〉-炎の刻印-』(以下、牙狼)の構成・脚本を担当とのことですが、小林さん自身はどのへんにこだわって脚本を書いているんでしょう?

小林:ホラーの不気味さとか、業の深さ。あと日曜朝の特撮とは違うエグさと残酷さを入れるところですね。私が書いた第一話と第二話は、まだ主人公の描写を主に書いている段階ではありますが、それでも、ホラーに取り付くほうの人間のサディスティックさだったりとか。そういうところは意識して書きました。




 

――かなり凄惨な描写もあったように感じますが、それは牙狼らしく深夜帯を意識していたんでしょうか?

小林:いや、それはないですね。子ども番組の場合は「ゆるくしなくちゃ」って思いますけど、深夜帯だからどうこうというのはあまり考えてないです。あと、ト書きを書いた段階だとそんなにわからないっていうのもあるんですよ。エグさや酷さって、映像ができてからわかってくる部分でもありますし。そういう意味では監督たちの判断も大きいですね。

――あと、メインキャストの方々に話を聞いたとき、第一話オンエアのタイミングだったのもあるんですが「ベッドシーンが長い」っていう話をいろんなかたから聞きまして。

小林:いやあ、あれはそれこそ監督の演出が大きいですから(笑)。ただ、あれって説明シーンなので。ただ説明させるだけだとどうしてもつまらなくなりがちだから、説明セリフっぽくなく会話で展開させたら長くなったんですよ。結果、ベッドシーンが長尺になったという感じです。書いた段階ではそこまで考えてなかったですよ(笑)。

――そうなんですね(笑)。では、今作のテーマともいえる“業”についても。脚本にどのように落としこんでいるのでしょうか?

小林:これも意識はしていないところですね。牙狼自体そういう作品なので目につくっていうのはあるかも知れないですけど、やっぱりキャラを描くものであって業を描くものではないので。

――キャラを動かせば自然と業も映し出されると。

小林:そうですね。あくまでも普通にキャラを描いてるだけ。意図的につけることはないです。ただ、キャラを動かす上で「魔戒騎士や魔戒法師はなぜ壮絶な戦いをしなければいけなくなったのか」といった“動機”に自分が納得出来ないと動かせないというのはあるので、理由はしっかり組み立てています。そうすれば、キャラクターは自然に動いていくので。

――そういう動機といった部分って、オリジナルストーリーならではの難しさでもありそうですね。

小林:原作モノの作品でももちろんそれなりに難しいですけど……。オリジナルストーリーで一番難しいのは、やっぱり立ち上げの段階かなと。

――では逆に、原作モノの難しさってどこですか?

小林:例えば漫画原作のアニメとすると、漫画もアニメも“絵”だから同じじゃん?って思われがちですけど、全っ然ちがうんですよ。アニメって、二次元は二次元ですけど、空間がある“擬似三次元”なので。例えば、走りながら会話してるシーンで、マンガだとあまり進んでなくても違和感を感じないんですが、アニメだとずーっと話してるのに少ししか移動してないってすごい気になるんですよ。空間があるから。そういう細かい調整は大変かなと思います。いかに不自然さを取り除くか。そうして、アニメとして見やすくすることで、見終えたときの感覚がマンガの読後感と同じになればいいなと思って書いてますね。

――お話を聞いている感じ、感覚で書かれている部分が多そうですね。

小林:そうですね。イメージで書いているところはあります。そういうふうにしかできないからそうなっているっていうだけかもしれないですけど(笑)。

――あとは、牙狼のキャスト陣についても。実際にお芝居を観た印象など伺いたいです。

小林:私は第一話と第二話だけ行かせていただいたんですけど、本当にベテランさんばかりで聴き応えがありましたね。「掛け合いだけ聞いていたいな」って思ったくらいです。外画のような、リアルで大げさではないお芝居に感じたのも、世界観にあっているなと思いましたね。

――キャスティングについては希望などあったんでしょうか?

小林:漠然と「お芝居のうまい人だといいなあ」とは思っていました。まあ当然なんですけど(笑)、牙狼はとくにお芝居が重要なんですよね。女の子が「キャー!」となるようなキャラもいないし、記号になるようなキャラもいないし、「?だべ」みたいなしゃべりかたをする特徴的なキャラもいないので、芝居でキャラ付けしていただかないといけないんですよ。だからとくにお芝居ができる人だといいなという希望はありましたね。そうしたらそれ以上の方たちが集まっていたので。本当にありがたい限りです。





 

――では最後に、今後の見どころをお願いします。

小林:そうですね……。今後は、実写版の牙狼のように単発エピソードがちょっと入ります。牙狼らしいところではあるのでじっくり観てもらいつつ、レオンとアルフォンソの成長といった“本筋”にも注目してもらえればと思います。本筋もこれからどんどん動いていくので。ぜひ今後も楽しんでください。

 仕事の合間を縫い、インタビューに応じてくれた小林さん。ちなみに、一部ファンのあいだで「書くのが速い」と言われていることについては、「どちらかと言うと遅いって言われます」「書く前にちょっと身の回り掃除しようかなとか、普通にしちゃいますし」と笑っていた。とはいえ、膨大な数の作品を手がけ、さらに人気作へと導いているのは事実。牙狼の今後にも期待がかかる。

 この連続インタビュー企画も次がラスト。次回は、林祐一郎監督の登場だ。最後までぜひともチェックしてみて欲しい。

[取材&文・松本まゆげ]

小林靖子さんインタビューまとめ

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作品情報

<「牙狼〈GARO〉-炎の刻印-」とは>
 テレビアニメ「牙狼〈GARO〉-炎の刻印-」は、監督に期待の新鋭・林祐一郎氏、シリーズ構成・脚本にはTVアニメ「進撃の巨人」などでお馴染みの小林靖子氏を起用し、声優陣も主人公のレオン・ルイスに浪川大輔さん(『Persona4』主人公/鳴上悠)、父親のヘルマン・ルイスに堀内賢雄さん(『ガンダムZZ』マシュマー・セロ)、王子アルフォンソ・サン・ヴァリアンテに若手の野村勝人さん(『I"s Pure』瀬戸一貴)、謎の女魔戒法師エマには朴璐美さん(『鋼の錬金術師』エドワード・エルリック)といった豪華声優陣を起用。
 これまでのファンはもちろんのこと、初めて『牙狼<GARO>』を見る方でも楽しんで頂ける新しい『牙狼<GARO>』です!

<牙狼<GARO>とは>
 2005年にテレビ東京系列で放送開始された特撮シリーズ「牙狼<GARO>」。最新のCG/VFX技術を駆使し、雨宮慶太監督が生み出す独特の筆文字を取り入れたスタイリッシュな映像で、大人のための特撮ドラマとして独自の歴史を築き続けている。
4月からはテレビシリーズ第4弾『牙狼〈GARO〉-魔戒ノ花-』が放送中。10月からは初のアニメシリーズが放送開始。

<放送スケジュール>
★10月3日からテレビ東京系6局、スターチャンネル(BS10ch)【無料放送】、CSチャンネル・ファミリー劇場にて放送START!

[テレビ東京]10月3日より 毎週金曜深夜1時23分~
[テレビ大阪]10月3日より 毎週金曜深夜2:10~
[テレビ愛知]10月3日より 毎週金曜深夜2:05~
[テレビ北海道] 10月3日より 毎週金曜深夜1時23分~
[テレビせとうち] 10月3日より 毎週金曜深夜1時53分~
[TVQ九州放送] 10月4日より 毎週土曜深夜1時55分
 ※第1話~第2話のみ土曜深夜 2時25分
[スターチャンネル(BS10ch)【無料放送】] 10月10日より 毎週金曜20時15分~
[CSチャンネル・ファミリー劇場] 10月17日より 毎週金曜23時00分~

<STAFF>
原作:雨宮慶太
監督:林祐一郎
シリーズ構成:小林靖子
キャラクターデザイン協力:武井宏之
アニメーションキャラクターデザイン:菅野利之
美術監督:橋本和幸
撮影監督:淡輪雄介
CG監督:金本真
音楽:MONACA
音響監督:久保宗一郎
アニメーション制作:MAPPA/東北新社
製作:東北新社

<キャスト>
レオン・ルイス(CV:浪川大輔)
ヘルマン・ルイス(CV:堀内賢雄)
アルフォンソ・サン・ヴァリアンテ(CV:野村勝人)
エマ・グスマン(CV:朴璐美)

>>TVアニメ「牙狼〈GARO〉-炎の刻印-」公式サイト
>>TVアニメ「牙狼〈GARO〉-炎の刻印-」公式ツイッター(@anime_garo)

(C)2014「炎の刻印」 雨宮慶太/東北新社
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