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NETFLIXアニメ『Levius(レビウス)』瀬下寛之&島﨑信長インタビュー

『Levius』瀬下寛之監督&島﨑信長さんインタビュー|島﨑さんの演技を監督がべた褒め! ギリギリを攻めたレビウスのかわいさと、ザックスの健気さとは

島﨑さんだからこそ表現できた、ギリギリの「かわいさ」

――キャスティングについては、どのような流れで決まったのでしょうか。

瀬下:まずはオリジナルのエッセンスを再確認する為、原作者の中田先生から意見をいただきつつ、その上でストーリーやキャラクターにおける、アニメ版独自の柱を作っていきました。

結果として「果敢に戦う草食系男子」という、どちらかというと本来は戦いそうにない繊細で優しい少年が、自らの過酷な運命に立ち向かう為に強さを求める…というアニメ版のレビウスができあがっていきました。

オーディションはその後に行ったのですが、島﨑さんの声を聞いた時、もうこの人しかいないだろうなと。僕はキャスティングを決める時、主要関係者に投票してもらう形をとっているのですが、レビウス役に関しては本当に満場一致でした。

島﨑:ありがとうございます!(笑)

瀬下:この(島﨑さん自身の)まさに草食感が本当にピッタリだったんですね。まあ、最近解ってきたんですが、実際には意外なほど肉食でたくましいんですけど(笑)。

島﨑:なかなかこの業界も厳しいですから。戦わないと生き残れないんです。

一同:(爆笑)。

瀬下:ともかくそのレビウスの草食感みたいなものを、役者さんとして絶妙な解釈をしていただいて。レビウスの強い部分と儚げな部分というのを、見事に演じきっていただけてありがたかったですね。

――島﨑さんは、瀬下監督の作品としては『BLAME!』(※3)にも参加されていました。そこから本作で主役を務めることが決まった心境はいかがでしたか?


※3:BLAME!
弐瓶勉氏によるSFコミックを原作とした劇場アニメ。『ネット端末遺伝子』を持つ人類を探し、巨大な階層都市をさまよう主人公・霧亥(キリイ)の旅路が描かれる。劇場アニメ版では、作中の1エピソードをアニメ向けに大幅な再構成が加えられており、原作とは異なる物語が展開した。ポリゴン・ピクチュアズが制作、瀬下氏が監督を務め、島﨑信長さんもフサタ役で出演している。


島﨑:まず原作をオーディションの時に拝見させていただいて。僕からプロの漫画家の方に対してこう言うのは失礼かもしれないのですが、めちゃくちゃ絵がお上手だなと。

なかなか日本で見ないタイプの漫画なのですが、読み進めていくとすごく面白くて。夢中になってオーディションの時に既刊として出ていたものは全て読みました。

その結果、ありがたいことに役をいただけたのですが、まず受かったということがすごく嬉しかったです。

というのも、『BLAME!』の時はフサタというキャラクターをやらせてもらっていたのですが、それがすごくいい役として印象に残っていて。

立場的には、村の少年たちの一人という位置づけのキャラクターだったのですが、その中でも喜怒哀楽の心の動きとか、ドラマがしっかりと描かれていたんですよね。アフレコの時に追加シーンが結構あったりして、演じ甲斐もすごくあったことを覚えています。

瀬下:(『BLAME!』での)追加シーンに関しては、島﨑さんが上手かったから欲が出たんですね。

島﨑:いやいやいや……! いいんですか、調子に乗っちゃいますよ!?(笑)

瀬下:その場のノリで適当に作ってるみたいに聞こえるかもしれませんが(笑)。

実際本当にありがたい話なんですが、この7〜8年、素晴らしい表現力をもっている声優さんばかりとお仕事させてもらってまして、さらにその中でも「はっ」とする……不思議な「エモさ」を感じる瞬間ってあるんです。幾つもの感情が絶妙に入り混じった瞬間というか。

監督というのは基本的に欲張りですから、できるだけそうした演技は拾わせてもらって、作品の中でより生かせるような形にしています。

島﨑さんは、そうした瞬間が出現する声優さんのお一人だと思っています。

――と、瀬下監督は仰られていますが、島﨑さんとしてはオーディションの時の手応えのようなものはありましたか?

島﨑:実はオーディションの後、他の役に決まっていたキャストの方々のお名前も聞いていたんですが、ものすごい方々ばかりで……。

さらに言ってしまうと、僕がレビウス役を受けた時にチラついていた(このキャストが演じるのではないかと思っていた)人たちだったんです。

最終的な配役が決まるまでには、声のイメージだけではなく、他の役者さんとのバランスとか、いろいろな要因が関わってくると思うのですが、その時の僕の中ではレビウスはすごく櫻井孝宏さんっぽいキャラだなとも感じていて。

※『レビウス』では、櫻井さんはビル・ウェインバーグ役で出演。

――ポリゴン・ピクチュアズさんの作品といえば、まず櫻井さんが出演されているイメージがありますから、それはとてもよく分かります。

瀬下:ビルのデザインそのものが櫻井さんのキャラっぽいんですよね。

島﨑:そうなんですよ! あの色素の薄い感じが……(笑)。

瀬下:『亜人』(※4)もそうですが、櫻井さんが演じられている役は、実写だったら櫻井さんがメイキャップをして登場しているようなイメージのものが多いですね(笑)。


※4:亜人
桜井画門氏のコミックを原作としたTV・劇場アニメ。死を超越した存在「亜人」と化した人々を取り巻く物語が描かれる。ポリゴン・ピクチュアズによってTVシリーズと劇場版が同時に制作され、瀬下氏はその両方で総監督を務めている。


一同:(爆笑)。

島﨑:それくらい印象が強い役者さんばかりだったので、そういう方々の真似をしてもしょうがないなと。

なので、「もし僕が演じるレビウスが中心になるのなら、こうなるんじゃないか」ということを想像しながらオーディションを受けさせていただきました。

もう本当に錚々たるメンバーなので、その中で主役を担当させていただくというプレッシャーもあって。

今回も収録はプレスコ(※5)で、普段のアフレコ以上に、現場でのやり取りを通して役作りをしていくことになるので、よりシビアな面もあるんですね。

なので、嬉しさ、ありがたさを感じると同時に、お話をいただいた時は武者震いのようなものをしていましたね。


※5:プレスコ
プレスコアリングの略称。予め作成した映像にあわせて音声を作るアフレコ(アフター・レコーディング)とは対照的に、先に音声を収録し、声にあわせて映像を作成するという制作方式。主に3DCGでのアニメで採用される方式で、ポリゴン・ピクチュアズの作品では、ほぼプレスコの形式で制作されることが多い。


――島﨑さんは、レビウスはどんなキャラクターだと認識されていましたか?

島﨑:先程監督が仰っていた、「草食系なのに戦うことに貪欲」とか「儚げ」というイメージもありましたが、それに加えて、格好よさよりも、等身大の存在というのを意識していました。

もちろん機関拳闘をしている時は、男としての強さという部分は出てくるのですが、とくに印象に残っているのが日常のシーンで。

優しさであったり、儚さであったりという一面の中にも、「この人は何か奥に持っているんだな」という芯の強さようなものを感じたんです。

なので、変に僕が格好をつけようとしなくても、レビウスって自然に格好いいんですよ。

普段は物腰柔らかだけど、やる時はすごいし、普段も身体の奥から来る“熱さ”のようなものを感じますよね。確かに草食系なんだけど、こいつはモテるだろうなと(笑)。

――実際に、作中でもレビウスには多数の熱い女性ファンがついていますよね。

瀬下:実はそのあたりはアニメ版レビウスのキャラクター性を補強するために入れました。

レビウスって儚げで優しく、そしてイケメンだけど身体はしっかりと鍛えていて、一見すごくモテそうな印象です。

けど、実際に接してみるとちょっとおばあちゃん子のような甘えというか、内面に12~13歳くらいの幼さがあるんです。

これって、見方によっては「気持ち悪い」のと、保護欲を刺激される「かわいい」のギリギリのラインだと思うんですよ。

――そう言われて見れば……。

瀬下:今回レビウスのキャラクター性として「このキャラクターはこうだ」とはっきりと定まった定義のド真ん中にいるんじゃなく、複数のイメージが重なる境界線にあった方がいいなと考えたんですね。

「気持ち悪い」にならない、ギリギリのところを攻めるために、島﨑さんの演技に頼った部分はありますね。

例えば、おばあちゃんとの会話のシーンでも、おばあちゃんに直接甘えるのではなく、どことなくの雰囲気でおばあちゃん子だなと感じさせるような。

島﨑:確かに今思い返すと、第1話の会話シーンでも、もっとおばあちゃんに優しくするような言い回しもあったと思うのですが、そうはなっていないんですよね。

気を遣っている一方で、おばあちゃんに甘えようとしている感じがどこかにある。

瀬下:丁寧過ぎると他人行儀だし、優しく甘えすぎると気持ち悪くなってしまう。ここが難しいラインなのですが、そこを攻めないと儚げで危うげな雰囲気にならないんですよね。

それを見事に表現してくれた島﨑さんは、こういうちょっと面倒臭い微妙な監督の想いを叶えてくれる素晴らしい役者さんだなと。

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