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『スタプリ』の最終回に向けて構成・脚本 村山功氏インタビュー

「普通のプリキュアと、もう一本アニメを作っているんじゃないかっていう感覚だった」 『スター☆トゥインクルプリキュア』のクライマックスに向けてシリーズ構成・脚本 村山功氏が想いを語る

脚本を書くにあたってのポリシー

──ところで村山さんは『聖闘士星矢』を見て育ったそうですが、宇宙というテーマもあって、そこで得たイマジネーションも入ってるんでしょうか。

村山:よくご存じですね(笑)。『聖闘士星矢』は好きでしたよ。でも同じ星座をモチーフにした『聖闘士星矢』と『美少女戦士セーラームーン』には被らないように気を付けようというのがみんなの合い言葉と言うか(笑)。そこは気にかけましたね。

──村山さんのなかでそういったポリシーというのは、他にもありましたか。

村山:御幣があるかもしれないですが「大人になったら分かる」ことはやりたくないという気持ちがありました。

要は「今は分からなくても大きくなったら分かるよ」といった物語。今見ている子たちがリアルに消化できないものはやりたくないなと。

──その理由を詳しくうかがってもいいですか。

村山:例えば、初代プリキュアを見ていた子たちと今『スタプリ』を見ている子たちの環境って全然違うと思うんです。

初代プリキュアを見て育った人たちは、懐かしいと改めて作品を見直したりすることがあるかもしれませんが、『スタプリ』を見て育った子供たちはどうなんだろうって。

サブスクリプション、映像ストリーミング配信など……今の時点で映像作品がたくさん溢れています。そんな彼女たちの5年後、10年後ってさらにとんでもない量のコンテンツで溢れかえっていると思います。

大きくなって「そういえば『スタプリ』であんなこと言ってたな。あのころ分からなかったけど何かな」って見返すのか? しかも50話近くも。来年のプリキュアで“プリキュア(の思い出)”が上書きされてしまう可能性だってあるし。

──それは『スタプリ』を作るにあたって懸念されていたことなんでしょうか。

村山:懸念というより、そこまで楽観視していないという感じですね。5年、10年後見てくれる確率は低いだろうなぁとシビアに捉えています。

だったらもうそこに掛けたくはないというか。そこに掛けるのって、メチャクチャ効率悪いルン! て話ですよね。

せっかくたくさんの子供たちが見てくれているんだから、その子たちに向けて、今リアルタイムでちゃんと理解できる物語にする。いずれ話の内容は忘れてしまったとしても物語をきちんと消化してくれて、(見たひとの)血肉になってくれていたらいいなと。

──血肉になってほしい。それは作り手として一番願うことですか。

村山:というよりかは、プリキュアというか『スタプリ』に関しては“それでしかない”ように感じています。

やっぱりメインで視聴している子たちは3歳を中心にした子どもたちですし、大きくなって内容を憶えているって難しいと思うんですよ。覚えているとしても、変身シーンがかわいいってことくらいかもしれない。

でも、子供たちがテーマやこちらが描きたいことをきちんと消化できるように作って、血肉になってくれてればなぁと。さっきも言いましたように消化できずに大きくなるまで持ち越してもらっても、食べてもらえない可能性が高いので。まぁ、宇宙だとか設定的な部分は完全に理解するのは難しいかもしれないですけど。

ただ毎年違ったテーマがあるので、今回はという感じですけどね。

例えば15周年の『HUGっと!プリキュア』(2018年~2019年放送)は今までプリキュアを見ていた人たちにもう一回見てほしいという狙いがあったわけで。テーマも内容も少し上の子向けに作っていましたし。

でも『スタプリ』は15周年を終えて一区切り、これから20年、30年と続くシリーズ作品の一歩として、「新たなプリキュアを示して欲しい」というコンセプトもありまして。じゃあちゃんと子どもに届くようにと僕は思っていました。

子供たちに合わせて、『スタプリ』では「夢と希望」を失う、挫折するという話も描いていませんし。夢と希望ってそもそも子供たちは持っていると思っていますし。

▲『HUGっと!プリキュア』(2018年~2019年放送)

 

──そもそも、子どもそのものが夢と希望のかたまりですもんね。

村山:ですよね。「プリキュアになる!」って短冊に書くような、夢と共に生きている挫折を知らない子たちなんですよ。

ちょっと上の子や大人は挫折のドラマで熱くなりますけど、プリキュアを見ている小さな子どもたちの多くは夢がかなわないことなんて考えてないんですよね。

将来起こるかもしれない挫折を描くよりも、見ている子たちに今必要なものやテーマを示していくべきなのでは?という気持ちがありました。

──話がそれてしまいますが、アニメイトタイムズのインタビューで成瀬さんが「プリキュアになりたい」っていう短冊を見つけるたびに手に挟んで「プリキュアになれるよ」と願う……というお話をしてくれて。

村山:ああ……もう本当に良い人ですね。いい話。素晴らしいです!


『プリキュアライブ2019』キュアスター/星奈ひかる役 成瀬瑛美さんインタビュー
※紹介されている「"プリキュアになれるよ"と願う……というお話」の記事はこちら(↑)。

 

──テーマは毎年違うけど「プリキュアになりたい」と願う子どもたちは毎年いる。プリキュアイズムが受け継がれる理由、魅力というのは、どんなところだと考えていますか。

村山:きらびやかで、変身して、女の子が強いってところなんでしょうね。毎年テーマは違いますけど、初代の西尾(大介)さん、鷲尾(天)さんが作ったプリキュアはそれまでになかった、女の子が思いっきり肉弾戦でバトルしていて、それって言ってみれば多様性で。

プリキュアの最大のテーマである“多様性”。それが子どもたちが心を掴まれるひとつの要因かもしれません。そもそも多様性ってプリキュアの根底にあるものだからテーマに持ってくるというのは、なかなか難しいことなんですけど……『スタプリ』はそこをテーマにすると言うから(笑)

──今見ている子たちが大人になった時代ってさらに多様性のある社会になってるんでしょうね。職業も、価値観も。もはや想像がつかないです。

村山:そうそうそう。そういった社会に出ていく今の子どもたちの血肉になってくれたらとは思いますね。

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