「お芝居のことはもちろん、役者としての振る舞い方、心構えも教えていただきました」81ACTOR'S STUDIO講師・鈴木清信さん、生徒・中島ヨシキさん、稗田寧々さん鼎談インタビュー【短期連載第1回】
稗田さんの秘蔵ノート
稗田:私は大学1年生のときに81ACTOR’S STUDIOに通っていたんです。ヨシキさんと同じように、夏季休暇明けからAクラスになって、キヨさんに教えていただいたのですが……お芝居のことはもちろん、役者としての振る舞い方や、役者としての心構えも教えていただきました。
「こういうことを経験しておいたほうが演技の引き出しとして後々活きてくるよ」ということをキヨさんに教わったと思っています。その考え方が未だに自分に染み付いているんです。
自分は「色々やってみよう」という精神があって、「やらないよりはやった方が良い。失敗するかもしれないけど、自分の身になる」と思って生きてきましたが、それも振り返れば、養成所時代に教えていただいたことが、根にあるからなのかなと思っています。昔はもっと「えいや!」と挑戦するのを怖がっちゃうタイプだったんです。
鈴木:そうなんだ。
稗田:今も少し心配症なところはあるんですけど、昔は他人の目を気にしたり、人の枠を外れたりすることを恐れているタイプでした。養成所に通って、キヨさんから色々教えていただいたこともあって、迷ったらとりあえずやってみれば自分のお芝居の幅に繋がるんじゃないかという考え方になっていったと思っています。
稗田:私、養成所のときにノートを取ってたのですが……(ノートを取り出す)。
一同:ええー!
稗田:恥ずかしい(笑)。
ーーめちゃくちゃ綺麗にまとめられていますね。
中島:すごい!
稗田:言われたことや教科書にメモしたことを、改めて家に帰って書き写していました。(ノートを開いて)これは最初のキヨさんの授業のメモです。
鈴木:「芝居は意識的に、かつ無意識的に見せる」。良いこと言ってるねぇ〜!
稗田:卒業してからもこのノートを見返していました。クラスで『発表会』をやったときのメモとか。
中島:なんかすごい大学生っぽいね。
稗田:確かに! 真面目だったので(笑)。
鈴木:ノートの話も授業でやったけどね。何年か経ったあとに振り返ると分かることが多いんだよね。これは財産だよ。
中島:これは貴重な資料ですよね。「声優ミュージアム」に飾った方が良いと思います!
稗田:未だにこれを見返したりするので、自分の根底になっています。
鈴木:気づくことがいっぱいあるでしょ。
稗田:あります。自分が忘れていたことも。
鈴木:今になるとわかるんだよね。
一同:(しばらく全員でノートを見る)
ーー本当に貴重なノートですね。中島さんもさきほど師匠とおっしゃっていましたが、稗田さんにとっても……。
稗田:キヨさんと中尾さんは、私の中で声優の先生という思いが強くて。未だに先生って呼んじゃいます。
ーー鈴木さんはおふたりの言葉を受けて、感慨深い表情をされていますね。
鈴木:本当ですよ。嬉しいですね。ましてやバリバリに活躍してるふたりだから。基本的に私自身は当時、何を喋ったかもう覚えていないですよ。昨日もレッスンで喋りましたけど……忘れていることもあるんですよね。でもこうして自分の発言を思い出してくれて、恥ずかしいような、嬉しいような気持ちです。今や活躍してるふたりが、そんな風に言ってくれると、どこか面映ゆいですね。
稗田:レッスンで使っていたテキストやナレーションの題材も全部ファイルに入れて、ずっと家に置いています。
中島:僕の家にもボロボロのテキストがあります。裏表紙が取れるくらい握りしめたり、こねくり回したり、いろいろ書き記したり……。捨てられないですよ。
稗田:捨てられないですよね。
ーーそれもぜひ声優ミュージアムに!
一同:(笑)
中島:恥ずかしい。ろくなことを書いていないかもしれないです(笑)。
ーーさきほど鈴木さんがポロリとこぼされていましたが、授業では普段からノートをつけるように指導しているのですか?
鈴木:最初に言っています。「ちゃんとノートにつけておきなさい。それがみんなの財産になるから」と。今日できなかったこと、褒められたこと、何でもいいので、ちょっとした内容と自分の感想を書いておきなと。何年か経った時に業界に残っている人は「今は分からなくても後で意味がわかるから」と。辞めてしまったとしても思い出になりますしね。それを今日ふたりが証明してくれました。
稗田:持ってきて良かった。