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『Tokyo 7th シスターズ』「EPISODE 4.0 AXiS」茂木伸太郎総監督インタビュー

【アニメイトタイムズ独占インタビュー】『Tokyo 7th シスターズ』茂木伸太郎総監督|「EPISODE 4.0 AXiS」は成長とけじめの物語

あいもかわらず、人間の成長を描きたい

ーーそれではいよいよ、「EPISODE 4.0 AXiS」についてお伺いしたいと思います。実際に制作に入ったのはいつぐらいですか?

茂木:元となるシナリオプロットに関しては、数年前からあったので、プロットfixは11月末にはしていたと思います。だからキャラデザの作業が12月くらいからですかね。

ーー「EPISODE 4.0 AXiS」のアイデアは、初期の頃からあったということですか?

茂木:そうですね。全体のストーリーの大枠は、2014年のリリース前後のタイミングですでに文章として起こしてます。とはいえ、もちろん時代の流れや、この8年間で僕が感じたことを盛り込んでという形です。

ーー先ほどあまり作品内容について話しても……とおっしゃっていたので聞いてしまうんですが、プロットの作業や脚本の作業はどのように進められたんですか?

茂木:これはいつもと同じですね。数年前からどのシナリオも変わってないです。僕がやりたいプロットを持っていれば詳細に書くし、該当企画に対して特になければ、大枠だけ書いて、打ち合わせしてみたいな感じです。

今回は最初からプロットがあったのでかなり詳細に、それこそ重要シーンはそのまま脚本として使用できるくらいには書いてました。15シーンくらいかな。そのプロットを宍戸君(共同脚本:宍戸義孝氏)に見せて、打ち合わせして、構成含めて詰めてもらって、僕の方でさらに直してまた送って、の繰り返し。脚本制作も基本的には同じです。

ただ、そのやり方でやるとプロットよりもやはりどうしても改稿が多くなって複雑になるので、最終的にはすべて僕のほうでやらせてもらっています。宍戸君とはもう3年以上組んでいるので、今回も阿吽の呼吸でしたね。

前にセブンスシスターズの過去編シナリオ「スマイル」っていうのがあったんですが、そのあたりからそういう感じです。

ーーというと、時期的にはCi+LUSやCASQUETTE’Sの結成シナリオとかもですか?

茂木:そうですね、それと七花のもそうです。ドラマトラックもそんな感じで、最近はだいたいそんな感じで書いてます。

とはいえ、去年は月1でイベントシナリオもやっていたので、月光(シナリオ工房 月光)さんとも引き続きやっています。僕がやることは全く変わらないですが。

ーーなるほど。数年前からあったというプロットから今回リリースした「EPISODE 4.0 AXiS」で何か大きな変化はありましたか?

茂木:一番大きいのはAXiSメンバーの人格設定ですね。当時のプロットには詳細を書いてなかったので、ある意味一から書いてます。あとはもっとコニーとハルのみを主軸においたシナリオでしたね。実際にはもっと短かったんです。7~8話くらいの想定だった。

ーーそういった変化はどのようなところからきたのでしょうか?

茂木:元々この話のテーマというか様相って、「さぁ、本当の話をしましょう」ということだったんですね。

人間の成長を描こうとするなら、現実の話というか、現実にある壁の話をしないで描けるわけがないし、誰もが手をとりあっている「幸せな世界」での成長なんて慰みものにしかならないので。

ナナシスはそうならないで欲しいという気持ちが初期の頃からあったんだと思います。

それはやっぱり過去の長編、「EPISODE 4U」でも「EPISODE KARAKURI」でもそうしていたし。6年経った今でもあいもかわらず、人間の成長を描きたい。

だから本質は変わってないんですけど、より物語世界の中だけのことじゃなくて現実世界のことも取り入れて、より現実を強調したのが今回の話です。

ーー実際にエピソードの中でも「現実」という言葉がたくさん出てきました。それこそ「天神ネロ」については「現実そのもの」という表現をされていましたね。

茂木:AXiSについては、僕が現実的に現代社会、とりわけ日本の社会に感じている4つの怨念をそのまま入れています。それこそオブラートに包みもしないで放り込んでますね。その方がより生々しいんですよ。

で、その4つの怨念を背負い、なおかつそれを正そうとする人間がどうなるのか?というと、現時点ではああいう結末というか、選択肢しかないよ、ということです。

そしてそれさえも利用できる先鋭化された資本主義とシステム。システムっていうのは社会の仕組み云々というよりも、富の二極化とそれによって起こされる大衆のリベラルを求める風潮さえも含めてシステムになっているという意味ですね。

リベラルすぎる社会ってのがどうなるかっていうと、ちょうど「EPISODE 4.0 AXiS」で描かれてる人々のような動きをするようになると思います。より衝動的というか刹那主義、快楽主義になっていく。全員が全員そうなるってことではなくて、そういう人が増えていく。

そしてその風潮を利用してビジネスをしようとしている人たちも本当にたくさんいる。

ーー現実でも炎上商法や目立ったもの勝ち的な風潮、内情暴露など様々な形で話題になったりしていますね。思い当たるものが多いです。

茂木:ルールはルール。それにさらに暗黙の了解という社会性を重視した日本らしいルールがあると思うんですが、それを無条件に排除する今の風潮は怖いと思います。

物事について極度の透明化を求めるとその中にある美徳や恥の文化まで排除してしまう可能性がある。考え方は人それぞれなので。

しかしその実、個人的な美徳や思いやりで成り立っている物事や組織のなんと多いことかという。個人主義とリベラル主義を声高に謳うというのはそういう新しい問題、社会性の欠如、多様性という名のバランス崩壊を孕んでいるという認識です。

まぁ、ネロはそれでも訴えたかったんだと思います。しかし、現実はあまりにも根深い怨念が渦巻いている。それでさらに絶望して、一矢報いるという選択肢を選んだ。

本人は「ざまぁみろ」と言いたかっただけと言っていますが、それは「ざまぁみろ」と言ったところで現実は変わらないというのがわかっていつつの、諦観の一手に過ぎないんです。それでもなお、やらずにいられなかった彼女のことを思うとやはり悲しい。

先ほど言ったとおり、本当に世界を変えようとしたら、現代ではまだああなってしまうんだなと思うからです。ネロは最初からあの結末を決めていた。別な見方をすれば、極めて強靭な精神力だったなと思います。あの結末自体が目的だったわけですから。やはり見ようによっては狂人ですし、やり方が正しかったわけでもない。

ーー先ほどおっしゃっていた4つの怨念についてお話を伺えますか?

茂木: それは見たまんまですよ。シナリオを読んで、感じてもらったものがすべてです。

ーーでは、777☆Sの方はどうでしょう?

茂木: そうですね、先ほどの話ってそもそも「現実を描きたい」ではなく、「人間の成長を描きたい」というものが前提なので、実際に書いているうちに欲が出たという感じです。

天神ネロと直接問答をして彼女を救うのは難しくとも、自分ひとりでも考え方次第、世界との触れ合い方次第で、一歩前に進むことができるということをちゃんと表現してあげたかった。コニーとハル以外のメンバーについてはそういう意図でシナリオ分量が増えました。

ーーコニーとハルに関してはいかがでしょう?

茂木:もちろんいろんな話がありますけど、端的に言うと、さっきお話したあの一瞬、あの一瞬までのハルを見て「すごい、ハルじゃないみたい」という感想を持つ人がいたら、それは本当に正しいんですよ。そのちょっと前にオトも「狂ったのか?」って言っているようにね。

あの行動は見る人によってはやっぱり狂気なんです。でもネロがそうであるように、逃げずに真っ向勝負したときにはハルもそうならないとどう考えても勝てないんです。勝てないというか、勝ち負け以前にその場に立ってすらいられない。

だって相手は現実の怨念を背負って、さらに自分の命を賭しているわけですから。命を賭して訴えたいことがある人というのは、それほどまでに強いと思います。

それに、本質を見据えて、他人の人生を想像できる想像力を持ち、本当のことを言っている人のことはみんな一見狂っているように見えるものです。

それでハルはああいう話をするわけですが、あれはもう一瞬の瞬きそのものです。ネロは現実に絶望し、それでも一矢報いることに命を賭けた。ハルはそんな現実をただ受け入れ、それでも等身大の自分から逃げずに本心を話した。

一寸先は闇、次の瞬間にはそっぽを向かれているかもしれない、自分には理解できないと攻撃してくる人たちがいるかもしれない、世界は変わらないかもしれない、それでも自分の人生に立ち向かい、他者の人生を尊重しようとした。

その姿が希望でなくてなんなのか、という思いです。コニーについてはもうずっと昔から彼女の人間としての側面はちょっとずつ描いてきたつもりなので、今回本当の彼女の一面をようやく描けて嬉しかったです。

ーー本当に細かいところまでいろんな意味が含まれているのですね。

茂木:とはいえ、全体としてはエンタメです。驚いて欲しいし、続きが気になって欲しいし、ズキズキ、ゾクゾクしてほしい。

その上でもし今回の話で、心に痛みを感じたり、後悔を感じたり、感動や共感をしてくれたら、それはもう僕としてはこれ以上ないほど幸せなことですね。

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