『仮面ライダーアマゾンズ』白倉伸一郎P×小林靖子さん対談<後編>

ヒーローは無条件で人間の味方する存在ではない――『仮面ライダーアマゾンズ』白倉伸一郎プロデューサー×小林靖子さん対談<後編>

「仮面ライダー」シリーズ最大の異色作とも言われる『仮面ライダーアマゾン』(1974年)をベースに、「平成ライダー」を築き上げたスタッフ陣によって完全新生された『仮面ライダーアマゾンズ』。「Amazonプライム・ビデオ」でのオリジナル版が配信されているほか、BS朝日(毎週日曜深夜1:00~)、TOKYO MX(毎週水曜22:30~)にて、再編集されたテレビ版が放送中です。

今作スタッフのキーマンとなるのが、平成ライダーをヒットに導いてきた東映の白倉伸一郎プロデューサーと、脚本家・小林靖子さん。配信オリジナル版が最終回を迎え、テレビ版の放送がはじまったタイミングでインタビューを実施しました。<前編><後編>および、白倉さんによる<仮面ライダー語り>の全3回にわたってお届けします。

<後編>では、小林靖子さんの脚本にフォーカス。悠と仁、違う信条を抱いた2人のアマゾンライダーの生き方を描いた『アマゾンズ』の物語について、そして白倉プロデューサーからみた"脚本家・小林靖子"について語っていただきました!

※本編のネタバレが含まれていますので、未視聴の方はご注意ください。


この記事を読まれる前に、こちらの「『仮面ライダーアマゾンズ』白倉伸一郎P×小林靖子さん対談<前編>」を読まれることをオススメします。

 

悠と仁、ふたりのヒーローが並び立った最終回

――ニチアサのライダーでは、1年で50話近いこともあり、お話の着地点を決めずにスタートするとうかがいました。今回の『アマゾンズ』は全13話でしたが、着地点や全話通じての構成を決めた上で脚本を書かれたのでしょうか?

脚本・小林靖子さん(以下、小林):決めてはいなかったですね。1クールしかないから構成を決めようか、という話は出ましたけれど。

白倉伸一郎プロデューサー(以下、白倉):けっきょく僕が反対したんです。気持ちはわかるけど、4話くらい進んでから考えようと言いました。

小林:結局そのまま、なし崩し的に最後まで行きましたね。

――白倉さんが反対したのはなぜだったのでしょうか?

白倉:小林靖子だからです。『仮面ライダーアマゾンズ』には、水澤悠、鷹山仁、駆除班、野座間製薬と、4つの勢力が出てきますけど、悠と仁はバラバラに動いているし、駆除班は大所帯だし、野座間製薬は大会社でよくわからない人たちが後ろで動いているし……。物語がどう進んでいくのか全然わからなかったんですよ。

これらすべてが絡む1つの物語が動く「世界」をどう構築できるか――。そこが勝負になるのかと思ったので、終着点などは靖子にゃんにお任せしようと思いました。その感覚は、ほとんど野生のカンみたいなものでしたけどね。

小林:今にしてみれば正解でしたね。「この作品に物語はない」じゃないですけど、最初は状況だけがある状態でしたから。

白倉:対立や融和といった形で、悠と仁の関係を主軸にしていこうという思惑はありました。たとえば、仁は悠に対して隠し事があって――といったドラマチックな展開を用意すれば、全体の構成としてうまいこといくかなと考えていたんです。でも、第1・2話を終えたあたりで、それはちょっと違うなと感じてきて。

小林:悠と仁は、強烈にお互いを想う関係ではない。悠は仁に助けてもらったこともありましたけど、あれは結果的にそうなった、というだけですから。

白倉:仁の言動は、悠に「お前はどうなんだ?」って突きつけるものなんですよね。それを受けて悠は、仁をどうこう思うんじゃなくて、自分自身について考えると。複雑な人間関係はありますけど、結局は個々人が自分に突きつけられていることを考えて、その結果としてドラマが織りなされていくのが『アマゾンズ』でした。要はそういう感じの話を、靖子にゃんが書いてきたんですよね。

――そこから最終的に悠が出した答えは、衝撃だったと思います。


白倉:まさかアマゾンを守るために戦うことになるとは思いませんでした。ふつう、この手の物語ってどうしても、少年が大人に教えを乞う関係性になるじゃないですか。今回の場合だと、世間を知らない温室育ちの悠が、仁の野生にふれて、世の中を渡っていき、どんどん大人になっていく――という物語。でも、それだと悠が仁に近づいていくだけの話になってしまうんです。せっかく対照的な2人を描いているのに、それが同じになっても何もおもしろくないじゃないですか。

悠が仁を見て変わっていくのは良いんですけど、仁も悠の影響を受けて変わったり、あるいはギャフンと言ったりしないかなと考えるようになっていきました。仁が悠に説教するのも、第4話くらいまではいいんです。でも、いつしかそれが逆転していって、それぞれが変わっていきながら、最後は並び立っている。そんなふうにできないかなと。ある程度の話数の脚本が上がった時点で、「悠はアマゾン代表みたいになりそうですけれど、そうしたいですか?」って靖子にゃんに相談させていただきました。それが正義なのかはどうでもよくて、悠という人間の生き方としてどうか、ということですね。

小林:個人的には、なるようにしかならないと思ってました。お客さんから総スカンを喰らう心配はしていましたけど、なるようになった結果ですから。白倉さんはじめスタッフ陣も良いって言ってくれましたし。

――仁に関しては、アマゾンを殺して人間を守るという線引きは一貫しつつも、最終回では怪物に見えるような描き方がされていました。

白倉:1周まわってそう見えますよね。そうした逆転が起こるとい自体はテーマではないですけど、「それがヒーローでしょ」ということを靖子にゃんが突きつけてるように感じます。まわりがどんな状況になっても、仁はブレなかった。そういったヒロイズムがありましたよね。どんなにいい加減に生きているように見えても、人間を守るという線引きだけはブレない。逆に言えば、仁にはそれしかなくて、そこに縋りついて生きている男だったのかなと思います。


白倉:実は悠もブレていないんですけどね。お客さんとしては人間の立場で見ているから、仁がヒーローのように映っていると思いますけれど。

小林:敵の中で育った人が、最終的に人間の味方になる――それはすごくヒーローですよね。悠の場合、アマゾンたちから見ると同じなんです。敵(人間)の中で育ったのに、最終的にアマゾンの味方になってくれた――つまりヒーローなっているんです。人間目線で主人公・悠を見ていた人からすると、どんどんアマゾン側に踏み込んでいく姿がもどかしく感じたかもしれません。

白倉:こいつはいつショッカーから抜け出してくれるんだ! って心境ですよね。

小林:そういう意味では、仮面ライダーファンが、仮面ライダーに裏切られる最終回になっています。ヒーロー番組を見ている側って、ヒーローは無条件で人間の味方になってくれる存在だと思っている節があるんですよね。

白倉:ヒーローの条件が何かにもよりますが、守るべきものがアマゾンか人間かの違いで、悠も仁もヒロイックです。2人とも間違いなくヒーローだと思いますね。

キャラクターそれぞれの人生を踏まえた描写が、結果として伏線に

――連続ドラマのプロデューサーとメインライターという形で、おふたりがはじめて組んだのは『仮面ライダー龍騎』(2002~2003年)でした。『アマゾンズ』も『龍騎』も、衝撃の最終回がありつつ、そこへ向けて丁寧に構成されていた印象です。

小林:『龍騎』は全然まとめられてないですし、初めての「仮面ライダー」だったからやりかたもわからず、筆もまったく進まなかったんですよ。物語の半分くらいまでは、なんとなくでやってましたね。最終回もあまりまとめられてないと思いますよ。『アマゾンズ』も『龍騎』も構成は作らずに、その場その場でおもしろいものを考えていく感じでした。

白倉:『龍騎』の時は、前半はまだ慣れてないということもあって、私からもすっごく注文をつけさせていただきました。それこそ、「こういう話にして」なんてことも言ったと思うんですよ。

小林:カニ(仮面ライダーシザース)が死ぬ話をやりましょうとか(笑)。

白倉:殺して! 容赦なく殺して!って(笑)。あとは「そういう意味のない予定調和やんないで」とか、いろいろ上から目線で注文付けてましたねぇ。でも中盤になるとこの方、「ライダーの数が足んないんだよね~」とか言い出して(笑)。「前半に殺し過ぎたんじゃないの? 後半に全然死なないじゃない。もう仮面ライダーじゃなくてもいいから、偽ライダー(オルタナティブ)とか出してさぁ」なんてことも言ってましたね。

――それでオルタナティブが生まれたんですね(笑)

小林:前半は特に、密度を求められている気がしたんです。だからどんどん物語が進んじゃって……。

白倉:サブライターとして入った井上敏樹大先生によって、北岡秀一/仮面ライダーゾルダなんかも登場したわけですけれど。そういったキャラクターたちを引き継いでも、靖子にゃんはきちんと活かしてくれるんですよ。靖子にゃんのすごいところって、構成力というより「回収力」なんです。

1年間のシリーズものとして決めていた道筋があっても、そのうちキャラクターが独り歩きして、枠から外れます。それを無理やり引き戻すのではなく、キャラクターを活かしたまましっかりと戻してくれるんです。その結果、あらぬ方向に行っちゃっうこともあるんですけどね。主人公が最終回まで生き残れなくなったり(笑)。

小林:それはみんなで決めたじゃないですか!(笑)

白倉:『龍騎』の最終回が近づいてきて、「このままじゃ主人公が生き残れないんですけれど……」って靖子にゃんに伝えたんです。どうやっても無理ですよと(笑)。その運命を全うさせるのか、それとも無理やりハッピーエンドにするのか、あの時は考えましたね。

小林:やっぱり、話が進むにつれて"こういうふうにしかならないキャラクター"というのが出てくるんです。

白倉:初めに設定を考えていようが、キャラクターが物語の中で生き始めるんです。そのきっかけは、本当にちょっとしたことなんですけど。

小林:作っていくうちに作品のカラーが出きてきますしね。

白倉:靖子にゃんは、それを上手に作り上げちゃうんですよ。『アマゾンズ』のテレビ放映が決まった時、再編集のために配信版をもう一度見たんです。改めて振り返って見てみると、構成がよくできているように感じるんですよね。

小林:今にして思うとね。

白倉:後半のあれは、ここで伏線が張られてたんだ! とか思うんですけど、実際には逆なんですよね。決めてあって伏線を張っているんじゃなくて、結果的に伏線になっている。架空のお話とはいえ、キャラクターそれぞれの人生をしっかりと書いていて、それが物語やキャラクターに反映されているんです。本能なのか計算なのか……。

小林:計算じゃないですね(笑)。

白倉:原作ものでも、他ライターからの引継ぎキャラクターでも同じです。それぞれを生きているキャラクターとして扱って、それぞれの人生をきちんと踏まえているんですよね。今日は褒めます(笑)。

小林:締切は破ったりしてますけどね(笑)

白倉:それはしょうがないです(笑)。でも『アマゾンズ』は、かなり守ってもらえましたよ。

プロデューサーと脚本家から見る“映像と脚本の関係”

――『アマゾンズ』では、脚本段階から映像になって大きく変わった部分などはあったのでしょうか?

白倉:脚本は文芸作品と違って、「解釈を任せます」という類のものではないですし、今回も大きな変更点はなかったと思います。キャストに言ってもらいたいセリフしか書いていないし、ト書きも監督に捉えてもらいたい意図しか書いてませんし。特に靖子にゃんは、かなり精密に画を想定した脚本を書いてくるんです。複数の解釈ができようのない書き方をしていると思うんですけれど。ただ、どうしても細かいところは現場で変わった部分もありますね。

ちょっと関連してですけど……誤解を恐れずに言うと、僕って脚本が大嫌いなんです。あくまで映像畑の人間なんで、脚本を作りたいとは思わないんですよ。テキストがベースになって映像ができる、というプロセス自体が非効率的に感じるんです。映像にとって脚本が不可欠だとするなら、文字にできないものは映像にできないということになってしまいますから。

「仮面ライダー」の変身シーンなんか文字にできないですよね。「ウルトラマン」でもそう。例えばスペシウム光線で怪獣を倒すシーンを文字にすると……「銀色の巨人が腕をクロスさせると、光線が出て、敵が爆発する」みたいな(笑)。文字で書くとありえないですよね。やっぱり、テキストを離れた映像の力というのがあって、脚本はそこから逆算してはじめて脚本が出てくるものだとは思います。

小林:私も映像がやりたいというのは同じです。今でこそ脚本家になっていますけど、文章を書くのはあまり好きじゃないんですよ(笑)。仕事だから書きますけど、締切がないと書けませんし。文章が苦手であることも、自他ともに認めています。このあいだ、田﨑監督に加藤貴子さん(水澤令華 役)をご紹介していただいた時も、「この人、文章書くのメチャクチャ苦手なんですよ。何をやりたいかはわかるんですけどね」っていう紹介の仕方で(笑)。

自分の世界を表現したいなら小説を書けばいいんですけど、でも私は映像がやりたいんですよね。プロになる前に脚本を勉強していたころ、"映像にならないことをト書に書いてはいけない"と教わって改めて気付いたんです。悲しそうとか、不思議そうとか書いたらダメ。目に映るものだけを書いて、その奥にあるものは書かない、書けないと。だから、逆にそこから多少解釈が変わってしまうのはしょうがないのかな、とも思っています。

白倉:解釈違いというのは、本当はありえないんですけど、監督にせよキャストにせよ、関わっている全員が自分のやりたい画を具現化しようとしますからね。そうなった時は、どちらが正しいんだというせめぎ合いではなく、"そのシーンで何をしようとしてるのか"を画と物語の両面でもう一度考えることが大事なんです。画だけやりたいなら物語の必要ないPVをやればいいし、物語をやりたいなら映像ではなく小説を書けばいいわけで。その両極端から折り合い付けながら、僕らはやっていかなければいけないんですよね。

――今のお話を踏まえて、改めて白倉さんと小林さんは良いコンビでいらっしゃる気がしました。

白倉:みなさんの前だからこうやって仲良くやってますけど、普段は大変なんですよ。二度と会いたくないっていう時もあるでしょうし(笑)。

小林:そんな関係なら仕事受けてないですって!(笑)

(了)

<前編><後編>とお届けしてきた『仮面ライダーアマゾンズ』対談は、白倉さんによる<仮面ライダー語り>編へ続きます。すでに制作決定した『アマゾンズ』シーズン2の現時点での構想や、白倉さんがいま考える「仮面ライダー」像などをうかがいます。

[取材&文・小林真之輔]

小林靖子さんインタビューまとめ

『牙狼〈GARO〉-炎の刻印-』、脚本家・小林靖子さんインタビュー
『仮面ライダーアマゾンズ』白倉伸一郎P×小林靖子さん対談<前編>
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『牙狼〈GARO〉-炎の刻印-』、脚本家・小林靖子さんインタビュー
映画『薄墨桜 -GARO-』脚本家・小林靖子さんへインタビュー

作品情報『仮面ライダーアマゾンズ』


仮面ライダー45周年記念プロジェクト
『仮面ライダーアマゾンズ』

Amazon プライム・ビデオにて全13話 配信中
BS朝日 毎週日曜深夜1:00~ 放送中
TOKYO MX 毎週水曜22:30~ 放送中

<イントロダクション>
仮面ライダー45周年記念プロジェクト、最大級の衝撃。
『仮面ライダーアマゾン』(1974)。仮面ライダー第4作にして、シリーズ最大の異色作が、平成ライダーを築きあげたレジェンドスタッフ × 最強アクションチームによって完全新生!
悠(はるか)と仁、養殖と野生。対照的な2人の"アマゾンライダー"を中心に、様々な登場人物の思惑が交差し、謎が謎を呼ぶストーリー。
Amazon プライム・ビデオの日本製作オリジナル作品第1弾として、映画を越える次世代の映像への挑戦。
いま、仮面ライダーと映像の歴史が変わる。

<アマゾンとは>
野座間製薬の研究で生まれたウイルスサイズの人工生命《アマゾン細胞》をヒト型にまで成長させた集合体の総称。
ヒトのタンパク質を好む習性があり、多くのアマゾンは人肉食を行う。2年前、研究所で起きた事故で、約4,000体の実験体が街に解き放たれた。
クモやモグラ等、様々な種類のアマゾンが存在する。

<スタッフ>
原作:石ノ森章太郎
脚本:小林靖子
監督:石田秀範/田﨑竜太/金田 治(ジャパンアクションエンタープライズ)
アクション監督:田渕景也(Gocoo)
音楽:蓜島邦明
撮影:上赤寿一/朝倉義人/岩﨑智之
キャラクターデザイン:田嶋秀樹(石森プロ)
キャラクター&クリーチャーデザイン:小林大祐(PLEX)
プロデュース:白倉伸一郎/武部直美(東映)
佐々木 基/梶 淳(テレビ朝日)
古谷大輔(ADK)

<キャスト>
水澤 悠/仮面ライダーアマゾンオメガ:藤田 富
鷹山 仁/仮面ライダーアマゾンアルファ:谷口賢志
水澤美月:武田玲奈
泉 七羽:東 亜優
志藤真:俊藤光利
マモル/モグラアマゾン:小林亮太
大滝竜介:馬場良馬
高井 望:宮原華音
三崎一也:勝也
福田耕太:田邊和也
前原 淳:朝日奈 寛
水澤令華:加藤貴子
加納省吾:小松利昌
橘 雄悟:神尾 佑
天条隆顕:藤木 孝 ほか

<主題歌>
「Armour Zone」
歌:小林太郎
作詩:マイクスギヤマ
作曲:山田信夫
編曲:高橋哲也
Original Soundtrack
NIPPON COLUMBIA.,LTD.
Taro Kobayashi by the courtesy of KING RECORD Co.,Ltd.

>>『仮面ライダーアマゾンズ』公式Twitter
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(C)2016「仮面ライダーアマゾンズ」製作委員会 (C)石森プロ・東映
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