映画
押井守監督は『ゴースト・イン・ザ・シェル』をどう観た?

「CGは所詮記号、スカーレットの存在感は決して色あせない!」――押井守監督は『ゴースト・イン・ザ・シェル』をどう観た?

 士郎正宗のコミック『攻殻機動隊』を原作とした、アニメシリーズのアニメ『攻殻機動隊』シリーズを原作とした実写映画、『ゴースト・イン・ザ・シェル』が2017年4月7日(金)から公開されています。特にその中心軸を占めているのが、1995年に公開された劇場映画『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』と言えます。

 そして、その劇場映画『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の監督と言えば、数々の名作を作り上げた押井守監督です。押井守監督が作り上げた世界に多大なる影響を受けて世に出た、『ゴースト・イン・ザ・シェル』。押井守監督の目にはどのように映ったのでしょうか?

 今回、監督ご本人にインタビューを実施。実写化が決まった時の話から、撮影現場に足を運んだ話、そして完成した映画を観て何を感じたかなどの話を伺ってきました! 映画をこれから観に行く方も、もう一度観に行く方も、ぜひ読んで下さい。

 

素子は誰が演じるのか? それが気になった!
――押井監督は『攻殻機動隊』が実写化するという話を聞いたとき、どのような印象を持たれましたか?

押井守監督(以下、押井監督):完成したら観たいとは思ったよ。中でも、(素子は)誰が演じるかは気になっていたかな。

――Production I.Gの石川社長と一緒に香港の撮影現場へ足を運んだそうですが、現場はいかがでしたか?

押井監督:実は撮影現場に行くのは最初は断っていたんだ。同じ現場に監督が、二人いちゃいけないってのは自分のポリシーだし、ルパート・サンダース監督(『ゴースト・イン・ザ・シェル』の監督)に失礼だと思ったから。

また、それは現場をリスペクトを「する」「しない」というレベルの話ではなく、関係者面して、撮影現場に行きたくないってのもあった。結果的には、石川に騙されて現場に連れていかれたわけだけど(笑)。

――そうだったんですね(笑)。

押井監督:ハリウッド映画の撮影現場というのは規模が大き過ぎて、どこで誰が何をやっているのかが全然分からない。そこは日本の実写の撮影現場の感覚とは違うところ。デカすぎて、何を見ればいいか分からなかったから、主演のスカーレット・ヨハンソンだけ見て帰ろうと思ったの。そしたら、スカーレットの演技が想像以上に良かったもんだから、良い気分になって帰れたんだよね。

――撮影現場を実際に見て、「良いものになる!」というのを実感されたということでしょうか?

押井監督:スカーレットの演じる素子が見事だったからね。絶対に良いものになるっていう、期待感が持てたよ。

――押井監督自身、今まで多くの実写映画を撮られてきたと思うのですが、ハリウッド映画の現場との違いというのはいかがだったでしょうか?

押井監督:日本とは全然違うよね。スタッフと取り巻きが多すぎて、カメラに近づくことすらできない。出演者も多くて、誰が主役で、誰がエキストラなのかも、全然分からない。

――それぐらい人がいるということですね。

押井監督:普通はカメラがへそであり、現場の中心なんですよ。カメラがある所が現場の最前線であるはずなのに、そのカメラが見えてこない。

――中心から遠い場所にしか近づけなかったと。

押井監督:やっとカメラを見つけたと思ったら、今度は何台もあって(笑)。どれが本当に使われているカメラなのか分からない。ロケーションだってブルースクリーンだし、実際に何を撮っているかさっぱり。

――ハリウッド映画の撮影現場を見て、同じく実写を撮られる監督ご自身は、羨ましいと思いましたか?

押井監督:規模が大きくなりすぎた映画というのは、大きすぎるタンカーと同じで舵が効かない。モーターボートを乗り回す爽快感もあれば、何万トンもあるタンカーを乗りこなす快感もあるわけで。どちらを面白く感じられるかというのは人によるだろうけど、僕には時間のかかるタンカーを操作するのは無理だと思う。最近どんどん気が短くなってきているし(笑)。どちらをとるのかと聞かれれば、自由が利くモーターボートの方をとりたいね。

 
スカーレットの主演は、シンプルで一番力強い解答
――実際に出来上がった映画を観て、どのような感想をお持ちになられましたか?

押井監督:面白かったよ。映像についてというわけではなく、スカーレットの存在感に尽きる映画だった。SF作品の世界観を役者の力で支えるというのは、並大抵のことじゃない。これは「スカーレットの映画だ!」とすら思ったね。

――ファンの方々が映画を観て、一連の『攻殻機動隊』の流れや、世界観に違和感を感じる人もいるかもしれません。それについてどう思われますか?

押井監督:好きかどうか、合うか合わないかなんていうのはあって当たり前。映画を「許す」とか「許せない」とか、そういうことではないはずだよね。

――なるほど。

押井監督:ただ、『攻殻機動隊』を実写でやるんだったら、そうしなければならない根拠を示して欲しかったというのはあった。何度も言うけど、あの世界観を実写で表現するのは並大抵のことじゃない。そんな中で、スカーレットという解答を良く出してくれたと思う。シンプルだけど、一番力強い解答だと思ったね。

CGの部分はどこまで頑張っても所詮は記号だから、時代と共に用済みになってしまう。それに対してスカーレットの存在感というのは、これから何年経とうが色あせない。実写の良さというのはそこにあるんだよね。

――ありがとうございます。これはネタバレになってしまうかもしれませんが、映画本編の終盤、素子と人形遣いがつながりのある存在だったアニメにはなかったシーンがありました。あの部分は、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の熱心ファンにとっては、引っかかる部分かなと思いますが、その点に関してはどう思われましたか?

押井監督:ハリウッド映画独特のやり方だよね。物語的には蛇足だと分かっていてもハリウッド映画として、仕方のない部分はどうしても出てくる。ハリウッド映画は、「100人いれば100人とも楽しめる映画」を作らなきゃいけないから。僕が想像するに土壇場で変更したんだろうね。

――最後に映画に関して、一言お願いします。

押井監督:気になっている部分があるので、また観に行くと思います。物語ではなく、今度は表現のレベルに注目したい。視点を変えることで、また違った解釈ができる可能性があるのかを確かめたいですね。

――それは、どのシーンですか?

押井監督:教えませんよ(笑)

――ですね(笑) ありがとうございました。

 
[文/島中一郎]

 
作品情報
4月7日(金)よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国劇場にて公開


近未来、脳以外は全身義体の世界最強の少佐(スカーレット・ヨハンソン)は唯一無二の存在。悲惨な事故から命を助けられ、世界を脅かすサイバーテロリストを阻止するために完璧な戦士として生まれ変わった。テロ犯罪は脳をハッキングし操作するという驚異的レベルに到達し、少佐率いるエリート捜査組織・公安9課がサイバーテロ組織と対峙する。捜査を進めるうちに、少佐は自分の記憶が操作されていたことに気づく。自分の命は救われたのではなく、奪われたのだと。―本当の自分は誰なのか?犯人を突き止め、他に犠牲者を出さないためにも少佐は手段を選ばない。全世界で大絶賛されたSF作品の金字塔「攻殻機動隊THE GHOST IN THE SHELL」をハリウッドで実写映画化。


監督:ルパート・サンダース 『スノーホワイト』
配給:東和ピクチャーズ


スカーレット・ヨハンソン、ビートたけし、マイケル・ピット、ピルー・アスベック、チン・ハン、ジュリエット・ビノシュ

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