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アニメ『AIの遺電子』高森奈津美インタビュー【連載第5回】

掛け合いの中でつかんだ、カオルのあり方、須堂との対照性│アニメ『AIの遺電子』カオル役・高森奈津美さんインタビュー【連載第5回】

7月から放送がスタートしたTVアニメ『AIの遺電子』が、まもなく最終回を迎える。本作はヒト、ヒューマノイド、ロボットたちの物語がオムニバス形式で紡がれ、“AI時代”を生きる私たちに「人間とAIの共存」という大きなテーマを投げかけてきた。ここまで紡がれてきた“糸”が、いよいよ主人公・須堂光の物語へと収束していく――。

アニメイトタイムズでお送りしてきたリレーインタビュー第5回は、須堂の大学時代の友人・カオルを演じる高森奈津美さんが登場。性別を超越した思考を持ち、現状の社会に退屈するカオルをいかに演じようとしたのか。今後、大きなポイントとなる須堂やMICHIとの関係とあわせて、たっぷり伺った。

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AIの遺電子
これは、私たちの未来の物語――。21世紀に始まったAIの圧倒的な進歩は、社会の発展に寄与する一方、高い知性を持つ機械を道具として使う是非を、人類に突きつけた。そして22世紀後半。人々は「産業AI」とは別格の存在として、人権を持った「ヒューマノイド」を当たり前に受け入れ、共に暮らしている。須堂光は、ヒューマノイドを治す新医科の医者として、ヒトとAIの共存がもたらす「新たな病」に向き合っていく。時に、裏の顔も使いながら……。作品名AIの遺電子放送形態TVアニメスケジュール2023年7月7日(金)〜2023年9月29日(金)MBS・TBSほか話数全12話キャスト須堂光:大塚剛央樋口リサ:宮本侑芽ジェイ:岩中睦樹カオル:高森奈津美スタッフ原作:山田胡瓜(秋田書店「少年チャンピオン・コミックス」刊)監督:佐藤雄三シリーズ構成・脚本:金月龍之介キャラクターデザイン・総作画監督:土屋圭サブキャラクターデザイン:尾崎智美色彩設計:中内照美美術設定監修:矢内京子美術設定:田中涼美術ボード:河野羚撮影監督:畑中宏信(グラフィニカ)モニターグラフィックス:加藤道哉(サイクロングラフィックス)編集:塚常真理子音楽:大間々昂 田渕夏海音響監督:小泉紀介音響効果:山谷尚人(サウ...

先生もヒューマノイドなのでは!?

――物語もいよいよ終盤へと突入しましたが、物語を振り返ってみての率直な感想はいかがですか?

高森奈津美さん(以下、高森):ヒトとヒューマノイド、それぞれの立場からさまざまな葛藤や衝突が描かれていて、山田(胡瓜)先生はこんなに素晴らしいお話をよく思いつくなと毎回驚かされています。特にヒューマノイドの感情がきめ細かくて、「先生もヒューマノイドなのでは!?」と思ってしまいました(笑)。それぐらいリアルに感じています。

――ヒトとヒューマノイドの絶妙な違いが面白いですよね。

高森:そうなんです。ヒューマノイドにもできること、できないことがあって、ヒトよりも能力が高そうなのに実はそんなことはなく、むしろヒトに憧れたりもする。まさに第2話のジュンとマサの陸上のお話がそれを象徴していて、ヒューマノイドのジュンのほうが伸び悩んでいるという関係性が新鮮でした。こういうお話って、なんとなく人間のほうが伸び悩み、アンドロイドやロボットに劣等感を抱く……というイメージがあったので。

――アンドロイドやロボットには勝てないのか、というお話が定番だったりしますよね。

高森:でも、ヒューマノイドには“仕様”があって筋肉がつきにくいという設定があるんです。だから葛藤が生まれる。本当に細かいところまで考えられているんだなと思いました。

――では、カオルについてはどんな第一印象をお持ちになりましたか?

高森:難しい役どころだなと思いました。最初に置かれていた性は男性だけど、そこには固執していない。でも、女性の体になったからといって精神まで女性になろうとしているわけではない。なかなかとらえどころのないキャラクターだな、と。

しかもアニメの初登場は第1話のラスト、思わせぶりなセリフを少し喋るだけなんです。一番緊張する登場の仕方でした。

――そういうものなんですね。

高森:よくある登場の仕方ではあるんですが、パーソナルな部分はまったく出せないけれど、ひと言で次に繋がる新キャラクターとして印象づけないといけないんです。ちょっと震えながらのアフレコになりました(笑)。

――カオルは第2話で本格登場し、須堂やリサとの掛け合いもありました。

高森:カオルって意外と自分のことをたくさん喋ってくれるので、掛け合いをするなかでようやくカオルという人物が固まっていきました。カオルに動きがついたのも大きかったです。原作も読ませていただきましたが、表情が変化することでカオルの考え方が把握しやすくなって、カオルは本当に冷めた目でこの世界を見ているんだと理解できました。

――子どもにボールを返すシーンですね。

高森:友達や親との微笑ましい光景を見て「なんてつまらない景色」と言うんです。カオルの考え方、あり方がつまっているセリフですよね。

――音響監督と何か話し合われたことはありますか?

高森:大塚(剛央/須堂光役)さんと掛け合ったときに、音響監督さんから「もっと感情を出してお芝居をしてください」とディレクションをいただきました。自分一人でカオルについて考えていたときは、あまり体温の感じられないヒューマノイドで、どちらかというと淡々とした喋り方なのかなと思ったんです。でも、そうじゃないんですよね。

須堂さんは喋り方にあまり温度感はないけれど実際は温かみのある人で、カオルは他人を明るく茶化したりするけれど内心はとても冷めている。須堂さんとカオルは対になっているので、表向きは感情を出して対照的に演じないといけないんです。音響監督さんと大塚さんのおかげで、改めて掛け合いの大切さを実感しました。

――リサとのやりとりでは、まさにカオルの「明るく茶化した」部分が出ていました。

高森:リサちゃんはからかいがいがあるので、あえて女性の部分を出して楽しんでいたんだと思います。ただ、全体としてあまり“男性らしさ”、“女性らしさ”は意識しないようにしました。カオルはどちらかの性別になりたいわけでも、寄せたいわけでもなく、ただただ試行錯誤して男女の概念を超えようとしているだけ。女性の部分を出したほうが面白い場面だったら出す、くらいの感覚だと思って演じました。

――基本的に“性”は意識しない、と。

高森:そうですね。特に第2話は、一番フラットな自分を出せる、気心の知れた須堂さんとの会話がほとんどだったので、特に性別のことは考えないようにしました。

――カオルは抽象的な言葉づかいも多いですよね? そのあたりはいかがでしたか。

高森:難しかったです! 「街灯から離れられない虫」みたいな詩的な表現も多くて、最初は機械的に言うべきか、人間味を持たせた言い回しにするか迷う部分も結構ありました。そういう意味でも本当に謎めいたキャラクターだと思います。

ただMICHIと絡むようになると、一転して振り回される側になるのが面白かったです。この先もMICHIとのやりとりがあるので、楽しみにしていただけたらなと思います。

(C)山田胡瓜(秋田書店)/AIの遺電子製作委員会2023
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