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ガルパンコミック作家座談会【後編】野上武志らが語るガルパンコミックの最新事情!

野上武志×才谷屋龍一×伊能高史×葉来緑×むらかわみちお×吉田創によるガルパンコミック作家座談会! より強く作家性を発揮できるようになったガルパンコミックの最新事情!【後編】

2019年10月11日(金)から上映中の『ガールズ&パンツァー 最終章 4D ~第1話+第2話~』では、激しい揺れや光の衝撃にみなさん大興奮! この“体感”は劇場でないと味わえないぞ!

そしてガルパンコミックも新たな時代を切り拓く作品が続々登場! 今回は『プラウダ戦記』『樅の木と鉄の羽の魔女』の2作品について、作者自身より制作秘話を明かしていただきつつ、これからのガルパンコミックにはどんなものが求められるのかを考えてみました!

アニメイトタイムズがお贈りするガルパンコミック作家座談会【後編】。記事で興味を持たれた作品がありましたら、ぜひご一読あれ。さらなる『ガルパン』の世界が広がります!

▲聖グロリアーナのティーカップでお戯れになる先生たち

前回の記事はこちら

◆まずは『ガールズ&パンツァー 最終章』第2話を語る!【前編】

◆作家の挑戦と作品の懐の深さで築かれた、これがガルパンコミック史!【中編】

プロフィール

●前列中央:野上武志(のがみ たけし)先生
『ガールズ&パンツァー リボンの武者』

●前列左側:才谷屋龍一(さいたにや りょういち)先生
『ガールズ&パンツァー』『激闘!マジノ戦ですっ!!』
『フェイズエリカ』『樅の木と鉄の羽の魔女(戦術構成)』

●前列右側:伊能高史(いのう たかし)先生
『ガールズ&パンツァー 劇場版 Variante』

●後列右側:葉来緑(はぎ みどり)先生
『はじめての戦車道』『戦車道ノススメ』

●後列左側:むらかわみちお先生
『ガールズ&パンツァー 樅の木と鉄の羽の魔女』

●後列中央:吉田創(よしだ はじめ)先生
『ガールズ&パンツァー プラウダ戦記』
 

『プラウダ戦記』は持ち込み企画だったんです(吉田)

吉田創先生(以下、吉田):『プラウダ戦記』というのは、こちらからの持ち込み企画なんですね。

正直、記念持ち込みというか、受かる気もなくて持ち込んでみたんですけど、思いのほか好感触で(笑)。持ち込んだ俺のほうがビックリしたくらいな話で。

それまで、俺は『ガルパン』の同人誌で、キャラクターの弁護をしてきたんですよ。最初の頃、会長がみほに対して圧力をかけて、戦車道を無理やりやらせていたっていう、ちょっとヒールとして扱われていた時代があったんですね。会長は結局みほに謝ってないとか。

そういうのを、「もしかしたらこういう事情があったかもしれないじゃないか!?」ってことで同人誌に描くんですよ。西住しほの、みほに対する態度が酷いじゃないかって評価に対しても、「いや、これにはこういう事情があったかもしれないだろ!?」っていうのを描いてきたんです。

なんていうか、俺の中の本部以蔵(マンガ『刃牙シリーズ』に登場する柔術家)がですね、「ガルパンキャラクターは守護らねばならぬ」って。

一同:あははっ!

吉田:余計なお節介を焼くのが俺のガルパンマンガに対する関わり方なんですよ。

プラウダ高校が人命救助中の黒森峰女学園のフラッグ車を撃ったことを悪く言う人もいたわけです。そこで、「もしかしたらこういう事情があるかもしれないだろ!?」って描いたのが『プラウダ戦記』なんですよね。

すべては俺が勝手にしゃしゃり出てきて、庇っているというか言い訳しているというか、弁護してるっていうのが『プラウダ戦記』なんです。だから本編とはまったく関わり合いがないんですよね。

本編の「実際はこうではないか」というのは関係なくて、完全に自分の都合で、まさしく本部以蔵のように「俺が守護りたいやり方で守護る」っていうやり方なんですよ。

本編と違う性格とかキャラクター性を出しても、「俺が彼女たちの名誉を守護りたい」と思っている限りは、折れずにやろうと思っていますね。

野上武志先生(以下、野上):むしろ、吉田先生の企画を拾い上げた理由を知りたい。

フラッパー編集部・遠藤編集(以下、遠藤):最初、編集部に「『フェイズエリカ』の担当の人をお願いします」って電話がかかってきたんですよ。

才谷屋龍一先生(以下、才谷屋):名指し!(笑)

遠藤:才谷屋さんへの悪口とか聞かされるんだったらやだなぁって。

才谷屋:あははっ!

遠藤:そうしたら、『ガルパン』の持ち込みっていうお話で。40数ページくらいの読み切りで、ラストまで全部決まっている状態だったので、面白いんですけどそれだとコミックスにならないので「引き延ばしてください」と。

吉田:それで引き延ばしてみると、ここも足りない、あそこも足りないというのがどんどん出てきて、そのつじつまを合わせているうちに延びている感じですね。

みほ側の事情も描かなきゃいけないし、黒森峰側もプラウダ側もってやっていると、最初のプロットだと全1巻で終わるくらいの話だったんですけど、どんどん描写が増えていくんですね。

「これが終わったらこれ、次はこれっていう繋ぎ目をちゃんと作れよ」って遠藤さんがいつも言うんですよ。俺はわりとブツ切りで描いちゃうので、繋ぎ目を描いているうちに連想ゲームで増えていったというのがありますね。

――カチューシャの描き方として、あれは最初からOKな感じだったんですか?

▲『プラウダ戦記』第1巻より
 
遠藤:そうですね。プロットの持ち込みをいただいた時から、冒頭はそのまんまです。キャラクターの性格をどう変えるかは、作家さんの解釈で。それこそ、こうとかこうとか――

遠藤:を散々見てきたので、今度の人はこうか、みたいなもんで。

野上・才谷屋:あははははっ!

吉田:今さら驚かねーよって(笑)。

野上:吉田先生に関してはひとつ、エピソードとしてぜひ聞いていただきたいんですけど。

3、4年前にポーランド旅行で、銃を撃ったり戦車に乗るツアーに行ったんですよ。そうしたら吉田先生もツアーの一員として参加しておりまして、当時の私と鈴木貴昭氏に「自分はこういう作品を描いてます」って言って『ガルパン』の同人誌を渡して、「もし良ければ使ってください!」って言ってきたんですよ。

一応、僕はそれを遠藤さんに送ったんです。「こんな人が、こんなことを言ってましたよ」みたいな感じで。

遠藤:そう言えば、いただいた気がします。

野上:鈴木さんのほうは、受け取るけど「いや、俺に言われてもなぁ」みたいな。「俺、決定権者じゃないし」って。

才谷屋:あははっ!

吉田:あの頃はもう、何もわかってなかったんですよ(笑)。

野上:熱意に関しては、凄いなというのが非常に印象に残ったんですけど、それがいきなり連載を開始するという話を聞いて、「あいつ、やりやがった!」みたいな。

一同:あははっ!

才谷屋:アグレッシブさがついに実ったー! みたいな。

野上:人間、やってみるもんなんだなって(笑)。

伊能高史先生(以下、伊能):僕も遠藤さんから持ち込みだっていう話を聞いて、「熱いぞ!」っていうのが最初の印象でしたね。内容もガルパン愛に溢れる内容で。

才谷屋:普通はなかなかないですよね。そういう方向からっていうのは。

葉来緑先生(以下、葉来):確かに、コミカライズ持ち込み企画は『ガルパン』じゃなくてもあまり聞いたことがないですね。

才谷屋:うちのアシスタントで、プラウダ高校の話をやりたいって言ってたのがいたんですよ。その後、吉田さんが動くっていう話を聞いて、「あぁ~っ!」て感じで項垂れてるの。

むらかわみちお先生(以下、むらかわ):トーンダウンしちゃったの?

才谷屋:もう項垂れてましたね(笑)。

吉田:俺より面白いものを作れば、俺のほうがへにゃ~ってなっちゃうわけだから。それはもう勝負ですよ!

才谷屋:まぁねぇ。そこは勝負ですね。

野上:いろんな作家さんや同人作家さんが、作品でブン殴り合っているんだろうなって気がしますね。

遠藤:吉田さんの最初のネームを、バンダイナムコアーツの杉山さんに「こういう内容で始めていいですか?」って確認した時に、カチューシャの性格については「こんな感じで、かなり悪い性格のカチューシャですけどいいですか?」っていうのを、かなり念を押して、そこが有りか無しかは最初に確認しました。後から「こんな性格描写はしないでください」って言われたら困るので。

そうしたら「面白いと思います。やってください」って感じで。

――そこが読者から見たら新鮮でした。カチューシャってどのガルパンコミックでも、大体かわいらしく描かれるんですよ。

でも考えてみたら、あそこでみほのフラッグ車を撃ったカチューシャはこうだよなっていうのを改めて突き付けられて、あのプラウダ高校で隊長をやるだけのことはあるカチューシャの、アニメでは見たことなかった激しい一面に衝撃を受けたので、第三世代を切り拓いた作品にしたんです。

▲『プラウダ戦記』第1巻より
 
吉田:まず、カチューシャというキャラクターの一方の描き方として、カチューシャはかわいいお飾りで、ノンナとかクラーラとかの周りの人間が凄いからプラウダはまとまっていて、保有する戦車が強いからプラウダも強いんだと。
 
TV版の登場シーンだけだったら、そういう見せ方になるのもわかるんです。でも『劇場版』を経て、あれだけカチューシャを慕って楯になっていく連中が、ただかわいいだけで付いていくわけはないなと思ったんですよ。

吉田:カチューシャに能力とリーダーシップがあって、自分たちが困っている状況を改善してくれたりとかして、リーダーとしての実績を積んできたからこそ、あんなチビッコにも付いていくというのをまず描きたかったんですね。

▲『プラウダ戦記』第1巻より
 
吉田:だから1年生の入学時から始めたんですよ。入学時はただのガリ勉チビッコで馬鹿にされていたのを、3年生をやり込めたりとか、謀略を使って1年生をまとめたりとか――
 
野上:吉田先生、『プラウダ戦記』の内容を全部話しちゃってる感じになってるよ。
 
才谷屋:先々描かなきゃいけないネタを口で喋ってる感じになるから、ほどほどに。
 
吉田:まぁネタバレを言うとしたら、この先まほがどうなるのか。天才と当たった時にカチューシャがどうなるのか。天才に頼っている黒森峰はどうなるのか。っていうのがこれからの展開ですね。
 

――アニメ本編に登場する学校を舞台にオリジナル展開をすると、それこそ才谷屋先生が描かれた黒森峰女学園とは、オリジナルキャラクターが違うことになるわけじゃないですか。その点はそういうものという感じですか?

才谷屋:まぁ、それをファンの方が受け入れてくれているのなら、それでいいんじゃないのかなと思うので。そこを僕が何か言うことはないです。

吉田:むしろ才谷屋先生が描いた『フェイズエリカ』とは、意図的に変えています。『フェイズエリカ』の中でみほとエリカは濃い人間関係があって、お互い衝突したりもするんですけど、『プラウダ戦記』のほうではみほとエリカの接点はほとんどないんですよ。

そういうふうに、あえて変えて、違う世界観だということを描こうとはしています。

――みなさんは、この点は作家のスタンスとしてどのようにお考えでしょうか。公式コミカライズがたくさんあって、中には『スーパーガルパン大戦』的なサービスをされている作品もある。

でも、どうしたって自分が描いてきた世界観とは違うものも出てくるわけで、それはOKなんですか?

むらかわ:僕はほとんど被っていないので全然わからないです。

――確かにそうですね(笑)。

吉田:『スーパーガルパン大戦』になってもいいと思うんですけど、せっかく違う作家が描くんだから、違うほうがいいかなと思って俺は描いてるだけなんですけどね。

才谷屋先生の『フェイズエリカ』の世界観も面白いと思うし、黒森峰中心のマンガだったらそれもいいかなと思うんですけど、プラウダが中心の話なので、あんまり黒森峰を濃くしてもしょうがないから、分けていこうかなという感じですね。

――そんな中で、『プラウダ戦記』の聖グロリアーナ女学院が凄いなと。

吉田:あははっ!

▲『プラウダ戦記』第1巻より
 

――この先代隊長(正確には隊長代行)は強烈でしたね。

伊能:アールグレイ(笑)。

吉田:あれは一応ちゃんと、ネームを島田フミカネさんに見せたので(笑)。

――あと、かつてのダージリンも凄いですよね。

伊能:まだ成長していないままのダージリンですよね。

――この表情ですからね。

▲『プラウダ戦記』第1巻より
 
一同:あははっ!
 

――しかもスカートめくりという、『ガルパン』本編では絶対にやらないことを隊長がやっているとか。

吉田:パンツを見せなければオッケーです!

伊能:吉田さんの物語の作り方としてけっこう好きなのが、パロディを入れているところなんです。『ガルパン』はわりと戦争映画のオマージュを入れているじゃないですか。あんな感じでいろんな映画の名シーンっぽいのがところどころに使われているなって。

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