12年目のVALSHE、目覚めるーー新たなステージへの第一歩としてリリースするミニアルバム『ISM』「原点に立ち返って自分自身に矢印を向け返してみようと思ったんです」

「音楽として楽しんでもらえる要素を提示したい」

ーー今作は“全曲全く違うジャンル感”を目標にされたとのことですが、サウンドがとにかくバラエティに富んでいますよね。

VALSHE：そうですね。これまでの作品で、それぞれ（異なる）コンセプトを掲げて、ひとつの大きな物語として制作することが多かったんですけど……。

自分のデビューがミニアルバムで、そのミニアルバムも7篇の物語で、サウンド感がまったく違っていて。今回もせっかくのミニアルバムですし、主義・主張というタイトルを掲げるのであれば、1曲、1曲で歌っている人物像が変わるくらい、音楽性に関してはバラエティに富んだものにしたいなと思っていました。クリエイティブチームとより深く一緒に考えて、音楽として新鮮に楽しんでもらえる要素を11年目に提示したいなと。

ーーVALSHEさんの原点であるデジタル・ロックの要素も、さらには新しいジャンルの楽曲もあります。チームとはどのようなお話をされたのでしょうか。

VALSHE：いろいろな角度から音楽について話はしたんですけど、かと言って小難しい会議をしたわけではなくて。今まで一緒に音を作ってきたサウンドチームと和やかなムードのなか、コーヒー片手に「どういうジャンルの曲にしたら面白いかな？」「VALSHEが今までチャレンジしていないサウンドってどんなものだろう？」「こういうアプローチはどうだろう？」というクエスチョンをきっかけに膨らませながら話し合いました。すごくポップな打ち合わせでしたね。打ち合わせの中で、自分ができること、もしくはできるであろうことに対して、サウンドチームが信頼してくれていることを肌感覚で感じられる時間でもありました。10年やってきたことで「できるだろう」っていう自信があって。信頼関係を感じながらの制作だったので、チャレンジすることに対してもまったく不安はなかったです。

ーーさきほどVALSHEさんが人とコミュニケーションと取ってこなかったとおっしゃってましたけど、この10年はものすごく密に交流されているのではないでしょうか。

VALSHE：そうですね。表立ってはソロアーティストとして活動していますけど、その裏には音楽を作るメンバーがずっと共にいてくれていて。家族のような感覚ですね。相変わらず音楽を剥ぎ取ってしまうと人見知りではあるんですが（笑）。でも自分の人生において、生きがいにしてきたものが音楽であったからこそ……そういう意味では音楽のおかげですね。楽しいことであったり、ポップなことであったり、その逆のことも共有できるんじゃないかなと今は思っています。

ーーそうした変化にファンの方も気づいてらっしゃるのではないでしょうか。

VALSHE：そうだと思います。このアルバムではじめてVALSHEに触れる方にとっては「どれが本当のVALSHEなの？」と思われるサウンド感になってると思います。でも「その感想そのものがVALSHEなんだ」とも言えますし、いつも聴いてくれているファンの方にとっては「これこそVALSHEの新しい名刺だよね」って思ってもらえるような作品になっていると思います。でも、どんな感想でもどれも間違いじゃなく、全部正解なんですよね。

ーー今作のキャッチフレーズでもあり、「GIFT」の歌詞でもある＜あなたは間違えない＞という言葉もそうですけど、VALSHEさんはいつも人の意見を絶対否定せずに肯定されますよね。特にここ数年、「間違いじゃないよ」というメッセージがより強くなった気がします。

VALSHE：そう言っていただけるのは嬉しいです。自分は……自分自身のことも、それ以外のことも、否定することがたくさんある中で成長を重ねていったんですよね。「なぜ駄目なんだろう」って考えている中で「なんで駄目な理由を探してるんだろう？」ってハッとして。できない理由はたくさん見つかる。だったら、できる理由や、受け入れる理由もたくさんあるはずだって、どこかのタイミングで気づいたんですよね。何をどう捉えるかは自分次第で、それを肯定するのも否定するのもいつだって自分の見方一つなんだって。