秋アニメ『はめつのおうこく』リレーインタビュー第5回:シロウサギ役:谷山紀章さん│悪役然とした悪役、その「底意地の悪さ」を楽しみながら演じた
いよいよ物語も佳境を迎えるTVアニメ『はめつのおうこく』。アドニスとドロカの旅路に立ちはだかったのは、リディア帝国諜報局局長のシロウサギ。アドニスたちは彼の圧倒的な力と残虐性に追い詰められ、ドロカは致命的な怪我を負ってしまいました。
アニメイトタイムズで好評連載中のリレーインタビュー第5回は、シロウサギを演じる谷山紀章さんが登場。嗜虐的な笑みを浮かべながらアドニスとドロカを苦しめる男をどのような役作りで演じているのか。彼の魅力と合わせてたっぷり語っていただきました。
悲惨な描写を厭わない攻めた内容
――原作をご覧になった印象はいかがでしたか?
谷山紀章さん(以下、谷山):人間対魔女という対立構造が明快でわかりやすかったのと、悲惨な描写を厭わない攻めた内容が映えるなと感じました。ドラマというところでも、アドニスが復讐の炎に身を焦がしながら、その意志を貫くところがすごかったですね。手放しで感心していいものかと思いつつ、その意志の強さが魅力的に映りました。
――ある意味、すさまじい執念というか。
谷山:そうですね。普通、憎しみなんてそう長続きしないと思うんです。途中で「もういっか」って諦めそうだし、実は復讐ってかなり根気のいることなんですよ。それがモチベーションになっているというのは、よっぽど深い恨みがあるということで、本当に人の恨みは買うものじゃないなって思います(笑)。
――確かに、怒りや憎しみって抱え続けるのも大変ですよね。
谷山:僕個人の話をさせていただくと、僕はあまり喜怒哀楽が長続きしないんです。だからこそ、メンタルも病まずに済んでいるんだろうなと思うんですけど。
――あまり怒ったりしないんですか?
谷山:もちろん、腹を立てることはありますよ。でも、次の日にはすぐ忘れちゃうんです。その代わり、楽しいこととか嬉しいこともあまり長続きしなくて。僕のような人間からすると、アドニスのように一つの感情を長続きさせられる人間は不思議でならないし、すごいなって驚かされます。
――では、谷山さん演じるシロウサギについてはどんな人物だと思いましたか?
谷山:ドロテーアの「愛の魔法(スペル)」を受けているシロウサギは、彼女を神格化する信仰者であり、殉教者ですよね。心の底から心酔している。ただ、その仕事ぶりは自分の趣味というか“性癖”がダダ漏れだなって思ったんです(笑)。目の前に現れた敵の首を斬って、それを弄ぶなんて普通じゃないですよ。ある種の快楽殺人者に近いなと感じたくらいです。とにかく悪役然とした悪役なので、そのイメージで演じるようにしました。
――アドニスたちとの戦闘もどこか楽しそうなところがあります。
谷山:きっと人を痛めつけたり、殺めたりするのが好きなんでしょうね。バトルマニアなんて言いますけど、まさにそういう属性の持ち主なんだと思います。
――アフレコをされるにあたって、音響監督とは何か相談されたのでしょうか?
谷山:事前の打ち合わせのようなものは特になかったですね。音響監督のえびな(やすのり)さんは細かく指示を出される方ではないので、まずはテスト(リハーサル)を確認していただいて、修正点があればディレクションしていただくという流れでした。ある程度イメージしておいたものを出したら、特に修正もなくそのまま本番という感じです。シロウサギはオーディションではなく直接お声がけいただいたので、それも大きかったと思います。
――役作りはある程度委ねられていたわけですね。
谷山:任せていただいた部分が大きいので、本番前は改めて特徴を確認して、キャラクターがブレないような芝居を心がけるようにしました。意外と自由にやっているイメージがあると思いますけど(笑)、キャラクターの土台自体は丁寧に作っているんですよ。
――第10話の戦闘シーンは、とても生き生き、伸び伸びとシロウサギを演じられているなと感じましたが。
谷山:声優はみんなそうだと思いますけど、バトルシーンで技名を言ったり、叫んだりするのって、声優だからこそ味わえる快感みたいなものがあるんです。誤解を恐れずに言えば、「俺はバトルが好きだぜ! 人をぶっ飛ばすのも大好きなんだよ、バカヤロー!」みたいなノリって本当に楽しいんです。ヒャッハーって感じで、自分のリミッターも外すことができるから。その役者の醍醐味みたいなものを楽しませてもらいました。
――シロウサギは急にハイテンションになったり、冷静にアドニスたちを追い詰めたりと、不気味なところもいいですよね。
谷山:シロウサギの抑揚……力を抜いたり、声を張ったりした感じは、声優としての自分の癖みたいなところもあります。シロウサギは肩に力が入ったタイプではないので、脱力した感じを表現するにはちょうどよかったのかもしれないですね。ただ、彼は劇場型の見せ方をすることがあるので、そういう場面は意識的に芝居がかった喋り方をするようにしました。