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TVシリーズ『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』佐野雄太監督&田中栄子プロデューサー インタビュー

『ベルセルク』を描いていく険しさ。それは三浦先生の原作を愛せば愛すほど──『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』TVシリーズ監督・佐野雄太さん×STUDIO4℃プロデューサー田中栄子さんインタビュー(前編)

映画の素晴らしさをできるだけそのまま

──メモリアル・エディションをシリーズとして再構成するときに大切にしたものは?

佐野:まず第一に、映画の素晴らしさをできるだけそのまま伝えられるよう心掛けました。その上でシリーズを通して楽しめる作品になるよう各話のテンポ感やバランスを大切にしています。

先ほど田中さんの話と重複しますが、映画では限られた尺で構成するためにガッツとグリフィスに焦点を当てて描いていきましたが、メモリアル・エディションでは新規シーンも加えられるということで、ガッツとグリフィス以外の仲間たちとの心のやりとりもなるべく取りこぼさず描いていきたいと考えました。

──新規シーンには、ファンのみなさんに愛されている「夢かがり火」シーンも入ってきます。

佐野:ハードな戦いの多い『ベルセルク』の中でのつかの間の休息、美しいシーンですよね。入れられて本当によかったと思います。新規シーンは概ね、物語の緩急の「緩」にあたる部分になってくると思うんですけど、この「緩」を入れることによって、より深く人物の内面や鷹の団の絆を掘り下げていけるんです。

もちろん「夢かがり火」以外にも新規シーンはありますよ。中でもキャスカとジュドーのシーンはとても効いているんじゃないかと思います。そして、それらすべてを含めた上で、世界がダークサイドへと傾いていく様を見せられたら、と。

田中:映画三部作に引き続き、恩田(尚之)さんに総作画監督として入っていただけたのも、良かったですね。恩田さんの線には本当に痺れます。どうしてここまで、この作品の雰囲気をしっかりバチッと決める絵が描き出せるのだろう、とため息が出てしまいます。

佐野:今回も本当に美しく、人間味のある表情を描いていただきました。

田中:現在、松屋銀座にて開催されている『大ベルセルク展』(会期:2022年9月21日~10月4日)で映画制作時の原画を展示させていただいています。ぜひ、恩田さんの奇跡的な筆致をご覧いただきたいです。

佐野:また、新規シーンの美術には中村豪希さんに入っていただいています。’97年のTVシリーズ『剣風伝奇ベルセルク』から関わられていて、映画でも美術監督の一人として立たれていた方なので、とても頼りになりました。今回、新規シーンではCGベースのカットが多かったのですが、通常の作画カットの場合だと設計図、原図というのを作画監督が出してそれに合わせて美術を描いていただくんですけれど、そこがCGなので、ずいぶんざっくりとした原図しか出せなかったんですね。でも、そういうところも中村さんは「自分の方で描いておきますよ」と言ってくださって、本当に助かりました。

──劇中歌に平沢進さん、劇伴には鷲巣詩郎さんが新たなる楽曲を手がけられたとのこと。本編でどのように響いていくのか楽しみです。

田中:10年前の作品に追加で曲を書き下ろしていただけるなんて、まったく夢のようでした。お二方とも本当に快く、ぜひと言ってくださって。本当に、三浦先生が創りあげられたこの作品、この世界が愛されているのだなあ、とつくづく感じました。

佐野:平沢さんの楽曲が届いたときには震えました。まだ多くは語れませんが、本当に素晴らしいものをいただきました。鷺巣さんとのクリエイティブもとても刺激的で、キャッチボールを重ねながら、音楽によって新たなる情景を膨らましていただきました。

──EDテーマには中島美嘉さんの新曲「Wish」を起用されて。

佐野:お話の最後に響く中島美嘉さんの美しく切ないバラードは、輝かしい黄金時代の裏に漂う哀愁を呼び起こし、作品に一層の深みを与えてくれるものになっていると思います。中島さん自身が『ベルセルク』を読み込んで書き下ろしてくださった歌詞にも注目していただきたいです。

田中:OP/EDはTVシリーズの楽しみのひとつだと思いますが、今回は通常フォーマットの枠に囚われず、かなり変則的に構成することを許していただけて、それもありがたかったですね。すべては物語をより深くみなさんにお届けするため、各部署の方々が手を尽くしてくださっています。

──公開直前というタイミングです。ファンの方々はもちろん、これから『ベルセルク』に出会おうとしているみなさんへメッセージをお願いいたします。

田中:スタジオ内にも『ベルセルク』ファンのスタッフが大勢いますが、三浦先生の原作を愛せば愛すほど、それをアニメーションで描いていくことの険しさを思い知らされます。その壁にこれまでも何度もぶち当たってきましたが、今回、このメモリアル・エディションを手がけることができて、今できるだけのものに仕上げられたと思いますので、ぜひ瞬きせずに逐一全部を観ていただけたら、と願っています。

佐野:原作の素晴らしさ、重厚さに加えて、クリエイターたちの熱意……10年前の現場の熱気も伝えられるような作品になったと感じています。今でも色あせない美しいキャラクター作画や背景美術、迫力の戦闘シーン、壮大な音楽、リアルなサウンドエフェクト、そして。そこに命を吹き込むキャストのみなさんの演技……。隅から隅までこだわりぬいて作られた映像を楽しみにしていただきたいです。一方で、今回新たに参加してくれた若いスタッフもいて、彼らもこの作品に惚れ込んで、必死に作品と向き合ってくれました。決して気軽に観る作品ではなく、むしろ心して観なくてはならない作品だと思うのですが、それでもぜひ多くの方に、『ベルセルク』という人間の熱量そのもののような作品を味わっていただきたいです。

──ちなみに、来る第1話の見どころというと?

佐野:まずは壮大な物語の冒頭にふさわしい静から動への緩急のついた入り、時代考証に裏付けられた中世ヨーロッパの攻城戦の迫力を味わっていただきたいですね。それから、個人的にずっと心を掴まれているのは、ガッツとグリフィスの出会いのシーンです。特にグリフィスがガッツにある印象的な言葉をかけるときの姿。作画、櫻井孝宏さんの芝居、音楽、風の音、差し込む光など、すべてが完璧で……。少年のようでありつつも神々しいほどのカリスマ性を持ったグリフィスが表現されています。ぜひ、観ていただきたいシーンです。

▼アフレコのエピソードや映画制作時の秘話が明かされる(後編)に続く

[取材:ワダヒトミ]

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TVシリーズ監督・佐野雄太×STUDIO4℃プロデューサー田中栄子
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ガッツ役 岩永洋昭×キャスカ役 行成とあ
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ガッツ役 岩永洋昭×キャスカ役 行成とあ
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美術監督 中村豪希
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監督 佐野雄太
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ED主題歌 中島美嘉
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美術監督 中村豪希
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音楽 鷺巣詩郎
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キャラクターデザイン・総作画監督 恩田尚之
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脚本 大河内一楼
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編集 重村建吾&TVシリーズ監督・佐野雄太
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編集 重村建吾&TVシリーズ監督・佐野雄太
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TVアニメ『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』作品情報

放送情報

2022年10月よりTOKYO MXほかにて放送開始!
・TOKYO MX 10月1日(土) 24:30-
・とちぎテレビ 10月1日(土) 24:30-
・群馬テレビ 10月1日(土) 24:30-
・BS11 10月1日(土) 24:30-
・アニマックス 10月16日(日)23:00~ 

配信情報:

ABEMA、dアニメストア、U-NEXT、NETFLIX、WOWOWオンデマンド、GYAO!、ひかりTV、FOD、バンダイチャンネル、Hulu、auスマートパスプレミアム、TELASA ほかにて配信予定

イントロダクション

全世界累計発行部数5000万部突破(2022年現在)日本を代表するダーク・ファンタジー超大作がTVシリーズとして放送決定!

1989年の連載開始から今もなお孤高の存在として本格ダーク・ファンタジーの軌跡を現代漫画界に刻み続けている『ベルセルク』(著・三浦建太郎/白泉社『ヤングアニマル』連載)。

ファンの間でも最も人気が高い“黄金時代”を三部作で映画化し、2012年~13年に日本をはじめ世界16カ国で公開しました。そして2022年、劇場公開から10年の時を経て、『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』として2022年10月よりTVシリーズにて地上波初登場を予定。

【黄金時代篇三部作】
2012年2月4日公開 『ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵』
2012年6月23日公開 『ベルセルク 黄金時代篇II ドルドレイ攻略』
2013年2月1日公開 『ベルセルク 黄金時代篇III 降臨』

今回の放送では2012年の劇場公開時にはなかった原作人気シーンの一つでもある「夢のかがり火」など原作珠玉の名シーンが、劇場版同様に恩田尚之総作画監督のもと新規カットとして追加することが決定!さらに、既存カットも、数百カットに手を加え、リマスターとしてバージョンアップ!

新規カットには、平沢進、鷺巣詩郎による、新たな楽曲提供が決定。

ストーリー

己の剣だけを信じてきた。友も家族も帰る故郷もない──孤独な剣士ガッツは、百年戦争に揺れる地を傭兵として渡り歩いていた。身の丈を超える長大な剣を自在に操り、強大な敵をいとも簡単に倒すガッツ。そんな彼に目をつけたのが、傭兵集団“鷹の団”を率いるグリフィス。

美しい姿からは想像もつかない統率力を持ち、大いなる野望を秘めたグリフィスは、自らの夢を叶えるためにガッツを決闘で制し、鷹の団に引き入れる。数々の激戦を共にくぐり抜けるうちに、信頼で結ばれていく仲間たち。なかでもグリフィスとガッツの絆は、今や特別なものとなっていた。

やがて鷹の団はミッドランド王国の正規軍にのし上がるが、それはグリフィスの目指す頂点へのはじめの一歩にすぎなかった。一方ガッツは、グリフィスの「夢」に取り込まれ剣を振り回すだけの人生に疑問を抱き始める。だが、ガッツはまだ知らない。果てなき夢が二人に与えた、恐るべき宿命を──

STAFF

原作:三浦建太郎
メモリアル・エディション監督:佐野雄太
劇場版監督:窪岡俊之
脚本/メモリアル・エディション脚本総監修:大河内一楼
キャラクターデザイン/総作画監督:恩田尚之
アニメーションディレクター:岩瀧智
美術監督:中村豪希 竹田悠介 新林希文
動画検査:梶谷睦子 加来由加里
色彩設計:成毛久美子
CGI監督:草木孝幸 廣田裕介 斉藤亜規子 今中千亜季
編集:重村建吾
音響デザイン:笠松広司
音楽:鷺巣詩郎
オープニングテーマ:平沢進「Aria」(テスラカイト)
エンディングテーマ:中島美嘉「Wish」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
アニメーション制作:STUDIO4℃

CAST

ガッツ:岩永洋昭
グリフィス:櫻井孝宏
キャスカ:行成とあ
ジュドー:梶裕貴
リッケルト:寿美菜子
ピピン:藤原貴弘
コルカス:松本ヨシロウ
ガストン:矢尾一樹
バズーソ:ケンドーコバヤシ

アニメ公式サイト
アニメ公式ツイッター(@berserk_mePR)
原作公式サイト
原作公式ツイッター(@berserk_project)

(C)三浦建太郎(スタジオ我画)・白泉社/BERSERK FILM PARTNERS
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