映画
映画『シドニアの騎士 あいつむぐほし』吉平監督インタビュー

映画『シドニアの騎士 あいつむぐほし』吉平 "Tady" 直弘監督インタビュー | 『シドニアの騎士』が、アニメ監督を志すきっかけに

『シドニア』の作品内おいて、掌位が果たした役割

――自分はロボットアニメがすごく好きなのですが、とくに今回の劇場版は、ロボットアニメとしての見どころが多く、このジャンルが本当に好きな人じゃないと作れなかった作品だと感じました。吉平監督が考える、ロボットアニメの魅力とはどんな点でしょうか。

吉平:おっしゃる通り、自分も数々のロボットアニメで青春を過ごした、大のロボットアニメファンです(笑)。

その前提の上で、視聴者ではなくアニメ監督という視点でロボットアニメの魅力を語らせてもらうなら、「ロボットが人間を模した形状である」ということが非常に大きいと思います。自分はこれがロボットアニメの大きな個性と転換点になっていると考えていて、いわばロボットアニメのロボットというのは、“人であって人ではない存在”だからこそ魅力を生み出すんです。

例えばアクションにおいて、ものすごく早いスピードで動いて急旋回をしたり、パーツの一部を切り離したり、人間にできない動きをさせることで、視覚的にも音響的にも視聴者をワクワクさせられる、一種の快楽的なアクションシーンを作ることができます。一方で人間の形を模していることで、ロボットが人間のように擬人化してストーリーや情感を語ってくれる側面もあり、別軸ではパイロットと機体の関係性や、破損していく描写にドラマ性をもたせることもできる。

こういった要素が織りなす描写が、ロボットアニメの魅力であり、我々がワクワクするような興奮が作られる仕掛けだと考えています。それが効果的に使われたのが、『機動戦士ガンダム』のラストだと思っていて、ガンダムが壊れていくシーンは自分も涙しながら見ていた思い出があります。

――『シドニアの騎士』はロボットアニメであると同時に、ハードSFとしての側面ももった作品だと思います。それを両立させる上で、掌位(衛人同士が手をつないで輪を作り、推進力を高める操縦の技術)というアイディアが本当に素晴らしいなと。

吉平:そこはまさに今お話したことと繋がってくる部分で、本来の掌位には、機械としての運動性能を高めるという意味しかないんです。ところが、これが人の形を模したロボットが行うことで、「仲間を信頼し、仲間と助け合う」といった、違った意味がドラマとして生まれるようになっている。

弐瓶先生がすごいのは、そこからさらに考えを発展させて人間同士の世界でも、出撃前の無事に帰るためのおまじないとして、掌位のようにお互いの手を重ねるシーンを描いているんですよね。

手を重ねることで、人間同士が絆を深め、生き延びるために願いを重ねあうという行為は、『シドニア』の世界において何度も描かれていて、もしこの操縦方法の発案者があの世界にいるとしたら、本当に素晴らしい連結方法を考えてくれたなと(笑)。機能的な部分だけではなく、人の気持ちが機械に乗り移っていく動作にもなっているのが、掌位のすごいところだと思っています。

 

 

――『シドニアの騎士』の中で、お気に入りのキャラクターやシーンを教えてください。

吉平:女性キャラクターならつむぎ、男性キャラクターなら岐神海苔夫でしょうか。とくに岐神は、ファンの皆さんからもすごく愛されていますよね。

彼は劇場版に至るまでの人生も凄まじくて、今回監督をするにあたって、絵コンテを担当される方に読んでもらうためのこれまでの岐神の特別冊子を作ったくらいでした(笑)。それくらい、彼を軽々しく描いてはいけないと考えていましたし、不幸の底の底まで落ちたところからのスタートなんだと分かってもらいたいという想いを込めて制作していたので、思い入れはすごく強いですね。

あとはそれと同じくらい、シドニアの象徴ともいえる小林艦長のシーンも気にいっていて。演じられた大原(さやか)さんが表現してくださった、人間としての深みも合わさって、すごく心に響くシーンになっていると思います。

――本作の岐神は本当に最高で、終盤のあるシーンではめちゃくちゃ泣かされました。

吉平:自分でもあのシーンは見ていて泣きそうになるくらいで、「報われて欲しい」という岐神への愛が炸裂した結果なのかもしれません(笑)。岐神ファンの方々には、是非楽しみにしていただきたいですね。

――『シドニアの騎士』という作品がもつ根底のテーマや魅力について、どう考えられていますか?

吉平:最初のTVシリーズに関らせていただいた時、『シドニア』という作品は、弐瓶先生が描く独創的で唯一無二のSFの世界観の中で、遥か遠い未来を生きる人々の感情や行動の普遍性が描かれることが魅力なんだということを、静野監督が仰られていたのを覚えています。

ただガウナと戦うのではなく、1000年を超える時間軸の中で人々は何を想い、何を信じて、どんな後悔を抱きながらシドニアで生きてきたのかという歴史を感じとることができる。そういった、ある種の歴史モノに近い性質をもった作品なのではないかと感じています。

――『シドニアの騎士』には非常に多くの魅力がありますが、とくに注目して欲しいポイントを教えてください。

吉平:人類とガウナの戦い、小林の積年の想い、長道とつむぎという3層のストーリーが絡み合って生まれる深いドラマ性でしょうか。それに加えて、圧倒的な立体空間バトルがDolby Atmosの音響と共に描かれるのも本作の見どころになっており、ドラマと映像のそれぞれのスケール感を楽しんでいただければ嬉しいですね。

――最後に、劇場公開を楽しみに待つファンに向けてのメッセージをお願いします。

吉平:まず、まだ『シドニア』をご覧になられたことがない方には、「SFだから小難しそう」と敬遠しないで、衛人(ロボット)の激しいアクションシーンや、壮大なラブスペクタクルを楽しめる、エンターテイメントだと思って見にきていただきたいですね。

そして、ファンの方にはアニメシリーズの本当の完結作として、自分自身の後悔が残らないよう、死にものぐるいになって、ファンの方に満足していただける最高の『シドニア』を目指して作りあげたつもりです。素晴らしい音響を含め、是非劇場で完結を体験していただければと思います。

――ありがとうございました。

[取材・文/米澤崇史]

劇場アニメーション映画『シドニアの騎士 あいつむぐほし』作品情報

 

ストーリー

---- 身長差15メートルの恋

未知の生命体・ガウナに地球を破壊され、かろうじて生き残った人類は巨大な宇宙船「シドニア」で旅を続けていたが、100年ぶりにガウナが現れた。

再び 滅亡の危機に襲われた人類だったが、人とガウナから生み出された白羽衣つむぎや人型戦闘兵器・衛人 (ルビ:モリト) のエースパイロットである谷風長道の活躍により、ガウナをいったん撃退。なんとか勝利をおさめたのだった。

あれから10年-。シドニアの人々は、つかの間の平和を楽しんでいた。つむぎも、今やシドニアの英雄となった長道に想いを寄せながら、穏やかな日々を過ごしている。だが、艦長・小林は分っていた。ガウナがいる限り、この平穏は長く続かないことを。

そして、人類の存亡をかけ、最終決戦を決断する。愛する人を守るため、シドニア最後の戦いがついに始まった。

 

スタッフ

原作/総監修:弐瓶 勉『シドニアの騎士』(講談社「アフタヌーン」所載)
総監督:瀬下寛之
監督:吉平 "Tady" 直弘
脚本:村井さだゆき/山田哲弥
プロダクションデザイナー:田中直哉
アートディレクター:片塰満則
CGスーパーバイザー:石橋拓馬/上本雅之
アニメーションディレクター:永園玲仁
美術監督:芳野満雄
色彩設計:野地弘納
音響監督:岩浪美和
音楽:片山修志
主題歌/挿入歌:CAPSULE
作詞/作曲:中田ヤスタカ
音楽制作:キングレコード
アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
配給:クロックワークス
製作:東亜重工重力祭運営局

 

キャスト

谷風長道:逢坂良太
白衣羽つむぎ:洲崎綾
科戸瀬イザナ:豊崎愛生
緑川纈:金元寿子
岐神海苔夫:櫻井孝宏
岐神海蘊:佐倉綾音
仄姉妹:喜多村英梨
小林艦長:大原さやか
勢威一郎:坪井智浩
落合:子安武人
ヒ山ララァ:新井里美
サマリ・イッタン:田中敦子
佐々木:本田貴子
弦打攻市:鳥海浩輔
丹波新輔:阪脩
田寛ヌミ:佐藤利奈
科戸瀬ユレ:能登麻美子
山野稲汰郎:内田雄馬
浜形浬:上村祐翔
端根色葉:水瀬いのり
半間乙希:岡咲美保

 

 
公式ホームページ
公式Twitter(@SIDONIA_anime)

(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工重力祭運営局
シドニアの騎士 関連ニュース
おすすめタグ
あわせて読みたい

シドニアの騎士の関連画像集

関連商品

おすすめ特集

今期アニメ曜日別一覧
2024年春アニメ一覧 4月放送開始
2024年冬アニメ一覧 1月放送開始
2024年夏アニメ一覧 7月放送開始
2024年秋アニメ一覧 10月放送開始
2024春アニメ何観る
2024年春アニメ最速放送日
2024春アニメも声優で観る!
アニメ化決定一覧
声優さんお誕生日記念みんなの考える代表作を紹介!
平成アニメランキング