アニメ
東京国際映画祭「ガンダムとその世界」富野監督トークレポ

富野監督が『Gレコ』を若い人たちに見てほしかった、本当の理由を明かす。 第28回東京国際映画祭特集上映「ガンダムとその世界」初日トークレポート

 第28回東京国際映画祭にて、10月23日(金)より開始された特集上映「ガンダムとその世界」。初日となるこの日、『ガンダム Gのレコンギスタ』(以下、Gレコ)の上映終了後に、富野由悠季監督によるトークが行われました。

 富野由悠季監督は、1979年に『機動戦士ガンダム』を務め、その後もガンダムシリーズのみならず『伝説巨神イデオン』『聖戦士ダンバイン』『重戦機エルガイム』など数々のSFロボットアニメの監督を務める、業界を代表するクリエイターです。また、2014年には『ガンダム Gのレコンギスタ』の総監督・原作をガンダムシリーズでは『∀ガンダム』以来、15年ぶりに務め上げ、話題を集めました。

 今回、富野監督が対談された相手は、コンピューターやテクノロジーを駆使して映像作品を作成している、筑波大学の落合陽一助教授。『Gレコ』の秘話のみならず、人類の進化やアニメの進化について語られた様子を皆様にお伝えします。

■近い未来には、富野監督のアニメを作り続ける『富野エンジン』ができる!?
 上映後に登壇した富野監督、落合氏ですが、さっそく富野監督は「この人(落合氏)は、東京国際映画祭、ここに呼んではいけない人間なんです!」と、富野監督らしい発言で観客も驚かせます。富野監督が「分かりやすく言うと、映像の時代は終わったんだよって平気で言う人です」と、落合氏を紹介すると、落合氏は「今回はそれをテーマに、やっていこうと思います!」と返し、トークがスタートしました。

 富野監督は「ありがたいことに、落合氏はガンダムのことが大好きなんです」と、落合氏がガンダムファンだということを明かします。落合氏は「僕は1987年生まれなので、一番最初に見たのは『機動戦士Vガンダム』(1993年放送開始)。何で首すっとぶんだろう? とか思って見てました(笑)」と、冗談を飛ばしますが、ガンダムシリーズなどを見ておかげで、自身の研究に繋がっていったそうです。

 また、落合氏は20世紀と21世紀では、映像の力が変わってきているともお話します。アニメの世界では3DCGのアニメ作品が増えてきていますが、そんな中でも『Gレコ』はあえて手描き作品。その理由について富野監督は「しょうがないからやってる、っていう捨て台詞があります。あと、偉そうな言い方をすると、20世紀が作り上げた文化があるから、やっぱり遺産になるような作品は作っておきたいなと。で、それを『Gレコ』でやってみせるぞ、と思ってなぜ悪いか? という粋がりはあります」という意気込みがあったことを明かします。

 手描きに関して落合氏は「初代ガンダムのロボットの動きのほうが、人間の感覚的に3DCGのガンダムより、ロボットとして来るものがありますよね」と、手描きのほうが好きだと語ります。それについて富野監督は「この1年ぐらい、我々の周囲でもそういう声が出始めました。手書きのほうがレア(生)だよねという言い方。だからこそ、この(手描き)文化は1ジャンルとして、残していきたい。そのため『Gレコ』のやり方は、間違いんじゃないかなと思います」と返し、手描きアニメの良さを残していく気持ちをあらわにしていました。

 また、落合氏は手描きアニメと同じ感覚が、3DCGでも遠い未来には味わえると語ります。「それが2030年、2040年とかになってきたら、絶対そこには到達するはずなんです。ただ、富野監督には長生きしてほしいんですけど、50年後も現役でやってるかは分からない。それだったら今ここで出せるベストで、手描きアニメ作って頂かないと。逆に言うと、我々がコンピューターで何をサンプリングして作ればいいのか分からない」と、その味わいは先人の遺産を基準にしないといけないと語る落合氏。富野監督も「なるほどね」と、その言葉に納得しつつも、「お世辞じゃないの?」と聞き返します。すると落合氏は「お世辞じゃないです。“富野エンジン”とかを作るのが俺の課題であって!」という野望を暴露し、会場からは笑いと拍手が送られていました。富野監督などの偉大な人の思考プロセスをコンピューターに落とし込み、アニメを作ってもらうという時代が来てもおかしくないのかもしれません。

■富野監督が明かす、ミノフスキー粒子と『Gレコ』の秘話
 そういった過去から未来へ、という話からガンダムの話題へ繋がっていきます。富野監督は、『機動戦士ガンダム』に登場した、無線を無効化する“ミノフスキー粒子”をなぜ生み出したのかを明かしました。「工学とか電気のこと考えてじゃないのね。映画を作るときに、ドラマというのは地球の裏側にいるヤツが、(ミサイルなどの)科学技術を使って、反対側のやつをやっつけるってドラマにならないのよ」と、ドラマを作るというのは、取っ組み合いをしないといけないと富野監督は語りまます。さらに「宇宙戦で取っ組み合いをするためには、遠隔兵器を壊す。で、壊すのはめんどくさいから、要するに無線を遮断するということを思いつきました」と、富野監督は工学のことを考えてではなく、ドラマのためだけにミノフスキー粒子を生んだと熱弁しました。

 ミノフスキー粒子の設定について、落合氏は「でも、秀逸ですよね」と賞賛を送ります。富野監督自身も「ガンダムの世界が揺ぎ無いのは、ミノフスキー粒子のおかげ。で、取っ組み合いができる。ということは劇ができる。もっと優しくいうと、愛憎劇ができる。愛憎劇というのはね、手の届くところで愛しあわなきゃいけないんだよっていう、原則を絶対に揺るがすことができないという意味では、改めて秀逸なアイディアだなって僕は感動したのね、今回(Gレコで)」と、設定を生み出してから15年経った『Gレコ』でも、ミノフスキー粒子が使えたことで改めて認識できたそうです。

 また、富野監督は「宇宙開発含めてとか、地球上の資源が消費されてることだとか、本当に次の世代のことを考えてほしいと思ったから、『Gレコ』みたいな舞台を作ったわけです」と、『Gレコ』を作るうえで思っていたことも明かします。また、『Gレコ』に登場する宇宙と地球を繋ぐ軌道エレベーター“キャピタルタワー”について、「実を言うと、ああいう絵が作りたかったから作ったんですが、あれだけの規模のものを動かすには、今あるエネルギーで賄えるかといったら、それは絶対できないと思ったので、本当に考えました」と、地球そのものがバッテリーかもしれないという想定で、雷を電力に使用するという設定を考えついたのだとか。富野監督はそういった設定について、若い人たちが思いついてくれたら、本当に実現するのではないかと考えているそうで「宇宙工学なども含めて、我々はもっと研究しなくちゃいけないことが一杯あるんだよ、ということを返事するために『Gレコ』を作りましたって話を、実をいうと今初めてします」と、『Gレコ』を作った理由も告白していました。

■富野監督「我々が本当にニュータイプにならなくてはいけない時代が来た」
 そのお話について、落合氏は「14歳の時に何見たか、で人生決まっちゃうんですよね。僕は『機動戦士Zガンダム』を再放送で見た世代なんですね。その後はもう、血気盛んになりまして、どう革新させようか、コンピューターをガリガリやりはじめました」と、自身の未来を決定付けたと語り、続けて「アニメを見て何かを受け取るというのは、小さい頃だとものすごい重要」と、アニメの重要性を後押し。

 富野監督はそのことについて、「バイオエネルギーで、ガンダム本気で動かそうとしてるんだよねって研究者に、数年前会いました。そういうようなところから、何かが起こるかもしれない、というのは年寄りとしてはやはり期待したい。つまり、申し訳ないけど、大人に分かってもらう話は作ってる暇がなくて、10~15歳の子たちがこれから、こうか! 何かあるかもしれない! という種作りがしたくて、『Gレコ』を作りました」と、『Gレコ』に込めた本当の想いも明かしました。

 また、若い人たちはもっとフレキシブルに考えなきゃいけないけど、教えるべき父や母はそういう考えがない、というお話から、落合氏が「最大の敵は親ですからね」というと、富野監督は「は?(笑)」と驚愕。続けて落合氏が「監督のアニメ見て育つと、みんな親は敵だと思いますよ(笑)」と言うと、会場からは笑いと共に拍手が送られていました。富野監督は「何でそこで拍手するんだよ!(笑) 私でさえ孫がいるけど、ものすごい強大な敵になっちゃってるわけね!」と、さらに笑いを誘っていました。

 さらに、人間やエネルギーの在り方の話の流れから、落合氏が「でも『Gレコ』を見た人は、宇宙に出ようって思いますから、大丈夫ですよ」というお話へ。富野監督は「えっ、宇宙に出ようと思う?」と驚いている様子で「ガンダムを作ってるときから、宇宙に出たいとは思ってません。つまんないもん。星座を見て、1年中楽しめるって感覚ないから。僕は、そばにお姉さんがいれば(笑)」と返すと、会場からも笑いが起きていました。

 最後に富野監督は、落合氏の考えている未来について同調し、コンピューターの発達より、人類の発展について考え「我々が本当にニュータイプにならなくてはいけない時代が来たんだな、ということを痛感しました」と締めくくり、トークは終了となりました。

>>第28回 東京国際映画祭 公式サイト

おすすめタグ
あわせて読みたい

ガンダム Gのレコンギスタの関連画像集

関連商品

おすすめ特集

今期アニメ曜日別一覧
2024年春アニメ一覧 4月放送開始
2024年冬アニメ一覧 1月放送開始
2024年夏アニメ一覧 7月放送開始
2024年秋アニメ一覧 10月放送開始
2024春アニメ何観る
2024年春アニメ最速放送日
2024春アニメも声優で観る!
アニメ化決定一覧
声優さんお誕生日記念みんなの考える代表作を紹介!
平成アニメランキング