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劇場版『輪るピングドラム』レビュー

劇場版 『RE:cycle of the PENGUINDRUM』レビュー アニメ『輪るピングドラム』を知らない私は観終わってからずっと頭から離れないほど、幾原監督の不思議で美しい世界へと引き込まれてしまいました!

2011年に放送されていたTVアニメ『輪るピングドラム(以下、『ピングドラム』)』が10周年を迎え、2022年4月29日(金)から劇場版 『RE:cycle of the PENGUINDRUM』の前編が公開中。本作はTVアニメ版に新規カットを加え、編集した劇場版です。

今回レビューを書かせていただく私は、恥ずかしながら『ピングドラム』を劇場版で初めて知り、初めて観ました。10年前といえば中学生、高倉陽毬ちゃんと同い年くらいです。当時は友人におすすめされた漫画作品を読んでいました。

オリジナルアニメ作品の良さを知らなかったなんてもったいない、作品の世界観や作画の綺麗さ、音楽の良さに感動し、すでに早く後編が観たい! と今では思っています。心の闇や運命、その運命に抗おうとしているキャラクターたちがとにかく魅力的だと感じ、引き込まれてしまいました。

そもそも観ようと思ったきっかけは、やくしまるえつこさんが歌う主題歌「僕の存在証明」です。元々私は90年代の『美少女戦士セーラームーン』が幼稚園の頃から大好きで、未だにサブスクでよく聴いています。そして『美少女戦士セーラームーンCrystal』も観ている時に出会ったのがやくしまるえつこさんの「ニュームーンに恋して」。儚げで可愛い歌声が好きでたまにやくしまるえつこさんの曲を聴いてます。

そこで出会ったのが「僕の存在証明」。1度聴いたら頭から離れられない繊細なメロディと「ねえ神様」という繰り返されるサビに心が掴まれてしまい1日に何度も繰り返して聴いていました。中毒性もある素敵な楽曲だなと思い、ふと調べてみると『ピングドラム』という映画の主題歌だと知ります。

さらにキャスト、スタッフを調べると……なんと監督は90年代『セーラームーン』を作った方だとは!! 予告を見ると絵柄も好みかも! これは観に行かない選択肢はないと思い、仕事終わりに行ける1番早い時間の映画館チケットを即購入しました。

本作を観れて良かったという思いと共にとにかく続きが気になりすぎています。そんな初心者の私ですが感じた魅力をお伝えし、ファンの皆さんと『ピングドラム』の良さを共有できたら嬉しいのです!

目次

私が感じたこと

まず初めに感じた魅力はキャラクターたちです。ぞれぞれの過去や運命がしっかりと描かれているので、今後どうなってしまうのかを考えずにはいられなくなってしまうほど。これについてはさらにしっかりと書きたいので、次の項目で主要キャラについての感想をしっかりと書きました。

そしてこのようにキャラに感情移入させてくれるのは、お話の構成なのではないかと思います。初見でもわかりやすいように話のポイントを誘導してくれているはずです。本来、各キャラクターの人生に色々あるからこそ見どころがブレてしまいがち。しかし、幼い冠葉と晶馬が「カエル君ピングドラムを救う」という本を読むことで、鑑賞者も一緒にストーリーを追えるように工夫されていると思います。次々訪れる予想外の展開にも着いていきやすかったです。

やはり作画が美しいことも魅力の1つ。池袋などの実際の風景にキャラクターが描かれており、実写の動画も美しいし幼い冠葉と晶馬も可愛らしくてすごく好きだなと感じました。新規カットであろう書庫の映像はスケールも大きく空間も広く感じられる絵が素敵です。一方、10年前の回想シーンで使われている絵はカラフルでとても可愛いなと思います。特に高倉家のごちゃっと色々な物が置かれている感じもとても好みでした。

また、プリンセス・オブ・ザ・クリスタルの世界観がすごく好きです! ペンギン帽子を被った陽毬が「生存戦略」と叫ぶとカラフルな閃光と共にロケットのようなものが発射され、現れるピンク色の異世界。そこからくま型のロボットからプリンセス・オブ・ザ・クリスタルが華麗に参上する美しさ! 手をあげる角度や頬の近くで手を交差する一つ一つの動作までも美しすぎて釘付けになります。背骨型の階段など、なぜこの組み合わせなのか不思議ですが幾原監督の作る世界に引き込まれてしまい感動しました。

さらにEDの話ですが、「僕の存在証明」と合わせて聴いていた「ノルニル」が映画館のスピーカーで聴くと重厚感が感じられ贅沢です。イヤホンで聴くよりもオーケストラの音がずっと聴きやすく、より音の深みを楽しめます。今後のキャラクターについて考えてしまう歌詞も相まって、世界観に没入させられました。鑑賞後はつけ麺を食べましたが、どこか上の空。その時にくるくると頭に巡らせていた魅力的なキャラクターについての感想は次の項目です。

闇を感じているのに魅力的なキャラクターの感想

苹果の闇と晶馬の光

まず初めに心の闇を感じたのは苹果。もはや狂気の沙汰とも思える多蕗への執着は観ていて面白かったです。特にカエルの一件など魔術に頼ろうとしたり……ちょっと笑ってしまうほど日記に忠実でありたいの苹果には辛い過去がありました。死んだ姉を演じ続けることこそが苹果にとって運命であり幸せに生きる道だと信じています。

苹果は真面目で両親のために自分の心を押し殺してでも大人になるしかなかったという幼少期が切なすぎました。不器用に日記の行動を実行しようと一所懸命に頑張っている姿や嵐の夜の出来事などは痛々しいほどです。

また、晶馬が普通感覚の男子高校生だからこそ、余計に苹果の心の葛藤が浮き彫りになって伝わるなと思いました。ストーカー行動を否定されつつも、苹果は怒ることで本来の気持ちを晶馬にぶつけていたのでしょう。姉の身代わりではない苹果の心を引き出せたのは、真っ直ぐな晶馬だからこそできたと思います。

ちなみにTVシリーズではもっと詳細が書かれているのかも? と気になっています。

陽毬のトリプルHの闇

陽毬の笑顔は明るくて皆んな大好きになっちゃうなと思いました。私も例外なく陽毬には笑って楽しく過ごして欲しいですし、死んでほしくないです。

素直で可愛い陽毬には友人に裏切られたちょっと辛い過去があります。小さな約束でも子どもにとっては大事なことで、友人との約束が全てという視野が狭い小学生時代。陽毬のわがままがきっかけでその友人との約束が守れませんでした。すると翌日の帰りからいじめが始まり、消しゴムを投げられてしまいます。

そこから陽毬は不登校になりました。映画を観ていて共感してしまいます。友達の突然の悪意がいかに怖いか、大勢に見られているにも変わらずどうして悪意ある目って一瞬で見分けられちゃうんだろうとか。

より陽毬を好きになるほどに、陽毬は生きて幸せでいて欲しいなと思ってしまいます。

冠葉の葛藤と人間の複雑さ

冠葉の思いは予想外でした! しかし、子どもの時から陽毬を守る気持ちと一所懸命さは人一倍あった冠葉。大切な人を守るとお父さんと約束した台風の日の回想に胸が締め付けられました。そしてその約束を高校生になっても、ボロボロになってもきちんと果たす冠葉はカッコ良すぎます。

そして冠葉が言っていた生物の「生存戦略に逆らってしまう人間の不思議さ」は常々私が感じていたことだなと思いました。生きるための戦略に準じている動物が美しく見える瞬間もあるくらい、醜い争いや要らぬ感情が湧き上がってくる人の不思議。1つ例をあげるならば、陽毬のいじめもそうだと思います。動物は同種族を殺すまで戦うことはないそうです。なぜ陽毬の友人は陽毬の感情を殺すような行動をしてしまったのでしょうか。その感情の存在意義とはなにか、人はなぜ複雑な考えを持ってしまったのかなどと『ピングドラム』はたくさん考えさせてくれる素敵な作品です。

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