『Levius』瀬下寛之監督&島﨑信長さんインタビュー|島﨑さんの演技を監督がべた褒め! ギリギリを攻めたレビウスのかわいさと、ザックスの健気さとは
『レビウス』とは、ファミリーを描いた物語
――近年、パラリンピックの競技レベルがすごく上がっていて、どんどん注目度も高まりつつあります。そうした意味で、本作で行われている「機関拳闘」の盛り上がりも、現実に起こりそうなことだとも感じられました。
瀬下:パラリンピック的な話をすると、義手義足から連想しがちなイメージには、あえて行かないように意識しています。
『レビウス』の世界では、義手義足はごくごく当たり前のもので、選手だけではなく、それをサポートするメカニックを含んで高みを目指すという、F1のようなモータースポーツ的な側面が強いんです。
ただ、パラリンピックの影響を受けていないわけではなくて、事前調査はしています。興味深い点として、欧米のパラリンピックって、競技に対して観客が厳しくブーイングすることもあるらしいんです。
それは障がいがあるなしに関わりなく、純粋に高いレベルの競技スポーツとして観戦しているからで、本当の意味で同じ目線に立っているからだと思うんです。実際、そう遠くない未来には、生身の人間では到達できない記録はパラリンピックから生まれるかもしれません。これは機関拳闘にも共通している部分ですね。
実は『レビウス』では、彼ら(選手たち)が義手義足になった理由を描くことはほとんどしていないんです。描くべきはそこではなく、いかに競技の中で高みを目指していくかという部分ですから。
――試合中の描写なども、かなりリアルに描かれていて、これまでのポリゴン・ピクチュアズさんのどの作品とも異なる印象を受けました。
瀬下:いわゆるこれまでのボクシングアニメ的な作品とは少し違った方向性にしたいと考えまして。
さきほどF1を例に出しましたが、競技者の能力だけでは勝てない、高度なテクノロジーやそれら全てを支える仲間たちを含めた、チームとかファミリーとしての物語にしたかったという狙いがありました。
だからレビウスは絶対的に孤独ではなくて、常に仲間や家族に支えられる存在として描いています。そういう意味で、いわゆる「ハングリーさ」的なものはあまり強調していないとも言えますね。
島﨑:レビウスって結構頑固なところがあって、一度自分がこうしたいと決めたら譲らないんですよね。あれって、結構甘えっ子だなと。全然ザックス(CV:諏訪部順一さん)の言うこと聞かないし(笑)。
瀬下:あれで困らされるザックスがまた愛らしいんです(笑)。
――ザックスは本当に良いキャラクターで、自分も大好きです。
瀬下:『レビウス』って、実はある種の過保護アニメです(笑)。獅子が千尋の谷に我が子を突き落とす逸話は、今は完全に「アウト」になったと思います。逆に過保護が一概に悪いことだと言えない時代なんじゃないかと僕は思っているんです。
周囲の深い愛情や献身によって、過酷な運命を背負った少年が、克服する力、希望をつかんでいく。『レビウス』で描きたいのは、そのあたりです。
――なるほど。まだまだお話をお聞きしたいのですが、お時間です。最後に、アニメを楽しむポイントやヒントを教えて下さい。
瀬下:これまでのボクシングアニメの主人公たちとは一風異なる、戦う草食男子レビウスの儚げなクールさにご期待ください。そして、脇を固めるキャラクター達も魅力に溢れています。
とくに注目して欲しいのは、ザックスの健気さ、愛らしさですね。見た目はヒゲの太ったおじさんなんですけど(笑)。ザックスを筆頭にレビウスを支える家族・仲間たちのドラマ全部で感動できる作品になっています。
ボクシングアニメではありますが、女性にも楽しんでいただける内容になっていると思いますので、ぜひご覧ください。
島﨑:今、瀬下さんが仰ってくれたんですけど、僕もザックスのことを言おうとしていました(笑)。
収録が進む中で「ザックスがかわいい」とキャスト陣の間でも大人気で。かわいいだけじゃなくてしっかりドラマももっていて、いろいろなキャラクターがザックスと絡むとより魅力が引き出されて、さらに泣けるんですよ。
あとは映像と音も本当に素晴らしいです。本作はいわゆる「スチームパンク」的なジャンルに該当する作品でもあるのですが、煙と機械の表現とか、音の一つ一つをとっても、すごく格好よくて。
先程、瀬下監督は、キャラクターとか演技のことについて触れて下さったのですが、多分何も考えず、映像だけを見たとしても楽しめる作品だと思います。
とくに試合のシーンでの身体の動きのスピード感がすごくて、カメラが引いているシーンでもすごく見応えがあるんです。
現実の格闘技でも、観客席から見る選手ってすごく小さいと思うんですけど、しっかりと動いていることが伝わってきて、たくさんの人達が熱中する理由も分かるなと。
音の方のこだわりもすごくて、環境によって聞こえ方も変わってくると思いますので、できるだけいい環境で視聴していただきたいです。
そういう細かい部分までしっかりと作り込まれていて、もう全部が面白いと言いきれる作品ですので、是非ともご覧になっていただければと思います。
――ありがとうございました!
[取材・文/米澤 崇史]
アニメ『Levius』作品情報
全編横書き&左開きというグローバルスタイルで描かれた『Levius -レビウス-』(中田春彌著、集英社 ヤングジャンプコミックス・ウルトラ)が待望のアニメ化! 改造した義手をまとい、人体と機械を融合させて戦う究極の格闘技「機関拳闘」に没頭する少年・レビウスが、その才能を開花させていく。
緻密なタッチで描かれる、機械の重厚さや人物の細やかな表現もさることながら、レビウスの謎に包まれた過去や強敵との闘いなど、これまでにない斬新なスタイルを確立している。
ストーリー
新生歴19世紀。アガルタ・ウォーター採掘の領有権を争ったフォサニア紛争が終結して5年。あらゆる動力に”蒸気”を用いるこの時代では人体に機械を融合させて戦う機関拳闘なる格闘技が隆盛を極めていた。
戦争によって父親と自分の右腕を失い、母親も植物状態となった孤独な少年レビウスは、伯父・のザックの元で運命に引き寄せられるかのように機関拳闘に没頭し、才能を開花させていく。
そして、機関拳闘Grade-Ⅲで強敵を乗り越えていくレビウスを、不敵な笑みで見つめる謎の男・Dr.クラウン。レビウスの脳裏にフラッシュバックする戦争の記憶――。
配信情報
2019年11月28日(木)全世界独占配信
キャスト
レビウス・クロムウェル:島﨑信長
ザックス・クロムウェル:諏訪部順一
ビル・ウェインバーグ:櫻井孝宏
ナタリア・ガーネット:佐倉綾音
マルコム・イーデン:大塚芳忠
ヒューゴ・ストラタス:小野大輔
謎の美少女:早見沙織
Dr.クラウン:宮野真守
スタッフ
原作:中田春彌(集英社 ヤングジャンプ コミックス・ウルトラ)
総監督:瀬下寛之
監督:井手恵介
シリーズ構成:瀬古浩司
脚本:猪原健太 瀬古浩司
プロダクションデザイン:田中直哉 Ferdinando Patulli
キャラクターデザイン:森山佑樹
ディレクター・オブ・フォトグラフィー:片塰満則
CGスーパーバイザー:岩田健志
美術監督:畠山佑貴
色彩設計:野地弘納
音響監督:岩浪美和
音楽:菅野祐悟
アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
製作:ポリゴン・ピクチュアズ
公式サイト