新型と旧型のロボット対決は“あの作品”があったから!? Netflixオリジナルアニメシリーズ『エデン』入江泰浩監督インタビュー│監督が考える、ロボットと人間の共存する未来は“ギブアンドテイク”が必要
ちょっとしたリアクション、成長の流れ、根っこが繋がった上での演じ分けが素晴らしい
――そんなサラやロボットたちに命を吹き込んでいるのがキャスト陣の素敵な演技です。収録で演じられたのを聞いていかがでしたか?
入江:こちらが想定していたキャラクターの感情はちゃんとクリアしつつ、それ以上の「こういう魅力の出し方があるんだ」「こういう部分でキャラクターが豊かになるんだ」と感じる芝居を皆さんしてくださいました。
――より具体的に、メインキャストの方々のエピソードやこのセリフがすごく響いたなど、印象的だったことをお聞かせください。
入江:父親(E92)と母親(A37)を演じた伊藤健太郎さんと氷上恭子さんは、本当にいいコンビといいますか。普通のセリフもそうなのですが、ちょっとしたリアクションの中にキャラクターの愛嬌のようなものを出してくれました。
例えば、A37が「え?」「ちょっと意外」といったリアクションを取ったときに、そういう芝居もあり得るんだと思ったんです。もちろん、地の普通のセリフでもキャラクター(の色)を出しているんですけど、そういうほんの僅かなところでも、キャラクターが魅力的になる芝居をしてくれましたね。
サラに関しては、赤ん坊から10代になり、そして18歳となる“キャラクターの変化”ですかね。こういう風に育ってきて、怒ったり嬉しそうにしたりする、その流れを高野さんがちゃんと作ってくれたと感じました。
――フィールズ博士とゼロを演じた山寺さんはさすがの一言でした。
入江:そうですね。娘がまだ生きていたときのフィールズ博士の優しくおおらかな父親像、そして娘が死んでゼロになった瞬間の人類に対する強い思い――それぞれが違うパーソナリティになるのではなく、根っこのところではひとつに繋がっている。その上で、今はこういう風になってしまったキャラクターを演じ分けてくれるのが素晴らしいなと思いました。
――娘が死んだことで絶望したといいますか、人類はいない方がこの世界にはいいのではという気持ちになったわけじゃないですか。その気持ちに共感することはありますか?
入江:それは誰しも通る道のひとつだろうな、と感じています。僕が中学生や高校生の頃、世界は冷戦真っ只中で、社会情勢を見てもうダメなんじゃないかと思った瞬間もありましたから。幸い、身内や親しい人に影響を及ぼすことはなかったですが、もし影響が及んでいたとしたら、やはりフィールズ博士のような気持ちになってしまったんじゃないかなと。
――確かに、世界はどうなるんだろう、と感じることがありましたからね。では、入江監督の個人的な考えや希望でも構いませんので、ロボットと人間の共存する未来はどのようになっていくと思いますか? AI技術も日々進歩しているわけですが。
入江:ロボットが『エデン』の作中のようなレベルで日常生活に入ってきた時には、おそらく今回描いた以上の問題がいろいろ起こると思っています。
でも、例えば人形やフィギュアを購入して手元に置いたら、あまり乱暴には扱わないですよね。飼っている犬や猫も、癒やされる部分があるのと同時にちゃんと餌やトイレの世話をしないといけない。何かを得るためにお世話をするんです。
なので、もしロボットが犬や猫と同じレベルで日常生活の中に入ってくる未来が来たとしたら、ギブアンドテイクを基本としてコミュニケーションを取っていく必要があると思いますね。
――最後に、改めて本作からなにを感じ、どんな風に楽しんでもらいたいかお聞かせください。
入江:テーマや作品への思いは作り手として当然あります。それを楽しんでもらいたい気持ちと同時に、(そういうことを気にせず)ひとつの娯楽として見てもらいたいですね。
(本編部分のみだと)1話25分ですから、1日1話でもいいし、いっぺんに見たとしても100分。気軽に楽しんでいただける作品だと自信を持って言えますので、ぜひ気軽に見ていただければと思います。
――気軽に見ても本当に楽しい作品だと思います。ありがとうございました!
[取材・文/千葉研一]
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Netflixオリジナルアニメシリーズ『エデン』作品情報
Netflixオリジナルアニメシリーズ『エデン』5月27日(木)より全世界独占配信
ストーリー
ロボットだけが暮らす世界「エデン」。農業用ロボットE92 とA37 はある日、サラという人間の赤ちゃんが入ったカプセルを偶然発見し眠りから目覚めさせてしまう。人が悪とされている世界でサラが危険だと考えた2体は、エデンの外で密かに育てていく。成長したサラは、ある日遠くから自分を呼ぶ声に気づく。それはあのロボットしかいないはずの「エデン」からだった─。
スタッフ
監督:入江泰浩(『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』)
キャラクターデザイン:川元利浩(『カウボーイビバップ』)
脚本:うえのきみこ(『王室教師ハイネ』『クレヨンしんちゃんオラの引越し物語 サボテン大襲撃』)
コンセプトデザイン:クリストフ・フェレラ(『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』クリーチャーデザイン)
アートディレクター:クローバー・シェ(『上海バットマン』)
音楽:ケビン・ペンキン(『メイドインアビス』『盾の勇者の成り上がり』)
原案・プロデューサー:ジャスティン・リーチ(『イノセンス』)
アニメーション制作:Qubic Pictures, CGCG
キャスト
サラ:高野麻里佳
E92:伊藤健太郎
A37:氷上恭子
S566:新垣樽助
ゼロ:山寺宏一
チューリヒ:桑原由気
ジュネーブ:甲斐田裕子