
「AnimeJapan 2022」開催目前──公式アンバサダーの西川貴教さんにインタビュー!「アニメは世界に通用するものづくり。作り手・受け手、それぞれのよりよい環境づくりについても、皆さんと一緒に考えていきたい」
文化の架け橋 「今だからこそ大切」
──西川さんご自身も「イナズマ ロックフェス」を主催されていますが、「AnimeJapan」の運営側のご苦労や頑張りというのも、身近に感じるところがありますか?
西川:そうですね。何が正解なのかというのがどんどん分からなくなってきていますし、どこをどういうふうに切り取っていくかというのも非常に難しくなっている。運営の方のご心労たるや幾許かと考えるところです。
僕自身も催しを挑戦させていただいてはいるんですが、常に感染リスクと隣り合わせである状況は変わりませんし、ある種開催する側・壇上に立つ人間として覚悟を試されているところがあるように感じています。
その上でも、感染症が収束したときの次のステップというのも、考えていかなければいけないのかなと。これまでのコロナに加え、今は国際情勢もありますし、皆さんの不安は今やピークに達しているんじゃないかなと思うんです。
そうした中で、文化を通じて、それぞれの人たちが理解し合うきっかけを持つことが大切だと考えていて。
──お互いの文化を知ることというのは、本当に大切なことですよね。
西川:はい。今だからこそ大切だと思いますね。AnimeJapanは国内のみならず、海外でもオンライン配信をするということで。日本語はマイノリティではありますけど、アニメやコミック、ゲームを通じて、「日本語に触れてみよう」「日本の文化を知ってみよう」と思ってくださる外国の方が非常に多く、それはとても大事なことだと思っています。
それを通じて、我々の考え方や文化を理解していただき、逆に我々も、理解していただいたそれぞれの国の文化や生活習慣を交換し合うことで、お互いがお互いを認め合って、深くつながることができるんじゃないかなと。そういった架け橋になれると思うんです。
中には「こんな時期に不謹慎なんじゃないか」といったことを思ってらっしゃる方がいることも(運営側は)重々承知はしていると思いますし、僕自身も何かをはじめるときにはそういったご意見をいただく覚悟でおります。
ただ、自分に今できることをすることで……例え、直接的に解決できないことだったとしても、お互いが手を取り合う、理解し合うことがいかに大切か、少しでも多くの方にメッセージを受け取っていただけるのではないかと思っています。
──今や海外でも人気のあるアニメ。世界中の方が何かきっかけをもらえるイベントだと思います。
西川:そうですね。僕もアニメーションを通じて海外での公演が増えたんですが、行く先々で、日本という国を理解して、好きになっていただけることで、これまでになかったコミュニケーションが生まれるんですよね。これが本当に大切なことだと思うんです。でも少しでも何か……本当にわずかでもいいので、心を開くきっかけになればなと。
──西川さんのお話をうかがいながら自分もエネルギーももらった気持ちになりました。
西川:そう言っていただけると嬉しいですね(笑)。ありがとうございます。
──今年の「AnimeJapan」のテーマは “アフレコスタジオで出す「キュー!」”。このテーマを聞いたとき西川さんはどのような印象を持ちましたか?
西川:音楽だとキュー・ボックス(レコーディングスタジオなどで使用するヘッドフォンのモニタリングシステム)というものがあって。
簡易的に自分の歌いやすい状況に自分でレベルを調整する機材もあれば、ディレクションの場で「キューランプ」(開始の合図を知らせるランプ)を使ったり、見たりすることがあって。僕もありがたいことに声のお仕事をするとが増えてきているんですが、声優として作品に参加する時はいつも緊張していて、キューランプがつくのが怖いです(笑)。
日本って独特の収録方法じゃないですか。キューランプと同時に目の前にある絵と台本を見て。他のキャストがいらっしゃる場合は、それがいくつも分散していく。本当に緊張しながら収録するので「キュー!」と聞くと背筋が伸びますね(笑)。
──(笑)。「キュー!」というテーマとAnimeJapanがどのように絡んでいくかが楽しみです。
西川:そうですね。何かを発信する、何かがスタートする。そういう意味では、久しぶりの実開催ですし、新たな気持ちで、皆さんの心のスイッチを押せたらいいなと思っています。
日本独特のものづくりのすばらしさ
──声優業の話題がありましたが、近年、さまざまなゲームやアニメ作品にも参加されている西川さん。声優さんたちと一緒に作品を作り出していくことで、改めて感じられた声優さんの凄さや魅力というのはありますか?
西川:今や声優さんというとマルチな存在になっていて、歌って踊る方もいらっしゃれば、舞台の演出をされている方もいて、多岐に渡る活動をされていて。逆に言うと、あれもやりたいし、これもやりたいから声優になるという方も増えてきているのかなと思います。
そんな中で、職人気質の声優さんと接することも多くて。改めて「このキャラクターも、あのキャラクターも同じ方がやってたんだ!」と驚くんですよね。でもそれぞれの作品の中できちんと存在感があって、かつ被りがない。
声の中で全てを表現していく、その研ぎ澄まされた感覚や、演技の素晴らしさに感嘆するというか。いちファンとして圧倒されます。そういった皆さんを見習って、僕ももっと精進していきたいなと考えています。
──日本のアニメ作品の魅力を改めて感じられることも多いのではないでしょうか。
西川:そうですね。海外の作品がおおむね3DCGに移行していっている中で、日本の作品のスピード感、発想力、コマとコマの行間……そういったものに、日本人独特のものづくりの素晴らしさが表れているように感じています。
国内の皆さんに楽しんでいただくことはもちろんですけど、日本の作品が海外に羽ばたくような環境づくり、作り手の皆さんのより良い環境づくりというのも、皆さんと一緒に考えていけたらいいなと思っています。
──作り手の皆さんがあってこその、日本のアニメですもんね。
西川:作り手の皆さんがきちんと評価していただけるようになってもらいたいんですよね。この素晴らしい作品たちを作り続けていてほしいし、だからこそ、ものづくりをされる方たちの環境も大切に育てていきたいというか……。声優さんは成り手が増えていますけど、アニメーター、演出家などの作り手側をきちんと育む環境を作ることも大切だと思っていて。
ある種文化の輸出品となるような、世界に通用するものづくりだと思うんです。だから軽視せず、本当に大切にしていってもらいたい。その活動を国内から支えていくというのも、この「AnimeJapan」の意義なのかなと思っています。



























