「アニメを信じ続けてきた結果、今がある」春アニメ『EDENS ZERO』の主題歌に込められた西川貴教の願い
「日本のアニメを大切にしてほしい」
ーー西川さんにとって、アニメはどのような魅力があると感じますか?
西川:世界をひっくり返す力や世界のコンテンツを超えるクオリティを持つのがアニメだと思っています。だから、アニメーションをハブにしながら貪欲に日本をPRしていくべきなんじゃないかと。
今、これだけみなさんがアニメに対してポジティブに受け止めてくださっている状況じゃないですか。だから日本のアニメーションを研ぎ澄ませてほしいんですよ。
それなのに日本のアニメ制作は最近どんどん海外へ作画を投げている。この状況が不安で仕方ない……。日本アニメの技術と能力を国外の方たちがどんどん吸収し始めて、独自の作品を作り始めている。なんとしても食い止めたいと思うほどです。国は日本アニメをもっと大事にするべきです。
ーー国をあげて日本アニメの魅力を世界へ発信した方がいいと。
西川:コロナ禍でビックリするほどアニメ作品やアニメ楽曲のヒットが生まれて、今では小さなお子さんからお年寄りまで認知される存在になった実情があるじゃないですか。
だからこそ国家プロジェクトとして日本アニメの存在価値を食い止めるべきだと思います。クールジャパンみたいに適当な予算をつけて何となくやらないで、もっと頑張ってほしい。お隣の韓国は国をあげてK-POPに投資して世界へ発信している。日本も真似すればいいと思うんですよ。
ーー確かに……。
西川:アニメーターのみなさんの賃金や労働環境が問題視されているので、そういったところを底上げしていくことは大事ですし、モチベーション高くモノづくりができて、それに対して対価が伴うような環境があって初めて良い作品が生まれると思います。日本の基幹産業であるアニメーション制作で頑張っている方たちを国がもっと支えてあげてほしいと強く思う。
僕みたいに地方の活動をしている人間をハブにしてもらって、みなさんが安心して働ける環境を設けていただきたい。今はプロダクションが都市部にある必要もないし、世界中どこでだってできます。それこそディズニースタジオはアメリカに本拠地がありますけど、インドにもスタジオの拠点を建設しめちゃめちゃ投資して24時間体制で作品づくりをしています。そういう風に日本アニメの制作現場を考えていかないと。技術やノウハウの流出を防ぐか、それを逆手に取って海外でガッツリ儲けるか……。
結局、国民が今本当に求めているコンテンツにきちんと触れて取り扱える方が日本のトップにいないことが大きな問題になっている気がします。もう本当にどうにかしてほしい!
ーー兄貴のアニメに対する熱い思いを浴びて、とてもパワーをもらいました。
西川:ははは(笑)。僕も含めアニメによって人生を変えられた人たちはとても多いですから。僕自身多くの方たちを刺激する存在になれたらいいなと思いますし、これからも良い作品に関わり一緒に作り上げるチャンスを大切にしていきます。
そういった意味でも今アニメに注目が集まっているタイミングというチャンスに『EDENS ZERO』の主題歌でお声がけいただき、期待していただけているのは本当に有難いです。
アニメを通して日本を世界へアピールできるチャンス
ーー西川さんにとって『EDENS ZERO』の魅力は何でしょう。
西川:『EDENS ZERO』は日本のアニメファンのみなさんにももちろんですが、海外の日本アニメファンのみなさんにとってものすごく魅力的に感じてもらえる要素がたくさんあるような気がします。THE・日本アニメといった空気をすごく感じる。スペースオペラとファンタジーというテーマ性の中に桜吹雪や着物風の服など和の要素が入っていて。一見ミスマッチな和と宇宙が混ざり合うことで、独自性を感じてもらえるのではないかと。
ティザームービーが配信されてすぐに海外ファンのみなさんのリアクション動画を片っ端から見たんですよ。どこで盛り上がるとか興味を持ってくれているとか。そしたら、刀や和服のような服を着たキャラクターが登場するシーンで動画を止めていたり、振り返っていたりして。
ーー日本を感じるシーンに興味を持たれているんですね。
西川:ピーノのようなキャラクターって僕からすると小さいお子さん向けに感じるのに、海外ファンのみなさんはピーノが出てくると動画を一度止めて「カワイイ!魅力的!」って思っているんですよね。そういう嗜好性の違いを検証していくと、『EDENS ZERO』のアニメを通して文化交流ができるような気がしています。
今は動画配信プラットフォームを通じて日本での放送とほぼタイムラグなく見ることのできる状況にある良い時代ですし、日本をきちんとアピールできるチャンスになってくれたらいいなと思っています。
ーーありがとうございます。それでは最後に主題歌『Eden through the rough』について意気込みをお聞かせください。
西川:世界の音楽シーンが時代とともに変わっていく中で、アニメにおいては唯一ロックスタイルの楽曲との相性がマッチングしていて、それぞれの良さが生かされているような気がします。「日本の音楽シーンは世界トレンドから遅れを取っている」と音楽評論家の方々はよく言われていますけど、僕はあまり世界に合わせる必要ないんじゃないかなと思っている方で。周回遅れならいずれ追いつくのではないかと(笑)。
僕は僕で作品の魅力と相性を追求して作品とシンクロした楽曲を作っていけば、作品の勢いと共に曲を聴いていただけると信じています。海外の方は日本語が分からなくても盛り上がってくれますから、それで十分だと思うんです。僕は今回『Eden through the rough』で日本アニメの新たなフックを作れたらいいなととても意気込んでいるので、作品とともに楽曲も盛り上がれたらと思います。
[取材・文/阿部裕華 写真/MOA]
アニメ・音楽・映画・漫画・商業BLを愛するインタビューライター。Webメディアのディレクター・編集を経て、フリーライターとしてエンタメ・ビジネス領域で活動。共著「BL塾 ボーイズラブのこと、もっと知ってみませんか?」発売中。
「Eden through the rough」/西川貴教 4月21日発売!
●期間生産限定盤/1,850円(税込)
≪収録内容≫
【CD】
1. Eden through the rough
2. Eden through the rough (『EDENS ZERO』OP ver.)
【DVD】
1. アニメ「EDENS ZERO」ノンクレジットオープニング映像
●初回生産限定盤/1,850円(税込)
≪収録内容≫
【CD】
1. Eden through the rough
2. Judgement
【DVD】
「Eden through the rough」Music Video
●通常盤/1,300円(税込)
≪収録内容≫
1. Eden through the rough
2. Judgement
3. Eden through the rough (Instrumental)
4. Judgement (Instrumental)
TVアニメ『EDENS ZERO(エデンズゼロ)』作品情報
2021年4月10日より日本テレビ系全国放送
KONAMIによるゲーム化プロジェクトも進行中!
放送
4月10日より日本テレビ系ほかにて毎週土曜24時55分から
(放送日時は予告なく変更になる可能性がございます)
配信
NETFLIX・Huluにて独占先行配信決定!
4月10日より毎週土曜25時35分から各話配信決定
キャスト
シキ・グランベル:寺島拓篤
レベッカ・ブルーガーデン:小松未可子
ハッピー:釘宮理恵
ワイズ・シュタイナー:手塚ヒロミチ
EMピーノ:井澤詩織
ホムラ・コウゲツ:青木志貴
エルシー・クリムゾン:大原さやか
ジギー:大塚芳忠
マザー:井上喜久子
スタッフ
総監督:石平信司
監督:鈴木勇士
シリーズ構成:広田光毅
アニメーションキャラクターデザイン:迫由里香
サブキャラクターデザイン:菊池隼也
美術監督:魏斯曼(スタジオちゅーりっぷ)
色彩設計:伊藤由紀子
撮影監督:廣瀬唯希
編集:後藤正浩(REAL-T)
音響監督:はたしょう二
音響制作:マジックカプセル
音 楽:平野義久
音楽制作:日本テレビ音楽
オープニングテーマ「Eden through the rough」西川貴教
エンディングテーマ「冒険の VLOG」CHiCO with HoneyWorks
アニメーション制作:J.C.STAFF
製作:講談社・日本テレビ
『EDENS ZERO』とは
「RAVE」や「FAIRY TAIL」などの代表作をもつ真島ヒロ先生によるSF(スペースファンタジー)漫画。2018年より講談社「週刊少年マガジン」で連載開始。惑星グランベルで機械たちに育てられた唯一の人間の少年“シキ”と、そこに訪れた少女“レベッカ”が出会うことで、宇宙のどこかに存在し、願いを叶えてくれる“マザー”を探す旅に出る物語。数多くの個性的な惑星を舞台に、エーテルギアという特殊な力を使用し、冒険を行う。 2020年6月にテレビアニメ化を発表。
原作情報
「EDENS ZERO(エデンズゼロ)」
連載:週刊少年マガジン(講談社刊)
コミックス1巻~14巻発売中
原作:真島ヒロ