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藤本タツキ最新作『さよなら絵梨』ネタバレレビュー

藤本タツキ先生最新読切『さよなら絵梨』ネタバレレビュー|繰り返される「束縛」と「開放」

『チェンソーマン』『ルックバック』で話題を呼んだ藤本タツキ先生の待望の最新作『さよなら絵梨』が、2022年4月11日、少年ジャンプ+にて公開されました。

本作は200ページにも及ぶ長編読切作品となっており、作品の詳細が発表されてから現在に至るまでSNSなどの話題に上がり続けています。

これを書いている私も公開されてから30分ほどで読み終わり、夜道をウロウロ散歩しながら読み返してどんな言葉で表そうかと大いに悩んでいる途中です。少し整理がついた今も多くの読者の反応を見ながら書き進めているところです。

『さよなら絵梨』の中盤に「創作とは受け手が抱える問題に踏み込み、感情を揺さぶるもの。よって作り手もリスクを負うべきだ」という旨のセリフがあります。本作はそのセリフ通りの作品でした。

私がこれから記すレビューや感想、物語の解釈・考察と全く別ベクトルの読者の反応が無数にインターネット上に発信されています。笑う人や苦しむ人、褒め称える人、追いつけずに理解に戸惑う人、以前見聞した作品を想起する人などなど、まさに十人十色、千差万別なリアクションが多くあります。

わかりやす過ぎず、難読過ぎない。読むと物語を自分ごととして捉えてしまい、誰かに感情を共有しないと気がすまないような気持ちにさせてしまう。自分もさらけ出しつつ、受け手に寄り添い、作品に触れた読者を巻き込み感情を揺さぶってそれをさらに伝播させていく。

受け手の数だけリアクションがある。そんな魅力やパワーが本作にあることだけは確かです。

前置きが長くなってしまいましたが、ここからは私が『さよなら絵梨』から感じた「束縛」と「開放」という要素、2度の爆発の解釈を述べていきます。

※この記事にはネタバレが含まれます。また本作のレビューに正解・不正解は無いと思っています。読者それぞれの中にある感情を尊重しあえると幸いです。

 

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ジャンプ+で4月11日に配信された藤本タツキ先生の読切漫画「さよなら絵梨」がすごいと話題になっています。「ファイアパンチ」や「チェンソーマン」の作者・藤本タツキ先生の200ページにもおよぶ完全新作長編読切漫画「さよなら絵梨」。主人公・伊藤優太は、実の母親が亡くなるまでの姿を映した動画を映画として学校で公開するも、最後のひどいオチで馬鹿にされてしまいます。あまりの批判に自殺しようとした優太でしたが、一人の少女・絵梨と出会ったことで、自分の映画を馬鹿にした奴らを見返すため再び絵梨と共に映画を作ることに。どこからが現実でどこからが映画なのかわからない凝った作りや、フィルム映画を意識したであろうコマ割り。最後のオチに向かって作られたかのような秀逸な起承転結など、あらゆる要素が詰め込まれた200ページに、読者から「すごいテンポ感」「もう1回読んでくる」「天才すぎる」と大きな反響を呼んでいます。また同作の、まるで一つの映画を観たかのような読後感やB級映画のような盛大なオチにTwitterでは「最高の歴史的クソ映画だ!」「作者のクソ映画愛に溢れてる」「これは意図されたクソ映画、悔しい」と、大勢の読者がB級映画になぞらえて感想をツイートして...

 

『さよなら絵梨』あらすじ

一言で説明すると?

本作は母親の愛情不足を感じていた主人公・「優太」が映画を通して自らを形成していく作品ではないでしょうか。

優太、映画を撮る

余命宣告を受けた母親の闘病生活を撮影する事になった12歳の優太は、母親が死ぬ直前までをスマホに収めることになります。それを「最後に母親の入院する病院が爆発して終わる」というドキュメンタリーに少し手を加えた映画を作り、文化祭で上映します。

自分の期待とは裏腹に、クラスメイトや先生に酷評され誹謗中傷を受けた優太は傷つき、自ら命を絶つため母が居た病院から飛び降りようとします。そこで謎の少女・「絵梨」と出会うのでした。

「クソ映画」と言われた優太の映画を見て気に入った絵梨は「もう一度映画を作ってバカにした人を見返そう」と提案し、2人で様々な映画を鑑賞。映画に詳しい絵梨は優太に映像制作を教えます。2人は徐々に距離を縮めていき、優太の映画も完成が近づきます。

 

絵梨と出会い、そして「別れる」

しかし、絵梨は余命宣告を受けており死期が近づいていたのです。絵梨は優太の母親と同じく「死ぬ姿を撮影してほしい」と頼むのでした。酷く落ち込んだ優太は無気力になってしまいます。そこに父親が現れて、映像制作を仕事にしていた母親が優太に自分の闘病ドキュメンタリーを強制的に撮影させていた事を謝ります。

母親から酷い扱いを受けていたにも関わらず、優太の撮った母は素敵な母親として残されていました。父は絵梨も同じように優太に美しく映像に残されたいと願っていると諭します。優太はそこから映画、絵梨と向き合い文化祭会場が涙に包まれるほど感動的な映画を作るのでした。

でも優太は絵梨が忘れられず、絵梨と過ごした映像を来る日も来る日も編集し続けます。自分に家族ができても何か足りない気がして過去の映像と向き合い続けます。そんな時、優太の家族が事故に巻き込まれ彼は孤独になってしまいます。

絵梨と映画を勉強した思い出の場所で自ら命を絶とうとする優太。そこに現れたのは絵梨でした。優太は最後に作った映画の中で弱っていく絵梨を「吸血鬼」という設定にしていたのですが、彼女は本当に吸血鬼で不死の変わりに記憶が一定期間をすぎればリセットされるというのでした。

その事実に絶望しないのか? と尋ねる優太。絵梨は「今回は優太が作った映画がある。この映像で何度でも優太を思い出せる」と語りました。その言葉を聞いた優太は絵梨に別れを告げ病院をあとにします。すると「最後に絵梨がいる思い出の場所が爆発」して物語は終わります。

どうでしょうか。絵梨が言う通り本作を「一言で作品を説明し、起承転結に分けて説明」してみました。構造がやや複雑なのと、私の実力不足で長い文章になってしまったことを謝ります。

明らかに映像を意識した独特なコマ割りや「手ブレ」の再現。映像と現実を行き来する複雑な構造。節々に散りばめられた物語的にも現実世界的にも意味深なセリフたち。それだけでこの物語の捉え方が無数にあっても納得できますよね。

私が印象的だったのは、母と好きな人・絵梨、2人の女性による優太への「束縛」と「開放」です。ここからはこの作品から感じる「束縛」と「開放」、そして2度の爆発の解釈について書いていきます。

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