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アニメ『AIの遺電子』佐藤雄三監督インタビュー【連載第6回】

須堂とリサのつながりをより強くするために加えた“妹”の存在│アニメ『AIの遺電子』佐藤雄三監督インタビュー【連載第6回】

ヒトと同じ人権を持ち、社会に溶け込むヒューマノイド。ヒトの暮らしを支える“道具”である産業AI。これらとヒトが共に生きる世界を描き、「ヒトとAIの共存」という今を生きる私たちにとっても大きなテーマを投げかけたアニメ『AIの遺電子』。7月からスタートした本作も、ついに最終回を迎えた。

アニメイトタイムズでお送りしてきたリレーインタビューも今回が最終回。ラストを飾るのは、本作の監督を務めた佐藤雄三さん。オムニバス形式の原作をどのようにアニメーションに落とし込み、主人公・須堂光のドラマをどのように描こうとしたのか。制作の裏側を語ってもらった。

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AIの遺電子
これは、私たちの未来の物語――。21世紀に始まったAIの圧倒的な進歩は、社会の発展に寄与する一方、高い知性を持つ機械を道具として使う是非を、人類に突きつけた。そして22世紀後半。人々は「産業AI」とは別格の存在として、人権を持った「ヒューマノイド」を当たり前に受け入れ、共に暮らしている。須堂光は、ヒューマノイドを治す新医科の医者として、ヒトとAIの共存がもたらす「新たな病」に向き合っていく。時に、裏の顔も使いながら……。作品名AIの遺電子放送形態TVアニメスケジュール2023年7月7日(金)〜2023年9月29日(金)MBS・TBSほか話数全12話キャスト須堂光:大塚剛央樋口リサ:宮本侑芽ジェイ:岩中睦樹カオル:高森奈津美スタッフ原作:山田胡瓜(秋田書店「少年チャンピオン・コミックス」刊)監督:佐藤雄三シリーズ構成・脚本:金月龍之介キャラクターデザイン・総作画監督:土屋圭サブキャラクターデザイン:尾崎智美色彩設計:中内照美美術設定監修:矢内京子美術設定:田中涼美術ボード:河野羚撮影監督:畑中宏信(グラフィニカ)モニターグラフィックス:加藤道哉(サイクロングラフィックス)編集:塚常真理子音楽:大間々昂 田渕夏海音響監督:小泉紀介音響効果:山谷尚人(サウ...

“答えのない問い”を投げかけてくる作品

――ついに最終回を迎えた『AIの遺電子』ですが、大きな反響をどのように受け止めていますか。

佐藤雄三監督(以下、佐藤):最近、この手のオムニバス作品がだいぶ減ったなと感じていたんです。というのも、オムニバス形式の作品というのは、もともとファンがつきにくいと言いますか、どうしてもそういう見せ方になりがちなので、避ける傾向があるんです。ですが感想を読ませていただくと、思った以上に多くの方がハマってくださって。大きな反響を感じたと同時に、山田(胡瓜)先生の原作の力を改めて実感しました。

――問いを投げかける終わり方、いろいろな捉え方ができる結末も反響の大きさにつながったのかなと感じました。

佐藤:そうですね。「正しい結論はなんだったんだろう?」と、“答えのない問い”を投げかけてくる作品ですから。感想を読ませていただきながら、皆さん面白い受け取り方をされているなと感じました。

――原作には膨大なエピソードがあります。そこからお話を取捨選択するのも大変だったのではないでしょうか?

佐藤:どのお話も魅力的だったので、やはり抜粋して1クールにまとめるのは大変でした。ただ、最初にシリーズ構成の金月(龍之介)さんが作ってくださった構成がよかったのと、山田先生も秋田書店の編集さんも前向きに協力してくださり、良い環境で検討することができました。特に山田先生は、毎回ノリノリでアイデアを出してくださったんです。金月さんの構成をベースにして、皆さんでお話を入れ替えたりしながらアニメなりの落としどころを探っていくのが楽しかったです。

――各話とも基本的に原作のエピソードを二本ずつまとめた形になりました。

佐藤:最初に金月さんが原作全8巻を分析されて、ヒト中心の話、ヒューマノイドの話と、比較的相性のいい話で系統を分けてくださったんです。それをもとに二本ずつ組み合わせていきました。

作っていく中で「これは一本でも20分のお話にできるのでは?」という話も出てきたので、試しに膨らませたシナリオを書いてもらったら、これがまったく山田先生の作品じゃなくなってしまって……。

――原作のよさが損なわれてしまった?

佐藤:ええ。わざわざ書いてくださった金月さんには本当に申し訳なかったんですが、膨らませすぎるとバランスが変わってしまうと言いますか。言いたいことを言いすぎたり、生々しくなりすぎたりして、原作と乖離してしまうんですね。

例えば、第6話「ロボット」のパーマ君。彼は複数体いて、別の学校ではいじめられているのではないかという話がありましたけど、そこに「みんなでパーマ君を救いにいく」という補完をしてみたんです。そうしたら、全然別ものになってしまって(笑)。これは絶対に違うよねと。

――原作の無駄のなさに改めて気づいたわけですね。

佐藤:絶妙なバランス感覚なんでしょうね。言いたいことが圧縮されているから、説明しなくても見ている側にちゃんと言いたいことが伝わるという。そういう部分も反響の大きさにつながったのかなと思います。

――監督が絶対に入れたいと思ったエピソードはありますか?

佐藤:一つは、ヒューマノイドの妻を夫が看取る話ですね(原作第2巻第20話「お別れ」)。ヒューマノイドがどのように生まれ、どのように亡くなっていくのかは描いておきたいと思ったんですが、単純にアニメでやるには尺が足りなかったのと、いい話ではあるけれど沈黙が続くという難しさがあったので、泣く泣く外すことにしました。

もう一つは、自分がアニメの監督をやっているという理由もありますが、第9話「正しい社会」のアニメのお話です。どちらかというとただのいい話より、毒っ気のある話のほうが好みなのかもしれません。ちなみに、原作になかったあの“クロスカウンター”は、金月さんの暴走です(笑)。思い切り遊んでくださって、このエピソードをアニメ化した甲斐がありました。

――第3話「心の在処」のポッポとジョーのように、原作では別々のエピソードだったものがクロスする展開も面白かったです。

佐藤:冒頭で彼らを描いておかないと、ヒューマノイドと産業AIが混同される懸念があったんです。それで比較的序盤に、ヒューマノイドとは違う産業AIというものが存在し、産業AIにも心がある可能性と、ヒューマノイドには人権があり、ヒトとの違いは人類における人種の違いくらいしかないことを示すようにしました。

(C)山田胡瓜(秋田書店)/AIの遺電子製作委員会2023
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