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『俺妹』高坂桐乃はなぜ「ギャル」なのに「エロゲー」が好きなのか?

『俺妹』高坂桐乃はなぜ「ギャル」なのに「エロゲー」が好きなのか? 担当編集者が明かす!

 あの超人気ライトノベルシリーズ『とある魔術の禁書目録』や『ソードアート・オンライン』、『灼眼のシャナ』などの編集を務めた業界No.1レーベルとも言われる「電撃文庫」の編集長・三木一馬さん。同氏が担当編集を務めた作品は500冊近いとも言われていて、その累計部数は6000万部をゆうに超えています。

 そんな三木さんが自身の考え方や仕事法、そして自らが手がけた大ヒット作に関するエピソードを明かす著書『面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録(ライフワーク)』が、絶賛発売中! その発売を記念して、『面白ければなんでもあり』の一部を限定無料公開します。

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■五〇〇万部突破作品『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』が生まれたきっかけ
僕が担当する、その作家は、最初のシリーズを完結させて次の作品に取りかかろうとしているところでした。しかし、一冊書き上がった次作が打ち合わせの結果お蔵入りになってしまいます。僕も作家も、なにか「これだ!」と思えるものを求めていたからかもしれません。そんな、編集者と作家の、ある日の電話でのやりとりです。

「はい、伏見つかさです」
「もしもし、三木です。次の新作の件なんですけど……伏見さん、藤沢とおる先生の『GTO』に出てくるような『ギャル』っているじゃないですか」
「いきなりどうしたんですか?」
「あの子たちって僕らのようなオタク寄りの人間からすると怖いじゃないですか。自分の存在自体を否定されるような気がするから」
「ちょっと偏見入っている気がしますが……まあ、そうかもしれませんね」
「でも、そんな怖い子も、ピンチになる瞬間があると思うんですよ。たとえば親に怒られるとか」
「それはありそうですね、独り立ちしていない学生ですから、もしも親が『敵』になってしまったら、ピンチでしょうね」
「ギャルは攻めるのは得意だけど、意外と守るのは苦手なんですよ。だから、攻められたときに守ってくれる人がいるといいと思うんですよね」
「でも性格が、キツいんですよね? そんな子を誰か守るかなぁ」
「友達とかだと難しいかもしれませんが、たとえば家族だったらそうしてもいいんじゃないですかね」
「親が『敵』……だとすると兄か弟?」
「より甲斐性があるとしたら、お兄ちゃんでしょうね。で、いつもはケンカし合っている……いや、ケンカも起きないくらい『会話のない』関係なんだけど――」
「いざピンチになるとお兄ちゃんが助けてくれるっていうことですね。……でもそのギャルの妹、可愛く書けるかなぁ」
「子どもの頃、すっごい怖い不良とも、一本のゲームカセットがきっかけで仲良くなれたりしたじゃないですか。『あれ? コイツ意外と良いやつじゃん』みたいな、あの感覚でいきましょう」
「とすると、同じ趣味を持っている、とかですか?」
「そうそう。ギャルっぽいほうじゃなくて、伏見さんとか僕らと一緒の趣味を持っているほうがいいんじゃないでしょうか」
「一緒の趣味、ゲームとか、漫画とか……」
「エロゲー!」
「は?」
「エロゲー好きなギャルで妹とか、よくないですか!? 伏見さんが先日送ってくれた『ねこシス』で書いていたオタクネタ、面白かったですからあの方向性も取り入れましょう!」
「ちょ、ちょっと待ってください! 妹で、ギャルで、エロゲーが好きなんですか?」
「はい!」
「なんでこの妹は、そんなとんでもないことに!?」
「さあ~?」
「出た! いつものノリが……!! クッ……じゃあいま考えますよ! ばっちりストーリーに組み込まれてて可愛さにつながる設定を! えーと……ものすごく生意気で素直じゃなくて可愛くない妹! 兄を兄とも思っていない妹と、そんな妹を冷めた目で見ている兄!」
「ほうほう!」
「そんな仲の悪い兄妹が、よりにもよってエロゲーを通じて絆を取り戻していくハートフルストーリー! 絶対に可愛くないはずの妹を、超可愛く書く! そんな新作はどうでしょう!」
「……それが伏見さんの『性癖』ですか?」
「えぇ……? ま、まあそう……なのかな」
「わかりました。じゃあ、これを『家訓』にしましょう!」

これが、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(以下、『俺の妹』)が生まれた瞬間です。

■自分の『やりたいこと』を、作品の『家訓』にする
 たとえば、自分に『何かやってみたいこと』があったとします。イラストでも踊りでも歌でもマンガでも、なんでも構いません。その『やってみたいこと』をよりたくさんの人に見てもらいたい、聴いてもらいたい、読んでもらいたいのなら、きちんとした下準備と目的意識を持って『何かをやってみる』=『作品づくり』をすることが大切です。小説においても同様で、仮に『執筆』へノープランで挑んでも、良い作品を創り上げることは至難の業です。それは、コンパスや地図も持たずにジャングルで目的地を目指すようなものだからです。そんなことが可能なのは人気作家の極一部……まさに天才だけだと僕は思っています。ですから、多くの作家にとって『書き始める前の準備』は、とても大切です。物語の行き先を忘れそうになったとき、自分の進むべき道を思い出させてくれるからです。

 作家と新作の小説の打ち合わせをする際、僕は『書き始める前の準備』として、必ずその小説の『家訓』を決めています。誰しも、小説を書きたいと思ったとき、『やりたいこと』を持っています。小説を初めて書く人だろうと、プロの作家だろうと、それは変わりません。そして、「その小説で『やりたいこと』」というのは本来、その作品において絶対尊守しなければならない「鉄の掟」にするべきです。なぜなら、書き始める前に決めた『やりたいこと』からどんどんズレていくという現象は、小説を書き進めていく中ではしばしば起こることですが、そうなってしまった作品は完成度が低く、『面白さ』が少ないからです。いや、それならまだマシかもしれません。少なくとも小説のラストまでは書き切っているのですから。

 より問題なのは、『やりたいこと』からどんどんズレていってしまったことで作家自身が物語の展開や方向性に迷い、作品を完結させられなくなって(それ以上書き進められなくなって)しまうことです。ひとたびその状況に陥ってしまうと、もう泥沼です。「書いていてもぜんぜん面白いと思えない」「本当に書きたかったのはこんなものじゃない」「そもそも自分は何が書きたかったのか?」「あぁ書けない、書けない、書けない……」。ネガティブな感情や負の葛藤に頭が支配されると筆も遅くなり、書いては消して書いては消してを繰り返すようになってしまいます。そのうち、考えることや書くこと自体に嫌気がさすため、そのとき書いていた小説は多くの場合、お蔵入りになります(なんとか書き切ったとしても、そんな妥協に妥協を重ねた、作家自身がまったく納得していない産物が『完成品』と言えるでしょうか?)。

 そしてまたパソコンを開き、ワープロソフトの一行目に『やりたいこと』を書き始めるという負のループに陥ります。技術不足による諦め、モチベーションの低下、他に夢中になるテーマが見つかった、など理由は人それぞれ違うでしょうが、書き始める前に決めた『やりたいこと』が書く段階になってブレていき、結果的に筆が進まなくなってしまう、ということはプロの作家でもよくあることです。

 では、どうすればそんな状況に陥らず、最後まで楽しく自信をもって「面白い!」と思える作品を書き上げることができるのか。それは「その小説で『やりたいこと』を、何をおいても優先すべき『家訓』として定義する」ことなのです。そして、『家訓』を決めるのに最も重要なカギとなるのは、その作家自身の『性癖』だと、僕は考えています。
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 三木一馬さんの担当作(『とある魔術の禁書目録』、『ソードアート・オンライン』、『灼眼のシャナ』など)の世界観は、こうやって「性癖の暴露」によって生み出されていた!? 「性癖の暴露」を行った後、トップクラスの作家たちはどうやって物語を紡ぎ出していくのか? そんなアニメ化された作品の創作秘話や、『ソードアート・オンライン』の桐ヶ谷直葉のおっぱいはなぜFカップなのか? 朝田詩乃はなぜメガネをかけているのか? 『とある魔術の禁書目録』の御坂美琴のスカートの中身はなぜ短パンなのか? などなど、三木さんが担当した作品のヒロイン、主人公たちの誕生秘話や、作品秘話があますことなく描かれた『面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録(ライフワーク)』は、間違いなくファン必携の一冊!


■「面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録ライフワーク」概要
【書名】面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録(ライフワーク)
【著者】三木一馬
【カバーイラスト】abec
【仕様】四六判・ソフトカバー
【ページ数】296ページ
【定価】本体1,200円+税
【発売日】2015年12月10日(木)
【発行】株式会社KADOKAWA
【内容】第一線で活躍する編集者は何を考え、どう動いているのか? 今すぐ使える仕事のルールと思考法がわかる一冊。

■本書はこんな方にオススメです
・エンタメ業界に興味がある/働きたい
・編集者が何を考えているかが知りたい
・今ひとつ自分の仕事に自信が持てない
・やる気はあるのに、何をしたらいいか分からない
・面白い作品が作りたいが、煮詰まっている
・作家やクリエイターになりたい
・ラノベやアニメが好きで、その裏話が知りたい

■著者 三木一馬(みき・かずま)プロフィール
 株式会社KADOKAWA アスキー・メディアワークス事業局 電撃文庫編集部編集長、 電撃文庫MAGAZINE編集部編集長。 ≪電撃小説大賞≫最終選考委員。 2000年に上智大学理工学部を卒業後、 メディアワークス入社。 2001年、 電撃文庫編集部に配属される。 そこで、 『とある魔術の禁書目録(インデックス)』(累計1580万部)、 『とある科学の超電磁砲(レールガン)』(電撃コミックス。 累計680万部)、 『ソードアート・オンライン』(全世界累計1670万部)、 『灼眼のシャナ』(累計860万部)、 『魔法科高校の劣等生』(累計675万部)、 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(累計500万部)、 『アクセル・ワールド』(累計435万部)、 『電波女と青春男』(累計150万部)、 『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(累計135万部)、 『しにがみのバラッド。 』(累計130万部)、 『撲殺天使ドクロちゃん』(累計110万部)など、 ベストセラー小説シリーズの企画・編集を多数担当する。 今まで担当編集を務めた作品は約500冊におよび、 累計部数は6000万部を突破している。

《主な担当作品》
 『とある魔術の禁書目録』シリーズ(著/鎌池和馬、 イラスト/はいむらきよたか)、 『ソードアート・オンライン』シリーズ(著/川原 礫、 イラスト/abec)、 『アクセル・ワールド』(著/川原 礫、 イラスト/HIMA)、 『灼眼のシャナ』(著/高橋弥一郎、 イラスト/いとうのいぢ)、 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(著/伏見つかさ、 イラスト/かんざきひろ)、 『魔法科高校の劣等生』(著/佐島 勤、 イラスト/石田可奈)、 『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(著/入間人間、 イラスト/左)、 『電波女と青春男』(著/入間人間、 イラスト/ブリキ)、 『撲殺天使ドクロちゃん』(著/おかゆまさき、 イラスト/とりしも)、 『しにがみのバラッド。 』(著/ハセガワケイスケ、 イラスト/七草) ほか多数。

>>電撃文庫公式サイト
>>「面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録ライフワーク」特設サイト

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